56話︰すぴ〜ぶるる
陣内陽輝がとんだ狸爺だということが判明した。
そのことに怒り狂う俺と唯衣とモコによって、部屋の中は再び呼吸すらも支配するような剣呑な雰囲気になる。
いや、俺と唯衣とモコはすでに準備万端だ。いつでも殺れる。
「・・・そ、そのなんだ・・・さっきの約束は」
陣内に言い訳を言わせる気もなければ、聞く気もないほどキレている唯衣は被せるように宣告する。
『必ず守れ、じゃないとその首と胴体が永遠にお別れすることになりたいの?召喚ソラ、清十郎』
ガルルルゥ!!(コタロウとトモヤの餌にしてやる!)
唯衣の召喚でソラと清十郎が転移してくる。
唯衣さんが相変わらずカッコ良すぎるんだけど!いつの間に召喚なんて使えるようになったの?俺、使えないんだけど…。
「むむ、奥方様、御館様ここは?」
『清十郎、ここにいるのは敵です。構えなさい』
「御意!」
清十郎は唯衣の指示で陣内、御神と護衛の連中を睨みつけて構える。
すぴ〜、ぶるる、すぴ〜、ぶるる
かたや、ソラは日向ぼっこしていたのだろう。へそ天で召喚されても起きない。
ガオォウ!(起きろ!)
ビクッ!?
モコに怒られ、ソラはシャキっとする。
ガルルルゥ?(かかってこい?)キョロキョロ
ヤバイ、俺の出番がない。それは不味いぞ…。
陣内は唯衣の迫力に負け、脅しではなく本気を感じたのか即答する。
「か、必ず守る!」
そして、御神は唯衣とモコの殺気に当てられ、すでに気を失っていた。
俺の出番はここだっ!!
「なら今すぐ手続きしてもらおうか?」
「わ、わかった・・・す、すぐに」
陣内は首で護衛の一人に合図を送ると指示された男が恐る恐る動き出す。
『早くしなさい!』
「は、はいぃ〜!」
こうして血を見ることもなく、俺達の交渉は穏やかに・・・陣内会長以外は血を見ることなく、まとまった。
めでたしめでたし。
▼
「そ、それが特級探索者のカードだ。です」
完全に唯衣に対して、及び腰の陣内会長は言葉使いを改め始める。
新しく渡された探索者カードは今まで使っていたカードとは材質が異なっているのか不思議な手触りだ。
「そのカードはダンジョン黎明期に使用されていた旧時代の探索者カードだ。です」
旧時代のカード、確か今の魔導工学が発展する切っ掛けになったと言われる未だに全てが解明されていないカードだったと思う。
「今ではそれなりに貴重な品なので大事にしてくれ。して下さい。お願いします」
面白いな・・・唯衣が睨む度に語尾を改めてるよ。
「編入と従魔の書類も用意出来たのでこちらにサインをお願いします」
俺達に対して、下手に出る陣内を護衛達は辛そうにそんな会長は見たくないと顔を逸らしている。
サインを書き終わるとついに作戦の説明に入る。
ちなみに唯衣は『藤 唯衣(妻)』と記入したがツッコミが出来る奴はいなかった。
「今回の闇ギルドへのガサ入れはここにいるメンバーのみの少数精鋭で行う」
この部屋にいるのは俺達を含めて、全員で10人。(従魔が2匹と一人)
「突入するのは儂と君達だ。残りは出入り口を塞ぎ、誰一人として逃すな!」
「はい!」「「「はっ!」」」
御神と護衛達はやる気に満ちており、気合いが入っている。
「相手は何人くらいなんだ?」
「組織自体の規模は非戦闘員を含めると約1000人といったところだが本拠地に詰めているのは常に100人以上はいるだろう。特に今日は仲間の引き渡し期限の日だから300人くらいは詰めていると思われる」
俺の質問に淀みなく答えれるということはある程度は調査済みなのだろう。
「本拠地の見取り図はあるのか?」
「残念ながら一部しかない。本拠地のビルはダンジョンと化していて、詳細は不明だ」
ダンジョン化していると聞いて、俺達はほくそ笑む。なんてったって、俺は迷宮喰いなんだよ。ダンジョン大好物です。
「その闇ギルドの頭はダンジョンマスターなのか?」
「そうだ」
内心で俺は勝ちを確信し、より笑みを深める。
そんな俺の様子を見た御神と護衛はブルッと身体を震わす
「(唯衣、ハッキングは可能だよな?)」
『(ダンジョンなら問題ないと思う)』
「(ついでに陣内夏輝の保護をしてやるか)」
『(そうね、陣内夏輝のユニークスキルが解れば図書機能で簡単に場所がわかるから確保しやすいかな)』
闇ギルドには気の毒だが今回は相手が悪過ぎたな。
「最後にひとつ聞いておきたい」
「なんだ?」
「あんたの孫、陣内夏輝のユニークスキルは何だ?」
「・・・ふむ。知りたい理由を聞いても良いか?」
馬鹿正直に教えてやるつもりはないので適当にはぐらかしておく。
「見分けやすいようにかな、後は闇ギルドの連中ごと、巻き込まない為かな…」
ほぼ理由になっていないがこれで納得して、教えてくれるなら保護してもいいし、拒否するならどうなっても知らない。
「わかった。儂の勘が教えろと言っているので教えるが他言無用だ」
「ああ」
「夏輝のユニークスキルは《反射の魔眼》だ」
反射の魔眼か、初耳だがめっちゃかっこ羨ましい。たぶん、魔法とかを反射するんだろうけど、後で図書機能を使って調べておこう。
「そうか」
ユニークスキルを聞いておいて、反応が薄い俺に怪訝な表情を浮かべる陣内会長。
「では各々、準備もあるだろうから2時間後に出発する。それまでは自由に過ごしてくれ」
言葉とは裏腹に陣内会長の表情は暗かったが俺達にも準備があるので秘密基地を発動する。
「「「・・・っ!?」」」
突然、部屋にドアが現れれば誰だって、かの有名などこでも◯◯だと思うだろう。
「時間までには戻る」
部屋にいる奴らの驚愕を無視して、俺達は秘密基地に引っ込むのであった。
探索者のトップオブトップと言われる特級探索者となった颯夜と唯衣。
颯夜は特級がトップだからと軽い気持ちで要求した地位だか特級探索者には隠された特権があった。
それは殺しのライセンスである。あわわ




