49話︰殺意
何とかショッピングモールに辿り着くことが出来たがそこは夏休み中とあって、普段より多くの人で溢れていた。
そのせいで周りからの注目は道中の比じゃないくらいの視線を集めているのだが…。
違いはそれだけではなかった。ショッピングモールを訪れた客が連れているペット達の態度までが違う。
簡潔に言うと全ペットがモコに対して、服従のポーズを取っているのだ。飼い主達は絶賛困惑中だ。
『颯夜、友達はもう着いているの?』
唯衣に言われてスマホを確認すれば、早い奴でも後15分は掛かるようでどうやら俺達が1番に着いたみたいだった。
「いや、まだちょっと掛かるらしい」
『そうなんだ』
返事はするが唯衣は周りのお店が気になるのか気もそぞろだ。
なんせ秘密基地からまともに出たのは今日が初めてなのだ。ワクワクしてしまうのも仕方ない。
「その…みんなが来るまで少し見て回るか?」
『いいの!見たい!』
唯衣は周りの人間など、気にしていないのか今まで見せたことがない嬉しそうな笑顔を見せながら俺に抱きついてくる。
「おうふ」
再び、腕を組まれた俺は「おうふ」と言いながらお店を回る。
服屋では『これなんてどう?』とか言われて、「めっちゃ似合う」しか言えなかった俺。
小物のお店では『これ可愛い!』なんて言うから思わず、財布を出した俺。そして、『部屋に飾るね』と言った唯衣。
アクセサリーショップではペアリングを見て、うっとりとした横顔を見せるもんだから「今日の記念に」なんてカッコイイこと言って、購入した俺。そして、指輪をした手ばかり見つめる唯衣。
ゲームコーナーでは唯衣の初めてのUFOキャッチャーに一喜一憂した俺。そして、初めてゲットしたぬいぐるみを大事そうに抱える唯衣。に対抗してモコを抱く俺。
初めてのプリクラにドキドキする俺。そして、操作がよく解らず上手く撮れなかった俺達。
一通り、楽しんだ俺達はカフェでゆっくりしている。
そして、その光景を殺意の籠もった目で見ている友人達。
何かだいぶ前からスマホがずっ〜と、ブルブルしているが気にならない俺。
「「いい加減!気にしろやぁ!」」
友人達の忍耐もどうやらここまでのようだ。そして、いい加減な文章も…。
「よぉ!」
「ちょっと、颯夜お借りします」
友人の一人が唯衣に断りを入れて、軽く挨拶する俺を拉致するべく、トイレへと連れていく。
「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」
トイレの中に連れ込まれたが友人達は一言も喋らない。
相変わらず、肝っ玉の小さい奴らだ。
「ちげぇよ!言いたいことがあり過ぎるんだよ!」
どうやら俺が思っていたことは顔に出ていたようで友人達の怒涛の責めが始まる。
「お前、今何時だと思ってんの?!てか、何あの可愛い子!」
「お前、途中から俺達に気付いてたのに何気付いてないふりしてんの!?てかマジであの子可愛いんだけど!」
「お前!俺達がどんな気持ちでお前らを見てたか解るか!?あんな可愛い彼女とかありかよ!?」
「颯夜、覚悟は出来てるんだよな?もう一回入院するか?あぁ」
4人とも迫力はあったが同時に喋るから正直、何言ってるか分からなかったよ。文句を言ってることだけは分かったけど。
鬱憤を吐き出したことで友人達はスッキリしたのか店内へと戻ると唯衣の周りに男が3人屯していた。
「ねぇ、いいじゃん!俺達と遊ぼうぜ」
『彼氏がいるので結構です』
「その彼氏って、どこにいるの?見えないんだけど?」
『今、お手洗いに行ってるところです』
「その彼氏ってのもビビってトイレから出て来れねぇんじゃねぇの?」
「おい、颯夜!やべぇぞ!彼奴等、探索者学校の奴らだ」
そう言ったのは友人の一人、南野祐介、探索者職業は戦士の彼女なし。好きな食べ物はチョコレート。
祐介の言う通り、唯衣に絡んでいる男達はこれ見よがしに探索者学校の制服を着て、腰には獲物を携帯していた。
「しかもあの制服の色、戦闘科の上級生だろ」
祐介に続いて、呟いたのは中田敦、探索者職業は斥候の彼女なし。好きな食べ物はシュークリーム。
「俺達と遊びに行こうぜ。じゃないとその彼氏が怪我しても知らないぜ。俺達、全員レベルは40超えてるからさぁ」
友人達はレベルが40を超えていると聞き、及び腰になっていた。
「そ、颯夜、どうする」
友人の一人、相川秀樹、探索者職業は魔術士の彼女なし。好きな食べ物はパフェ。が訊ねてくる。
この時の俺は視界が紅く染まるような錯覚を覚えつつ最早、友人達の声が届いていなかった。友人達を押し退けて、唯衣の元へと向かう。
「そ、颯夜!一人じゃマズイって!みんなで!」
俺を必死に止めようとしたのは木村真吾、探索者職業は戦士の彼女なし。好きな食べ物はマカロン。
『あっ、颯夜!』
俺に気付いた唯衣が声を上げ、それに釣られて男達も振り向く。
「おいおい、貧弱そうな彼氏だな?」
男達はニヤニヤとしながら唯衣の元から離れて、俺を囲むように立つ。
「なあ、悪いんだけどよ。お前の彼女、俺らに貸してくれねえか?」
一人がふざけた台詞を言いながら俺の肩に手を乗せてきたのでその手を掴み、握り潰す。
ボキボキボキ!
「いぎゃぁー!」
残り2人は一瞬、何が起きたのか理解出来なかったのか唖然とした顔をするがすぐに仲間がやられたと分かるや険しい表情を取り、俺に凄もうと腰の獲物に手をやる。
「「てめぇ!ふざけ!?ひぃ!」」
一人の手を潰したくらいでは俺の怒りは収まらず、全力の王威を発動する。
すると男達は恐怖よりの驚愕で尻もちをつく。
ついでに重力魔法の重量操作でこいつらの体重を10倍にしてやる。
本当にレベルが40以上あるなら耐えられるよな?
「「「ぐ、ぐるじ・・・ぃ」」」
どうやらレベル40は本当のようなので徐々に倍率を上げていく。
男達は抗おうと必死に藻掻こうとするがそれすらも出来ず、床に崩れるように仰向けに倒れ、口から泡を吹きながら失禁する。
「「「・・・」」」
予想外の光景に友人達は目を見開き、口はあんぐりと驚愕を表していた。
それは店内にいる友人達以外のお客も同様の反応だった。
『颯夜、ありがと!』
店内には唯衣の爽やかな『ありがと』が響いた。
そして、この光景を少し離れた場所から興味深く見ていた男を気にする者はいなかった。




