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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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45話︰ワレノ・・・



 唯衣の転移によって、俺達は元ダンジョンマスターの部屋の前にいた。

 元ダンジョンマスターと言ったのは既に権限と支配力を唯衣に奪われているからだ。


『マスター、後ろからスペクター系のモンスターが迫っています。』


 ちょうど、良かった。今後の予定の為にもスペクター系モンスターの魔石が欲しかったのだ。

 清十郎以外の全員で対応すれば、あっという間に片が付く。


 魔石の回収も終わり、改めて元ダンジョンマスターの部屋の扉を見つめる。この廃旅館ダンジョンは地下へと続くタイプのオーソドックスな構造になっている。


「唯衣、ここのボスは何か解るか?」


『はい、ここのボスはリッチスペクターというAランクのユニーク個体です。』


 リッチスペクター?聞いたことがないな…。


『リッチスペクターはリッチの進化先のひとつで物理無効の能力を持ち、見た目はマスターのイメージする死神に似ています。』


 なんだって・・・!?つまりそれは…俺は震える声で唯衣に確認する。


「ゆ、唯衣、それはつまりここのボスは大鎌を持っているのか?」


『はい、持ってますね。しかも、両刃で大と小の刃が付いたやつを・・・。』


「両刃だと!?その大鎌はドロップするのか?」


『マスターのステータスならかなりの確率でドロップするかと思います。』


 俺は逸る気持ちを抑えながら目を閉じて、心を静める。物欲センサーを捨てるために全ては大鎌をドロップするため。


「よし、これから決戦だ。みんな行こうか」


 いつもより気合いの入った俺はボス部屋の扉を開く。ドロップしなかったら派手に暴れてやると心に決めて…。


 扉を抜けた先は空虚な空間が広がっていた。その空虚な空間の中央にはボロボロの黒衣を纏い、浮遊したままダラリと大鎌を携えるリッチスペクターがいた。

 リッチスペクターは頭蓋骨を剥き出しにした頭部にその目は鈍よりと何処までも暗い闇が宿っているようだった。


「貴様らが我が領域を侵す侵略者か・・・」


 リッチスペクターから発せられる言葉には呪詛でも込められているのか不快に感じる重さがあったが清十郎以外には効いていなかった。


「邪魔な貴様らには惨めな死を与えてやろう」


 その冷徹な物言いは命を軽視するこのアンデットダンジョンを支配していた者の傲慢さが窺えた。


「仲間同士で殺し合うがいい」


 暗い瞳が赤く光ると清十郎が頭を抑えながらうめきを上げる。


「うがぁあぁー、あぁがぁ」


 数秒間、屈みながら悶える清十郎を見ていた俺は今後の展開を読んでいた。

 清十郎の呻きが止むとゆっくりと立ち上がる。その目は普段と違い、虚ろな目をしていた。

 ゆらゆらと立つ清十郎は俺と目が合うなり奇声を上げながら大鬼の金棒を振り降ろそうとする。


「キィー!!」ドゴォン


 清十郎は大鬼の金棒を振り降ろす間もなく、俺にボディブローを打たれ壁へと激突する。


「・・・仲間ではないのか?」


「仲間ではない、家来だ。それに俺は特殊な訓練を受けているから問題なく殴れる」


 特殊な訓練など受けていないし、もし相手がモコだったら俺は殴れないだろう。


「そもそも、なぜ我が魔眼が効いていない…?」


「貴様の魔眼など効くはずがないだろうがお前と俺達ではレベルが違うんだよ」


 今回、清十郎が魔眼に魅入られてしまったのは生まれて間もなかったことでレベルが低くかったこと。バリバリの前衛タイプであったこともあり、相手との相性も悪かったからだ。

 その証拠に俺、モコ、ソラは平然としている。


 リッチスペクターは自分の思い通りにいかなかったことで狼狽していた。元ダンジョンマスターとはいえ、基本的にこいつらはダンジョンに籠もっていて、戦闘経験が足りていないのだ。


複合罠術コンポジットラップ発動」


 リッチスペクターが浮遊する下の地面から槍の罠と光魔法のライトフォースを混ぜた罠が発動する。


光の槍シャイニングランサー!」


「オオォォォ!?」


 光の槍はリッチスペクターを貫くと逃さないように矛の部分が十文字に変化する。さながらリッチスペクターは十字架に突き刺されたようになる。


「グアァァァ!?」


 トドメと言わんばかりにモコとソラが闇魔法と光魔導を放っていく。


「・・・ァァァ」


 リッチスペクターは未練たらしく、昇天していった。

 リッチスペクターが消えた後には魔石とそして、持っていた大鎌が残されていた。


「やったぜ・・・ついに手に入れたぞ!」


 ドロップしたアイテムの元へ駆け寄るとリッチスペクターが持っていた大鎌を拾い上げる。


「ふふふ、ふはは!あははは!!」


 念願だった大鎌が手に入り、思わず魔族に闇堕ちした哀れな人間のような笑いをしてしまった。

 俺の笑い声で気を失っていた清十郎も意識を取り戻したようでよろよろとこちらに近寄ってくる。


「御館様、不甲斐ないところをお見せしたようで面目ございません」


「いい、気にするな」


 寛大な俺の言葉に清十郎は感動し、震え泣きしているが今はそれより大鎌を鑑定する方が大事だ。


死霊の大鎌 英雄級エピッククラス


 想像以上に良いアイテムが手に入ったが当初の予定通り、進化珠(精霊級)を使い進化させるつもりだ。


 目的の物も手に入ったし、さっさと秘密基地に帰ろう。


『マスター、ダンジョンコアをお忘れです。』


 この時の俺は唯衣に注意されなければ、ダンジョンコアをスルーしていたことだろう。



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