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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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37話︰氾濫 無双界隈



 ズンッ!ズンッ!ズンッ!とダンジョン奥の通路から地響きのような音が聞こえてくる。


 これまで強敵と言える相手とは何度か戦ってきた。その度にも緊張はしていたが氾濫スタンピードはそれとはまた違う緊張感があった。

 それは俺だけではなく、隣や後ろにいるモコや両親、ソラ、コタロウ、トモヤも同じように感じていると思う。


 そもそもこんな少人数で氾濫スタンピードを止めようと考える人間はいないし、止めれた人間がいるなんて聞いたとこもない。なのに俺達家族はそれをしようとしている。なんて、馬鹿な家族なのだろう。

 前代未聞のことに挑戦するわけだから緊張して当たり前だ。


 時間が刻一刻と過ぎるにつれ、通路から響き渡る音が大きくなり、僅かだが地面の揺れも大きくなっている気がする。

 

『接敵まで30秒です。』


 唯衣の声に全員の緊張が最高潮に高まる。緊張した身体では良いパフォーマンスは出来ないと俺は深呼吸を繰り返す。


 ちなみに唯衣の見た目は変えてもらった。流石にあの人の顔ではドキドキが止まらないから美人の平均より上くらいにしてもらった。

 まあ相変わらず、ドキドキは止まらなかったけど…。


『来ます!』


ドゴォン!!

ギャアー!?グギャー!?ギャア!?


 先程までの地鳴りと思わせる行進を上回る悲鳴。地雷を踏み抜き、身体が吹き飛ぶモンスター。

 地雷の爆風で倒れて、後続に踏みつけられ命を落とすモンスター。

 地雷を超えても落とし穴が口を開き、足を止めれば地雷の餌食。落とし穴に落ちても後続に踏みつけられて、命を落とすモンスター。


 地雷と落とし穴どちらも運良く、パス出来ても待ち構えるのはトラバサミ。

 それすらも越える強運なモンスターは槍の罠で串刺しになる。


 それすらも越えるモンスターはギロチンで真っ二つになる運命だ。


 落とし穴以外のそれぞれの罠が二拍子で発動と解除を繰り返す。

 その罠の道を進むモンスター達を見て、俺はまるで世界的に有名なゲーム、土管工兄弟みたいだと思った。

 初めて、プレイした時は最初の土管が越えられず、時間切れになったんだよな…。


 ごく稀に全ての罠をたまたま抜けてくるモンスターがいるが罠を越えた先には見えづらいスパイダーネットが張り巡らせてあり、無惨にスパイダーネット(斬)で細切れになるモンスター達。

 目の前の仲間が罠で命を落としても後続から押されて、止まることも出来ず罠や仲間に圧殺されて命を次々に散らしていく。


 行軍の音はいつの間にか断末魔に掻き消されていた。


 接敵してから数分間だけでもどれだけのモンスターを倒したのかわからない。止め処なく、押し寄せるモンスター。

 倒れたモンスターの身体はすぐに消えて、魔石やたまにドロップアイテムを残すがこの勢いでは落とし穴が魔石で埋まってしまう。


 なので1番左の通路に近寄り、そこからドロップアイテムを順番にアイテムボックスで根こそぎ回収していく。

 俺のアイテムボックスの回収範囲は30メートル。

 上級道具アイテム士とアイテムボックスレベル10の効果だ。


 今のところ、これくらいしかすることがないがそろそろ最初のスパイダーネット(斬)が保たなさそうだ。


プチッ


 そんな事を思っていると最初のスパイダーネットが切れた。

 それを察してかモンスター達に勢いがついたように感じるが俺のスパイダーネット(斬)は通路ひとつにつき、まだ50個は張り巡らせてある。


 新登場、永続式地雷君は二拍子のリズムで爆発、休んでを繰り返す。

 運が悪いと足が千切られ、後続に踏み潰される。

 運が良くても続く、落とし穴で圧死することになる。

 2番目の落とし穴は開いたままなのでモンスターの足が止まるが後続に押されて、落下。次々と落下して1番下のモンスターが圧死していく。

 そして、俺の回収作業の回数も増える。


 まだ、序盤も序盤なのにこれでは大変なので父親にも手伝ってもらう。

 何を隠そう俺の親父も上級道具アイテム士になっており、アイテムボックスもレベル10になったらしい。

 全ては母親のスパルタと唯衣の指導の賜物と言っていたがこの際、どうでもいい。使える者は何でも使う。




 接敵から1時間。倒した数はおよそ14000匹。最低ランクのGランクモンスターから今ではFランクモンスターが混ざってきた。


 罠にハマって、命を落としたモンスターは秒で消えていく。

 約1秒に1匹。通路は4つなので1秒で4匹の計算だ。

 唯衣は約30万匹と言っていたので上の数字と合わせて計算していくと1分で240匹。

 1時間で14400匹になる。30万匹を14400匹で割ると30万匹を倒すのに掛かる時間は最低でも21時間といったところ。


 まだ、1時間なので21分の1しか倒していない。

 これは長丁場になりそうだ。スパイダーネット(斬)も4つ目が切れたのでスパイダーネットの隙間から無理矢理発射して、張り直しておく。


 そして、秘密基地に入ると手に入れた魔石を秘密基地に注ぎ込んで身軽にしておく。父親も同じだ。


 この時点で俺は迎撃戦ではなく、野菜を収穫するゲームをしているような感覚だった。

 

 

 接敵から3時間が経過したがモンスターの勢いは衰えを知らない。

 Eランクのモンスターも混ざり始め、スパイダーネット(斬)を張り直すペースが早くなってきた。

 まだ、10個以上破れていないが保険の為にね。


『マスター、まだ序盤です。気長に行きましょう』




 接敵から7時間、罠の道は地雷、落とし穴、トラバサミ、槍の罠、ギロチンまで辿り着くモンスターが増えてきた気がする。

 スパイダーネットは俺に多少だが疲労が出てきたので控えている。

 父親はそれなりに疲労してきたらしく、今は秘密基地で休憩中だ。




 接敵から12時間が経過。モンスターはDランクが現れ始め、ギロチンの罠までそれなりのモンスターが辿り着いている。

 魔石も全ての回収は諦め、罠の道が突破されるのも時間の問題だろう。

 そして、俺が休憩できる最後の時間かもしれない。


『マスター、今のうちに休んで下さい。』




 接敵から15時間、ついにひとつの通路が破られた。

 とは言え、スパイダーネット(斬)の補充を止めたから当たり前なのだが・・・それでも罠の道を抜けてくるモンスターは緩慢で両親とソラ、コタロウ、トモヤには丁度良い相手だ。





 接敵から17時間、2つの通路からモンスターが溢れるようになり、全員総出で対応しているがCランクモンスターがメインになりつつあり、俺とモコ以外はどれだけ持つか不安だ・・・。




 接敵から19時間後、均衡は不意に崩れる。


 罠の道を抜けてくるモンスターにBランクモンスターが混ざり始める。

 Bランクモンスター、レッサーオーガは満身創痍で罠の道を抜けてきたようで死に物狂いだった。


 そんな中、他のモンスターに気を取られていた母親を庇い、父親が怪我を負う。

 父親の怪我の具合は軽いが全員の疲労も溜まってきており、集中力が落ちていた。


 ここまでかと判断し、俺とモコ以外は秘密基地に退避させる決断をした。



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