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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第1章 探索者界隈

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28話︰飛騨か松坂か



 毒魔法の確認も終わり、俺の目的としていたものは達せられた。

 残りは秘密基地のレベル上げと自身の更なる強化だがどちらも夏休みに行う予定だ。

 前倒ししても良いんだが・・・そんな風に悩んでいると父親から全員に話があるとリビングに集められた。


「みんな、集まってくれてありがとう」


 みんなを前に話す父親は滅多に見せない深刻な雰囲気を出していた。

 俺はまた自分が問題で何かあったのではと思い当たる節を浮かべるがあり過ぎて解らない。


「実は・・・父さん、オーク肉に飽きたんだ」


 それは全員に衝撃を与える言葉だった。なんせ、オーク肉は今やウチにとって、欠かせない財源であり、貴重なモコ達のご飯なのだ。

 それを飽きたなんて、あんたって人は・・・。


「あなた!ウチの家計はどうするの!ウチは今、オーク肉で成り立っているのよ!」


 母親が怒るのも最もだ。モコ達が父親を見る目も冷たい。


「そ、そのことなんだが父さんに考えがある」


 全員が厳しい目で見つめる中、父親は覚悟を決めたのか表情に気合いが入る。


「父さんは!たまには牛肉を食べたい!鶏肉でもいい!オーク肉には飽きたんだ!」


 また、全員に衝撃が走るが俺達が口を挟む間もなく、言葉を続けていく。


「牛肉を食べるため、我が家はミノタウロスを狩るぞ!」


 後にこの日は藤家の転換期と呼ばれる。勇気ある父親の行動によって、藤魔具店に新たにミノタウロス肉が追加される切っ掛けとして・・・。


 父親の発言に感動したのか母親、モコ、ソラ、コタロウ、トモヤは媚を売るように父親に擦り寄っている。


 俺は何だか寝取られた気分になったのでモコを強引に父親から引き剥がし、お姫様抱っこしたままソファーに座る。持てるのかって?持てるに決まってるじゃん!今の俺、つおいんだぞ!


 父親の発言でミノタウロスを狩る流れだが何処でどうやって、どのように狩るかは俺に丸投げされている。

 腕の中で大人しくなったモコのお腹に顔をうずめて、ベースAI先生に訊ねる。


『はい、マスター。ミノタウロスですと他県のダンジョンになります。ここから近いところでは岐阜県の飛騨地方にあるダンジョン。もうひとつは三重県の松坂市にあるダンジョンになります。』


 この説明を聞き、全員が飛騨牛か松坂牛かで唸る。

 俺も甲乙付け難いと唸る。どちらもウチの食卓に出たことがないから食べたことないが…。


「ベースAI先生、どっちが良いと思う?」


 俺はベースAI先生に丸投げした。


『はい、マスター。夏休みの予定を考えるに岐阜県の方がマスターが望むダンジョンが多くあります。今のうちに転移地設定しておけば、夏休みの予定がスムーズに進むかと思われます。』


 俺の予定は決まった。今日はもう陽が暮れているので活動は明日からになるが家族の誰もが行ったことがない場所とあって、家族での会話が盛り上がる。

 と、いうのもこの時代、旅行なんて上流家庭の中でも一部の者達のみがすることができる贅沢な娯楽のひとつ。

 日本のみならず、世界中でダンジョンが発生して以降、人類の生存圏は狭まった。

 人口の少ない地域は当然、整備や駆除もままならない地域もあり、野良モンスターとの遭遇率も高くなる。

 そういう理由もあって、旅行というのは敷居が高いというか危険が多いのだ。

 両親も他県へ行ったことがなく、自然に溢れる著名な観光名所や観光地など、写真や映像でしか知らないと言っていた。


 それだけ人々にとって、旅行とは夢のまた夢、死ぬまでにしてみたいことリスト常連なのだ。



 翌日、学校が終わると直接、岐阜県へと向かう。


 移動手段は勿論、赤い悪魔号だ。(魔導自転車)


 一応、名古屋から岐阜までの定期バスはあるが利用者が少なくて、3日に1回しか運行していない。

 道路もしっかりと整備されているのは大通りとそれに連なる大きめな道路まで。裏道などは至る所でひび割れや小さな穴が空き、デコボコしている。

 その影響で大通りの道は車で混み合っている。


 俺は渋滞で停滞気味な大通りを横目に颯爽と北に向かって、赤い悪魔を走らせる。


「(みんな大変だな)」


 高速道路なんて今や一般車通行禁止だし、電車や新幹線も相次ぐモンスターの侵入で大事故が起こって、廃れつつある。一部では根強いファンに支えられて頑張っているらしいが利用者は少ない。

 この交通の便の悪さも人々が旅行と縁遠い要因のひとつと言われる。


 道路に掲げられる古びた案内板を頼りに岐阜県を目指す。

 都心から離れるにつれ、車の数も減り寂れた建物や未だに残る氾濫スタンピードの爪跡が目立ち始める。

 内心でこんな景色を眺めながらのドライブでは滅入るだけで楽しくなさそうだと呟く。


 今日の目標は岐阜県入り。道程は4日から5日を掛けて、目的のダンジョンに向かう予定だ。

 飛騨地方は岐阜県の北部に位置し、名古屋からの距離は約160km程。

 昔なら高速道路を使えば、2時間程で行けたらしいが俺は魔導自転車。しかも、愛知県を抜ける途中には治安の悪い地域があるので最悪フル装備で隠密を使いながら徒歩での移動も検討している。

 まあ、明るいうちから出くわす確率は低いらしいが…。


 ちなみに治安の悪い地域は全国各地に存在する。


 探索者という職業が出来てからというものレベルが上がることで安易に他を圧倒する力を手に入れることが出来るようになり、当然その力に溺れた者達が相次いだ。


 ダンジョン黎明期、政府は機能していたが主な政策はモンスター対策に復興支援とやることは多く、自衛隊も警察も力を得た無法探索者の対応に苦心していた。

 そこで政府は苦肉の策として、各地の探索者協会を政府から独立した組織とし、その権限を増やすことで探索者全般の管理、監督を任せることにしたのだ。

 正直なところ、政府としては時に個人で軍隊を超える力を持つ探索者達に成す術がなかったのである。

 (今では自衛隊と警察もダンジョンに潜るようになり、対応出来るように)


 独自の権限を持つようになった探索者協会だが全ての探索者を管理・監督するのは到底無理があり、反発した探索者達によって、全国各地に探索者協会の力が及ばない無法地帯と呼ばれる地域が出来上がった。

 そういった地域には力を持つ『闇クラン』が存在し、探索者協会と暗闘を繰り広げているとまことしやかに囁かれている。


 そして、今回は闇クランが裏で蔓延ると言われる地域を抜ける必要がある。

 なんせこれまでの人生で市内からも出たことがないのだ。

 両親にも注意されたし、警戒するに越したことはないだろう。




 国道沿いを爆走すること約1時間、俺は木曽川を越えて岐阜県との県境を過ぎていた。


 やんちゃな輩に絡まれるイベント?なかったよ。探索者同士の抗争に巻き込まれて、1人で止めるイベント?皆無だわ。

 悪漢に襲われる女の子を助けるイベント?ねぇわ〜。

 闇クランから襲撃されて、返り討ちにするイベント?闇クランってホントにあるんですか。


 昨日は散々、両親から気をつけるんだぞ!と言われて肩肘張ってたのに呆気なかったわ。

 まあ、噂話でしか知らない人達の話だから当てにならなかったのだろう。


 気が抜けた俺は魔導自転車をアイテムボックスにしまうと人気がない場所を探して、一時的な転移設定を済ます。


 今日は本当に気を張り詰めていたせいで疲れた。帰ったら両親に愚痴を言おうと決めて、秘密基地に入るのであった。




 颯夜が抜けた治安の悪い地域、そこは今夜も血を血で洗う抗争が行われていた。

 昼と夜で違う顔を持つ街、颯夜が噂の真相を知るのはまだ少し先の話である。


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