24話︰ローン返済
わんわん牧場建設に向けた無双ランニングによるローンの返済は50日間にも及んだ。
最初の計画より増えてるじゃんって思っただろう?途中で施設を充実させたからだ。
そうあれはモコが誕生した後、両親にもふもふの良さをプレゼンし、実際にモコと両親を会わせた。
最初はモコの巨躯に恐れ、飼うことを渋る両親だったがモコと触れ合い、ウルウルとした瞳に見つめられて心を絆され、散歩をすればダイエット出来るじゃないかなと言う悪魔の囁きでコロッと母親が釣れた。
父親は簡単でモコやこれから飼う予定のシルバーウルフのエサはオーク肉で大丈夫だと言ったら父親が釣れた。
本人はその後、昔から犬を飼うのが夢だったんだ。なんて見え見えな嘘をついていた。
ここまでは俺の思う壺だった。
その後はどうやって、父親をテイマーとして登録するのか家族で話し合うことになり、家族3人で身を寄せ合い、捏造と真実を織り交ぜた父親の武勇伝が出来上がった。
話はこうだ。ある日、出掛けた父親が野良のシルバーウルフに出会い、死を覚悟する。
しかし、命からがらシルバーウルフの攻撃を凌ぎ、偶然探索者から買い取ったオーク肉を思い出し、それを囮にして逃げようとしたところ、懐かれてテイムした。というものだ。
(野良というのはダンジョン外にいるモンスターを指す。)
これ以上の話はないだろうと話し合いは終わり、早速ベースAI先生に頼んでシルバーウルフの生成に入った。
母親が探索者協会の受付役をやり、父親の演技練習を見るのにも飽きたのでそろそろ寝ようとした時にモコが一人寝は嫌だと愚図り、仕方なく俺は自室に招いた。
しかしだ!モコの体長は2メートル超、体重は秘密。
一緒にベッドに入った瞬間、安物のベッドが悲鳴を上げて壊れ、ブンブン振り回す尻尾で物が散乱。ガ◯プラが壊れた。
この時、自室にモコを招くのは軽自動車に力士達を突っ込むような愚行だと気付かされ、この日から仕方なく秘密基地のベッドルームで寝ることにした。ちなみにベッドはワイドキングサイズに変更したのでモコと一緒に寝るのは問題なかった。
ここまでは良かったのだ!
モコと一緒に過ごす内に大型犬は数日で臭い始めることを知った。
『マスター、何度も言いますが犬ではなく、狼です。』
嫌いになった訳じゃない。寧ろ洗ってあげるのが楽しみですらあった。
だがモコの体長は2メートル超。秘密基地にはバスルームはあるがあくまで人間用だ。
DPを使い、拡張の機能でモコと一緒に入れるようにサイズアップした。
そこで作る予定の宿舎にもシャワー室が必要だと考え、今のところ4匹の予定だがもっと増えるかもしれないと大きめのやつをベースAI先生にお願いしたら、自動洗浄付きも出来るというので悪魔の誘惑に負けて、必要経費が高くついてしまった。
だが俺は満足している。あいつらの喜ぶ顔を見たら付けて良かったと思う。
というわけでウチにはモコとシルバーウルフ3匹がいる。ちなみにシルバーウルフは3匹ともオスでそれぞれが血を与えて、家族とパスが繋がっており、名前もそれぞれが付けた。
俺のシルバーウルフの名前はソラ。父親がコタロウと名付けた。勿論、俺と一緒にネット検索して決めた名前だ。そして、母親はトモヤと名付けた。
母親は自分の推しと同じ名前を付けて、大層可愛がっており、今では暇さえ見つければ、モコとシルバーウルフの3匹を連れて、無双ランニングをしていた。たまに父親も参加させられていたみたいだ。
おかげでエサには困らないし、手に入れた魔石の半分はくれるのでかなり助かっている。
わんわん牧場の建設でDPを使い過ぎて、こっちは懐がカツカツなのだ。どれくらいカツカツかと言うと秘密基地のレベルアップを見送ったくらいだ。
そうそう、父親は無事に探索者協会でテイマーとして登録することが出来た。
ただ登録する時はこの地方では数十年ぶりのテイマーということで協会内や行く道で物凄く騒がれたらしく、その影響で今や時の人となっている。
帰ってきた時の父親の凛々しい顔と言ったら…。
おかげでお店も繁盛しているが来る探索者達がみんなコタロウ目的で特に女性探索者が明らかに増えた。
そして皆、オーク肉を欲しがり魔具店というより今では肉屋になりつつある。
そんな訳でオーク肉の需要は高まって、母親とウチの子達がフル稼働で無双ランニングしているがそれでも足りず、オーク肉は高額になっているのだがみんな親父の幸運にあやかりたいのか普通に買っていく。
母親はこの状況を前向きに捉え、自身もテイマー登録すると言い出した。
自慢のトモヤを引き連れ、探索者協会に乗り込んだことを俺が知ったのは事後だった。
そして、ウチの両親以外にもシルバーウルフではないがウチで買ったオーク肉で下位のグレイウルフをテイムした者が現れ、今この地域では爆発的なテイムブームが起きている。
近いうちにテイムグループが出来上がるかもしれない。
この影響は大きく、ウチのお店はテイム用オーク肉の専門店になりつつある。
俺は肉屋を継ぐ為に道具士になった訳ではないのだが・・・。今では「あれっ?肉屋の息子さんだよね」なんて呼ばれることもしばしば。
学校でも友人達から安くオーク肉を譲ってくれないかとかクラスメイトの女子達からはコタロウ目的で今度、家に遊びに行ってもいいかなんて言われる。女子を家に呼ぶとかドキドキしちゃうぜ。
今のところ、断っているがこれも断れなくなるのは時間の問題かもしれない。
熱く語っていたら話が脱線していたがわんわん牧場は完成している。
『・・・』
秘密基地内でのわんわん牧場の配置だがリビングの窓から繋がっている。一応、作戦室にも出入り出来る扉はある。
リビングはこれまでは窓が一切ない部屋だったが壁一面を解放感のある大きなガラス窓にして、ウッドデッキのテラスを作り、モコ達でも楽に出入りできる設計だ。
ついでに両親がシルバーウルフ達と一緒に寝れるように両親の部屋もホテルのスィート並みのやつを増設した。
高校生で両親に部屋をプレゼントする俺ほどの親孝行なヤツなんて世界中探してもいないんじゃなかろうか…。
なのでそろそろ俺の信用も回復してきていると思っている。
今ではすっかり両親も秘密基地に入り浸っており、昼はテラス席で草原を駆け回るウチの子達を微笑ましく見守り、夕食はもっぱら秘密基地のダイニングで摂っている。
キッチンは完全に母親の支配下に置かれた。
わんわん牧場が完成し、季節は7月に入った。DPを大量消費し、カツカツだった生活も普段の日常を取り戻しつつある。
秘密基地内の草原では無双ランニングの休憩中とあり、4匹が思い思いに過ごしている。
最近では俺とモコが参加しなくても両親とシルバーウルフ3匹でオークを殲滅出来るようになったので俺も安泰だ。
ひとつ問題かあるとすれば、秘密基地内でアイテムボックスや罠術を使えるのは俺だけということか。まあ、俺のユニークスキルだから当たり前なんだが。
慌ただしい日々を過ごしなんとかわんわん牧場は軌道に乗り始めたが後、1ヶ月もしないうちに学生である俺は夏休みに入る。
そう全ての学生が渇望するあの夏休みだ!すでに気の早い奴らは予定を立てている。
俺も夏休みには他のダンジョンに遠征するという壮大な計画を立てているがその前にやる気ことがある。
ちょいちょい忘れがちだが俺は毒無効化の為に死蜘蛛シリーズを集めている。なので夏休みに入る前には装備を揃えたい。じゃないと気分良く夏休みが始められない。
という訳でモコと一緒に探索を再開した。




