19話︰いったい何を?
『マスター、おはようございます。今日も1日頑張りましょう。』
秘密基地に入るとベースAI先生に挨拶されて、帰るべき場所に帰ってきた感覚になり、寝起きの身体に気合いを入れ直す。
「ああ、今日こそは5分以内を達成する!」
フラグをしっかりと立ててから挑む。まずは準備運動を兼ねて、モンスターハウスに居るオーク達を狩っていく。
「トラバサミ☓3同時発動!」
昨日から罠術のレベルが上がり、同時に発動できる数が3つになった。
これで効率は更に上がるが数が増えれば、負担も増加するようですぐにバテてしまう。
罠術レベルが5以上になれば、消費量が軽減してくるらしいが俺にはまだ先だ。
今日は9時から21時までの12時間。昨日の2倍以上の時間があるのでペース配分が重要だ。
準備運動の狩りを終えて、30分の休憩が入る。
昨日、大幅にレベルが上がったことで体力に余裕を感じる。
やはり、5分以内を狙うなら体力に余裕があるうちがいいだろうと本日2回目になる次で狙うことにした。
『マスターまもなく、リキャストタイムが明けます。』
ベースAI先生の言葉で気持ちのスイッチが切り替わる。
『集中Lv:1を習得しました。』
幸先が良いことに新しいスキルを習得し、更に集中力が高まった。
『5、4、3、2、1、0』
俺は秘密基地の出入り口にいるオークをトラバサミで一掃していくと秘密基地から飛び出す。
『マスター、いったい何を?』
秘密基地から身を出した俺を視認したオーク達が猛然と襲い掛かってくる。
それを罠の範囲に入った奴から順に片付けていく。
時にはオーク2体の間にトラバサミを発動させて、2体同時に仕留める。
レベルが上がったおかげで今の俺が発動するトラバサミはオークを簡単に上半身と下半身に分断する。
しかし、罠の発動よりオークの物量が勝り、次第に罠が追いつかなくなる。
オークが間合いに入る前にスパイダーネットで足止めをして、計算通りに秘密基地へ退避する。
俺目掛けて一箇所に集まりつつあったオークにトラバサミを発動していく。
俺を見失い、立ち尽くすオークはまさに一網打尽。
秘密基地に退避した後、その場を動くことなくオークを蹂躙するのであった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
そんなに動いていないのに罠術に全力を出し尽くし、息が揚がる。
『タイムは3分42秒です。マスター。』
「よっしゃー!」
『マスター。大変素晴らしい戦いでした。』
ベースAI先生に褒められ、目標も達成出来たことで充実感で満たされる。
「さて、お宝は何かな?おおっ!?」
そこには今までと違う宝箱があった。
「これは噂に聞く、金の宝箱か…」
『はい。マスターの努力と研鑽により、英雄級以上確定の宝箱です。』
英雄級以上確定とかマジかよ…。
俺は誰もいないのに急いで金の宝箱を回収し、中を取り出す。
中には見たこともない腕輪がひとつ。得も言えぬオーラを纏っていた。
(オーラは出ていません。感動で目にエフェクトが掛かっているだけです)
試しに鑑定をするが弾かれる。
「・・・鑑定が通じない?」
でも大丈夫。こういう時は台座博士に頼めば良い。
台座の上に手にした腕輪を置いて、鑑定結果を待つ。その間、なぜか某鑑定番組で鑑定結果を祈る依頼者の気持ちになった。
そして、鑑定結果が表示される。
隠者の腕輪 英雄級
能力︰魔力+100% 精神+100% 耐性+50%
効果︰隠秘、気配遮断、鑑定遮断、解析遮断
隠秘︰隠蔽の上位スキル。個人情報を秘密にして隠すことが出来る。
「・・・」
『マスター、おめでとうございます。』
ぶっ壊れ性能に言葉が出ない。だって、装備したら魔力と精神のステータスが2倍で耐性が1.5倍になるんだよ…。
想像しただけで、ああ・・・。
『マスター、恍惚な表情をしている時に失礼します。魔石は放置されますか?』
指摘されるまで魔石の存在を忘れているなんて、いかんいかん。俺としたことが…。
慌てて、魔石を回収するとリビングのソファーでじっくりと隠者の腕輪を観察する。
見た目は古びたように見えるが味がある木製の腕輪。目立たないように内側に何かの宝石が嵌め込まれ、慎み深い感じだ。
これを装備するだけで『スパイダーネット』が倍使える。
これを装備するだけでスキルを使った時の精神的疲労が半分に感じる。
これを装備するだけで道具士のウィークポイントが補える。
英雄級の装備、マジ凄ぇ〜と感心しているとお声が掛かる。
『マスター、まもなくリキャストタイムが明けますがどうなさいますか?』
おっと、いけない。もうそんな時間か。初めての英雄級装備に浮かれて、レベリングしていることを失念していた。
「勿論、やるぞ!」
そう返事をすると隠者の腕輪を利き手じゃない方の二の腕に装備する。するとサイズが自動で調整されてジャストフィットする。
疾風の指輪や盗賊の靴といい、魔具の不思議機能のひとつだ。
『マスター、次も同じように戦いますか?』
「ああ」
それだけ言うと秘密基地の出入り口で待機する。次も同様に出入り口のオークを一掃してから俺自身を囮にして、オークを集めて一網打尽にする。
ひとつ違うのは隠者の腕輪の効果でさっきよりも余裕があることか。
モンスターハウスにオークが湧いたところで再び同じ手に打って出る。
腕輪の効果は絶大で思った以上に余裕が出来た俺は秘密基地に退避することなく、スパイダーネットを多用することで全滅させることに成功した。
全滅に掛かった時間はさっきよりも短かいか、同じくらいで期待に胸が弾む。
「次はどんな英雄装備かな〜」
期待で胸を膨らませていると宝箱が出現する。
「・・・なぜ?」
目の前に出現した宝箱は通常の物だった。とりあえず、中身を取り出し魔石を回収して秘密基地に戻る。
『マスター、お疲れ様でした。また素晴らしい戦いでした。』
「なあ、どうして金の宝箱じゃなかったんだ?」
出たのは既に持っている疾風の指輪だった。
『はい。このモンスターハウスに英雄級アイテムが登録されていたのはひとつのみだったのではないかと推測します。マスターはモンスターハウスの目玉であるアイテムを見事に獲得しましたので補充されない限りは英雄級はもう出ないものと思います。』
「・・・」
言われてみれば、まあ確かに…。英雄級のアイテムをやすやすと大量にドロップさせていたら流石にダンジョンが破産するか…。
英雄級がもう出ないのは残念だが元々の目的はレベリングだ。
気持ちを切り替えて、レベル上げに専念するとしよう。
この日は午前中に4回。門限の21時までに13回の計17回のマラソンで終えた。
レベルがまた上がり、当初の目的であるレベリングは順調だと言える。
そして、やはりと言うべきか英雄級は出なかったが5分以内で殲滅すれば、どうやら希少級が確定だったので気分は上々だ。
本日の獲得アイテム
オーク肉×いっぱい
魔石×500個以上
宝箱の報酬
一般級
ポーション×3
鋼鉄の剣
皮のバックラー
希少級
ハイポーション×1
疾風の指輪 盗賊の靴 力の指輪
魔除けの鈴 鑑定石(1回分)
魔法銀のリング
神銀の粒
魔鉄の塊×2
魔法銀のインゴット×2
レベルと装備で能力が上がっているとはいえ、回数をこなせばこなす程、疲労は蓄積されて後半は10分以内で殲滅するのがやっとだった。
獲得したアイテムも被ってたりと今回は使えそうな物は特になかった。
「えっ!?ミスリルやオリハルコンは?」って思うかもしれないが素材では売るぐらいしか出来ないのが現状だ。
『マスター、秘密基地のレベルが上がれば素材だけでもアイテムの作成が可能になります。』
はい、来ました。ベースAI先生のチートです。




