18話︰私の根源
「なあ、どうしてそんなこと知ってるんだ」
『マスター、私の根源はダンジョンコアになります。マスターのユニークスキル物置きを器として今は秘密基地になっていますが形は違えど、機能自体はダンジョンマスターに引けは取らないです。』
確かに言われてみれば、ダンジョンのような機能の数々。
転移なんてダンジョンマスターにしか使えないと言われているし、部屋の拡張や増設、モンスター生成なんてダンジョン機能の最たるものだ。
そのオーナーである俺は間接的にダンジョンマスターとも言える…はず。
知らぬうちにダンジョンマスターとかちょっと微妙だな。
『マスター、秘密基地の中で罠スキルが使えるのに違和感を覚えませんでしたか?』
それについてはマジ便利だぜ!マジでチートじゃん!くらいにしか思わなかったわ…。
『秘密基地の中で罠スキルが使えるのはダンジョンマスターが自身の好きな場所に罠を設置できることと同じことをしているのです。』
華麗にスルーをされたわ。こんなベースAI先生初めて。
「じゃあ、例えばだけど秘密基地内にダンジョンを創ることも出来ると?」
『はい。可能です。ただしダンジョンマスター同様に魔力、ダンジョン的に言うとダンジョンポイントを相応に消費しますが。』
なるほどね、そしてさっきの話に繋がると…。
「さっきの話で言っていたのはリスクを負うことでリターンを大きくしているってことか」
『マスター、その解釈で問題ありません。』
「なるほど、ならこのモンスターハウスは通常出ないはずのオークを出すために倒された場合は必ず宝箱が出ると?」
『流石はマスター。大体その通りです。』
なんだかテストで難問を解いて、先生に褒められたみたいだ。
そして、このモンスターハウスについて、詳しく解説してもらった。
ベースAI先生曰く、このモンスターハウスは俺が言ったように報酬を引き上げることで通常よりも強いモンスターを多く、湧き出るようにしつつも時間制限で報酬のランクが変わるようにしているとのこと。
時間制限の目安は5分以内で最も良いアイテムが出ると予想。15分以内はさっき出た希少級から一般級であろうと、30分以内なら一般級が恐らく、50%の確率で出現するとのこと。
ベースAI先生と話していたらそろそろ湧き出るというので第2ラウンドを始める準備をする。
目標は5分以内。さっきは10分を超えていたらしいが今回は侵入してから秘密基地を発動する必要がないので10分を切るくらいなら時間短縮できるはずだ。
なんだったら要領は掴んだし、5分以内だっていけるはず…。
今日は門限ギリギリまで粘れば、明日は学校も休みだし気兼ねなく、後9回はこなせる。つまりは後、9個はアイテムが手に入る。
笑いが止まらないとはこのことか。
『マスター、湧き出るまでカウントします。5、4、3、2、1、0湧きます。』
ベースAI先生のカウントで黒い靄が発生する。
その靄の位置にトラバサミを2つ設置する。今の俺の罠術レベルは2。同時に罠を2つ設置出来る。
黒い靄が固体化し、オークの姿を形取るとトラバサミが発動して早くも2体を屠る。
「(5分以内行ける!)」
スタートダッシュで手応えを感じて、この時は行けると思っていた。
▼
『マスター、時間は12分37秒です。』
これは本日、最後8回目のタイムだ。
はい、5分以内は一度も切れなかったです。というのも罠を発動するのも体力と精神を消費する。
最初は気分が高揚していて気付かなかったが回数をこなす毎に疲弊していくのがわかった。
一応、湧き出すまでに30分のインターバルはあるが疲労が蓄積していき結果、やればやる程タイムは遅くなっていった。
それでも気合いで15分以内には何とかしたがやはりしんどかった。
獲得したアイテムは一般級5個、希少級3個(内一つは疾風の指輪)。
獲得したアイテムは以下のものだ。
一般級
ポーション×3
鉄の剣×1
鉄鎧×1
希少級
疾風の指輪×1
守りの首飾り×1
暗闇の短剣×1
コモンクラスはポーション以外は親父に売り付けるつもりだ。
レアクラスは使えるので自分で使い、より性能が良いものが手に入れば、随時更新していく。
大量の魔石は3つだけ確保しておき、10個は親父に買い取ってもらって、お小遣い兼探索に必要な物を揃える資金にする。
1つ、3万円で売れるのでかなりの大金だ。それでもまだ200個以上あるが秘密基地に吸収させる。
Cランクの魔石が一度に大量に出回ると勘繰る奴が出てくるかもしれないから小出しで売っていく。
また、3個だけ確保したのはモンスター生成用だ。ただし、まだやらない。何故なら最初に生成するモンスターはもっとカッコイイのがいいから。
今日の出来を振り返る。正直、自分ならもっと出来るとかもっと良いアイテムを手に入れられるなんて思っていたが現実はまあまあ厳しかった。
そして、最も変化したのがレベルだ。是非とも見て欲しい。
【名前】 藤 颯夜
【順位】―
【称号】下剋上 征服者 英雄
【職業】 道具士
レベル:35(+14up) 130P
筋力:88(+28up)
体力:88(+28UP)
魔力:64(+14UP)
精神:64(+14UP)
耐性:64(+14UP)
器用:142(+42UP)
敏捷:88(+28UP)
幸運:192(+42UP)
【技能】
鑑定Lv:2up!
気配察知Lv:3up!
気配遮断Lv:5
罠術Lv:3up!
恐怖耐性Lv:3
【固有技能】
アイテムボックスLv:3up!
【特別技能】
限界突破
【特異技能】
秘密基地Lv:5
途中でオーク肉にアイテムボックスが圧迫され始めたのでレベルを一つ上げた。そのせいでポイントは30ポイント少なくなっている。
肉も親父…は買ってくれなさそうだから伝手でも頼って捌いて貰おう。うん、それがいい!
今日は流石に疲れたのでレベリングは終わりにするが明日は朝から晩まで頑張るつもりだ。
ふと、両親に秘密基地に泊まると言えば、徹夜でも無双出来ることに気が付くが今はちょっと、気が進まない。
それに俺は成長期だからしっかりと睡眠を取らなければ、背が伸びないと信じている。
ベースAI先生に挨拶すると自室へと戻った。
▼
1人で夕食を食べつつ、両親に今日の成果を渡す。
両親はオーク肉を見るなり、物凄い剣幕で俺に迫ってくる。
「颯夜!もう無理しないって言ったじゃない!」
「これはオーク肉だろ!Cランクのオークと戦ったのか!?」
そういえば、死にかけた日にもう無茶はしないって、言ったな〜と思い出し、やってしまったことに思い至る。
「これには事情が…」
「何が事情よ!」
「そうだ!やって良いことと悪いことがあるんだぞ!」
言い訳も虚しく、とんでもなく怒られました。結局、モンスターハウスでの無双界隈を見せることで両親の表情筋は死んだがまた俺の信用が下がった気がする。
いや、俺に信用なんて残ってたかな?
翌朝、寝起きからカツ丼が出てきた。俺は若いから別に平気だよ。親父は悲しい顔をしてたけど…。
今日は1日、ダンジョンで頑張ると言っていたせいか、昼食用にカツサンドを渡され、夜は豚の生姜焼きと言われた。
その時点で親父の目から涙が流れていた。そんなに喜んで貰えるなんて、今日もしっかりと稼いで来ようと思う。
「じゃあ、行ってくる!今日も沢山オーク肉獲ってくるから」
この時ほど、親父が絶望した顔を見たことはない。捌き切れないなら近所にでも配ればいいのに。
俺は昨日のリベンジを果たす為、やる気に満ちていた。…まだ、この時はね…。
次回の更新は月曜日です。




