13話
学校が終わり、自宅への帰路へと着く。そんな中、気持ちは晴れやかだった。
上手く話せはしなかったが今日はこれまでの人生で最も多くの女子と話をした。
なんせ教室の外でも初対面だろうが何かしら女子が話し掛けてくるのだ。
それはモテ期とはこういうことなんだなと勘違いする程に。
笑顔で自宅に着くと制服から着替える時間も惜しんで秘密基地に入る。
なぜこんなにも急いでいるかと言うと昨日、頼んでおいたアイテムの生成が終わっているからだ。
逸る気持ちのまま、ベースAIさんに問い掛ける。
「例のやつ、出来てる?」
『はい、出来ております。』
生成が終わったアイテムは台座の上に浮いていた。
その雰囲気も今の気持ちもまるで伝説の武具を受け取るかのように高揚していた。
ゆっくりと手をアイテムに伸ばす。
死蜘蛛の小手とお揃いの漆黒に白色のラインが入り、眉間には素晴らしいカッティングが施された魔石が埋め込まれ、蜘蛛を形取ったマスクはベネチアンマスクのような不気味だが厨二心を擽る見た目だった。
少々、派手に感じるが装備すれば、認識阻害の効果で目にしたとしても記憶に残り辛くなると説明を受けた。
そして、毒耐性(大)が2つ。かなり毒に対して強くなっているはずなので毒魔法を修得しても何とかなる気がするのだが念の為、ベースAIさんに聞いてみるか。
「この装備と小手をつけた状態で自身が放つ毒魔法に対してどれくらい抵抗出来るか解るか?」
『はい。毒魔法のレベルが1と想定して、直接受けた場合は83.3%の確率で抵抗出来ると計算します。』
約8割の確率か、普通に高い確率だと思うがどうなのだろうか。
『大変恐縮ではありますが毒魔法の修得は時期早々だと具申します。』
「理由は?」
『はい。まずマスターのレベルが低くく、抵抗に失敗した場合、かなりの確率で死に至ると予想します。また、道具士の魔法に対する適性や魔力は低くく、毒魔法は相性が良いとは言えません。これらの理由から修得は時期早々だと言えます。』
うん、ベースAIさんの考えは理に適っていると思うがだからと言って諦められるかと言うと、う〜ん。
それにしても、毒魔法レベル1でもそんなに危険なのか…。探索者協会が危険技能第一種に指定するわけだ。
「何か良い解決策はないのか?」
『はい。一つあります。』
解決策があるなんてベースAIさん、マジ頼りになる。
『死蜘蛛の装備をコンプリートすることにより、装備セット効果で毒全般を全て無効にする効果が獲られます。ただし、死蜘蛛シリーズを魔力から生成するには秘密基地のレベルが足らず、素材を用いらなければ生成することは叶いません。また、デススパイダーの所在ですが現在いる場所から最も近いダンジョンの地下35階以降で遭遇します。』
つまりはあれかい、またデススパイダーと対峙して素材になる物を持ってこないといけないってことか…。
現実的に今のレベルでデススパイダーを倒すのは無理だと諦める。
ここは当初の目標通り、地道に行こうと思い、貯まっているポイントを今回は全てステータスに振ろうと思う。
ということで頼りみしかないベースAI先生に振り分けの意見を聞いてみようと思います。
「ベースAI先生、ポイントをステータスに振り分けようと思うのですがどういう振り分けが良いですかね?」
『マスター、私は単なるAIであり、先生ではありません。悪しからず。振り分けはマスターがどういうビルドを目指すかにより変わります。』
そうなんだよね…。元々は道具士として、無難で安全な探索者ライフを送るつもりだったが現状では強さに対する欲が出てきている。
道具士の俺でもひょっとしたら無双とか出来るんじゃないかって思ってる。
「そうだな。この秘密基地の力を最大限利用して無双出来るようになりたい!」
『では罠術でモンスターを蹂躙していくビルドは如何でしょうか?また、毒魔法を今後取り入れられるつもりなら相乗効果が期待出来ると思われます。』
無双と言えば、武力や魔法なんかで俺つえぇぇぇするイメージしかなかった俺に罠を使って無双するのは新鮮に感じた。
「それでいく!」
『かしこまりました。では・・・』
そして振り分けた内容がこうだ。
【名前】 藤 颯夜
【順位】―
【称号】下剋上 征服者 英雄
【職業】 道具士
レベル:19 0P
筋力:60(+12up)
体力:60(+11up)
魔力:50(+29up)
精神:50(+17UP)
耐性:50(+24UP)
器用:100(+18UP)
敏捷:60(+13UP)
幸運:150(+16up)
ベースAI先生のアドバイスによれば、罠術スキルは器用値に大きく依存するとのことで道具士との相性が良いという。
器用値が高いと威力は勿論、発動速度や発動範囲に大きく影響し、器用値が低いと一定のレベルまでしか上がらないと教えて貰った。
次に重視したのは魔力値。
今日から使う、死蜘蛛の小手は魔力を消費して蜘蛛の糸を出す。
この能力はかなり強力らしく、ダンジョンの中層(30〜60層あたり)までならほぼ破られることがなくモンスターに通用するという。
そして、この蜘蛛の糸と罠術を使った戦い方がこれからの俺の主力戦術になると言われた。
他のステータスは道具士のネックとなる精神と耐性を上げた。
称号の補正は基本値に乗算される為、数値が高いに越したことがない。
準備が終わり、時刻は15時過ぎ。探索するには余り時間がないがこっちには秘密基地の転移機能があるので活用する。
ちなみに今日から探索するのは自宅近くのダンジョンだ。もう探索者協会の公式ダンジョンでは不都合が出るから潜るつもりはない。
さっそく自室を転移設定する。こうすれば、自室とダンジョンが自由に行き来できることになる。
ただ、ダンジョンから出る際に入口で探索者カードを通す必要もなくなるので不明者扱いになるのは不味い。
そこは考えないといけないが押し通るしかないだろうな…。
とはいえ、ダンジョンに潜る度にわざわざ1階から潜る必要があったが俺は毎回、途中から探索出来る。
これだけで他の探索者に対して、アドバンテージになる。
さて、今日は軽く準備運動と行きますか。
両親にダンジョンへ行ってくると告げて、いつものジャージの上にパーカーを羽織る。
ダンジョン入口はフードを深く被ってやり過ごすつもりだ。
気負わないように普段のように歩き始めた。
《死蜘蛛シリーズ》
〈セット効果〉 毒無効 罠感知 隠密補正(極)
死蜘蛛の小手 毒耐性(大)毒系+補正(小)
蜘蛛の糸
死蜘蛛の仮面 毒耐性(大)認識阻害(中)
毒系+補正(小)
死蜘蛛のローブ 毒耐性(大)隠密(大)
死蜘蛛のブーツ 毒耐性(大)隠密(大)
次回の投稿は月曜日です。




