12話︰承認する
『どうなさいますか?』
この生成機能の説明を聞いて、思いついたことがあるがひとつ確認したいことがある。
「じゃあ、この魔石の属性と特性を教えてくれ」
『かしこまりました。そちらの魔石の属性は毒。特性は隠密系統になります。』
「なら例えば、毒に対して強い抵抗があって他人から認識されにくくなるアイテムは創れるのか?」
『少々、お待ちください・・・該当するアイテムが見つかりました。』
ベースAIさん、検索まで出来るなんて有能過ぎる。
『該当したアイテムは【死蜘蛛の仮面】。毒耐性(大)に認識阻害(中)の効果と毒系スキル+補正(小)が付きます。』
小手と同じ名前のアイテムだが効果が素晴らしいのでこの際、気にしない。
「おお〜!!それにする!!」
『かしこまりました。では台座の中に魔石を入れてください。生成完了に必要な時間は24時間です。実行しますか?』
「はい!」
台座の横がオーブンのように自動で開いたのでそこに魔石を置く。すると今から調理するかのように魔石は台座の中に入っていった。
これで問題が2つも解決する。出来上がるのが今から楽しみだ。
『モンスター生成はどういたしますか?』
「そっちはまだやめておくよ」
モンスター生成とか興味津々だが手元にはGランクの魔石しかない。
今後は使うことになると思うが今ではないと思う。
『では最後に拡張機能のご説明をいたします。こちらはこの秘密基地の魔力を使い、拡張や増設、模様替えが出来ます。』
ここでさっきから気になっていた事を聞く。
「今、秘密基地にはこの作戦室以外に何があるんだ?」
この部屋に入ってから台座の他にドアがあることに気付いていたのだが怒涛の勢いで説明がされていて、聞く暇がなかった。
『現在、この秘密基地には作戦室の他にダイニング、リビング、ベッドルーム、バス、トイレにストレージルームがございます。』
「そ、そんなにあるの?」
こんなに充実していたらもう実家の自室なんかじゃ満足出来ない身体にされてしまう。
『では移動しながら見て行きましょう。まずはリビングへどうぞ。』
俺を促すように正面のドアが開く。もう俺は何があっても驚かないと心に決めて、リビングに入る。
ドアを抜けた先、目の前に広がるのは超が付くほどの贅沢なリビング。
何がどう贅沢かと言われるとスペースの使い方だろうか。素人なので詳しくはないが100型くらいのテレビが壁に掛けられ、半円型のソファーに丸テーブルのみでゆったりとした空間。
なのに壁紙の質感やソファーの材質などで重厚感がある。
『こちらは現在、初期の状態なので自由に変更が可能です。』
「た、例えば、どんな感じに出来るの?」
べ、別にお、驚いてないし…。
『マスターの好みにカスタムが可能ですが定形型も用意されています。』
試しにいくつかの定形型を見せてもらった。
1つ目は南国をイメージしたもので超高級リゾートを想像させるようなリビングになった。
例の広い窓があって、解放感が半端ないやつだ。残念ながら窓の外に出ることは出来ないが拡張機能を使えば、目の前をプライベートプールやプライベートビーチみたいにも出来ると言われた。
2つ目は雪国をイメージしたもので豪華なコテージを想像させるようなリビングになった。
勿論、暖炉があって暖かみに溢れており、ゆっくりと過ごせそうな感じだ。
3つ目は近未来風と言えば、良いのだろうか。
俺的にはUFOの中にいるみたいで落ち着かなかった。
4つ目は和風の座敷だった。豪華な欄間と襖が際立ち、今にも畳の香りがしそうな座敷。
襖を開ければ、永遠とループしそうな感じだ。
「そもそも、どうして秘密基地なのにこんな部屋があるんだ?基地の中というにはかなり不釣り合いだと思うんだが?」
『お答えします。マスターの元々のユニークスキルは物置き、その後、秘密の部屋を経て秘密基地に至りました。物置き及び秘密の部屋の機能は秘密基地に継続されており、このような部屋が存在しております。』
「マジか…」
その後、ダイニング、ベッドルーム、バス、トイレと確認。
物置きはベッドルームに備え付けられているが位置がとにかく使い辛い。
そこで部屋の位置は変更出来るか確認し、出来ると言われたので作戦室に戻ってきた。
「ちなみにこの秘密基地はどうやって魔力を蓄えているんだ?」
秘密基地は魔力を糧に維持、稼働している。その為、この質問は今後も絶対に必要になってくるだろうから聞いておく。
『はい。基本的にダンジョンと同じく、空気中の魔力などを集めて蓄えております。ですが現在、秘密基地が発動中の場合は供給と消費が釣り合っておりますので増えることがありません。ただし、ダンジョン内や魔力濃度の高い場所へ行けば、供給の割合が増えプラスに転じます。又、魔石を消費し魔力に変換することも可能です。』
この説明を聞いて、今後はますます魔石を売ることはなくなるなと思った。
「最後にもうひとつ確認だがこの秘密基地には俺以外の人間を招くことは可能なのか?」
『はい。マスターが承認した者に限り、基地内へ入ることが出来ます。』
「解った。ありがとう」
『いえ、どういたしまして。』
こうして、秘密基地の確認が終わり、再び両親へ報告と説明するターンがやってくる。
俺の心の中で両親に対して、『どうか頼むから耐えてくれ』と祈りつつ、秘密基地を出てゆっくりと両親がいる一階へと降りていった。
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秘密基地の説明に結構な時間が経っていたようで台所では夕食の準備が終わっていた。
客足のピークが過ぎ、店を閉めてきた父親と合流して家族3人で夕食を摂る。
その間、いつもより会話は少なく、時折母親から恨めしい視線が飛んでくるが今日はもう驚き過ぎて、何とも思わない。
寧ろ、夕食後にはまた俺の報告ターンがあるのだ。この程度の仕打ちなど甘んじて受けようと思う。
食器を片付け、リビングで食後のお茶を楽しみ寛ぐ。
そんなひと時に俺はぶっ込んだ。
「2人に報告があるんだ」
このひと言で父親は怯み、母親は物凄い剣幕で俺を見る。
「まずは見て欲しい。秘密基地発動」
物置きではなく、秘密基地と言ったことに父親は驚き、母親は・・・母親は動じなかった。
昨日、今日で相当にメンタルが鍛えられたようだ。
そして、わざわざ声に出す必要はないがこれは俺の気持ちの問題だ。
「両親を承認する」
秘密基地に宣誓を言い、ドアを跨ぐ。両親はそんな俺の後について、秘密基地へと入っていった。
秘密基地内にあるリビングを初期状態に戻し、自分で持ち込んだジュースを飲みながらテレビを眺める。
一階に入った両親はベースAIさんに任せて、1人でゆっくりする。
今頃、ベースAIさんからこの秘密基地の説明を受けている両親はいったいどんな表情をしているのだろうか。今日はもう想像したくないな…。
ジュースも飲み終わろうかというところで両親がふらふらとした足取りで俺が座るソファーへとやってくる。
そのまま、2人はソファーにぐったりと座り、無言を貫く。
居た堪れない空気に俺は「今日はもう寝よう」かと提案すれば、無言で2人は頷いた。
「俺、今日は此処に泊まってみようと思う」
これに対しても両親は無言で秘密基地を出て行った。
次の日、朝から両親に責め立てられたことは言うまでもないだろう。
朝から両親に責められ、気持ちが重かったが何とか昼休憩まで持ち堪え、友人達とお弁当を食べようと席を立った時、この日はこれまでとは違うことが起きた。
「ねぇ、藤君。昨日休んでたけど体調は大丈夫?」
話し掛けてきたのはクラスメイトの女子。名前はまだ覚えていない。
高校に入学して1ヶ月余り。今まで話したこともなかったのに急に話し掛けられ、戸惑う。
「そうだね、顔色が優れないけど、大丈夫?」
そして、話し掛けてきた女子は1人じゃなかった。
この日を境に休憩になると何故か女子から話し掛けられるようになる。
これは【称号】英雄の効果のひとつ。カリスマ性に+補正(中)の効果なのだが本人が気付くまでにそれなりの日を要したという。




