表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう  作者: 優木凛々
第1章 公爵令嬢、悪魔を召喚してしまう
8/46

08.公爵令嬢、ボコボコにされる


本日1話目です。

 

「お嬢様の婚約者の心が離れた理由の半分は、お嬢様自身にあるかもしれない、ということです」

「なっ!」



 悪魔の言葉を聞いて、アイリーンはカッとなった。

 自分はどう考えても婚約者として完璧だ、そんなことはあり得ない!


 彼女は、悪魔に向かって捲し立てた。



「わたくしは、常に美しくあろうと努力してきましたわ! 上位貴族として恥じない言動を常に意識し、勉学や生徒会活動にも励んで、殿下を支えてきましたわ!」



 アイリーンはとても怒っていた。

 これだけ努力している自分に対し、何てことを言うのだ!


 いきり立つ彼女を見て、悪魔がため息をついた。



「それでは、順番にいきましょうか。まずは、あの化粧と食事は何なのですか?」



 よくぞ聞いてくれましたわ! とアイリーンが胸を張った。



「あれはナスティ夫人の知人の有名メイクアップアーティストに来ていただいて、特別に似合う化粧を教えてもらいましたのよ。食事はナスティ夫人考案の完全美容食ですわ!」



 誇らしげな彼女に、カインが苦笑いした。



「なるほど。では、お嬢様はそいつらを張り倒していいですね。正直に申しまして、化粧は全く似合っていませんし、食事は鳥のエサです」

「なっ!」



 アイリーンは瞳を怒らせて立ち上がった。



「あの化粧は完璧ですわ! みんな似合うって言ってくださいますわ!」

「みんなって誰ですか」

「ナスティ夫人とメイド2人ですわ」

「3人だけですね。他は? 他に誰かに褒められましたか? 誰かに真似されたことはありますか?」



 そう言われて、彼女ははたと気が付いた。

 そういえば、この3人以外に褒められたことはないし、真似されたこともない。



(……あら? どうしてかしら?)



 胸にモヤモヤを感じながらも、負けるもんかと彼女は叫んだ。



「でも、あの食事は完璧ですわ! ナスティ夫人が、わたくしの体形はちょうどいいと褒めて下さいましたわ!」

「またあの女ですか。戻ってきたら殴った方がいいですね」



 カインはため息をついた。



「とにかく、育ち盛りの年齢でその痩せ方は良くありません。食事が不足すると色々と発達が悪くなります」



 色々、の意味を察し、アイリーンはうつむいた。



「……それは困りますわ」



 確かに、色々と発達が悪い気はしていた。

 色気専門みたいな悪魔がこう言うということは、もしかして正しいのではないだろうか。


 その他にも、挨拶を無視するのは感じが悪すぎる、好意の申し出を無視するのは人間としておかしい、などボコボコに言われる。


 上位貴族に相応しい言動として、ナスティ夫人にそう教わった、と反論するものの、

 そんなことをやっている上位貴族は他にいなかった、と論破される。


 悪魔とは思えないような真っ当の意見のオンパレードに、アイリーンの中で何かがぐらつき始めた。

 自分が信じていた物が覆されていくような感覚に、不安が募る。



 ――が、しかし。



 彼女は、ふと思い出した。

 まともそうなことを言ってるけど、ここにいるのって悪魔よね、と。

 正しいことを言うとは思えない。



(そ、そうですわ! 騙されるところでしたわ! なんて危ない!)



 アイリーンは、顔をぐっと上げると、目の前の悪魔をジト目で見た。



「あなた、そう言って、わたくしを悪の道に引きずり込もうとしているのでしょう?」

「……は?」

「さては、堕落させようと思っていますわね!」

「堕落」

「そうはいきませんわ! 正しいのはわたくしですわ!」



 ふんす、と腰に手を当てるアイリーンを、悪魔が呆気にとられた顔で見る。

 そして、楽しそうに、くっくっく、と笑い始めた。


 何がおかしいのよ、とアイリーンが悪魔を睨んでいると、

 彼はニヤリと笑った。



「では、1つ、賭けをしませんか?」

「賭け?」



 はい、と悪魔が微笑んだ。



「私とお嬢様、一体どちらが正しいか、です」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓5月30日書籍発売!『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』
お手に取って頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

★各書店サイトはこちら★ 【Amazon】  【楽天ブックス】  【Book Worker】 
ie52c7gqa2qc87vji1om5l509wjf_jrc_f2_lk_7xlx.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ