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ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう  作者: 優木凛々
第1章 公爵令嬢、悪魔を召喚してしまう
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07.公爵令嬢、首の皮1枚で助かる


本日3話目です。

 

「お嬢様、少しよろしいでしょうか」

「ええ、なにかしら」



 眠気に襲われてボンヤリしながら答えると、カインがにっこり笑った。



「お話が2つあります」

「2つ」

「ええ、1つは願いごと、もう1つはお嬢様のことです」



 アイリーンの目が一瞬で覚めた。

 あまりに違和感なく馴染んでいたため、彼が悪魔だということが頭から飛んでいた。



(そ、そうでしたわ! ど、どうしましょう!)



 色を失うアイリーンを、カインが妖艶な微笑を浮かべながら、口を開いた。



「まずは、願いごと――つまり契約の件ですが、しばらくお待ちしようと思います」

「……え?」



 意外な申し出に、彼女は目をぱちくりさせた。

 悪魔が微笑んだ。



「何を願うか、迷っていらっしゃるのでしょう?」

「ええ、まあ……」



 アイリーンはすっと目を逸らした。

 一番の願いは、何もせずに帰ってもらうことなのだが、そんなことは口が裂けても言えない。


 悪魔が口角を上げた。



「お話されていた、婚約者とその浮気相手は、4カ月後に帰って来るのでしょう?」

「え? ええ」

「その状況を見てから、どうするかお決めになる、ということでどうですか?」

「……そ、その方がこちらもありがたいわ」



 そう答えながら、アイリーンは心の底からホッとした。

 どうやら4カ月間の猶予ができたらしい。



(良かったわ、その間にあの書庫を調べて、何もせずに戻ってもらう方法を探さないと)



 そして、「ん?」となった。



「……そういえば、4カ月間、あなたはどうするの?」

「もちろん、お嬢様の執事を続けます」

「え!」



 顔を引きつらせるアイリーンに、悪魔が首をかしげた。



「おや、今日何か不備がありましたか?」

「……ないわ。執事としては完璧よ」



 アイリーンが目をそらした。

 ここでいちゃもんがつけれたら良かったのだが、今日の彼は悪魔であることを忘れるほど完璧だった。


 複雑な表情を浮かべる彼女に、悪魔が微笑んだ


「もちろんお望みなら、旅に出てもかまいませんよ。300年振りですので、観光も悪くないかと」



 アイリーンはため息をついた。

 本音としては、4カ月間どこか別に行って欲しい。

 でも、こんな、一晩で家中の使用人を虜にするような危険な悪魔を野放しとか、できるわけがない。


 彼女は渋々うなずいた。



「……わかったわ。執事としてお願いするわ」

「はい、かしこまりました」


 

 そして、カインはすっと目を細めた。



「では、それを前提に2つ目の話を進めますが」

「2つ目って、わたくしのこと、よね?」

「はい」



 カインが、ゆっくりと口を開いた。



「本日、学園にご一緒させていただいて、分かったことがあります」

「あら、何かしら?」

「お嬢様の婚約者の心が離れた理由の半分は、お嬢様自身にあるかもしれない、ということです」




 *




 その日1日、アイリーンに同行しながら、悪魔は思っていた。

 このお嬢様、正気か? と。


 やたらキツそうに見える派手な化粧に、貧相な食事。

 挨拶されても、手伝おうかと言われても、無視。


 その結果、アイリーンはとても嫌われていた。


 カインは、人よりも何倍も優れた察知能力で、人間の感情を読み取ることが出来る。


 この能力を使い、学園の生徒たちの感情を読み取ってみたのだが、

 アイリーンの嫌われ具合は、驚くほどだった。

 悪魔でも滅多にここまで嫌われない。


 彼は思った。

 

 こんなに嫌われている、やたら派手でキツそうな女が婚約者だったら、他に目移りするのも分かる気がする。



(……これ、もしかして簡単に解決できるんじゃないか?)



 アイリーンは、もともと容姿は美しいし、性格も悪くない。

 化粧、食事、態度の3つを何とかすれば、婚約者も浮気を止めるのではないだろうか。



(……教えてやるか)



 婚約者の浮気問題が解決すれば、

「浮気相手を何とかして欲しい」

 という願いが、別の願いに変わることになる。


 これで欲が出て、「世界征服」など出たら、こっちとしては願ったり叶ったりだ。



 という訳で、彼はこう言った。



「お嬢様の婚約者の心が離れた理由の半分は、お嬢様自身にあるかもしれない、ということです」





本日の投稿はここまでです。

次回、アイリーン、ぼこぼこにされる。



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