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『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』SS置き場  作者: 優木凛々
番外編:コミカライズ連載開始!記念SS
6/10

【9月5日 コミカライズ開始記念SS】エルミナスの波乱万丈な400年(1/5)


9月5日にピーズログよりコミカライズの連載が開始されます!

今回は記念ということで、SSを投稿したいと思います。


時系列としては、


公爵令嬢アイリーンが、絵を習うために、悪魔カインに連れられてエルフ領を訪れる

エルフのエルミナスに絵を習う

悪魔と共に帰った後の話になります。


全5話。


 

 アイリーンがカインと共に王都に到着した、ちょうどそのころ。


 銀髪に青い瞳を持つ、美しいエルフの青年――エルミナスは、自宅のソファに腰を下ろし、珈琲を飲んでいた。

 居間の壁には、アイリーンが最後に描いた薔薇の絵が豪華な額縁に入れて飾ってある。


 そのどこか温かみのある絵をながめながら、彼は一人つぶやいた。



「果たして、あの2人は、一体どうなるんだろうな」



 脳裏に浮かぶのは、仲睦まじそうに見つめ合う2人の姿。


 続けて思い出されるのは、400年前に初めて悪魔と出会った時のことだ。




 *




 約400年前、エルミナスは突然王宮に呼び出された。



(ずいぶんと珍しいこともあるものだな)



 彼は、一応は王族として生まれたものの、王宮とほとんど関わらない生活を送っていた。

 王位継承権も12位と最も遠い1人だったし、終日森のアトリエに籠って絵ばかり描いて過ごしていたからだ。



(何かあったのだろうか)



 首をかしげながら王宮に到着すると、王宮内は慌ただしい雰囲気に包まれていた。

 どうやら、小競り合いを繰り返して来た人族の国――イラーリオ帝国が、とうとうエルフ領に本格的に攻めて来るらしい。



(大変なことになっているようだな)



 そう思いながら、ステンドグラスの張り巡らされた謁見の間に行くと、そこは物々しい雰囲気に包まれていた。

 玉座には大叔父にあたる国王が座っており、宰相を始めとした国の重鎮たちが集まっている。



(一体どうしたんだ……?)



 いつもと違う雰囲気に違和感を覚えつつも、エルミナスが「お呼びでしょうか」と玉座の前に跪くと、国王が険しい顔で口を開いた。



「実は、イラーリオ帝国が、我々を制圧するために【悪魔】を呼び出したらしいのだ」

「……っ!」



 エルミナスは思わず目を見開いた。


 悪魔とは、別世界に住む種族のことだ。

 圧倒的な力を持ち、民族や国を何度も滅ぼしている。


 普通に戦えば、エルフ族が人族に負けることはない。

 しかし、悪魔が召喚されたとなると、話が違ってくる。



「それは、確かなのですか?」



 エルミナスの問いに、国王の横に立っていた宰相が重々しくうなずいた。



「人族領にいる間者に何度も確認させましたが、間違いないそうです。しかも、悪魔のランクは【上級】であると」

「上級……」



 エルミナスは黙り込んだ。


 悪魔にはランクが存在する。

 下級、中級、上級、そして最上級に位置する大悪魔。

 中級までであれば何とかなる可能性もあるが、上級となるとエルフの手には負えない。



(これは、かなりヤバいんじゃないか……?)



 そう思っているのはエルミナスだけではないようで、謁見の間が重い空気に包まれている。

 そんな中、国王が口を開いた。



「聞いて分かる通り、今我々はこれ以上ないほどの危機に陥っている。このままではエルフ族が滅ぼされる可能性すらある。そこでなのだが――」



 国王は一旦言葉を切ると、エルミナスを見た。



「お前に、悪魔を召喚して欲しい」

「なっ!」



 エルミナスは思わず息を呑んだ。


 悪魔を召喚すればどんな願いも叶えてもらえるが、その代償として召喚者は命を差し出す必要がある。

 つまり、これは死ねということだ。



「……なぜ私なのか、理由を教えてください」



 頭が真っ白になりながらも、かろうじて声を絞り出すと、宰相が静かに理由を語り始めた。


 どうやら、研究者によると、悪魔を召喚する者は王族の血を引いていなければならないらしい。



「加えて、上級以上の悪魔を呼び出すには、召喚者は秀でた才能を持つ者に限定されるそうです」



 つまり、人族が召喚したという上級悪魔に対抗できる悪魔を呼び出すには、エルミナスのような才能のある人物が悪魔召喚する必要がある。

 そして、彼らの話によると、今の王族にはエルミナスのように才能がある者が他にいないらしい。


 国王が静かに口を開いた。



「エルミナスよ。エルフ国のために、王族としての役割を果たしてはくれまいか」



 エルミナスは思った。

 王族とは、いざという時に国のために命を捨てるのは当然だと習ってきた。

 どうやらこの教えを守る時が来たようだ。



(俺1人の命で国が救えるのであれば、安いものではないか)



 彼は覚悟を決めながら、静かに頭を下げた。



「わかりました。そのお役目、引き受けさせていただきます」



 謁見の間に、安堵の空気が広がった。

 誰もがホッとしたような顔をする。


 国王が深々と頭を下げた。



「感謝する」



 そして、宰相と騎士団長に全てを仕切るように命じると、謁見は終了。

 エルミナスは、3日後の満月の夜に悪魔召喚を行うこととなった。





続きは明日投稿します

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↓9月5日コミカライズ連載開始!
ぜひお読み頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

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