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【5月30日書籍発売記念SS】アイリーン、試験で本気を出す(4/5)


本日書籍発売! 記念SS4話目です。


 そして、10日後。


 アイリーンは、5年ぶりに本気で試験に臨んだ。




 ◇◇◇




 試験から1週間後の午後。

 授業を終えたアイリーンが、カインを従えて生徒会室に向かって歩いていた。


 ふと、廊下の窓から外を見ると、夏らしい真っ青な空に白い雲が浮かんでいる。

 中庭から聞こえてくる夏の虫の声を聞きながら、アイリーンは思った。

 そういえば、そろそろ試験結果の発表の時期ね、と。


 いつもは、パーカー王子を超えていないか冷や冷やしながら結果を待つのだが、今回は純粋に自分の順位がどうなっているか気になっている。


(いい出来だったと思うけど、どうだったかしら)


 そんなことを考えながら歩いていると、前方に人だかりが見えて来た。

 みんな壁を指差して何やら騒いでいる。


(あそこって掲示板よね。もしかして、試験結果が出たのかしら?)


 カインも同じことを思ったのか、「結果が出たのかもしれませんね」と囁いてくる。


 いそいそと向かうと、掲示板には、今回の試験の上位50人の名前が張り出されているのが見えてきた。

 その横には、平均点も書かれている。


 アイリーンに緊張が走った。

 軽く深呼吸すると、平静を装って掲示板を見上げる。



 ――――

<成績上位者>


 1位アイリーン・ブライトン500点

 2位ピーター・バーナード478点

 3位ミラベル・タナー476点

 ・

 ・

 ・

 ――――



「……っ!」


 アイリーンは目を見開いた。

 思わず声を上げそうになって、慌てて片手を口元に当てる。


(1位……? しかも5教科満点? 夢じゃありませんわよね?)


 良い点数を取れたとは思っていたが、まさかこんなぶっちぎりの1位になれるとは思っていなかった。


 掲示板を見上げながら固まるアイリーンに、マーシャが興奮気味に飛びついてきた。


「すごいです! アイリーン様! 5教科満点は10年振りだそうですよ!」

「おめでとございます、アイリーン様」


 リリイも笑顔で祝福する。


 パチパチパチ


 その様子を見ていた生徒たちの誰かが拍手を始めた。

 その場にいるみんながそれに促されて拍手する。


「おめでとうございます、アイリーン様!」

「すごいです!」


 内心突然の祝福に戸惑いながらも、アイリーンは淑女らしく控えめな笑みを浮かべながらカーテシーをした。

 音に囲まれながら、「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言う。


 少し離れたところに立っていた生徒たちが、ひそひそ声で話し始めた。


「アイリーン様って本当は頭が良かったのね」

「1人だけ500点満点ってことは、実力ってことだよな」

「いつもは、もしかしてパーカー殿下に遠慮していたってこと……?」


 そんな囁きを聞きながら、カインが静かに「がんばりましたね」とつぶやく。



 ちなみに、リリイとマーシャはそれぞれ10位と18位だったらしく、過去最高成績だったらしい。


「アイリーン様のお陰です!」

「ありがとうございます」

「こちらこそありがとう。わたくしもお2人のお陰だと思っておりますわ」


 笑顔でお互いの健闘と最高順位を喜び合う3人。

 この日はお祝いということで、3人は王都の街に出た。

 マーシャの家が経営しているカフェレストランで、美味しいケーキと紅茶をいただき、本屋に寄って発売したばかりの『氷の騎士と薔薇姫』3巻を嬉々として購入したり、マーシャお勧めの流行のアクセサリー店に寄ったりする。



 ――そして、この日の帰り。

 アイリーンは、カインと向かい合って馬車に乗っていた。

 窓の外には、夕日に照らされた貴族街の景色が流れている。


 アイリーンは、買った本を読むフリをしながら、そっと正面に座るカインを見た。


 悪魔は、端整な顔に美しい微笑を浮かべながら、窓の外を見ている。


(今回は、悔しいけど、すごく助けられたわ)


 恐らく、カインに教えてもらわなかったら、500点満点は絶対に取れなかっただろうし、順位も1位じゃなくて2位か3位くらいだったかもしれない。


(少し悔しいけど、公爵家の一員として、ちゃんとお礼をしなければならないわ)


 アイリーンは軽く深呼吸した。

 本をパタンと閉じると、カインに話しかけた。


「カイン、ちょっといいかしら」

「はい、何でしょうか、お嬢様」


 赤く美しい瞳がアイリーンに向けられ、アイリーンは得も言われぬ感覚に襲われた。

 恥ずかしいような、照れ臭いような、そんな気持ちだ。


 油断すると照れてしまいそうになるのを、何とか隠しながら、彼女は努めて普段通りに口を開いた。


「今回の試験、あなたには本当に助けられたわ」

「いえいえ、私は少し手伝っただけで、お嬢様の努力の賜物です」


 優しく言われ、思わず照れて俯きそうになるのを必死にこらえながら、アイリーンはポケットから皮張りの小さな箱を静かに取り出した。カインに差し出す。


「これはお礼ですわ」




本日発売!

ぜひお手にとって頂けると嬉しいです。(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこり

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