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【5月1日コミック1巻発売!】ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう ※Web版  作者: 優木凛々
第2章 公爵令嬢、奮闘する

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01.公爵令嬢、気が付いてしまう

 

 悪魔を召喚してしまってから、約1カ月後。

 しとしと雨が降る初夏の午後。


 アイリーンは、屋敷の地下の隠し部屋で本を読んでいた。


 本のタイトルは「悪魔界の考察」。

 悪魔が住むという悪魔界について書かれた書物だ。



「ふむふむ、悪魔は強いほど偉いのね」



 悪魔は強くなると、階級が上がっていき、

 最高位は大悪魔と呼ばれ、様々な特権や権力を持つらしい。



(カインは何かしら。綺麗だけどあまり強そうではないから、下の方かしら)



 そして本を読み終わり、アイリーンは本を閉じてため息をついた。

 内容は興味深かったが、肝心の「悪魔を悪魔界に送り返す」ための手掛かりはなかった。



(これ、本当にあと3か月で見つけられるのかしら……)



 何とか時間を作って調べてはいるが、本が難解なことに加え、量が膨大過ぎる。

 1カ月がんばって調べても、まだ10分の1も調べられていない。



(もっとがんばらないと)



 自分の命がかかっているのだ。

 ここでがんばらなかったら、いつがんばるのか、という話だ。


 そして、次の本を探そうと本棚に向かって、彼女はふと気が付いた。



(……でも、カインが帰ったところで、わたくしの問題は何も解決しないですわよね)



 もともと悪魔を呼び出したのは、殿下の浮気相手であるレイチェルを何とかしたかったからだ。

 悪魔に帰ってもらっても、ここは全く解決しない。



(そうでしたわ、ここを何とかしなければ、わたくしは苦しみ続けることになるんでしたわ)



 今は幸いにも殿下もレイチェルも留学に行っているから、そこまで気にせずに過ごせている。

 でも、帰ってきてまたイチャイチャされたら、きっと以前と同じような死にたくなるほど惨めな毎日が待っているだろう。

 想像するだけで、気分が悪くなってくる。



(……こっちも考えておいた方が良さそうですわね)



 殿下たちが留学から帰って来るまで、あと3か月。

 それまでに、悪魔に帰ってもらう方法を探すと同時に、レイチェルを何とかする方法を考えなければならない。



(やらなきゃいけないことが、山盛りですわね)



 帰ってもらう方法は、とりあえず粛々と調べればいい。

 でも、レイチェルの件はどうする?


 うんうんと唸りながら考えるものの、何も浮かばない。


 そして、考えることに疲れて

「今日はもう終わりにしましょう」

 とつぶやくと、彼女はランプを持って書斎を出た。


 隠し扉になっている棚をずらし、部屋の鍵を厳重に閉めて、通路を歩いて階段を上がっていく。


 1階に出ると、どうやら気が付かないうちに、かなり長いこと地下にいたらしく、

 降っていた雨は止み、窓から夕日が差し込んでいた。


 館内には、美しいピアノの音色が響いている。



(相変わらず上手いわね)



 ちなみに、ピアノを弾いているのはカインだ。

 彼は音楽が好きらしく、よくピアノやバイオリンを弾いている。

 この300年で、新しい曲が増えたため、それらを弾くのが楽しいらしい。


 その音色を聞きながら、アイリーンは2階に向かう階段に向かった。

 音楽が止み、ドアを開く音が聞こえてくる。


 そして、



「お嬢様」



 後ろから声を掛けられて振り向くと、そこにはスーツ姿の悪魔カインが立っていた。

 美しい顔立ちが夕日に照らされて、更に美しく見える。


 彼は微笑を浮かべながら尋ねた。



「もうよろしいのですか」

「ええ、いつの間にか時間が経っていましたわ」



 アイリーンが軽くうなずく。


 意外なことに、悪魔とは結構うまくやれている。


 基本的に余計なことを言わないし、「放っておいて」と言えば放っておいてくれる。

 特に詮索もしてこないので、存分に地下にこもって調べ物もできる。


 しかも仕事面でもかなり有能で、使用人の間では、ナスティ夫人よりも仕事が的確で早いと評判らしい。



(悪魔じゃなかったら、本当に素晴らしい執事なのだけど……)



 そして、彼女はふと思い出した。

 そういえば少し前に、この悪魔に言われていたことがあったわね、と。



『お嬢様の婚約者の心が離れた理由の半分は、お嬢様にあるかと』



 その時は、いつの間にか賭けの話になったため、あまり深く考えなかった。

 でも、もしかしてこれは、レイチェルを何とかする物凄いヒントになるんじゃないだろうか。


 ぼんやりと考え事をするアイリーンを見て、悪魔が「どうしました」と声を掛ける。


 アイリーンは、ハッと我に返ると、彼の赤い目を見た。



「前に、パーカー様の心が離れた理由の半分は私にある、って言ってたでしょう? あれについて詳しく教えていただけないかしら」





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