第633話 大騒動の裏側は
「で、なんだその笑えない冗談は」
「冗談だったら……、いや、どっちにしろ彼女たちが味方をしてくれていなかったら、僕たちはこうして全員揃っていたかどうか」
ブスくれた田村のセリフに、苦笑を浮かべた藍城委員長が大真面目に答える。
俺や古韮みたいな異世界モノのお約束が好物な面子と違い、委員長だって認めたくないんだろうな。
仲間たちの大ピンチに知り合いの『転生者』が介入してくれただなんて。
「ほとんど意識が飛んでたのが悔しいな。ズルいぞ、八津」
「明日ここに来るって言ってたぞ」
「それでもだよ。凄かったんだろ?」
「まあな」
ちょっと大げさにウザ絡みをしてくる古韮だけど、深刻にならないための軽口のような気がする。古韮なら気付いているはずだし。
たくさんのボディガードに守られた俺たちが拠点に戻ってきた時には、完全に日付が変わっていた。
『六本の尾』による虚言に踊らされて拠点を守り続けていた『ジャーク組』の人たちに事情を説明したら思いっきり謝られ、何とかその場を委員長が収めたものの、そこでも時間を使ってしまい、『一年一組』の二十四人がひと息つけたのがついさっきだ。
魔力が戻り切っていない笹見さんに白石さんたち魔力タンクたちがなけなしの【魔力譲渡】を使い、何とか温いお湯が出来上がった。
【魔力譲渡】で【水術】が使えなくなった藤永や深山さんに代わって、仲間が総出で水運びをした成果でもある。微力ながら俺も手伝わせてもらったくらいだ。
お湯を用意しているあいだに上杉さんと佩丘たちが軽食を作り、なんとか風呂と食事を終えた俺たちは、談話室に集まって本日の振り返りをしている。
「耳と尻尾以外は瓜二つだったんだよ。僕も最初は信じられなかった」
「声も一緒でしたね」
肩を竦めた委員長が説明を続け、上杉さんが補足した。その場で意識を保っていた面々も深く頷いている。
当事者で蚊帳の外になっているのは淡崎さんと面識の無い俺と滝沢先生、メーラさん。まあ、メーラさんが淡崎さんを知っていたら、それはそれで異常事態か。
そんなメーラさんはティアさんと主従仲良くテーブル席に座っている。
「言葉も行動も淡崎さんらしかったと、わたしは感じました」
「上杉がそう言うんならよぉ」
委員長の説明には不満たらたらだった田村は、上杉さんのセリフであっさり態度を翻した。委員長に信用が無いということではなく、こういう類での説得で上杉さんの言葉はそのまま信じざるを得ないってことだ。
◇◇◇
『偽物に騙されて、そっちを追い掛けてしまったんだ。不甲斐ない』
俺たちがベスティさんたちと合流してからちょっとして、いきり立った『赤組』の人たちも集まってきた。
どうやら大通りでの騒ぎから抜け出したニュエット組長たちは、『尻尾』が用意していた陽動に引っ掛かってしまったらしい。
『思った以上に大規模だった。言い訳にもならないけれどね』
さらに数分経って兵士たちと共に駆けつけてきたウィル様も端整な顔を歪めていた。
遅れて私服姿のマクターナさんも登場し、閑静な住宅街はその場だけで大人数の大騒ぎだ。
速攻でブリャたち『六本の尾』と裏切った兵士はガチガチに拘束されて、『一年一組』の仲間も【聖術】使いさんから治療を受けることができた。軽傷者ばかりだったので、魔力がギリギリ間に合ったのがせめてもの救いか。
治療を受ける側も魔力が必要なルールはこういう時に結構響く。【魔力回復】持ちが多くて良かったよ。
ちなみにブリャの持っていた解毒剤、小さな丸薬は本物だった。どうやって確認したかといえば、転がっていた敵で実験。『尻尾』の一党ではなく、不良兵士たちにむりやり飲ませていた時のウィル様の表情ときたら……。
そういった経緯でもって、俺たちは全員が自分の足で、ついでに大量の護衛と一緒に拠点にたどり着いたのだ。
「それで、その魔族のことは報告しますの?」
「何が起きたか、くらいですね。転生者と言っていたまでは……、さすがに」
「構いませんわよ。わたくしもそう心掛けておきますわ」
確認をしてくるティアさんに、委員長が歯切れを悪くして返事をする。
ティアさんがいる場で転生者絡みを話題にするのはマズいんじゃないかという考え方もあるが、いかんせんメーラさんが現場で聞いていたので今更隠しようもない。
「お父様やウィル兄様は魔王国との交易を大切にしていますもの。魔族に対して妙な詮索をする心配は無用ですわ」
悪く笑うティアさんだけど、仲間たちはそれに納得の様子だ。
ウィル様の魔族講座を受けての印象だけど、この国の上の方の人たちが魔王国に不要なちょっかいを掛けるとは思えない。
「それにしても、あなたたちと同じ故郷を持つ転生者ですの……」
そう呟いたティアさんは何とも言えない表情になっている。この世界における『転生者』の基本的な定義は『この世界を生きた』前世の知識を覚えている人だ。
唯一の例外として『初代勇者の転生者』があるが、俺たちはそれをひっくるめて聖法国に多数いるとされる転生者はガセなんじゃないかと疑っている。たしか、なんとか・ウースェ枢機卿だったか。
さておき、現時点でタァンが淡崎さんの記憶を持つというのは彼女の自称でしかない。
上杉さんや奉谷さんたちは確信している節もあるが、あくまで不確定情報だ。そもそも、こんなへとへとで緩んだ状況で話を詰めるのは難しいんじゃないかな。
「タァンの件は本人が話してくれると思うし、今日はもう置いておこう。それよりも明日は──」
委員長は俺と同じ考えだったらしく、この場での転生者談義は先送りだと提案した。
で、タァンたち魔族とは別口で俺たちは明日……、もう今日だけど、事情聴取を受けることになる。ペルマ=タのあちこちで大騒ぎが起きた事件に関わったのだから当たり前か。
「先生からは何かありますか?」
「いえ。みなさんが無事でこうしていること……、それだけで十分です」
最後に委員長が振ると、先生は疲れと安堵の混じった笑顔で短く終わらせてくれた。
ここ四日、心が休まる時間なんて無かったんだろうな。言葉も少なくなるっていうものだ。
「『転生者』か……」
先生のまとめでみんなが落ち着きを取り戻していく中、さっきまでのおちゃらけを引っ込めた古韮が顎に手を当て小さく呟く。俺に宛てた言葉じゃなく、本当に思わずこぼれたんだろう。
古韮の考えていることは俺にも理解できる。確かに俺たち異世界オタにとって転生なんてのは美味しいネタだ。だけどその人物が、古韮たちクラスメイトにとってつい先日までの友人だったとしたらどうだろう。
転移ではなく転生をしたってことは、物語として普通に考えれば……。ましてやタァンは魔族となっていた。
古韮も俺も、敢えてそこには触れずにいる。
「佐和と話せなかったのが心残りね」
魔力が戻り切っていないのに、それでも一匹の小さいサメを肩に乗せた綿原さんは、今のところ事態の深刻さに気付いていないようだ。
「すぐに会えるよ。仲良かったって話だっけ」
「そうね。あの子は誰とでも距離が近かったから」
だから俺は突っ込まず、当たり障りのない言葉だけで会話を流す。不自然になってないといいんだけど。
俺の考える『転生』とは全く違う意味である可能性だって高いんだ。
こればっかりは本人の口から聞くしかない。今ここで思い悩んでも仕方がないよな。
「とりあえずは、終わったのよね」
「ああ。あとは偉い人たちに任せればいいさ」
お互いにくたびれた声で綿原さんと小さく笑い合う。
もしかしたら『六本の尾』の残党が何かしてくるかもしれないと、ウィル様の手配で今夜は拠点の周囲を国軍の兵士さんたちが警備してくれているんだ。
二交代で警戒態勢を敷く予定だったけど、全員揃って就寝することができるのは正直助かるよ。
長い、本当に長かった一日がやっと終わる。それでも『一年一組』全員がこうして無事であることだけは、心から良い結果だったと思うんだ。
ちょっとズルいとは思うけど、今夜も【安眠】を使おう。きっといい夢を見れるんじゃないかな。
◇◇◇
「すまなかったっ! この通りだ!」
叫ぶように謝罪の言葉を口にしたその人と仲間たちは、九十度くらいまで深く腰を折った。
聖法国の刺客を撃退した翌日の昼過ぎ、俺たち『一年一組』は王城の一角にある会議室に来ている。もちろん『六本の尾』にまつわる一連の事件における事情聴取のためなのだが、入室した途端これだ。
会場が冒険者組合事務所でないのは、コトがペルマ=タ市街における騒乱ということで、主管轄がペルメッダ侯国になるという理屈らしい。
王城の施設なんて初めてだけど、まさかこんな事件の末に訪問することになるとは思っていなかった。
ついでに冒頭で謝罪を受けるところから始まったのもだ。
「そちらも被害者のようなものですから」
「いやっ、それでもだっ!」
委員長が穏便に流そうとするが、『ヘルタル組』の組長さんたち四名は頭を上げてくれない。
そのうちの二人は片腕を失って冒険者を引退することになった組員であることもあって、見ているこっちが居たたまれなくなる。むしろ悔しそうにしてくれていればまだマシなのに、四人が揃って本気で反省している表情なのがキツいんだ。
確かに酔っぱらった『ヘルタル組』に絡まれたところから昨日の騒動は始まった。だが詳しい事情を聞けば、むしろこの人たちは『六本の尾』にハメられた側と言っていい。
『引退する連中の送別だって、店に来ていたヤツが奢ってくれたんだ』
本当だったら『ヘルタル組』は俺たちに関係なく、もっと早くに酒場を引き上げていたはずだったそうだ。
引退者への労いという体で『たまたま店にいた人』に酒を追加で奢られて、上機嫌で外に出た途端、彼らは『赤組』と親しく歩く俺たち『一年一組』にばったり遭遇してしまった。
とても偶然とは思えない。俺たちが組合事務所を出た時点で、すでに監視下にあったんだろうと想像できる。
つまり『ヘルタル組』は『尻尾』に操られている自覚も無しに、大混乱の起点となる立場を押し付けられていたんだ。
『ヘルタル組』の人たちが『一年一組』に対して、僻みも混じった感情を持っていたのは事実らしい。それをはっきり口にしながらも、同業者として迷惑を掛けたことを彼らは謝罪した。
僻もうが、妬もうが、そして自分たちがどれだけ苦境におかれていても、筋はキッチリ通してくる。
俺たちは『ヘルタル組』と、これからも友好的にはなれないかもしれない。それでも彼らもまた、冒険者なんだ。
「冒険者同士で和解がなされたのであれば、喜ばしいことだ。着席してくれ」
普段とは違い威厳たっぷりの口調なウィル様の勧めで、『ヘルタル組』と『一年一組』は指定されていた席に座る。
ウィル様は柔らかい笑みを浮かべているけれども、目の下にクマが見えるのがなあ。どうせ昨日から寝ていないとかなんだろう。
マクターナさんといい、ウィル様もだけど、組織の上の方にいる人たちは大変だ。日本でもそうなのだろうか。視界の端に映る先生の目が死んでいるのが証拠っぽい。
「正式な通達はこのあとになるが、ペルマ=タ内市街にての騒乱に加担した『ヘルタル組』と『赤組』には罰金刑を申し付ける」
「はい」
「か、畏まりましたっ!」
告げられた刑、というか罰を聞いた『赤組』のニュエット組長は重々しく頷き、『ヘルタル組』の組長さんは音を立てて席を立ち、深々と頭を下げた。
国籍を持たない冒険者であっても、地上でペルメッダの法律に違反すれば侯国から犯罪だとされる。ある程度は冒険者組合が擁護してはくれるが、それでも罪は罪で罰は罰なんだ。
俺たちを守ってくれていた『赤組』までもがっていうのが申し訳ないけれど、喧嘩両成敗ということは、むしろ『ヘルタル組』が『尻尾』の片棒を担いてはいなかったという証明にもなる。
要するにこれは、ウィル様による『ヘルタル組』の救済だ。
「罰金については組合が一括しての肩代わりを申し出ている。最終的な支払いについてはそちらで折り合いをつけるがいい」
朗々と語るウィル様は次期侯王としての貫禄に溢れている。そうもなるか。
なにしろこの場には、凄いメンバーが揃っているんだ。
ペルマ迷宮冒険者組合からはベルハンザ組合長、バスタ顧問、一等書記官のマクターナさん。
冒険者として今回の事件で騒乱の起点に利用されてしまった『ヘルタル組』、ニュエット組長率いる『赤組』、『尻尾』討伐の当事者としてサーヴィさんとピュラータさんを代表に送り込んだ『白組』。そして最後に到着する形になった『一年一組』。決して遅刻はしていない。
さらにはアウローニヤからはベスティさんだけでなく、スメスタ大使も席に並ぶ。
トドメにペルメッダ侯国からはウィル様だけでなく、侯王様が臨席しているのだ。
騒動に巻き込まれる形になった『ヘルタル組』が可哀想になるくらいの顔ぶれだな。
アウローニヤ王国とペルメッダ侯国、ペルマの冒険者組合、そして冒険者のトップ中のトップが勢ぞろいといってもいいくらいだ。
俺たち『一年一組』は全員でこの場に参加しているわけだが、拠点の警備はなんと『ときめき組』が担ってくれている。今日の午前中、組合から斡旋されたとかで『覇声』のスチェアリィ組長自らが訪ねて来てくれたんだ。
ある意味こういうところが『ヘルタル組』のやっかみを買う部分になっていると自覚しつつも、俺たちは『ときめき組』の好意を受け取ることにした。断り難い圧があったのは否定できないんだけど。
『あたしたちも騙されたクチでね。さっきまで王城さ』
なんてスチェアリィ組長は言っていたけど、どうやら各地で起きた陽動についての事情聴取は午前中に行われていたらしい。
本当にとんでもない騒ぎだったんだな。
◇◇◇
「さて、昨夜起った事件の経緯について、現時点で判明している概要を伝えよう」
改めてといった風に、ウィル様が語り始める。
「騒乱が起きたと断定された地点は、ペルマ=タの内市街で七か所、外市街で四か所となる──」
事件の中心にいた俺たちについては後回しのようで、まずは全体についてウィル様は説明をしていく。
それにしても、確実なだけで十か所以上か。ブリャ・ルミヴが率いていた『六本の尾』の『五』は扇動が得意だとかいう話だったけど、中核となる戦力のほとんど全てを俺たちに向けていた。それにも関わらず、これだけの騒ぎをよくもまあって感じだ。
市民から怪しい連中があっちに走っていったと通報を受けた兵士やら、実際に仮面を付けて『尻尾』のコスプレをして荷車やら、白々しい大袋を運んでいた連中とかもいたらしい。アウローニヤで俺と綿原さん、笹見さんがヴァフターに拉致されたのと似たような手が使われたってことだ
そんなのが大通りでの白煙騒動にタイミングを合わせて複数個所で同時に起きていた。その中には俺たちの拠点を守っていた『ジャーク組』への虚報も含まれる。
その大半が『六本の尾』から金を渡されて、何をしているのか自覚すら無い一般人だったってわけだ。
「我が国に仮面を付けて通りを歩いてはならじという法は無い。よって、実際に暴力沙汰を起こした者や明確に公務を妨害した者を除き、躍らされていた民衆は昨夜の内に釈放されている。数については今後も増えることになるだろうから、ここでは控えよう」
ここで初めてウィル様は苦笑を浮かべた。よっぽどの大人数だったんだろう。
『赤組』のニュエット組長は口元を歪め、『ヘルタル組』なんかは居心地が悪そうにしている。まさに当事者だからなあ。
「だが、看過できぬ罪を犯した者もいる。武力でもって『一年一組』を襲った『六本の尾』を自称する集団。並びに……、遺憾ながら我がペルメッダ侯国軍の兵士だ」
ハッキリと言い切ったウィル様の重たいセリフに、壁際に整列していた守護騎士が居住まいを正し、記録を担当している事務官たちが筆を止める。会議室が静まり返った。
聖法国の名を出さなかったウィル様だけど、この場に居並ぶ面々のほぼ全員がそれを知っている。
もしかしたら気付いていないのは『ヘルタル組』の人たちくらいかもしれない。世の中には聞かないでおいた方がいいことだってあるしな。
「さらには実行犯以外でも、犯行に加担した者がいた。残念ながら、ペルメッダにて禄を食む──」
表情を険しいものに切り替えたウィル様は追加の悪者、この場合は『六本の尾』に協力した貴族の行状を説明していく。
名前を出されたのはペルメッダの独立に反対していた『残留派』貴族の流れを引くなんちゃら男爵とかいう人で、なんと俺たちが襲われた現場の一角にあった邸宅の持ち主だ。
昨日の夜、ことが終わったタイミングで駆けつけてきてくれたウィル様に簡単な説明をしたのだけど、その結果として片方の屋敷が『尻尾』のアジトとして使われていたことが判明した。
本来だったらかなりの強権ということにもなるらしいが、『尻尾』が潜伏している可能性があるという理屈で強制捜査した成果だな。
問題となったのは、その屋敷にあった地下室だ。一部が隠し部屋になっていて、しかも外市街のすぐ近くまで通じている地下通路まで見つかったのだとか。
今回の拉致騒動のために用意されたものではなく、『ペルメールの乱』辺りに起源を持つ相当古いモノだったそうだ。
ウィル様たち侯国上層部の読みでは、俺たちを襲ったブリャたち『六本の尾』は襲撃地点のすぐ傍に監禁場所、そして脱出経路を用意していたってことらしい。
なるほど。随分と余裕ぶった態度だったブリャは、陽動を含めて最初から時間的猶予を持っていたからこそということか。何なら俺たちを数日隠し部屋に閉じ込め、捜査の網が緩んだところで国外に運び出すってことも。
ウィル様によれば、屋敷を提供した男爵一家は五日前から東部の開拓村の視察に行っているらしく、建前としては『尻尾』に空き巣をされた形になる。だけど証拠となるっぽい書類も見つかっているとのことで、黒という判定が下されるようだ。
◇◇◇
「目下のところは、逃亡した者の捜索を外市街まで広げている状況だ。二日を目途に完遂を予定している」
三十分くらいを掛けて事件の経緯を説明し終えたウィル様は、最後にほっと息を吐いた。
「……では続けて、主たる騒乱の中心にいた『一年一組』からの報告をお願いしたい」
「はい」
少しだけ間を置いたウィル様の言葉を受けて俺は立ち上がる。
事前に伝えられていたのもあるし、こういうのにも慣れてしまったな。高校一年生なのに何でこういう経験値を積み上げているのだか。
とはいえ『一年一組』戦闘指揮官として、そして【観察者】である俺は、昨夜の出来事を最初から最後まで見届けた。
堂々とやってやろうじゃないか。
「詳細については資料として提出してありますから、ここでは概要を説明します」
紙束を片手に俺は語り出す。
今日の午前中を使って、昨日の出来事については全部をまとめてある。見落としが無いように、仲間たちの全員が何重にもチェックしてくれた立派な報告書だ。
ついでに迷宮での戦闘詳報も用意してあるが、そっちはあとでマクターナさんに提出することになっている。
「気になることがあったら、途中でも構わないので言ってください」
合いの手があった方が、何となく説明が楽になるんだよな。
「ではまず、『ヘルタル組』と遭遇したところから──」
途端気まずそうな顔になった『ヘルタル組』の皆さんには申し訳ないけれど、騒動のスタート地点から始めさせてもらおう。
次回の投稿は明後日(2026/03/25)を予定しています。




