第627話 テンプレに届いていないぞ
「ふむ。邪道とはいえ想像以上である。信仰次第で『教会騎士団』すら現実的だな」
「お断りしたはず、よっ!」
ブリャ・ルミヴが淡々と勝手なことをぬかし、それを咎めた中宮さんの木刀による突きが放たれる。ブリャは両手に持った鉄の警棒みたいな武器でそれを逸らした。
さっき袖から取り出していたのは確認していたが、仮にも【閃拳士】なら素手で勝負すればいいものを。
さておき、ゆったりした服装の内側には手甲と脚甲が見え隠れしているし、そこからどんな武器が出てくるかわからない怖さがある。
せめてもの救いは、現状でこちらの生死に直結しそうな刃物に類するものを敵が持ち出していないことくらいか。
敵の首魁は味方であるはずの倒された『尻尾』の二人に視線を送ることもなく淡々としたものだ。その余裕ぶった無表情を絶対にぶっ壊してやる。耳の辺りの火傷が無様だぞ。
「佩丘、四時、二キュビ後退。そこを基準に動け」
「おう!」
「メーラさんもちょっと出すぎです。真っ直ぐ一キュビ退いたところで。ティアさんも」
「はい」
「わかりましたわ!」
俺の指示に応え、『一年一組』の陣形が吹雪に合わせて円形に調整されていく。
こちらの方がみんなが使う魔術の運用が楽になるし、回復役も動きやすい。基本的に守りが硬くなる。
「八津くん」
「ん?」
「『雪鮫』は無理みたい」
「それは残念」
独自路線を模索する綿原さんは置いておくとして──。
「あぁぁいっ!」
「ぐっ!?」
『右斜め前』に踏み込んだ滝沢先生が、右翼の敵の太ももに蹴りを叩き込み、追撃とばかりに顔面には海藤のボールがぶつかる。
倒せこそしていないものの明らかにソイツの動きが悪くなり、仮面が割れてカランと地に落ちた。無表情なブリャと違い、そいつは屈辱にまみれた表情だ。この手の謎な連中だけに、もしかしたら仮面を失うことがプライドに障っているのかもしれない。
敵の心理はさておき、俺たちの右側にいる敵勢からヒーラーが抜けたお陰で、ヤツの治療はできない。先生と海藤のナイス判断だ。
作戦を理解している先生は、追撃をせずにすぐさま吹雪に舞い戻った。
これもまた円陣を組んだことによる利点だ。攻撃陣がある程度の受け持ち角度で敵を選択できるようになる。
吹雪を利用した徹底的なヒットアンドアウェイによって、敵にとってはどこから槍が飛び出してくるかわからない状況ってやつだ。
いずれは向こうも吹雪に慣れるだろうが、それはそれで仕方がない。
今の内に削れるだけ削ってやる。
ヴァフターやシャルフォさんたちの手を借りながら低い階位で十六階位の化け物と戦った時とはもう違う。
俺たちは十二階位と十三階位までやってきた。『六本の尾』やブリャ・ルミヴがたとえ十六階位に到達していたとしても、それはもう届かない存在ではない。一部の突出した武と連携と、あらゆる手段で戦い抜いてやる。
「まあよかろう。いつまで魔力が保つか、見物であるな」
冷徹な声でブリャがこちらの弱みを口にする。
憎らしいことに半分は当たりだ。いくら俺たちが魔力量に優れた『勇者チート』持ちとはいえ、無尽蔵ではないからな。
物理現象になった吹雪はその維持にそれ程の魔力は必要ないが、むしろ全力を出している前衛メンバーが危ない。ヤバいのは身体系技能と【風術】を併用している春さんと野来辺りか。
まだ数分は大丈夫だけど『戦女神』だっていつまでもとはいかない。【身体補強】と【魔術補強】の両方を担う奉谷さんの魔力もかなり心配だ。
時間が経過することでこちら側の味方が現れてくれる可能性も高いのだけど、どうにもブリャからは余裕を感じるんだよな。
『白石さん、歌い終わったら魔力温存で。藤永は前衛タンクに集中してくれ。深山さんは余力を持って吹雪を維持』
煽りではなく隠蔽の意味で俺は日本語で指示を出す。
少なくとも聖法国の連中が日本語を理解できなかったのは間違いない。ならばせいぜい活用させてもらうとしよう。
白石さんの【奮戦歌唱】と見事完成した吹雪のお陰でこちらの戦意は問題ない。
達人の先生や中宮さんはもちろん、春さんや草間、海藤たち武術素人側のメンバーもいい判断ができているし、『一年一組』はいつになく絶好調だとすらいえるだろう。
ただし今は、だ。
こちらが円陣に移行したことでこういう絶妙な均衡状態に入ってからまだ数十秒ではあるが、ここからの天秤の傾きこそが勝負を左右しそうな気がしてならない。
俺もこちらの世界で数度の対人戦を経験し、刹那の攻防が重要な意味を持つことを知っている。ほんのちょっとした切っ掛けでコトが大きく動き出すのを。
「ユイルド・ニューサルを知っているよな?」
決定打に欠ける小競り合いが続くと予想できる中、俺は吹雪越しにブリャに向かって声を掛けてみる。
「……それがどうかしたのであるか」
「アイツを誑かした時は『勇者に傷を付けるな』って言ってたらしいけど、これってなんだ?」
ニューサルの名を覚えているかどうかブリャの表情からは読み取れないが、あちらは会話に乗ってきてくれた。
返ってくる答えがくだらないものであるだろうと思いつつも、俺はセリフをぶつける。
「この地の蒙昧な者共と我らは別ということである。付け加えればこちらは『未だ』貴様らに危害を加えていないではないか」
「取り囲んでおいてよく言う!」
予想通りの返答だったにも関わらず俺は口調を荒げてしまう。諦めていた部分もあるが、そういう理屈かよ。
「貴様らは十分に勇者の雛であることを証明しつつある。私の予想を上回るほどであるな」
無表情だったブリャはそんな言葉と共に少しだけ目を細めた。もしかして笑っているのか?
「よって合格と言っておくのである。『勇者の血を持つ者たちが集う地上』は貴様らを迎え入れよう」
続けざまに放たれた完全に上から目線のセリフに、仲間たちの表情が厳しくなる。さすがにここまで言われるとは思っていなかった。
この期に及んで迎え入れるときたか。こんなに嬉しくない合格発表なんて生まれて初めてかもしれない。
「あら、でしたらわたくしは対象外ということになりますわね」
ブリャとは反対側、『一年一組』が敷いた円陣の後方から発された声は、妙によく響いた。そこに微量の怒気が混じっているのも身内の皆が理解しただろう。
それでもティアさんはブリャに向かって振り返りもせず、対峙すべき後方の相手に鋭い視線を送っている。ちゃんと自分の役割を全うしてくれているんだ。
「ティアと同じ金髪のワタシはどうなんデス?」
そしてティアさんの隣に陣取っていたミアの平坦な声にもまた、ふつふつとした怒りが込められていた。
仲間たちの意思を完全に無視されたこと、ティアさんが怒りを封じ込めてなお戦いに没頭しようとしていること。
ウチの連中は多かれ少なかれそういうのに敏感だけど、その中でもミアは着火しやすいタイプだ。
余計な問答をしてしまったかな。これは、展開が動くかも──。
「イヤァッ!」
「くっ!?」
この先を思って頭と目を巡らせる俺を尻目に、ミアの放った矢が敵の手甲に突き立った。後方にいた、さっき大通りでコソコソと俺たちに接近してきていたヤツのひとりだ。
直後、ミアが手にしていたメイスが地面に落ちてカラリと音を立てる。
ミアがダメージをもらったわけではない。自身でメイスを手放してから腰の弓に矢をつがえ、放って当てるまでの一連の動作が終わってからメイスが落下し終えただけだ。
「どれだけだよ」
思わず呟き声が出てしまうが、それくらいの早業だった。
ミアは現在『戦女神』な上に、十三階位の外魔力と持ち前の【上半身強化】、さらには取得したばかりの【剛力】を使って素早く、かつ軽く弓を絞って矢を射ったんだ。
威力を重視せずに速さと狙いだけを追求した一矢。敵を倒すためではなく動きを乱す目的があり、さらには全体の戦況を動かすための行為に他ならない。ミア本人がどれだけ意識しているかはわからないけどな。
「ティア!」
続く速射で残り二人を牽制しつつミアが叫ぶ。
「ふっ!」
その声に反応したのは、ティアさんよりむしろメーラさんが先だった。
自身の腕から鉄矢を引き抜く男に向かい、メーラさんは盾をぶつけにいく。
「で、っすわあぁ!」
さらにはメーラさんの背後から飛び出したティアさんが、これまで以上に大きく踏み込みながら得意の右正拳突きを繰り出した。
この時点でメーラさんはターゲット以外の二人からティアさんを守る姿勢に切り替えている。さすがはプロの騎士で、かつ『戦女神』モード。動作が的確で、しかも素早い。
「……お強い、ですわね」
三段重ねの攻撃だったが、ティアさんの言うように敵もまた並ではなかった。ティアさんの拳を肘で受け止め、そのまま逸らしてみせたのだ。
鉄矢を抜いた手甲の穴からも血が少し滲んだ程度で、動きを悪くするようなダメージにはなっていない。
やっぱりブリャを含む前後の六人がキーマンか。今ので撃墜できなかったのはちょっと痛いな。
ここまでの戦いでヒーラーを一人拘束、大ダメージ、中ダメ、微ダメがそれぞれ一人。こちらに大きな怪我をした仲間はまだいない。
敵の数を減らせているこの展開は悪くないはずなのに、何故か背筋に走る嫌な予感は何なんだ。
マクターナさんの突貫にしてやられた模擬戦を思い出す。『七号』との対戦でも序盤は有利にコトを進められていた。だけど結果は敗北判定。
いくらこちらの勝利条件が全員の無事という困難なものであっても、二の轍を踏むわけにはいかない。
模擬戦での経験を無駄にはするな。協力してくれたあの人たちに合わせる顔がなくなるぞ、俺。
◇◇◇
「八津クン、そろそろ」
「了解。ここからは藤永とペアになってくれ。野来と春さんもいつも通りで」
深山さんからの申告を受けて、俺は吹雪作戦の終了を受け入れた。
時間は三分弱ってところか。
いくら夜とはいえ今のペルマ=タは真夏だ。今の気温は体感で二十度近くはあるだろう。魔術で起こした雪を【冷術】でここまで維持してきた深山さんは十分頑張ってくれたと思う。
ブリャと遭遇し、『六本の尾』に囲まれてからおおよそ五分から六分。まだ助けは現れないが、ここからが本番だ。
「さて、貴様らが面白い者たちであることは理解したのである。教化のし甲斐があるということもな」
宙を舞っていた雪が地面に落ち、彼我の視界が開けていく中、ブリャは再びふざけたことをぬかす。
改造されて強化も嫌だが、教化っていうのはもっとヤバい。洗脳するって言っているようなものだ。
先生の表情がかなり凄いことになっているのに、対峙しているブリャは相変わらずの無表情なのが悔しいな。
ああ、あの男の顔面に先生の拳が突き刺さるところを見てみたい。
「『ナーヤ・ズゥ・ソド・ラ・ヴェオ』」
そんな切実な想いを断ち切るかのごとく、ブリャは静かに謎の言葉を口にした。
響きと後半部分で古アァサ語であることはわかるが、こちらから日本語で攻撃をくらった意趣返しか?
「雰囲気が、変わった?」
敵を牽制するように二匹のサメを回遊させていた綿原さんが、少しだけ声を震わせた。
先生もさっきまでの剣呑さとは違う警戒した表情となり、中宮さんの持つ木刀の切っ先が揺れる。ミアが獣のように鼻に皺を作り、ティアさんが邪悪に微笑みながら頬に汗を浮かべた。
仲間の誰もが警戒心をあらわにせざるを得ない不気味なこのムード。
ヤツらの動きが変わったわけでも、新しい武器が取り出されたってこともないのにだ。
まるでこれこそが本来の『六本の尾』なんじゃないかと、そう感じさせる圧力がある。
「わわわっ!?」
「えぇっ!?」
陣の中央にいるロリっ娘の奉谷さんと文系女子な白石さんの驚き声が被った。
さっき草間が捕まえてきてくれた敵方のヒーラーが突如としてビタンビタンと暴れ出したのだ。いつの間にか目を覚まし、どうやら自分に【聖術】を使ったらしい。
声を出していないのがやたらと不気味だ。革紐による拘束も親指と手首や足首をがんじがらめにするという、この世界の高階位者にも通用する縛り方をしているので、起き上がることすらできていないのに……。
それでも無言のままでヒーラーは暴れ続けている。
「こっちもかよっ!」
古韮もまた、引きつった叫び声を上げた。
アイツの視線の先では、さっき春さんが膝を砕き、夏樹の石が頭に当たって昏倒していたはずの敵が、両腕と片足を使って無理やり起き上がろうとしている。
嫌な予感がして先生がダメージを入れていたはずの敵を見れば、ソイツは足を引きずって、ふらつきながらもゆっくりとこちらに迫りつつあった。
それらの奇怪な現象に合わせて、ブリャを除いた『尻尾』の輩がジワジワと包囲の輪を縮めてくる。
「我らが信仰は、肉体を凌駕するのである。『ナーヤ・ズゥ』」
ブリャの発したそのセリフには、狂気染みた響きがあった。
拘束されたまま暴れる男。膝を砕かれたにも関わらず、這いずりながら近寄ってくるヤツ。どっちも戦えるわけがない。足を引きずっている敵だって、追加の一撃でお終いだ。
それなのに『六本の尾』は動きを止めない。
そんな光景を見た仲間たちは気迫で待ち構えるか、虚勢を張るか、そしてビビってしまっているかだ。その誰もが顔色を悪くしている。
俺は強がりの側だが、このままではよろしくないことだけは間違いない。個別に作り上げた優位はこの際置いておこう。問題なのは士気の方だ。
吹雪を起こし北海道魂に火を付け、絶好調状態だったというのに、これじゃもったいないにも程がある。
ウチのクラスにはこういう時に発破を掛けてくれる頼もしい仲間がたくさんいるかもしれない。だからといって毎度毎度、誰から飛び出すかもわからない勇気に頼っていいのか?
俺は『一年一組』の指揮官だろうが!
「あはっ、あははははっ!」
だから俺は九割虚勢で大笑いをしてやった。
「八津?」
「八津くん……」
突如の笑い声にクラスメイトたちからから投げ掛けられたのは、俺の心を心配するような声だ。
近衛騎士総長が消えていく影でやらかしたことがあるだけに、こういう突発的な豹変には信用がないんだよな。ヴァフターの時には上手くやったのだから、綿原さんと笹見さんはもうちょっと信用してほしいのだけど……。
「狂したか。我らが信仰の前では──」
「だっさ! ダサいよ、『尻尾』のみなさん。この程度で信仰? 完全復活も強化も無しで、ただあがいてるだけで?」
「……貴様」
「俺の故郷だったら謎の危ない薬を飲んで巨体化してるよ。もう元の姿には戻れないがお前たちだけは、くらい言ってみせろよ!」
勢いを付けて言い切ってやった俺に、ブリャは細めた目を向けてくる。日本語を叩きつけられた時みたいに口元が歪んでるぞ?
どうだ、不快になっただろ。
「ぷはっ、ははは! 筋肉膨らましたり、目を赤く光らせないとな」
「自我を失って、戦うことしかできないってね」
「だよね……。『教会』なんだし、それくらい」
俺に乗っかり、こういうのを理解するオタ仲間の古韮、野来、白石さんが煽りを入れる。古韮こそ笑っているが、野来と白石さんのペアは強がりなのが丸見えなんだけどな。
「アタシ、そういうの範囲外なんだよねぇ~」
「わたしもです。できれば細身の方が」
「昇子姉……」
チャラ子な疋さんに続いて、自分の趣味を開けっ広げに語る先生は不敵な笑顔だ。中宮さんがとっても複雑そうにしているが、俺たちの胸にある導火線にはちゃんと火が付いた。
「ウチのマコトこそあなた方の目指す先ではなくって?『ぞんびないと』は何度でも立ち上がりますわよ!」
「ティアさん、それをいい意味で言ってるのが、むしろキツいんですけど」
こういう文化を知らないティアさんもこのノリだけにはしっかりと、そして適切に着いてくる。
凄いな、悪役令嬢はやっぱり最高だ。身内であるはずの委員長にまでダメージを入れていく辺りが実にらしい。
「ふざけたことを」
予想外の展開にブリャの声が若干震えているが知ったことか。
ここまで優位だった俺たちを精神的に追い詰め、その身を挺してでも勝利を掴み取ろうという根性も認めよう。さすがは特殊部隊なだけはある。
だがな、だからといって簡単に参りましたとはいかないんだよ。
「でも実は俺、おかしくなったヤツをぶちのめすより、ちゃんと記憶がある展開の方が好みなんだ」
せっかくのヘイトキャラが正気を失ってしまうのって、俺の趣味じゃないんだよな。
「だって、そっちの方がざまぁ感があるだろ?」
つまり今現在の方が好都合ってことだ。
仮面が割れたお陰で顔が見えている男の目には正気の色がある。感情はしっかりと残っているんだ。狂信で動いているのだろうが、だからといって無敵状態などには程遠い。
「藤永、まずはコイツだ」
「八津っち、容赦ないっすね」
ここは畳み掛けるシチュエーションだ。俺は醤油入れを取ってくれってくらいのノリで藤永に要請する。魔力タンクに専念してもらうつもりだったけど、ちょっとした予定変更ってことで了解してほしい。
何をするのか悟ってくれた副官の奉谷さんが素早く藤永に【魔術補強】を掛けた。わかってるなあ。
「ぐあっ!」
捕らえられ、拘束されながらも暴れていた敵のヒーラーは藤永の『雷水球』を食らってビクリと体を震わせた。さっきまでの自発的な動きではなく、ビクビクとスタンしたソイツの背中を俺は片足でドスンと踏みつける。
趣味じゃないけど、これくらいはやっておかないとな。
周囲からの視線……、とくに綿原さんの何ともいえない生暖かい眼差しが気にも掛かるが、それは見なかったことにしておいてだ。
「戦力にならない雑魚が動いてもそれだけのことだ。うざったいのは全部藤永が黙らせてくれる!」
「俺っすかっ!?」
さっきまでの強がりは、今はもう自信に変わりつつある。俺は藤永をダシにして、さらに周囲を煽っていく。
「せっかくだし深山さん、手伝ってやってくれ」
「うん」
キョドっている藤永には深山さんが効果的だろう。藤永の『雷水球』に深山さんの【魔術融合】が乗っかったらどうなるか、興味もあるしな。
「がっ!」
「うひっ!?」
深山さんによって倍くらいのサイズになった藤永の『雷水球』を食らったのは膝を砕かれ這いずっていたヤツだ。
うん、威力が上がってるな。マンガみたいに体から煙が上がる何てことにはなっていないが、一撃で意識が吹っ飛んだ。これは使えるぞ。
だから藤永、ビビった声を出さないで、もうちょっと自分に自信を持ってくれ。相方との共同作業なんだからさ。
「……『ナーヤ・ズゥ』」
三度目となるブリャの言葉からは、最早不気味さなんて感じなかった。むしろ事態を見かねて力押しってところか。
こっちは二十四人であちらの戦力としては十三人と半分。だけど『尻尾』は強く、『一年一組』は包囲されたままだ。
それでも士気は負けていない。その証拠とばかりに綿原さんの赤紫なサメは物欲しそうに深山さんの近くを泳いでいる。
まったくもって、彼女はサメの強化に貪欲だ。
次回の投稿も三日後(2026/03/09)を予定しています。




