第617話 騎士の覚悟が霧を払う
「いきなりベスティさんだったもんだから忘れてたんだよ。すまないね」
ベスティさんとウィル様たちが立ち去り、さて各自で体を動かそうといった段になったところでアネゴな笹見さんがみんなに届く声で謝罪した。
周囲のメンバーは何か謝ることがあっただろうかと首を傾げている。
実は笹見さん、取得すると言っていた【遠隔化】のことを忘れていたんだ。ベスティさんのサプライズから流れるように模擬戦だったからなあ。笹見さんの性格からして頭の中から飛んでしまっても仕方がない。
まあ模擬戦中に『熱機雷』が出てないことで俺は気付いていたんだけど。
「というわけで、取るよ。【遠隔化】」
みんなが注目する中、ヘルメット越しに頭を掻いた笹見さんが宣言する。肩から前に編み込んだ髪を垂らした彼女は、その瞬間だけ目を閉じた。
「……ダメみたいだねえ」
「そっかあ」
少しだけ顔を俯けた笹見さんを見上げ、ロリっ娘な奉谷さんが我が身のことのように残念がる。
どうやら期待されていた【熱導術】の活性化は成功しなかったようだ。
笹見さんは百七十オーバーで奉谷さんの身長は百五十に届かない。そんな身長差のある二人が向かい合って落ち込んでいるけど、心配は無用だ。
「でも地雷だっけ? それも強そうだし、ほら、ほかにも技能があるから、絶対大丈夫だよ!」
「まったく、鳴子には敵わないねえ」
奉谷さんがニパっと笑って励ませば、笹見さんがふっきれたような声となる。クラス最強のバッファーは技能を使わずとも声と仕草だけで相手を盛り上げてしまうんだ。
それとだが奉谷さん、地雷じゃなくて機雷だぞ。
そもそも【熱導術】が仮にアクティベートできたとしても、内魔力の都合で取得までは難しいところだ。【聖導術】でもそうだったけど、コストが滅茶苦茶重たそうだし。
『六本の尾』との決戦でイザって時の切り札として期待はしていたけれど、できないことでくよくよしている場合ではない。
「それよりやって見せてくれよ」
「あいよ」
明るい声で古韮が『熱機雷』をねだり、笹見さんは笑顔で両手を突き出した。
直後、宿泊部屋の二か所で空気が揺らいだのが見える。俺は【観察者】だからな。試しに【魔力観察】してみたら色付きになって一目瞭然だ。
直径が五センチくらいの『熱機雷』がそれぞれ古韮とミアのすぐ傍か。両者までの距離が違っているのに配置が的確だ。やるな、笹見さん。
「古韮、当たるぞ。右に避けろ。ミアは一歩後退」
「俺かよっ!」
「ラジャーデス!」
俺の声に古韮は慌てて、ミアはやたらと素直に移動する。
「うおちっ!?」
結果として古韮は肩の辺りに『熱機雷』を食らい、それを見たミアは俺に向かって首を傾げた。意味がわかってないんだろうなあ。
「……八津。お前なあ」
不満気な表情で古韮が苦情をぶつけてきたが、俺にだって理屈がある。
「『動かせない』って知ってたのに、なんで動くかなあ」
そもそも【遠隔化】で出現させた『熱球』はそこから動かせない。近くなら自由自在なんだけどな。
概ねの性能を知っていたのだから、確認もせずに動く方が悪いのだ。
「八津の指示だと体が勝手に動くんだよ」
「ワタシもデス! なるほど、ここに浮いてるのが見えマス」
どこぞの犬みたいなことを言ってくる古韮とミアにちょっとほっこりしてしまう。考えて行動するのも大切だけど、俺からのコールに即応してくれるのは指揮役として助かるよ。
「アチッ! これはビックリデス」
指先で『熱機雷』を突いたミアは、言葉とは裏腹にいい笑顔だ。熱いとわかってても触っちゃう辺りがミアらしい。
とはいえ、古韮とミアの反応を見る限り、驚きで気が逸れるくらいの効果はあるってことか。
「笹見さん、今ので全力?」
「とにかく速さを優先したからねえ。もっと大きくもできるけど、そうじゃないんだろう?」
「ああ。むしろ高さを調整かな。首から顔の辺りを狙いたい」
事前に計画していた戦法だけに、笹見さんも突き詰めるべき方向性を認識している。
彼女が維持することのできる『熱機雷』は【多術化】により二つまで。少ないとはいえ、的を外したらすぐに術を解除し、別の場所に出現させるという手段が採れる。
要するに魔術の構築速度こそが肝なんだ。敵の動きを予想した設置場所も重要だけど、笹見さんはそっち方面に向いていない。
俺とのバディ戦法もアリかもしれないが、距離が遠くなると誤差が大きくなるからなあ。傍にいる時だけ指示を出すとなると遠近で感覚も狂うだろうし、【遠隔化】の意味も薄くなるか。
ついでになんか、サメがこっちを見てるんだけど。
「笹見さんの【遠隔化】で届くギリギリ辺りで、春さんが駆け抜けながら避ける練習ってことでどうかな。【風術】で相殺するのもアリで」
「【遠隔化】に慣れるのと【多術化】を鍛えるってことだね」
「ハルは低く走るから高さ調整の練習になるね。面白そう」
俺の提案に笹見さんと春さんが乗ってくる。
クラス最高の速度を誇る春さんに『熱機雷』を合わせられるようになれば、『六本の尾』とやらにだって有効だろう。ついでに【風術】や急ターンという点で春さん自身のいい訓練にもなるはずだ。
さっき奉谷さんも言っていたけど、技能の熟練を上げれば【熱導術】に繋がるかもしれないしな。
◇◇◇
「笹見とは関係ないが、俺からもいいか?」
「古韮?」
笹見さんの練習方針が決まったところで手を上げた古韮が、やたらと真面目な声を出す。思わず聞き返してみれば、アイツの細められた目にはかなりの真剣さが込められていた。
少々の危難であっても飄々とした態度を取ることができる古韮が、仲間しかいない場所でこんな顔をするのは珍しい。
「さっきの模擬戦で思い知った。俺にできるのは守り切ることじゃなくて、精々が時間稼ぎだ」
「そう……、だな」
古韮のセリフを否定することができず、俺は曖昧に頷く。
盾役を担う騎士組と海藤なんかも俯きがちだ。真っ直ぐに古韮と俺を見つめている騎士はメーラさんだけ。
『七号』さんたち相手の模擬戦で一番悔しい思いをしたのは彼らだろう。
ヤンキーな佩丘やガタイの大きな馬那は無言で両拳を握りしめ、真っ先に撃墜された藍城委員長はハッキリとうなだれている。
風を使ってそれなりの活躍をした野来だけど、アイツも悔し気な態度を隠していない。盾専属でないのもあって、技術で後れを取っている海藤もまた大きくため息だ。
「【剛力】や【握力強化】じゃあ対応できない。単純に技術が足りていないんだ」
「わかってる」
真面目な表情のまま古韮は淡々と事実を語る。俺はただ相槌を打つばかりだ。
騎士メンバーがここから取得する技能は【剛力】や【握力強化】、【鋭刃】辺りが当面の目標とされている。『七号』みたいな人間との戦闘を考えると、まず【鋭刃】は問題外。突きの練習を始めてはいるが、素人連中が得物を振り回したところで掠りもしないだろう。
そして残念ながら【剛力】と【握力強化】も通用しない。力が強くなり、メイスを落とさなくなったとしても、相手が避けに徹したら今の騎士たちでは対応が難しいんだ。
「なりふり構わずにどこかの組に頼るっていうのもアリだとすら……、俺は思う」
「おいおい」
「そこまで言うのかよ」
「古韮くん……」
俺たちの誰もが考え、そして半ば却下したことまで真顔で言い出した古韮に、クラスメイトたちからざわめきが起きた。
アウローニヤで何度か経験した対人戦だが、その全てで護衛なり援軍があったから助かっただけだ。悔しいけれどヴァフターたちがいなければ、総長には絶対に勝てていなかっただろう。
しかし今回は事情が違うんだ。ウィル様が国軍を使って警備の密度を上げてくれているが、俺たちは冒険者をやっている。しかも敢えて独立系の『一年一組』を謳って。
依頼という形で護衛をお願いすることは可能だし、喜んで引き受けてくれそうな組はいくつもある。だがそれによって本来無関係の冒険者に害が及んだら……。
俺たちだけなら命までは狙われない可能性が高い。ティアさんとメーラさんは覚悟を決めて一緒に行動してくれているけど。
「わたしも古韮君の意見には……、消極的に賛成します」
見かねた先生が、ついにここで口を挟んだ。【冷徹】を使わず、悲痛な表情で。
「ありがとう先生。だけどそれは最後の手段だと思います。俺たちは強くなり切ってなんていません」
敬語に切り替えた古韮は先生に向き直り、前言を翻すようなコトを、それでもキッパリと言い放つ。
「頼るのは構わないけど、俺たち自身だってできることを全部やる。ウィル様やマクターナさんたちはそれを求めてると思う」
「そう、ですね」
みんなに向けて正論を告げた古韮に、先生は小さく頷く。周囲の仲間たちも……。
俺たちはすでにいろんな人たちに危ない橋を渡ってもらっている。ならば、それに応えるだけの行動をしなければいけないんだ。
「そろそろくどいぞ、古韮。とっとと結論を言えや」
「ははっ、俺らしくなかったかな」
イラついた感じの口調で田村が割り込み、古韮は表情をヘラっとしてみせた。
「……そういうとこはお前らしいよ」
田村はしかめっ面で吐き捨てる。全くその通りだな。
「俺は【霧術】を取ろうと思う」
そして古韮は軽い口調で宣言した。
宿泊部屋が静まり返るが、古韮はここにきてニヤつきを隠さない。
たしかにそっちの方が古韮らしいけど、大した心臓をしているよ。
「……一日でむりやり十三階位になる気かよ」
「いや、今ここでだ」
「お前、何言ってやがる!」
訝し気に問い正した田村に対し、古韮の答えはシンプルだった。途端田村が激高する。
古韮は十二階位での技能取得を保留し、『シュウカク作戦』でマクターナさんが遭難した時に【鉄拳】を選択した。
そんな古韮はまだ十二階位で、しかもメインスキルと予想できる【霧術】の取得コストは重たい。仮に明日一日で十三階位になったとしても、それですら内魔力に余裕などないはずだ。
それを今ここで?
「奉谷と違って技能の想像ができてないだろ? だったら取って確かめるしかない」
ギャンブルであることは当人だって承知しているはずなのに、古韮は軽く肩を竦めてみせた。
俺たちは階位を上げることで技能と関係なく素体の強化ができている。内魔力量も増えるので、戦える時間だって伸ばすことが可能だ。
ただし中には、それらと同時に狙った技能を得るためにレベルアップを求めている者がいないわけでもない。
現状の『一年一組』で戦い方そのものに変革が及ぶ可能性を秘めた技能を候補にしているのは四人。
いや、ミアが【風術】を取るとすれば五人か。彼女は十三階位で【剛力】を取ったから、魔術弓士はまだまだ先のことだ。
笹見さんの【遠隔化】による『熱機雷』は達成された。もう少しで十三階位になる綿原さんが【魔術拡大】を取得すればサメの射程距離が伸びるだろう。
そしてド本命とされているのは奉谷さんの【魔術補強】だ。身体強化系バフの【身体補強】の魔術バージョンで、こちらは物語ではなくちゃんとした資料で確認できている。曰く『魔術全般の効果』を上げるとのこと。どういう方向性かは魔術を使う本人次第の可能性が高いが、たとえば夏樹の石が敵の骨を折るくらいのレベルになれば、もしくは藤永の雷が人間を完全スタンできれば、などという期待が寄せられている。
もちろんサメ愛の強い綿原さんの鼻息も荒い。
強いて挙げればメーラさんが【鋭刃】や【大剣】を取って火力を上げるというのもあるが、彼女は『勇者チート』を持っていないので内魔力がギリギリだ。魔力の色が違うから【魔力譲渡】の効率も悪いので、イザという時が怖い。
ニューサルの末路を見ている俺たちは、魔力切れには敏感なんだ。
そんな新技能依存なパワーアップ計画において四人目にカウントされている古韮の【霧術】は、今日の昼間にした草間との雑談に出てきた通りでネタの要素が強かった。霧を使っての撤退支援ができる可能性があるってくらいで。
霧を発生できたとして、どれくらいの量で、密度で、効果がどれくらい見込めて、消費魔力はどうなのか。古韮の神授職である【霧騎士】は超レアジョブで、信用できる文献は見当たらない。
「綿原のサメ、夏樹の石、野来の風、八津の観察。みんなのメインスキルは凄いじゃないか。俺はずっと羨ましかったんだぞ?」
イケメンオタは名を挙げた人物を見渡していく。俺もカウントしてくれるんだな。
「俺のはちょっとショボいっすけどね」
「いいや。藤永の雷は伸びるね。絶対そうなるって信じてる」
「古韮っち……」
妙なところで口を挟んだ藤永に対しても古韮のフォローは万全だ。そう、オタメンバー全員が藤永の覚醒を信じているのだが、それは未来に期待するとして。
「【身体強化】と【反応向上】だけは使わせてもらうけど、【身体操作】と【魔力伝導】、【広盾】、視覚系はカットする。間違いなく動きが悪くなるけど【霧術】をとにかく使い込む方針だ。八津、実質盾が一枚減ることになるけど──」
「盾は海藤にカバーしてもらう。中型から大型のトドメ、本当に全部回すからな?」
古韮の長台詞に俺は降参するしかない。システムに詳しい古韮らしく、ちゃんと計算した上での提案だったんだろう。
前衛職の古韮は外魔力に優れるが、技能を回すための内魔力には乏しい。そんな内魔力を【霧術】を取得するために消費するとなれば、当然普段使いの技能にだって支障をきたす。
加えて大型や中型魔獣のトドメ担当は経験値的には美味しい役どころかもしれないが、実態はワリと過酷だ。何しろ完全効率を目指すなら仲間の戦闘をただ見つめて、そして最終的に血にまみれるのだから。
今日の委員長や笹見さんだって表情を歪めながらも頑張ってくれた。
小型ならそれ程でもないが、大物のトドメは精神的に結構キツいんだよな。だけどたぶんコイツは【平静】すらカットする気でいるはずだ。
根底にあるのは強さに繋がるかもしれない可能性と、地上の人たちに胸を張れるかどうかという意地だけで、古韮はとことんまでやり通したいと言っている。
カッコいいじゃないか。応援したくもなるってものだ。
「いいじゃないか。俺は賛成だ」
「使えなくても知らねえぞ」
俺がそんな風に高ぶるくらいだ、盾メンバーが黙っていられるはずもない。馬那が真正面から、佩丘はひねくれた言い回しで賛成に回る。
「古韮くんの霧と僕の風でなにかできたら面白いかも」
「まあ僕は優先してもらった立場だからね」
野来と委員長も納得の様子で頷いた。
「メーラさんはどう思います?」
「……わたし、ですか」
「盾仲間だから当然ですよ。負担を掛けることになりますし」
「わたしは、フルニラさんの勇気に敬意を表します」
「っ、ありがとうございます!」
古韮から水を向けられたメーラさんは、主の可否を確認することもなくストレートに肯定する。これには古韮も驚きの表情だ。
ティアさんファーストは変わらないはずだけど、毎日のようにメーラさんの自主性が上がっている気がするなあ。
そしてティアさんは満足げに悪く笑いながら頷くのみだ。
「海藤は?」
「ついでみたいに聞くなよ。古韮が抜けたら俺が一番ヤバいのに」
「だって海藤だからなあ」
「まあいい、好きにしろ。俺は盾の練習をさせてもらうさ」
最後に問われた海藤だけど、アイツが断る姿なんて想像することもできない。
「模擬戦で負けて悔しかったのは俺も同じだ。本番では一発驚かせてやれ」
「おう。レアジョブの可能性を見せつけてやるさ」
お互いにニヤリと笑いながら海藤と古韮が肘をぶつけ合う。
俺たちが非常事態に直面した以外でここまでリスキーな選択をするのは初めてかもしれないな。それこそシステムを理解できていなかった初日の夜に綿原さんが【鮫術】を取って以来だ。
まあ俺も無自覚で【観察】を取得したんだけど。
「全員で多数決はしなくていいよな? 引っ掛かるヤツは言ってくれ」
盾組全員からの合意を得た古韮は、周囲を見渡し最後の確認をする。
「燃える展開デス!」
「だからミア、手を上げなくてもいいって」
で、ミアはやっぱりミアだった。いや、そういういい感じのムードを作ってくれているのは認めてるけどな。
苦笑で答える古韮も楽しそうだし。
「もうさ、古韮くんだけじゃなくって、凪ちゃんにも十三階位になってもらおうよ」
「そうね。トウモロコシくらいは融通してほしいわ。わたしが【魔術拡大】を取れば戦術の幅だって広がるでしょう?」
さらにはノリに当てられた奉谷さんがはしゃぎ声を上げ、綿原さんも俺を見ながら前向きに語る。
「あの、わたしを後回しにして、凪ちゃんに……」
「雪乃……」
だけどポヤっとしたままの深山さんが小さく手を上げ微妙な提案をしたことで、調子に乗っていた綿原さんが一気にテンションを落とした。
後衛職のレベリングで現状最優先とされているのは【聖導師】の上杉さんと【奮術師】の奉谷さん、そして【氷術師】の深山さんだ。
何も起きなければ明日一日で上杉さんの十三階位は確実だろう。奉谷さんも何とかなりそうで、深山さんはギリギリってところか。
「わたしは取ったとしても【魔力凝縮】だし、硬くなろうって目標なら碧ちゃんだって一緒。八津クンと夏樹クンもだから」
淡々と語る深山さんの言う通りで、彼女の階位上げを急いでいるのは柔らかグループであることがその理由だ。
「凪ちゃんのサメが強くなるのって大切だと思う。だからちょっとだけ優先してあげて? 八津クンだったらわたしの十三階位だってできちゃいそうだし」
そこで【冷徹】をオフにしたのか、深山さんはニッコリと俺に笑いかけた。敵わないなあ。
気付けば模擬戦での敗北や地上の不透明さでヘコんでいた空気は残っていない。この場の二十四人が集団としてどう強くなろうかと全員で考え、発言しているんだ。
一度決めた順番が状況次第でコロコロ入れ替わるのなんて、ウチのクラスじゃ当たり前だし、それで構わない。
古韮のビックリ提案からの流れで、俺たちの心にあったモヤモヤとした霧が晴れたってところかな。
さすがは【霧騎士】。【霧術】を使うまでもなく霧を操ってくれるじゃないか。
「後衛全員が十二階位で素のパワーも上がってる。上杉さんたちも【鋭刃】の練度を稼いでるし、いけるかもな」
となれば俺だってポジティブに立ち回ろう。虚勢であっても胸を張って言い切ってやる。
後衛が十階位だった頃とは違うんだ。十二階位のパワーと【鋭刃】の熟練度、神剣の取得、奉谷さんの【身体補強】だって【魔力譲渡】を組み合わせることで効果が上がった。俺たちはもう、たくさんの手段を得ている。
「僕と八津くんが一番問題なんだけどね」
「【鋭刃】、出ないかなあ」
石を浮かべた夏樹のツッコミに、俺は笑ってボヤく。これくらいの冗談を言えるくらいにはアガっているんだ。
「二人はもっと料理当番を増やした方がいいっしょ。解体作業もねぇ~」
「それより古韮、時間が惜しい。とっとと取っちまえ」
チャラい声で疋さんが俺と夏樹をからかい、田村が不機嫌そうに古韮の背中を押す。
要するにいつもの俺たちってことだな。
「おう。じゃあ取るぞ、【霧術】だっ!」
ニカっと笑った古韮が、意味もなく専用シールドを構え、メイスを片手に宣言した。
申し訳ありませんが次回の投稿は三日から四日後を予定しています。風邪を引いたっぽいです。
2026/01/30追記:体調不良が長引いており、更新がもう少し遅くなりそうです。大変申し訳ありません。




