第612話 増えていく十三階位
「捨てるのは惜しいなあ」
「仕方ねえだろ。ほれ、行くぞ」
イケメンオタな古韮が名残惜しそうに振り返り、ヤンキー佩丘が急かすように率先して歩き始めた。
俺たちの背後には解体されていない三角丸太が二体残されている。
トドメを刺したのは藍城委員長だが、まだレベルアップはしていない。もう少しだと思うんだけどなあ。
時刻は昼過ぎ。『一年一組』はここまで四度の戦闘をこなしてきた。
昼食として牛肉とジャガイモの煮込みアウローニヤ風を食べた俺たちは、素材を残したままで出発をしようとしている。
『今日と明日、冒険者としての体裁は最低限にしておこう』
本日の迷宮探索に当たり、行動を開始した時点で俺とみんなはそう決めた。
もちろん運び屋を担ってくれた『ジャーク組』のみなさんと別れてから。四層素材を捨てるなんて話をあの人たちに聞かせられるはずもない。
素材の回収は移動や戦闘に影響が出ない程度で抑えて、とにかく周回を急ぐ。さっきの上杉さんによる【聖導術】騒動みたいな時はちゃんと立ち止まって話し合うが、基本は迅速な行動だ。
片手間でできる魔力量の測定こそやってはいるが、そっちも完全に網羅するつもりはない。行き止まりの枝道は、メガネ忍者な草間が魔獣の存在を察知してから考える。魔力量ではなく、戦闘するかどうかをだ。
各人がそれぞれ考えながらひたすら戦うことが今日のメインで、それ以外の要素は最低限に抑えておく。
朝のミーティングでは踏破率を見込みつつ、魔獣と遭遇しやすいであろう経路を選択したのだが、果たして『ジャーク組』に気付いた人はいたのかな。
「そろそろ昨日探索されていない区画だ。魔獣が増えるぞ。デカブツは帰り道で遭遇したら持って帰るくらいの感じでいこう」
「おほほほっ、いよいよわたくしも十三階位ですわね!」
俺の言葉に合わせてティアさんの高笑いが響くが、彼女自身はテンションが普段よりちょっと低い。悪役令嬢指数が減っているとでも言うべきか。
ナチュラルな笑い声ではなく、どこか俺たちや自分自身を励まそうとしているように感じるんだ。
バトルモードに入れば集中してくれているのがせめてもの救いか。
それもこれも、結局は聖法国のせいなんだよな。俺は好き放題、邪悪に笑うティアさんの方が好きなのに。
「本当の笑顔を取り戻さないといけないわね」
「そうだな」
前衛としてのポジションを取るため前に出た中宮さんが、俺を追い抜きざまにポツリと語る。さすがは悪役令嬢担当者、よく見ているな。
俺の答えはもちろんイエス以外にあり得ない。
「凛はなんて言ってたの?」
続けて俺の隣に来た綿原さんだが、ちょっと声のトーンが低かった。変な話なんてしてないって。
「いつもの悪役令嬢の方がいいってさ」
「そ。わたしもそう思うようになっちゃったのよね」
どうやら綿原さんもすっかり悪役令嬢マニアになってくれていたようだ。
ティアさんの邪悪な笑みも大切だけど、綿原さんのモチャ顔も俺にとっては重要なんだよな。
◇◇◇
「おほほほほっ! わたくし、ついにやりましたわよ!」
で、そんな悪役令嬢リンパッティアさんは、一時間後に本気の高笑いをカマしていた。
笑顔を取り戻す計画は、もうちょっと長いスパンで考えていたんだけどなあ。
昨日この狩り場を担当した『野薔薇組』が探索していなかった区画に入ると、途端に魔獣の影は濃くなった。
部屋の構造からして魔獣が溜まりやすい場所を優先し、魔力部屋を目指していた途中で『一年一組』は馬との戦闘となり、そこに白菜の乱入を食らったのだ。
迷宮における乱戦を制するためには巧みな指揮も大切だが、なんだかんだで個人の武だ。もちろん判断力もひっくるめての話だけど。
そんな中でもウチの十三階位メンバーは見事な働きを見せつける。トドメを刺さない程度にギリギリの弱体化だ。白菜の蔓を断ち切って足代わりの葉っぱを毟り取り、馬については角と足を折る作業をしっかりとこなしてくれた。
強力な前衛と後衛からの適切なサポートが可能な今のウチなら、時間こそ掛かるが特定のメンバーにトドメを集中させることはそれほど難しくない。むしろ大物である方がクリティカルミスが出なくて助かるくらいだ。
で、委員長より先にティアさんが十三階位を達成した。
「先を越されましたね。おめでとうございます」
「いえいえ、マコトも直ぐにですわよ」
卒なくティアさんの快挙を讃える委員長に、我らが悪役令嬢様は上機嫌だ。
刃物素人の委員長と、騎士を目指していたティアさんとではトドメ力に決定的な差がある。
無力化というお膳立ての終わった魔獣を流れるように倒し続けるティアさんと、どこかおぼつかない委員長。そりゃあこうもなるか。
ちなみにここまでで上杉さんの【聖導術】が初回のチャレンジも含めて三度行使されているが、とりたてて新機能は見つかっていない。
「やったね、ティアさん」
「メイコも努力なさいまし。十三階位は目前ですわ!」
「うんっ!」
ロリっ娘な奉谷さんに上から目線なティアさんの図を見るに、彼女が調子を取り戻してきたのがよくわかる。
ティアさんにとって十三階位が持つ意味は大きい。何しろ母親と兄のウィル様が十三階位なんだ。武を誇る侯爵家の一員として、ティアさんはそこに到達したことになる。神授職システムにおけるひとつの頂点。
しかも迷宮戦闘では不向きとされる『拳士系』の神授職でありながらだ。
「おめでとう、ティア。けれどここで終わりじゃないのでしょう?」
「当然ですわ!」
中宮さんとティアさんはいい笑顔でお互いの肘をぶつけ合う。
ティアさんは以前、十三階位ですら途中経過と言い放った。
この人の気概ならば恐怖の五層ですら貫いて、いつかは父親である侯王様と同じ十六階位を達成しちゃうんじゃないかなって思わせるのがティアさんなんだ。
もちろん俺たちだって負けてはいられないし、ティアさんのレベルアップでテンションは上がっている。
このノリは一過性のものかもしれない。落ち着いてしまえば、やっぱり聖法国のことが心の中で膨らむのはわかり切っている。
それでも今だけは、素直にティアさんの快挙をみんなで賞賛しよう。
「ティアは技能をどうするんデス?」
「もちろん【痛覚軽減】ですわっ! これで再び『一年一組』全員が──」
「お揃いデス!」
「お揃いですわよ!」
語尾こそ違うものの、ミアとティアさんの声がハモり、クラスメイトたちからも笑いが上がる。
「わたくし、十四階位で【睡眠】を考えていますの!」
そうだよ、今の俺たちに必要なのはこの勢いだ。そう思わせる明るさが現実としてここにある。
これが本来の俺たちだったはずだろう。ウチのクラスはこうじゃなくっちゃ。
みんなでそれぞれ前向きに試行錯誤している姿勢は間違ってなどいない。
だけど、これが欠けていたんじゃないかとも思うんだ。レベルアップを純粋に喜ぶことを。
そう。誰かが階位を上げるたびに、こうして大袈裟に騒げばいい。ワガママで傲慢な『一年一組』のティアさんが、それを思い出させてくれた。
目下のところはティアさんがゴールしたので次点で委員長が暫定トップ。後衛職グループからはアネゴな笹見さんと聖女な上杉さんが続き、ロリっ娘バッファーの奉谷さんと、切り裂き……、ポヤっと美少女な深山さんがちょっと遅れている感じかな。
委員長が十三階位になってしまうと三角丸太の始末が問題になってくるが、いよいよ優先から除外されていたメンバーの出番すらあるかもしれない。
「さあ、ここからわたくしは『さぽーと』ですわ。仲間のみなさんに手料理をふるまって差し上げますわよ!」
ノリノリのティアさんがぶち上げる。仲間に手料理ときたか。
「さあ、みなさん。行きますわよ!」
「おう!」
ティアさんの声に乗せられて最低限の素材を素早く回収した俺たちは、迷宮の奥を目指して移動を再開した。
◇◇◇
「委員長は十三階位になったらどうするんだ?」
「悩ましいところだね」
迷宮を進む隊列の前方から馬那と委員長のやり取りが聞こえてくる。
次なる獲物を求め、『一年一組』は迷宮を徘徊中だが、道中での雑談は毎度のことだ。
「【剛力】か【魔力浸透】かで迷っているんだよ」
「【鉄拳】じゃなくって?」
委員長の挙げた候補が意外だったのか、騎士仲間の野来が口を挟む。
【聖術】使いとしての性能を上げる【魔力浸透】は理解できる。前衛の回復役は皮肉屋の田村がメインだが、委員長が【魔力浸透】を取得することで近くの騎士をヒールするという路線はアリだ。だがそこに【剛力】を並べてきたか。
パワー系委員長を目指すのかな。ウチには武闘派系教師と副委員長がいるから、負けていられないとか思っているのかもしれない。
なんて冗談はさておき【聖術】使いでもある委員長は、騎士職としてのビルドが甘い。メーラさんみたいなノーマルな人を除けば委員長は騎士メンバーの中で唯一【鉄拳】と【広盾】、【視野拡大】を取っていないんだ。
悪い言い方をすれば中途半端なのだが、それだからと俺たちが委員長を侮ることなどあり得ない。
ちなみにだけど当初は滝沢先生や中宮さん、佩丘辺りにしか生えていなかった【剛力】は、『クラスチート』のお陰もあってかすでに前衛職の全員が候補にしている。
「僕はほら、【聖術】があるから」
「藍城君」
「あ、いえ、すみません」
不用意な一言で先生から名を呼ばれた委員長は、バツが悪そうに謝罪した。
先生やティアさんのように攻撃的な意味での【鉄拳】とは違い、学生メンバーの持つ【鉄拳】はメイス二丁持ちの春さんを筆頭に故障防止のためだ。
ただでさえ【鉄拳】を持たない委員長が【剛力】を取ったとすれば故障率は跳ね上がるだろう。それを委員長は自己ヒールで治すと言っている。
そりゃあ先生だっていい顔はしないよな。
生徒たちの取り決めに滅多に口を挟まない先生からの言葉だけに、重たさが違う。
「……ですが、仕方ありませんね。もし【剛力】を選ぶなら、藍城君は補習です。怪我をしないような力の使い方を練習してください」
「はいっ!」
先生から補習と言われてしまったのに、むしろ委員長は嬉しそうに返事をする。
こっちからは見えないが、先生は困ったように眉を下げているんだろうなあ。これまた背中しか視界に映っていない中宮さんとティアさんは羨ましそうにしているに決まっている。
ウチの先生は絶対に生徒を突き放したり否定はしない。叱咤し、励まし、時には修羅になったりポンコツ化もするが、ずっとずっと俺たちの味方だ。
「うーん、ハルはどうしよっかなあ」
「わたしは【魔術拡大】ね。春は【握力強化】か【剛力】かしら。……【多術化】は出ているの?」
「うん。だけど【多術化】って上手く使えるかなあ」
すっかり技能談義っぽくなってきたのに乗っかり、十三階位が視野に入っている春さんと綿原さんが言葉を交わす。
綿原さんはついに【魔術拡大】か。突如出現した【多頭化】で大騒ぎになったが、サメの射程距離が伸びることになる。
春さんについてはまあ、どれを取っても無難な内容だな。【多術化】で一度に扱える風を増やし、自分の動きと敵の妨害の両方をするとか結構夢があると思う。春さんとは【風術】仲間でオタな野来なんかが好きそうなヤツだ。
「春姉なら大丈夫だよ」
「ナツは無責任だね。けどナツが使えてるんだからハルだって──」
「なにさそれ!」
姉弟喧嘩に届かないくらいの言い合いをする双子なんてのは毎度の光景だったりする。つまりは放っておくのが常道だ。
「僕はまだまだだからなあ」
グチを口にしてメガネ越しに遠い目をしつつも周辺警戒を怠らない草間は偉いと思うぞ。階位上げレースではどうしても遅れがちになっているが、草間の狙いは【握力強化】か【聴覚強化】辺りだったかな。
「でさ、思ったんだけど……。委員長と笹見さんが十三階位になったらさ、古韮くんなんてどうかな」
「俺が?」
思わぬ草間の提案に古韮の足が止まり、それに合わせて隊列が一時停止した。
注目を集めた草間が無駄にメガネを光らせる。
委員長を除いて経験値的にも横並びな騎士職の中で、ビルドも似ている四人から敢えて古韮を指名する理由ってあるのか?
いや、ある。草間め、なんてことを。
「そりゃあ俺だってそうしてくれたら嬉しいけど、取るとしたって【握力強化】か【剛力】だぞ? あっ……」
「そうだよ、古韮くん。【霧術】さ」
首を傾げる古韮にしたり顔で告げた草間はメガネをギラギラさせながら、口をニチャらせている。なんでそんなにノリノリなんだか。
『シュウカク作戦』のあった日だから、五日か六日前の夜、自身の誕生日に古韮は【霧術】を候補に出現させた。
それはいい。気になるのはどうして草間がそんなことを言い出したのかだ。
「……お前それ、ギャンブル過ぎだろ。取得コストだって重たいんだぞ?」
「リン、リン、『ぎゃんぶる』とは何ですの?」
「『賭け』って意味よ」
古韮の返しにティアさんが反応し、中宮さんが小さい声で解説を入れる。ちなみに『コスト』についてはご存じなんだが、こういう用語ばっかりがティアさんに蓄積されていくなあ。アウローニヤのシシルノさんもそうだったけど。
「けれどさ、名前からして絶対にメインスキルでしょ? しかも──」
「対人要素、か」
「そういうこと」
悪役令嬢たちを他所に続けられた草間と古韮のやり取りには頷ける部分も多い。
【水術】を候補にしている古韮は普通に考えれば、【風騎士】である野来と同類の魔術騎士だ。だが、盾メインの古韮が今更水を操作して戦闘補助に使えるかといえば、首を傾げざるを得ない。
だからこそ古韮は普通の騎士としての技能を優先してきたのだが、草間の言うように『メインスキル』というのが引っ掛かっていたはずだ。
どうして古韮は【水騎士】ではなく【霧騎士】なのか。
文字通りならば、古韮は『霧を操る』騎士なんだろう。魔獣を相手に霧がどれ程効果を持つかも怪しいものだし、目くらまし程度じゃないだろうかと流していたが、人が相手となれば話が変わってくる。
魔獣にはあまり通用しない白石さんの音が人間に向けた場合に凶悪な効果を発揮するように、古韮の霧もまた……。
思い付かなかったな、これは。斥候の草間だからこその気付きかもしれない。
「こうさ。ぼやーっとしたら、敵だってビックリするかもしれないじゃない。濃い霧だったら、こっちを見失うかもしれないし」
両腕を広げた草間が、擬音を混ぜて大袈裟なことを言う。だけどそこには、うん、夢があるな。
もちろん戦術の幅にも繋がる。
「ははっ、逃げる時は俺が殿か」
「その時は僕も付き合うよ」
こんな会話で笑い合える古韮と草間がやたらとカッコよく見えて、そして羨ましい。オタ的な意味だけでなく、俺もあんな勇気を持ちたいと思うんだ。
ティアさんの十三階位達成からこっち、俺の仲間たちはどこか前向きに吹っ切れた雰囲気になっている。
必死に模索しつつも明るさが同居しているこの感じ。いい傾向だと思うし、大切にしないとな。
「あのさっ、僕も思い付いたことがあるんだけど──」
「それどこじゃないかな。魔獣が来た。あっちから丸太が二体」
うずうずした感じの野来が何かを言い出そうとしたタイミングで、すっかり会話の主役を張っていた草間が魔獣の接近を告げる。
三角丸太が二体だけか。だったら──。
「こっちから出迎えよう。トドメはもちろん委員長だ」
「話の流れ的に俺じゃないか?」
「そうはならないだろ」
軽口を叩いてくる古韮に笑い返しつつ、俺たちは迫りくる丸太を迎撃するために歩き出す。
◇◇◇
「うん。十三階位だ。みんな、本当にありがとう」
丸太二体にトドメを刺すことで十三階位を達成した委員長が真っ先に口にしたのは、みんなへの感謝の言葉だった。
これまでのレベリングで優先対象者を選ぶことは多々あったが、ここまで明確に委員長を引っ張ったのって初めてだったかもしれないな。何度か上位に据えたことは記憶にあるけど。
ともあれ委員長はこれにて十三階位の【聖騎士】。どこにも出して恥ずかしくない存在だ。どこに展示するかって話でもあるが。
「本物の勇者の出来上がりだ。八津、地上に戻ったら絵にしておこうぜ」
「歴史の立会人ですわね!」
古韮のおちゃらけにティアさんが真顔で乗っかるけど、俺はそんなに記憶力がある方じゃないしなあ。
いや、だけど、ティアさんとメーラさんを含めた『一年一組』全員を並べたイラストなら描いてみたいかもしれない。いっそのことマクターナさんも一緒に……、っていうのはフラグっぽ過ぎるか。
「帰還の手段が見つかってからだよ。帰るまでが勇者の役目だからね」
そんな冗談が口から飛び出すくらいには委員長もアガっているようだ。
「それより【剛力】を取ったよ。先生、ご指導をよろしくお願いいたします」
「はい。一緒に励みましょう」
先生に向き直り大きく腰を折った委員長に、師匠からの優しい言葉が投げ掛けられる。
二人ともマジメだよなあ。
「今日のところは使うのは受ける時だけに留めてください。大丈夫です。基本はできていますから」
「はいっ!」
続く先生の指導に委員長は大きな声で返事をした。
十三階位になった以上、委員長にトドメを回すわけにはいかない。
怪我の危険性という意味もそうだけど、先生はそういうところにも気を回してくれているのだろう。もちろん聡明な委員長だってそれには気付いているんだ。何しろ俺の方をチラ見して薄く笑っているんだから。
「で、素材はどうすんだ?」
軽い感動シーンなのに無粋な田村は丸太に目を向けている。時間がもったいないのはわかるんだけどな。
時刻は午後の三時を過ぎて、探索率はおよそ六割。後半に差し掛かったところではあるのだけど、丸太を六本担いで移動っていうのは微妙なところだ。イザとなったら捨ててしまえばいいのだけど、どうしたって行動速度は落ちてしまうし、さて、どうしたものか。
「勇者記念に一本だけ持って帰るって、どう?」
「ははっ、委員長の名前を彫って、高値で売るか」
夏樹の無邪気な提案に、意地の悪い笑みで海藤が悪乗りする。
「侯爵家で買い取りたいところですが、組合に示しが付きませんわね」
これまた邪悪に笑うティアさんまでもが冗談を繋ぐものだから、委員長以外のメンバーに笑いが伝播していく。
「僕だけ特別扱いしないでほしいかな。十三階位の記念なら、もう八人目なんだから」
「そういえばワタシも丸太で達成しまシタ」
苦笑する委員長に合わせ、笑顔のミアが手を上げる。そういえばミアとメーラさんは丸太で十三階位だったか。ほかには誰だったっけ。
とはいえだ、委員長の言うように『一年一組』二十四人のうち、八名が十三階位を達成した。つまり三分の一。
古韮のレベリングはさておき、今日と明日を使えば笹見さんと上杉さんはほぼ確実で、奉谷さんと深山さんが間に合えばクラスの半数が達成者となる。いや、委員長のレベリングが終わったのだから、中型から大型魔獣を前衛メンバーや綿原さんに開放すれば、もっと狙えるか。
後衛職なのに前に出ている藤永と田村だって階位を上げてやりたいし。
希望的な妄想が広がりまくりだけど、今は目の前の丸太の扱いか。
「委員長だけえこひいきするのもアレだから、丸太は置いていこう。それよりも今は──」
「ガンガンレベリングだね!」
俺の言葉を夏樹が引き継いでくれるが、二人ともレベリング対象外なんだよなあ。
それなのにこれだけポジティブな感情でいられる辺りが今の俺だ。もちろん夏樹もそう。
個人が強くなれば、全体も強靭になっていく。そんな当たり前を当然だと思えることがやたらと嬉しいんだ。
次回の投稿は三日後(2026/01/19)を予定しています。遅くなって申し訳ありません。




