第606話 当方に迎撃の意思あり
前話(605話)での情報を若干修正いたしました。
帝国の迷宮数を『七以上』から『十以上』へ、魔王国は『十以上』から『五以上』へとしてあります(2026/01/02 16:30)。
この旨、なろうの活動報告、並びにカクヨムの近況ノートにも記載してあります。
「俺は【鉄拳】を取るよ。盾係が増えそうだし」
「貴も【安眠】仲間になるべきデス」
「ミアはそればっかりだな」
ペルマ迷宮三層へと昇る階段にて『一年一組』の遠距離コンビ、ピッチャーの海藤とアーチャーなミアが陽気に言葉を交わしている。
ついさっき、階段間際をうろついていた馬を倒したところで、【剛擲士】の海藤は十三階位となった。
帰り道ということもありほとんど諦めていたタイミングだったので、迷宮からの贈り物だと感謝するしかない。たまには迷宮も粋なことをしてくれるものだ。
そんな海藤は自分の立ち位置をしっかりと自覚している。経験値ロストの関係上、今後は盾役に回されることに備え、怪我防止という意味で【鉄拳】を取得することにしたのだろう。
ここで滝沢先生の罪悪感を薄めるために【安眠】を、なんて言い出さない辺りはむしろ海藤らしい。
先生はそんなのを望んでいないはずだからな。
「これで五人か」
「委員長とティアさんももう少しだね。難しそう?」
俺の呟きに答えるロリっ娘な奉谷さんの言わんとすることは、十三階位となったメンバーの運用についてだ。
目出度く四層の限界階位となった先生、ミア、疋さん、中宮さん、メーラさん、そして海藤は、基本的にトドメを封じられたことにもなる。経験値を捨てることになるからだ。
手加減のできる武術家な先生と中宮さんは問題ない。チャラいのに小器用な疋さんも大丈夫。盾に徹すると決めたメーラさんも心配は必要ないだろう。
問題となるのはミアの弓と海藤の短槍だ。クリティカルがなあ。
ミアは剛弓を使うのを辞めてノーマル弓でなら、中型でも一撃にはならないだろう。だが海藤の短槍はダメだ。導入してから間もないのもあって、まだまだコントロールに難がある。これは悪口ではなく、海藤本人も自覚していることだ。
かといって白球では四層の魔獣相手では牽制に留まってしまう。
威力を持つ二つの長距離武器を封印すれば戦いの組み立てを一部変更しなければならないし、戦闘時間も伸びる。
トドメに拘り過ぎることで、結果として時間効率が落ちてしまうのはいただけない。場合によっては経験値を捨ててでもっていうシーンが待っているかもしれないのだ。
七階位だった頃のティアさんを三層でレベリングした時には余裕があった。三層の魔獣を俺たちの階位でねじ伏せられていたからな。結局『雪山組』の転落事故で大騒ぎになったけど。
「海藤はやっぱり盾メインになるけど、いいか?」
「おうよ。任せとけ」
前方に届くように声を大きめにした俺に、海藤は振り返ることもなく返事をしてくる。
というか振り向いたら危険だ。何しろアイツとミアは、両肩に丸太を担いでいるのだから。
野球で鍛えた海藤ですら異様に見えてしまう光景なのに、細身で身長が百六十ちょいの女子が両肩にぶっとい丸太ときたものだ。
ぴょこぴょこ揺れる金髪ポニーの調子からして、ミアはちっとも苦にしていないのが伝わってくる。
どうしてこうなったのやら。
『運べるだけ運んでみようぜ。イザとなったら捨てればいいだけだ』
増加傾向にある魔獣のお陰で大量の素材を得た俺たちだが、どこまで持ち帰るかについては意見がわかれた。
そこで通ったのが丸太奉行となった小太り田村の案だ。
アウローニヤ時代とは違い、俺たちは十二階位と十三階位の集団となった。すなわちパワーアップを果たしている。前方を行くミアと海藤などは【剛力】まで上乗せだ。
さらには【身体操作】を取得したメンバーも多いので、素材運びは恰好の熟練上げになるだろうと理由を並べた田村の言葉は理解できるものだった。
しまいには馬那までそれに乗っかる始末だ。迷宮で筋トレを持ち出すのはどうなんだろう。
危険があるとすれば突発的に捨てる際に事故ることだが、今の俺たちならば階段を転がり落ちてくる丸太なんてジャンプひとつで飛び越えられる。
という経緯もあって、俺たちはお互いの距離を長く保ちつつ、えっちらおっちら階段を上っているのだ。
ちなみに俺は丸太を担いではいない。丸太担当は前衛職とプラス田村。
代わりに俺の腰の回りはトウモロコシの実や馬の角が二重巻きになっているし、背中にはパンパンに牛肉が詰め込まれた革袋だ。隣の奉谷さんは折り畳まれたバーベキューコンロを背負っている。
こちらもまた日本で見かけたら仰天するような恰好だな。コスプレにもなっていない。
「今のボクたちならアウローニヤの王都まで二日で行けるかもだね」
「春さんなら『足の速さは階位で決まるわけじゃない』って言うんじゃないかな」
「八津くんは夢が足りてないよ。女王様たちが困った時にさ、駆けつけてあげたいじゃない」
「それは確かに」
白石さんのゆったりした【鎮静歌唱】を聞きながら、奉谷さんとのたわいのない会話が続く。
お互い大荷物なのに足取りは軽いものだ。
結局本日割り当てられた区画の踏破率は七割強といったところだが、潰すべき魔力部屋は網羅できた。
マクターナさんの来訪予定が十九時だということもあって、俺たちは夕方の六時でもって四層探索を打ち切ったのだ。
昨日は侯王様たちを待たせる形になったからなあ。マクターナさんはしっかり出迎えないと。
「明日の運び屋さんは『ジャーク組』だったよね? 運びきれるかなあ、こんなに」
「夕食と明日の朝食でなるべく消費しよう」
「だね。マクターナさんたち、大人数だといいんだけど──」
「大人数……、提案があるのだけど」
奉谷さんと俺の気の抜けたやり取りに割り込んできたのは、サメを従えて斜め前を歩く綿原さんだった。
「残業をさせるようで申し訳ないけど、そこは食事で許してもらうとして……」
「どういうことです?」
ブツブツと呟く綿原さんに、カニが満載された寸胴鍋を担いで隣を歩く上杉さんが声を掛ける。
「ええっとね──」
提案とやらを説明し始めた綿原さんの口元は、悪い形にモチャっと歪んでいた。
これって絶対悪巧みだろ。
◇◇◇
「来たよ!」
「十三人だった!」
宿泊部屋に飛び込んできたスプリンターの春さんとメガネ忍者な草間が叫ぶ。
時刻は夜の七時五分前ってとこか。時間に律儀な人たちだ。ダッシュで風呂に入っておいてよかった。
「十三人か。ちょうどいいくらいだな」
「そうね。調理班はどう?」
俺と頷き合ってから、綿原さんは壁際で料理の準備をしているメンバーに声を掛ける。
これから手強い『刺客』をお出迎えするわけだが、食事の方も大切だ。
「ったく、あとは焼くだけだ」
「こちらは温め直しですね」
調理班のヤンキー佩丘と、料理長の上杉さんからゴーサインが出される。
「間違っても倒したりするんじゃねえぞ」
「敵なら倒しちゃってもいいんでしょ?」
「鍋をってことだ」
バーベキューセットや寸胴鍋を守るために田村や野来が丸太を立て掛けていく。念には念ってな。
ところで野来、オタネタが田村に通じていないぞ?
「じゃあ頼んだわよ。碧」
「大丈夫かな……」
綿原さんに急かされた白石さんが不安そうにしているが、諦めたように大きく息を吸い込む。
『接近する人たちに警告します! それ以上近づくのならば敵と判断し、迎撃行動を採らせてもらいます! 繰り返します。当方に迎撃の用意あり! あと、お食事の準備はできてます!』
あらかじめ用意していた原稿に目を落とし、白石さんは【大声】で宣言した。最後の言葉もちゃんと予定通り。ガチと受け止められたりしてもアレだからな。
迷宮の構造次第ではあるが、彼女の声は草間の【気配察知】の範囲外まで届くはずだ。
さて、あちらはどう出るか……。
『──』
「『楽しい趣向ですね』だってさ~」
俺には小さな音としか思えなかったが、【聴覚強化】持ちの疋さんはちゃんと聞こえていたようだ。
「ノリノリかよ」
「みんな、怪我をしないようにね」
パーソナルマークが描かれた愛用の大盾を構えた古韮がニヒルに笑うのに対し、藍城委員長はため息を吐く。
「やるからには本気でいかないと失礼に当たるわね」
「『手を伸ばされた』なら、わたくしがブチのめしますわ!」
中宮さんが座った目で木刀を握りしめ、気炎を上げるティアさんが拳を作る。
そう。綿原さんの提案は、マクターナさんたちを刺客と見立てた模擬迎撃戦だった。
アラウド迷宮でやったシャルフォさんたちヘピーニム隊との模擬戦と、昨日仕掛けられた侯王様による乱入から発想を得たそうな。
一部のメンバーが難色を示したが、多数決で採択された以上はやるしかない。
さて、こちらの方が人数が多いとはいえ、俺たちの手は『ペルマ七剣』に届くのだろうか。
◇◇◇
「十三人のまま! 全速じゃないと思う。固まって近づいてくるよ」
白石さんの警告から十秒くらいで、マクターナさんたちが再び草間の探知圏内に入った。
相手はこちらの半数程度。斥候と【聖術師】が最低でもひとりずつはいるはずだから、実戦参加は十ってとこか。
とはいえ十五階位のマクターナさんを筆頭に、組合の部隊は歴戦だ。待ち合わせ場所が三層だからといって、十階位を連れてきているとは思えない。
もしかしたらミーハさんも同行しているかもな。だとしたら大変申し訳ないことに──。
「二手に分かれた! 真っ直ぐは七人。右に六人! 右の方が速い!」
「挟み撃ちか。本気っぽくていい」
草間による続報に、思わず俺は笑ってしまう。一部のクラスメイトから呆れた視線が飛んでくるが、さっき中宮さんが言っていたように、やるなら本気の方がありがたいじゃないか。
本日の宿泊部屋にある扉は五つ。内二つは風呂とトイレだから関係ないが。部屋の繋がり方からして、迂回を経由すれば正面と右の扉からの同時攻撃が可能となっている。
相手はちゃんとこの辺りの構造を把握しているってことだ。
「あそこの罠、解除しておいてよかったね」
「組合の部隊は引っ掛からないだろ」
右の扉近くの床に視線を向けた草間に、俺は肩を竦めて答える。
そうか、トラップだ。
「田村、あっちの扉に丸太を並べてくれ」
「……性格悪いな。八津」
「完全に塞ぐんじゃなく、足並みを乱す程度でいい。二列か三列」
お前の方が性格に難ありという言葉を呑み込み、指示を出す。
「思い付いたらってか。おう、やるぞ。ミアと笹見、藤永と上杉もだ」
「いい人選だよ」
「言ってやがれ」
せっかく褒めたというのに冷たいことだ。
とはいえ、いつマクターナさんたちが加速してくるかもわかったものじゃない。
田村の選んだメンバーは盾とアタッカーを温存し、模擬戦で矢を射かけたりはできないアーチャーと、対人戦闘に向かないメンツ。イザとなったら丸太を放り出して後方に退避だ。
「忙しくなってきまシタ!」
壁際に並べてあった丸太に向けてミアがダッシュする。
「正面は佩丘、古韮、馬那。右はメーラさんと委員長だ。野来は両方に対応できるようにしておいてくれ」
「おう!」
丸太の移動を始めたメンツを除き、俺の声に合わせて陣形が動き出す。奉谷さんがちょこちょこ走りながら事前に決めてあったメンバーに【身体補強】を掛け始めている。
「草間は忍べ。模擬戦だからクリティカルとか関係ない。楽な仕事だろ?」
「マクターナさんを仕留めてもいい?」
「やれるもんならな」
粋なセリフと共に草間の存在感が薄くなっていく。
「丸太が終わったら上杉さんと奉谷さんは後方待機。戦法は、盾と魔術と剣と木刀と拳と、いろいろ融合だ」
「セリフが適当になってるよ?」
丸い石を四つ浮かばせた夏樹が笑う。何かいい感じなことを言おうとして単語に迷っただけだよ。
「千変万化!」
「縦横無尽」
「サメはいつでもそこにいる!」
付け足すかを悩む俺だったが、中宮さんが素敵な単語を叫び、古韮が、そして綿原さんが続く。
「ぎたぎたにして差し上げますわ!」
ティアさんの咆哮に応えたかのように、右の扉から人が突入してきた。
◇◇◇
「よりによって『第一』かよっ。先生、中宮さん、疋さん。正門任せた。マクターナさんはあっちから来る!」
俺の口から悪態が飛び出す。
右から部屋に乱入してきた六人は全員が組合色となる茶色の革鎧を装備していた。それはいいのだが、肩に付けられた部隊章は『門をバックに数字の一』。
フルメンバーではないにしろ、隊長さんは十五階位で、十四階位も複数所属しているという組合最強部隊だ。【聖術師】を除けば、もちろん最低で十三階位ばかり。
そこに十五階位、『手を伸ばす』マクターナさんも同行している。
これって、アウローニヤで最終決戦となった近衛騎士総長戦と同じくらいの難易度じゃないか?
「ここは通しまセン!」
丸太の設置はギリギリ間に合った。
近接戦に対応するために【剛腕】を取ったミアはその場に残り、それ以外のメンバーはすでに撤退を半ば終えている。
右の扉の前に並べられた丸太は結局二列。ただし、三メートル程の間隔を持たせてあるので、一気に飛び越えるか、途中で一度着地するのかの判断が必要となる配置になっている。
田村らしく実に厭らしい仕掛けだ。褒めているんだぞ、念のため。
突入してきた六人は丸太を認識した直後、二人が大跳躍をして残りの四人はツーステップを選択した。装備から見るに全員が前衛職だ。
というか大きくジャンプした人の片方って、『第一』の隊長さんじゃないか。
「海藤、夏樹! 野来は待てっ!」
「おう!」
「えいっ」
俺の声に従い、海藤のボールと夏樹の石が飛ぶ。狙いは大ジャンプで空中にいる二人。
迎撃するために動き出そうとした野来に待ったを掛けたのは、このあと正面から来るであろうマクターナさんに対応するためだ。時間差攻撃でこっちの戦力配分に制限を掛けるとか、厭らしい手を使ってくる。
だけどこっちにだって手数はあるぞ。
「くっ」
ジャンプ中の人の片方が盾にボールを食らってバランスを崩す。
何しろ海藤が投げたのは『スライダー』だ。当たるはずがない軌道からの変化に慌てて対応すれば、そうもなる。
この世界には魔術があるから飛翔物が軌道を変えることは珍しくもない。だが、弓士などの物理遠距離アタッカーの投射物は物理法則に従う。
相手さんは海藤が振りかぶったことや球速から、魔術ではないと判断をしたのだろう。なまじ優れた観察力があっただけに予想が外れたってことだ。地球のピッチャーが投げるボールはグネグネ曲がるんだよ。
「それを避けるのっ!?」
片方の撃墜に成功したのはいいのだが夏樹が狙った方、『第一』の隊長さんは四方から飛んできた石を見事に躱していた。
身をひねるとかではなく、跳躍距離を『伸ばす』ことで。
何しろ隊長さんはガラリエさんと同じ【翔騎士】で、しかも十五階位だ。風を使っての空中機動はお手の物ってか。何が起きても対応できる自信があるからこその大ジャンプだったのだろう。
っていうか、軌道からして隊長さんの狙いって俺か!?
「夏樹、攻撃を下の四人に切り替えろ! 海藤は盾持って正門に向かえ!」
「うんっ」
「おう」
俺をターゲットにして着地姿勢に入った隊長さんへの対応はこれからとして、夏樹には『氷床』でバランスを崩している四人組への牽制をお願いする。海藤は対マクターナさんの追加盾だ。
海藤に撃墜した人を任せてもいいのだけど、そっちには嬉々としてミアが駆け寄っているからなあ。ミアさんよ、ここは通さないって話はどこへいったんだ?
四人組の方は春さんがダッシュをしているから、夏樹と仲良く姉弟で共同作業をしてもらいたい。委員長やティアさんとメーラさんも一緒に頑張ってくれているし。
丸太と丸太のあいだに『氷床』を設置した深山さんは、ポヤっとしたまま小さくガッツポーズだ。
大きく飛べば投擲物の的で、足を刻めばスケートリンク。『一年一組』は神授職がバラバラなだけに、技のバリエーションが豊富なのがウリなんだよ。
だから空を駆ける【翔騎士】にだって──。
「うおっ!?」
すぐ近くで盾を殴ったような打撃音を食らった隊長さんが驚愕する。
石を避けることはできても、音に対抗するのは不可能だ。
やってくれたのはもちろん【騒術師】の白石さん。盾の近くで打撃音っていう辺り、実に芸が細かい。
「二・三キュビ。一」
このタイミングで正面から突入してきたマクターナさんたちを横目に、俺は彼女の肩越しに腕を伸ばして指を差す。
小数点単位の距離と、一から始まるカウントダウンというシビアな条件に合わせることのできる俺のバディ。綿原さんの操る赤紫の双頭サメが床に撒かれた血だまりから飛び立った。
綿原さんは俺が狙われたのを察知して、すかさず前に立ちふさがってくれていたんだ。
「『跳血鮫』も久しぶりね」
白石さんの音で視線が逸れた隙を突き、魔獣の血でできたサメが隊長さんの顔面に直撃する。
ドヤ顔でクールなセリフの綿原さんもいいよな。
「ちぃっ!」
視界を奪われたにも関わらず、それでも着地に成功した隊長さんは舌打ちをしながら鞘付きの片手長剣を振り回した。
「どらぁあ!」
だが、十五階位のパワーがあったとしても、当てずっぽうの大振りなんて綿原さんはものともしない。クールから一転、野太い咆哮を放った綿原さんは、迫りくる剣にヒーターシールドを斜めに合わせ見事に弾いてみせた。
「八津くん、どうぞ」
「さんきゅ」
視界を塞がれ、体勢を完全に崩された隊長さんは俺の眼前で半身を晒している。
お膳立てを整えてくれた綿原さんにお礼をしつつ、俺は鞘付きの短剣を隊長さんの首筋にトンと当てた。
◇◇◇
「五人掛かりとはいえ、術師に負けたのは初めてだよ」
「五人目はお湯じゃないですか」
剣を手放し片手を上げた隊長さんのセリフには、いちおうツッコミを入れておく。
隊長さんが降参を宣言した直後、頭上からお湯が降り注いだのだ。やったのはもちろんアネゴな笹見さん。血で汚してしまったことに対するアフターフォローってヤツだな。
「二班は全滅かな。一分経たずにこのザマとは、マクターナに何と言われるか」
苦笑を浮かべる隊長さんには申し訳ないが、右から来た二班とやらは確かに全滅目前だ。
空中で撃墜された人は馬乗りになったミアが顔面に短剣を突き付けたところでサレンダー。
『氷床』で一歩目を崩された四人は、夏樹の石と春さんの低空ダッシュ、受けに徹する委員長、攻防自在のメーラさん、そして容赦なく繰り出されるティアさんのパンチに翻弄されて残るは二名。
ただし春さんは衝突事故を起こしたところで剣を突き付けられて脱落している。
代わりにミアが戦線に復帰したし、もうすぐ決着だろう。
隊長さんの言うように、一分足らずでこの状況は上出来だと思う。右側戦線は敵方が六名脱落し、味方の損耗は春さん一人だけ。
ただなあ……。
「……降参です」
首に剣を当てられた古韮が悔しそうに敗北を宣言する。
普段はヘラっとするタイプなアイツだけど、戦況を見ればああもなるか。
正面から突入してきたマクターナさんを含む七人の敵は四名が脱落して、残るは三名。対する『一年一組』は疋さん、野来、海藤、そして今まさに古韮が降伏した。
あちら方面を任せた前衛メンバーで生き残っているのは先生と中宮さん、佩丘、馬那だけ。
敵方の脱落者に【聖術師】と斥候と思われる人が含まれているので、戦闘職で撃墜できたのは一人だけってことになる。
俺の中ではワイルドカード枠になっている先生と中宮さんを投入し、さらには騎士職を多めに置いたのにこれだ。
十三階位に到達した中宮さんや先生ならば、周囲のフォローさえあればって思っていた。事実、マクターナさんは正面からのぶつかり合いを避けている。
だけど『ペルマ七剣』は伊達ではない。さっきから見ていたから嫌でも理解させられた。むしろ佩丘や馬那は『生かされている』んだ。
マクターナさんは俺たちのほとんどが『素人』であることを知っている。真っ当な戦士は先生と中宮さん、かろうじてミア、そしてティアさんとメーラさんくらいしかいないということも。
だからマクターナさんは『一年一組』の騎士たちを、逆に自分の盾として使っているんだ。
「わたしたちの戦いを見られていたのもあるんでしょうね」
「ええ。初見でしたらどうなっていたか」
やや声を低くした先生の言葉にも、マクターナさんは明るく笑ってみせる。
どうやら俺たちはかなり無謀な挑戦をしてしまっていたらしい。
申し訳ありませんが、次回の投稿は三日後(2026/01/05)を予定しています。
展開を変更したのと挿入したいパートで大幅改稿になってしまいました。




