第544話 お国からの頼まれ事
「状況がわからないのですが」
「迷宮の前にすまんな」
組合事務所二階にある、定番の第七会議室に藍城委員長とこの国の王様の声が飛び交う。落ち着いた態度の委員長だけど、アウローニヤとペルメッダで揉まれたのもあって、王族にも慣れたものだ。
この場にいるのは俺たち一年一組全員と、ティア様、メーラさん、専属担当のマクターナさん。ここまではいい。
問題なのは侯王様と次期王様のウィル様、ついでにベルハンザ組合長までもが同席しているってところなんだよな。どうしてこうなっているのやら。
会議室に呼ばれた当初は『赤組』が起こした事故についての事情聴取かとも思ったけど、それは昨日のうちに事務所班が終わらせてくれている。
悪辣な悪役令嬢ティア様を、我らが副委員長である中宮さんが成敗した翌日、『サメッグ組』の組長自ら警備に来てくれたことにお礼をしてから、俺たちはこれまで以上の大荷物を抱えて迷宮に向かった。
で、事務所でマクターナさんに計画書を渡したところで、何故かこんな場所に連行されてしまったというのがコトの経緯だ。
「手短にお願いしますわよ。お父様、ウィル兄様」
「うむ、わかっておる」
本来ならば迷宮の入り口で落ち合うはずだったティア様は不機嫌そうに腕を組み、この国の王様と次期王様を睨みつけている。ちなみに席次は俺たち一年一組サイドなんだよな。
様子を見るに昨日の夕方、ティア様がお城に帰宅してから何かがあったのは明白だ。夕食に誘ったのだけど晩餐会があるとかで、もしかしたらそこで何かあったのかもしれない。
「本題から入ろう。貴様らは迷宮三層で今夜を過ごす。そうだな?」
「はい。その予定です」
「そこで少しだけ……、一刻から半刻で構わない。兵たちに四層の魔獣を見せてやってもらえないだろうか」
「そういうことでしたか。随分といきなりですね」
会話をしている委員長が真っ先に意味に気付き、周囲にも理解の色が広がっていく。
侯王様の言う三層で四層の魔獣を見せるとはこれ如何に、とはならない。要は俺たちの魔獣擬態ごっこに期待しているのだろう。一時間から二時間くらい、か。
よくわからないのはまさに委員長の言葉通り、何故こんなタイミングで、ってところだ。
「貴様らも承知しているだろうが、三日前からペルメッダは夜間、国軍を迷宮に入れている」
「はい」
説明を続ける侯王様の言葉に、委員長のみならずクラスメイト全員が頷く。
立派なものだとは思うんだ。三日前といえば臨時総会で国軍が動くことを冒険者に発表した、まさにその日ってことになる。
事前に態勢を整えつつあったとはいえ、即日行動だもんなあ。
迷宮の異常については以前からなんらかの対応が必要だとされていた。事がここ数日で大きく動いたけれども、冒険者組合も国も意識はしていたのだ。
ティア様を経由して俺たちの口から語られたアラウド迷宮の異変の詳細は、この国の軍のトップという肩書を持っている侯王様に伝わっている。やろうと思えば国軍はもっと早くに動けていたはずなんだ。
それでも臨時総会を待つ形になったのは、冒険者組合の持つ力と、この国が冒険者を優遇しているという事情がある。国が民間の組織に遠慮しているっていうのはなんとも歪に思えなくもないが、委員長に言わせると日本だって似たようなものなのだとか。
さておき、そういう関係であるからこそ、この場に侯王様とベルハンザ組合長が居合わせているのだろう。お互いの顔を立てるってことだな。
「ウィル」
「はい。軍の強化にもなると思ってね、十階位の兵を四層に入れているんだ。もちろんちゃんとした部隊に随行させてだよ」
ここで侯王様から顎で指示を出されたウィル様が、説明を引き継いだ。
国軍における現場レベルでの指揮の頂点は、イケメンスマイルで語るウィル様ってことになっている。アウローニヤにおける軍務卿相当だったかな。
先日あった帝国の手先を殲滅した事件で侯王様が出張ってきたけど、アレは単に戦力としてだった。十六階位だからな。それでも作戦を立案したのはウィル様だ。要はそういう役回りってことだな。
そしてなるほど、確かにこれを好機と捉えることはできる。何しろ俺たちがその筆頭みたいなものだから。ほかの冒険者たちだって、十三階位のエース部隊に十階位のメンバーを随伴させることで『魔獣溜まり』への対応と、戦力の強化を図っている。
「つまり隊の一部が四層を『初見』なんだ。幾ら知識を持っていても、いきなり完全な対応は難しい」
「損害が?」
ウィル様のセリフに口を挟んだのは、ミリオタの馬那だった。
「致命的なことにはなっていないよ。嘘偽りなく、一人の死者も出してはいない。ただ、撤退の頻度が高いのが問題になってきたんだ。四層に慣れている兵士ですら、対応に手こずっているようでね。日を追うごとに迷宮は手強くなっている」
俺たちの気質を知るウィル様は、真摯な態度で明言してくれる。
良かった。臨時総会で聞いた報告や、昨日の『赤組』の件もあって、一年一組は再起不能にピリピリしているからなあ。
「せめてもの、なんだよ。君たちの時間を奪うことになってしまうけれど、四層に向かう前の兵たちに体験させてあげてくれないかな。本当は明日、君たちが地上に戻ってから話を持ちかけるつもりだったのだけど……、時間帯も場所も、むしろ好都合なんだ」
ウィル様からのお願いからは一年一組への申し訳なさが漂っているが、俺たちにとっては片手間だ。軍の施設に呼ばれるよりも、迷宮の中まで来てくれるというのも助かるし。
国軍が活動する時間帯は冒険者たちが引き上げたあとってことになるので、兵士が挑むことになる四層の区画は俺たちの宿泊部屋に合わせてより取り見取り。
うん、条件としては悪くないよな。
「まあ、俺たちは王様やウィル様に助けられたからなあ」
「魔族の話も聞かせてもらっちゃったしねぇ~」
「昨日のうちに言ってくれてもよかったのに」
「それがね、僕のところに昨日の結果報告が届いたのが、日付を跨いだ一刻だったんだよ」
「くっ」
受け入れムードな空気の中で飛び出したウィル様のセリフを聞いた滝沢先生が、小さく悲鳴染みた声を上げる。
せめて朝イチで先触れを入れてくれても、なんて感情は一瞬で吹き飛んだ。
冒険者とかち合わないように夜を使った国軍の活動だけに、最終的な報告書が上まで届いたのが午前二時……。
そんなの翌日に読めばいいのにとも思わなくもないが、真面目なウィル様は起きて待っていたのか。何しろ事は、自分の与かる兵士たちの損耗に関わるのだから。
そうしてウィル様は決意を秘めてこの場にいる。妹さんの冷たい視線を浴びつつだ。
ヤバい。ウィル様が眩しすぎて、直視するのが……。
「わたくしが聞かされたのが、つい先ほどですわっ!」
プリプリと怒れるティア様がワガママ令嬢なのは平常運転として、クラスメイトたちはウィル様に同情的な視線を送っている。
政治と軍に関わる時間の多い侯王様やウィル様と違い、アウローニヤの第一王子との婚約破棄が確定しているティア様は公務が少ない。だからこそ俺たちと一緒にいる時間が長いのだけど、家族同士でも全ての情報を共有できないことも多いのだとか。
家庭不和っていうのではなく、俺に想像できるシチュエーションとしては両親が共働きで兄は就職している、そんな家庭。しかも時間帯が合わないみたいな。舞台は国家規模だから、その辺りは比喩になっているかすら不明だけど。
「僕として受けてもいいと思う。意見はあるかな? とくに八津と綿原さん」
ご機嫌の悪いティア様の様子を見た委員長が、話を前に進める。クラスメイトの中でも迷宮委員に振ってくるのは当然か。
「俺は問題ないと思う」
「わたしも」
空気を読んだ俺と綿原さんは短い言葉で賛成する。
「組合として、僕たちが国からの依頼を受けるのは問題ありませんか?」
委員長の視線は、マクターナさんではなくベルハンザ組合長に向けられていた。
この業界で、国そのものから冒険者への依頼というのは、実は少ない。それこそ戦争における傭兵としてっていうのが一番メジャーな事例のはずだ。
「もちろんだとも。現状のペルマ迷宮に対応するために、冒険者と軍で連携を取るのは必要なことだ。そもそも認められないというならば、最初からこのような場を用意したりはしないよ」
「ですよね」
白髪ザビエルな組合長からの言葉は当然といえば当然のものだった。最初から答えを知っていた委員長は、軽く肩を竦める。
「条件次第ですが、『一年一組』はこの依頼、お受けしたいと思います」
「助かるよ」
「すまないな」
「全く、仕方ありませんわね」
委員長の出した結論に、この国のトップツーが軽く頭を下げた。冒険者組合の人がいるところで、そういうことをしていいのだろうか。
ところでティア様、相手は血縁なんだけど、なんで一年一組サイドなのかなあ。
「時間がもったいないですわ。詳しい説明は、わたくしが道中でいたしますわよ」
「うん、詳細はリンに伝えてあるから、迷宮で聞いておいてほしい」
そう言い放つティア様は、要は迷宮で俺たちと一緒に戦う時間が今も削られていることに憤っているのだ。
「あっ、俺からも提案があります。なるべく熟練が高くて、速度と精密操作が得意な【水術】か【土術】使い……、それとできれば鞭使いさんにも来てもらえませんか」
「なるほど。手間は一度にということだね。だったら四層に潜らずに帰るのを前提で、いや、いっそのこと術師の階位も……」
俺の思い付きを正確に理解してくれたウィル様が、顎に手を当て考え込む。
「そんな編成は昼間のうちに考えればいいことですわ! コウシの提案自体は問題ありませんわよね?」
「そうだね、リンの言う通りだ。まずは契約からとしよう」
睡眠不足なはずの兄に向けるティア様の言葉は辛らつだ。昼寝も許さないとは、さすがは悪役令嬢。容赦が存在していない。
妹に敵う兄はいないっていうのは、俺にはよく理解できる。心尋に何度集られ、パシらさせられたことか。元気にしてるかな、アイツ。母さんも。
◇◇◇
「全く持って面倒な前置きでしたわ!」
「俺たちとしては、儲かりましたけどね」
「救いはその程度ですわね」
荒ぶるティア様の言葉に動揺もせず、ヘラっと返すちょいイケメンな古韮は中々のコミュ力の持ち主だ。オタなのが本当に不思議すぎる。
とはいえ、ティア様はセリフの内容とは違い、怒りまくっているわけではない。むしろ嬉しそうに暴言を吐き続けているのだ。
ホント、迷宮に入った途端機嫌が良くなるのはどうなんだろう。俺たちも人のことは言えないけれど、お互い迷宮ジャンキーだよなあ。
迷宮一層を進む一年一組とティア様、メーラさんは二層への階段を目指し、お喋りをしつつ早歩きで移動中だ。
結局、侯王様というよりウィル様が代表する形でペルメッダ侯国軍から正式な依頼を受けることになった『一年一組』だけど、報酬はなんと百万ペルマ。たった一時間か二時間、クラスメイトの一部が芸を見せるだけでこのお値段だ。
つい昨日、メガネ忍者な草間の報告にあったように、俺たちは三日で五十五万という貢献点を積み上げていた。それに加えて今日は一割となる十万。四日で六十五万という数字は、同席していたマクターナさん曰く、破格であるらしい。
ティア様との会話でにやつく古韮は、内心で超有能冒険者ムーブを楽しんでいることだろう。心の底から理解できるぞ。
俺の横を歩くクラスの会計にしてオタ文学少女な白石さんも、丸いメガネをいい感じで輝かせている。
鑑定水晶破壊や飛び級Sランクとかはできなかったけれど、歴代最速の昇格なんていうことが起きるかもしれない……、なんてな。
「──そういうことで、見学する十階位は、三部隊で九名ですわ」
移動しながらもティア様の説明は続く。
時間がもったいないと喚いた悪役令嬢のせいで、かなり慌てて契約書にサインをしてしまったのだ。
とはいえそこは一年一組。委員長と白石さん、先生によるトリプルチェックはちゃんとした。依頼内容や拘束時間や金額、達成条件がワリとシンプルだったのは、ウィル様が妹さんに気を使った結果かもしれない。
よってティア様には詳細説明の義務が発生している。
まあ、こっちからお願いする間もなく、向こうからベラベラ喋り出したのだけど。俺たちが不利にならないように、こういうところはちゃんとしているのが悪役令嬢様なのだ。
ちなみに馬那が中心となって調べたペルメッダの軍制では、迷宮においては六名の前衛に加え、斥候とヒーラーが一人ずつというのが最小単位となっている。所謂分隊だな。数が足りていないヒーラーは、分隊持ち回りで忙しいらしい。で、ここに階位上げの対象者を二名か三名随伴させるのがペルメッダ国軍のやり方だ。
軍が迷宮に入るのは、あくまで地上での戦闘力を得るためのレベリングが目的であって、狩りではない。十階位なり十三階位なりの目標を達成した兵士たちは、それぞれの部隊に配属されることになる。
ペルマ=タに駐留する部隊は練度を維持するのと、迷宮の異変に対応するために、それなりの頻度で迷宮に入っているようだけど、地方の兵士なんかは年に数度なんだとか。
ティア様の補足によれば、現状は分隊を二個くっ付けることで、一部隊としているらしい。
「えっとつまり、六十人くらい集まるってことですね。八津の要求まで含めたら……、八十人もかよ」
暗算で答えを出した古韮が、悪い笑顔をヤンキー佩丘に送る。合流予定時刻が夕食後くらいなので、一品くらいは用意しておこうって方針なのだ。
俺がウィル様に求めたのは攻撃的後衛術師としては一般的な【水術】や【土術】使いを四名、可能であれば【鞭士】系を二名から三名。ムチ使いはレアジョブだけに、希望だけはしてみたってところだな。
そこに護衛を加えれば、なるほど古韮の言うように、二十人くらいの集団になるかもしれない。
「鵯、蟹、白菜を重点的にとのことですわね」
「三角丸太はもちろんだけど、牛と馬の対策はできてるってことですか」
「盾のぶつけ合い程度ですわ。あなた方の擬態を見て、最近になって芋対策で木製の分銅を導入したらしいですわよ?」
「おお。そりゃいいですね。見てみたい」
「今度お見せいたしますわ」
ティア様と古韮の軽妙トークをBGMにして、俺たちは迷宮を突き進む。
◇◇◇
「ここは四」
「全体的に上がってる、のかな」
「なんだっけ、有意差? 小説とかで読んだことあるけど、アレって高校数学だっけ?」
「俺たちの高校生活って二日半だしなあ」
「わたし数学って苦手」
「すみません。大学で学んだ記憶はあるのですが……」
「大学かあ。召喚が三年遅かったら違ったのかな」
「そうしたら、わたくしと出会えていませんでしたのよ」
草間の魔力判定に対し、各人が好き勝手を言っている。カオスだなあ。
先生が数学に疎くて、ティア様が俺たちの境遇をどう思っているのかはさておき、四層の魔力は確実に増しているようだ。
コレってそう遠くない将来、アウローニヤみたいに『魔獣の群れ』が発生しても不思議じゃない状況なんじゃ。
「八津くん、正面二部屋向こうから……、たぶん白菜。五体だよ。こっち向かってる」
そんな中でもメガネ忍者な草間は索敵を怠ってはいない。ちゃんと魔獣の接近を告げてくれた。
しかも現状で最高の餌をだ。
「右側の扉ふたつと後方確認!」
「右は大丈夫!」
「あっちはハルが走るね!」
他所から魔獣が接近していないか、俺の声掛けと同時どころか先行して、草間と春さんがダッシュで確認してくれる。周辺警戒への意識が高くて助かるよ。
「ミア、海藤、出番だ。この場で迎え撃つ。全員左に寄って射線を空けつつ防御態勢。二人に道空けろ!」
「おう!」
こんなわかりやすい状況で新兵器を試さなくてどうする。ティア様には申し訳ないけれど、ここは一年一組の新火力のパワーを見せてもらう場面だ。
「後先考えなくていい。全力で全部を倒すつもりでいけ!」
「ガッテン承知デス!」
「おうっ。いっちょやるかあ」
最終決戦兵器扱いの剛弓をミアにあっさり手渡し、俺は過剰とも思える指示を出す。たぶんだけど、この二人ならやっちゃいそうなんだよなあ。
◇◇◇
「ミアのはともかく、海藤の槍はどうなんだ、これ」
「鍋の具材くらいにはできる、よな?」
白菜の切れ端を手にした古韮が半笑いで海藤に話を振る。答える野球選手はやたらと申し訳なさそうだ。威力を誇ればいいのに。
眉をひそめながら無言で白菜の破片を回収している佩丘なんて無視でいい。全力全開なんて指示を出した俺の立場も無くなりそうだし。
「凄かったっしょ。あやかりたいねぇ」
「疋、どこまで本音だ?」
「全部~」
チャラ子な疋さんにからかわれた海藤が、肩を落とす。いや、だから、疋さんが言うように凄かったんだって。
五体で登場した白菜だけど、前線まで到達することができたのは一体だけだった。
三体はミアの剛弓による五射で沈黙。全弾が命中だ。【疾弓士】の名に相応しい、マシンガンみたいな速射であったことを付け加えよう。練習していた時からわかってはいたのだけど、ノリノリでガチの本気になったミアは化け物だよな。
ついでとばかりに普段使いの弓に持ち替えたミアは、一体を二射で無力化して草間に差し出すなんてマネをしてくれたのだから、頭が上がらない。ちなみにソレが近接距離までたどり着けた唯一の敵ってことになる。
そして海藤の槍だけど一投目は外れて、二度目の投擲で命中した。で、巨大ダーツが当たった白菜が爆散し、そこで海藤が固まってこのザマという展開だ。
遠慮を投げ捨てることができるミアとの精神性の違いが顕著だな。
魔力を纏った魔獣は硬い。四層では柔らかい部類の白菜ですら、後衛メンバーでは【鋭刃】でも使わない限り、短剣を突き刺すのにも一苦労するのだ。
ぶっちゃけ魔力が抜けた地上の丸太よりも硬いのは間違いないっていうのが、俺たちの感覚である。
それを一撃で爆発四散させるとは。ミアの剛弓ですら、そんなコトにはなっていないのに。
「えっとな、せっかくの初回だから【剛力】と【魔力付与】も、全力で全部乗せしたんだ」
「砲弾みたいだったね。見たことないけど」
「そっか」
「アレなら馬とか牛でもやっつけられるよ!」
「いけるかな」
「いけるいける! 海藤くんならやれるよ」
不必要な言い訳をする海藤にピュアな夏樹が笑顔で語り掛ける。みるみる元気になっていく海藤は、ワリと切り替えの早いタイプなのだ。単純ともいう。
「速射のミアと威力の海藤くん。なんてね」
「それっぽくていいじゃないか」
オタな野来と古韮が、俺の好物っぽい会話を始める。
「乱戦の前に確認できて良かったわね。展開次第かしら、指揮官さん?」
「だな。予想以上に凄い威力だ。戦いの幅が広がるよ」
「そ」
白いダブルヘッドサメを引き連れた綿原さんの楽し気な言葉に、俺は大きく頷いたのだ。
次回の投稿は明後日(2025/08/21)を予定しています。