第537話 剣と自由を得る
間に合いました。
「これはまさに血肉になりそうだな。味が濃いのが、またいい」
赤毛の熊さんみたいなおじさん、『赤組』組長のニュエット・ビスアードさんが、牛肉レバーつくね、もしくは串焼きハンバーグともいうべき料理を口にし、豪快に笑う。
「元気になってよかったですね」
「ああ。ありがとう。君たちのお陰だよ!」
冒険者マニア気質の強い文系オタな野来が嬉しそうに話し掛ければ、ビスアードさんは大きな声で返事をする。本当に元気だなあ。
さっきまで瀕死の重傷を負っていたビスアードさんだけど、いざ怪我が治ってしまえば、正体は大声巨漢の優しいおじさんだった。『ペルマ七剣』にして『唯の盾』。そんなあだ名を持つ人だけど、話してみればやたらと気さくだ。
というか俺たちの出会った『七剣』としてはマクターナさん、サメッグ組長に続いて三人目になるのだけど、全員が優しいんだよな。選抜条件がそうなっているんじゃないかと疑ってしまいそうだ。
副料理長な佩丘が一品目に作り上げた、細かく刻んだカニと白菜をコンブ出汁でクタクタになるまで煮込んだスープを飲むまでは大人しめだったビスアードさんは、二品目の牛肉とレバー、そこにニンニクをマシマシに突っ込んだ串焼きハンバーグの段になってからはやたらと明るくなっていった。
復活が早すぎる気もするけれど、もしかしたら【消化促進】とか持っているのだろうか。もちろんそんな技能は文献には残されていないけど。
「病気してたわけじゃないし、【聖導】……、アレを受けたあとは腹が減るんだ」
「経験したくないなあ」
凄い勢いで料理を口に運んでいるビスアードさんを見た馬那が失言しつつも体験談を語り、それを聞くイケメンオタな古韮が苦笑いを浮かべている。
気を抜くと【聖導術】っていう単語が出てくるよな。俺も気を付けないと。
「上杉こそ大丈夫か?」
「わたしは魔力を使っただけですから」
古韮がさっきまで場を支配していた聖女な上杉さんに話を振るけれど、上品に串焼きを手にした彼女は普段通りの優しい顔だ。【聖導術】を行使した側とされた側でビジュアルが違いすぎるんだけど。
【聖術】や【造血】、そして【聖導術】は魔力現象ではあるが、肉でも血でも材料自体は患者の体から供給される。魔術はエネルギーではあるものの、物質を生み出さないのがこの世界の魔力ルールだから。
SFオタな藍城委員長の表現するところで『質量とエネルギーの等価性』。委員長曰くアインシュタインがどうのこうので、もしも魔力で物質を生み出そうとしたならば、個人レベルではおよそ不可能だそうな。
伝説に伝わる勇者は巨岩を宙に生み出して魔族にぶつけたらしいけど、一体誰が見届けたんだろう。
「いやあ、若いのに大したもんだ」
「迷宮でこんなまともなモノ、初めて食ったぜ」
「組長を助けてくれてありがとうなあ」
騒がしく食事をしている『赤組』の皆さんも、表情は明るい。
ただし笑顔なのは首から上だけで、装備なんかはボロボロだ。
まだ詳しい話は聞けていないけど、調査に向かった五層で魔獣の大群にブチ当たり四層まで撤退してきた彼らは、多くの装備を失っていた。盾や剣、槍などはもちろん、革鎧はあちこちのパーツが千切れていて、新調するしかないんじゃないかっていう人が半数にも及んでいる。
中には冒険者の必須装備である背嚢すら落としてきた冒険者もいるようだ。もちろん五層で得られた素材なんてのは皆無である。
立て直しには金銭やら素材やら、相応の負担が必要だろう。それでも彼らは笑っている。
「生きて地上に戻ることができれば、それで俺たちの勝ちだ。そんな顔をしないでくれ」
「あ、すみません」
顔に出ていたのだろう、『赤組』のボロボロっぷりを気にしていた俺に、ひと際大きな笑顔でビスアードさんが語り掛けてきた。
「それも全ては『一年一組』のお陰だ。『赤組』はこの恩を絶対に忘れない」
「ありがとうございます。わたしたちも今日の出来事を誇りにしますね」
ビスアードさんから視線を向けられた上杉さんは、小さく微笑みながらいい感じに返事をする。聖女してるよなあ。
「そうとも、存分に誇ってくれ。俺たちがこれから上げる成果の半分は、君たちの活躍みたいなもんだ」
こんな状況でも自信満々に功績を上げると言ってのけるビスアードさんも凄い根性だ。こんな目にあっても冒険者を辞めるなんて空気はどこにもない。
近くでこちらの様子を窺っている組合事務のマクターナさんとミーハさんも、どこかホッとした感じだな。
なにしろペルマ迷宮の最高クラスの戦力だ。五層調査を求めた組合側としても、ヒヤヒヤモノだったのだろう。
◇◇◇
「本当に念のためだったんです」
食事もひと段落し、さてこれからどうするかというところで、マクターナさんがネタバレとまではいかなくても、ちょっとした思惑を開示してくれた。
どうやらだけど、マクターナさんが予約してまでこの区画を選んでおいた理由のひとつに、『赤組』が使うであろう五層への階段へ通じているというのがあったらしい。
つまりここで俺たちが『赤組』の人たちと出会ったのは、タイミングもあるけれど、まるっきりの偶然ではなかったということだ。時間帯次第では行き違いもあっただろうし、もしもの保険が大当たりしたことになる。ご都合主義スレスレだな。
今回は上杉さんが仕切ったけれど、もしも五層に誰かが取り残されたという展開だったら、マクターナさんはどうしていたのだろう。これ以上は想像しない方がいいか。
「それに救われたんだ。俺たちとしては感謝しかない」
「無理をお願いした上に、装備まで失わせてしまいました」
「いつもみたいに笑えよ、テルト。『七剣』仲間だろ? 当面五層はゴメンだが、四層の異常には挑むつもりだ」
「そう言っていただけると救われます」
明るく笑うビスアードさんに対して、神妙なマクターナさんの構図はどうにも座りが悪い。マクターナさんには朗らかであってほしいと思うのは、この場では求めすぎなんだろうか。
今回のケースで組合から『赤組』への救済措置は発生しない。
依頼を受けた以上は自己責任。達成困難だと思ったのならば、最初から受けなければいいだけの話、っていうのが冒険者の理屈だ。たとえどれだけの損害を出そうとも、それこそ冒険者が欠けたとしてもっていうのがなあ。
「さて、【聖術】代だ。こちらとしては百万でも二百万でも積んでいいんだが。そういうのじゃないんだろう?」
改まって俺たちに向き直ったビスアードさんが持ちだしたのは治療費についてだった。それもこの場合は、値段を付けること自体が難しい『特別な』【聖術】、要は【聖導術】についてってことになる。
地上に戻ってから改まってということにもできるのだけど、今回はちょっとマズい。ビスアードさんもわかっているからこそ、ここで持ち掛けてきたのだ。
一度腰を落ち着ける形になるし、それだけ調査に割ける時間も減るのだが、マクターナさんは黙認してくれるようだ。
この件については、ぶっちゃけ『赤組』よりも『組合職員』であるマクターナさんとミーハさんの方が厄介なんだけどな。
「ある程度はご存じかもしれませんが、まずは僕たちの事情から説明させてください」
対して口を開いたのは委員長だった。こういう話ともなれば、ウチのクラスで委員長以上の適任などいやしない。
「伝承に残された勇者とは別口ですが、たしかに僕たちはアウローニヤに突如『出現』してしまった存在です──」
そこから委員長は一年一組のこれまでを語り始めた。
異世界転移から始まり、アウローニヤの貴族たちに翻弄され、当時の第三王女、現女王に庇護されることでなんとかペルメッダまで到達したという流れを全て。もちろん詳細な部分はボヤかしてはいるものの、大筋で嘘はついていない。
そして、何よりの目標は故郷への帰還。そのヒントを探るために迷宮探索を続け、それ故に階位を上げていることも委員長は明確に伝えた。
この流れ、ペルメッダに来てから何度目だろう。
俺などは、誰にどこまで隠し事をしているのか、すでに記憶に残っていない。それでも書記の白石さんが随時メモを残してくれているので、地上に戻れば確認くらいはできるのだけどな。
「『一年一組』については、俺たちも裏取りくらいはしていたさ。まあ、傘下の連中が勝手にやってくれたんだけどな」
「全部とまでは言いませんが、信じてもらえると助かります」
「大筋で納得したということにしておこう。ついでに言わせてもらえば、君たちは勇者ではなく『冒険者』だ。たとえ聖女やワケのわからん術師が紛れていようともな」
前提条件を共有し合ったビスアードさんと委員長が頷き合う。
そしてビスアードさんが付け加えた部分こそが重要だ。冒険者同士の決め事は守られるし、秘められる。何しろこの場には『一年一組』と『赤組』の組長が揃っているのだから、約束事は簡単に締結できるのが楽でいい。
ちなみにビスアードさんの言う『術師』とは、食事ということもあって白に切り替えたダブルヘッドシャークを肩に乗せた綿原さんを指している。
さておき、今回俺たちは『赤組』に大きな貸しを作った。すなわち──。
「特別な【聖術】については秘密にしてもらえますか?」
「当然だろうな。噂になどなったら、君たちの拠点に客が溢れることになる。それこそ墓から掘り起こした棺桶すら運び込みかねん」
委員長の要求にビスアードさんは苦笑で答える。ペルメッダに棺桶文化があるのは置いておいて、笑えない冗談……、では済まされないんだろうなあ。
「金なり、泣き脅しなり、権威なり、しまいには暴力だろう。俺たちは全員が口をつぐむ。傘下の連中や親兄弟はもちろん、ウチの事務員にもだ。『赤組』組長のニュエット・ビスアードが約束しよう。いいな? お前ら!」
「うす!」
「ありがとうございます」
ビスアード組長の宣言に『赤組』一同が一斉に応える。対するこちらは滝沢組長が礼を述べ、仲間たちが揃って軽く頭を下げた。
「しばらくは禁酒だなあ。口が滑ったら大変だ」
「なあに、装備代でカツカツなのは事実だ。そういうことにしとけ」
組長が無事に復活したのもあってか、『赤組』の人たちは軽い冗談を飛ばし合っている。実に冒険者っぽくていいな。
「よおし。合意が取れた上でだ。幾ら払えばいい?」
いよいよ治療費についてか。秘密にしてやるからタダにしろなんて言い出さないとは想像していたけれど、やっぱりそうくるあたりが立派に冒険者だ。
『赤組』は立て直しのために懐事情が厳しくなるのは理解しているし、【聖導術】に金額なんて付けられるわけもない。委員長をはじめ、こちらは悩ましい顔が並ぶ。マクターナさんも見ているし、何にも無しっていうのもなあ。
実は当たりを付けているブツがあるのだけど、この状況で手を上げるのには勇気がいる。それでも振り絞れ、綿原さんのサメから何かをチャージするんだ、俺。
「あの」
「八津?」
ド根性で手を上げた俺に委員長が意外そうな視線を送ってくる。まあ委員長だけでなくクラスメイト全員が、なんだけどな。
こういう交渉事で俺が出張るなんて、ほぼあり得ないのだし。
「この状況で凄く言い出しにくいんですけど」
「ヤヅ、だったか。昨日の総会では世話になった。いいぞ、何でも言ってくれ」
おずおずと情けない口調の俺にビスアードさんは笑顔で先を促してくれる。
そうか、組長なんだから臨時総会に出ていたのも当然だ。覚えてもらっていたなんてな。
「ビスアード組長の腰にある短剣ですけど、五層素材だったりします?」
そんな組長の言葉に背中を押され、ちょっと早口になったけれど、何とか俺は言い切った。
搬送する際に余計な装備を投棄したのだろうビスアードさんは、あだ名の象徴たる大盾や剣も持たず、背嚢すら外されている。革鎧にいたっては治療のために右肩から下が存在していないくらいにはボロボロだ。
それでも外す時間が惜しかったのだろう、腰のうしろに横に括り付けられている短剣は残されていた。冒険者どころか迷宮探索者の必須装備。
「八津、お前なあ」
呆れかえったとばかりに古韮がツッコんでくるけれど、これは大チャンスなんだよ。
どうせ金額換算なんて無理なことだし、俺たちはそれ程金に飢えていない。だったら有用な現物が一番じゃないか。俺は伊達に【観察者】をやっちゃいないんだ。今は【強奪者】かもだけど。
「確かにコレは五層素材だ。猪の角だな」
「実は俺、後衛職なんですけど、四層のトドメに苦労していて──」
猪に角とか相変わらず魔獣は意味不明だけど、この際そんなのはどうでもいい。さらに早口で俺たち、というか敢えて俺限定みたいな感じで事情をまくしたてる。短剣ドロボウなんて俺一人で十分だから。
「ははっ、ははははっ!」
懸命に説明を続けようとした俺だけど、それはビスアードさんの大きな笑い声でストップさせられた。見れば『赤組』の皆さんまでもが笑っている。
「後衛職が四層で階位上げとは見上げたものだ。金じゃなく、武器を望む姿勢も気に入った!」
「そ、それは、ありがとうございます」
どうやら俺の要求はビスアードさんにツボだったらしい。『赤組』の人たちも好意的な顔になっているし。
だから呆れた視線を向けるのはよしてくれないか、俺の仲間たちよ。
「何本だ?」
「え、えっと」
いきなりズバリと切り込んできたビスアードさんに、俺はうろたえ口ごもる。どうしよう。
「二……、三本でっ!」
「いいだろう! 見事な【聖術】と五層素材の短剣。共に値が付かないあたりが気に入った!」
俺の思い切った要求に対し、ビスアードさんはストレートに打ち返してきた。
ビスアードさんの言うように、五層素材の武器には値段が付けられない。そもそも滅多に売りに出されないからだ。
五層の魔獣にも難易度があって、武器にできるような敵は総じて強い。四層だったら牛や馬あたりがそれに当たる。しかも使えるのは角や牙、もしくは一部の骨という限られた部位。つまり材料そのものが希少なのだ。
五層に潜れる冒険者が少ないのもあって、大抵の場合は自分の組のために使われる。もちろん予備としてストックもするので、ますます出回らないっていう循環だ。
だから俺はビスアードさんが看破したように、値段の付けられないモノ同士の交換を持ち出した。
三本は欲張りすぎだったかもしれないが、みんな、俺はやってのけだぞ!
「あの、本当にいいんですか?」
「長剣や盾ともなると難しいところだが、短剣程度なら在庫もある。そう気にしなくてもいいぞ」
だから委員長、そこで余計な遠慮をしないでくれ。
俺だって装備を失った人たちに申し出るのには勇気が要ったんだからさあ。
「せっかくだからこの場で渡そう。おい」
「へいっ!」
組長チックにビスアードさんが組員に声を掛け、二人の冒険者が腰の短剣を鞘ごと引き抜き、そしてわざわざ聖女と御使い、すなわち上杉さんと奉谷さんに手渡した。
なんだか献上物みたいになってるな。
「ほれ、ヤヅ」
「……ありがとうございます」
そしてなんと組長自身が、自分の腰に残されていた短剣を俺に差し出してきた。言い出したのは俺の方からだし、受け取ることにはやぶさかじゃないが、お礼の声はちょっと震えていたかもしれない。
「大事にしろとは言わん。生き残るために、強くなるために使い潰せ。壊れたならば──」
「つぎは自分の力で手に入れます」
「それでこそだ!」
どうやら俺の回答は百点だったらしい。巨漢のビスアード組長は、今日一番の笑顔で呵呵と笑ってくれた。
「さて、『赤組』と『一年一組』のやり取りはここまでだ。報告書には彼らが俺たちを【聖術】で助けてくれたと記載しよう。むしろ重要なのは五層の情報だからな。それでいいな? テルト」
「はい。構いません。冒険者たちの提出する報告書が『盛られている』のはいつものことですので」
ここまで黙ってこちらの様子を窺っていたマクターナさんに向き直ったビスアードさんは、表情を真面目に切り替えて言い切る。
この場合は少ない方に『盛る』って意味でいいんだよな?
そういうことより、問題はここからだ。『組合職員』であるマクターナさんとミーハさんには、冒険者とは別口で報告書を上げる義務があるのだから──。
◇◇◇
「……冒険者と違い、組合職員の報告書において過剰な修飾は好まれません。見たことと聞いた内容を、そのまま端的に記載することが推奨されています」
唐突にマクターナさんが口にした言葉に、緊張した面持ちでいたミーハさんの口元が歪んだ。アレは笑いをこらえたんだろうな。
さて、今のマクターナさんのセリフのどこに笑う要素があったのか。
「わたしが提出する報告書では、『一年一組』のウエスギさんが【魔力譲渡】を受けつつ【聖術】を行使した、と記載されるでしょう」
続く言葉で周囲にも理解の色が広がる。
マクターナさんにかかれば『特別な』【聖術】など、【聖術】でしかないということだ。【魔力譲渡】を受けながらっていう部分から、かなり念入りに治療を行ったとも読めるだろう。上杉さんが【聖導術】という単語を使わなかった以上、確かに嘘ではない。
俺たちとの戦いに参加するのを『教導』という体でごまかしたマクターナさんだけど、どうにもこじつけが上手すぎる。伊達に一等書記官を名乗っていないってか。
「加えて推測も大切とされます。わたしの見解ですが、【聖術】の効果には個人の相性もありますし、事前の処置も適切だったのでしょう。結果として『赤組』は装備の損耗こそあれ、全員無事で五層の情報を持ち帰ることになった。こんなところでしょうか」
「ここはまだ四層ですけどね」
白々しい文言を並べるマクターナさんに対し、完全に笑顔になったミーハさんがツッコミを入れた。
「マクターナさんは、本当にそれでいいのですか?」
甘々対応をしてくれるというマクターナさんに冷や水を浴びせたのは、張本人たる上杉さんだ。気配りの権化な上杉さんが、そう言いたくなる気持ちも理解はできるんだよな。
上杉さんの【聖導術】は、条件付きではあるものの冒険者引退レベルの大怪我を治してしまえる技能なのだ。昨今の迷宮異常を考慮したら、有益であることなんて言うまでもない。
ましてや、ひたすら冒険者を救おうとする『手を伸ばす』マクターナさんの気持ちを思えば……。
「あまり片方に肩入れするのもよろしくありませんね。ですから報告書に添えて、上にはわたしから提案もしておきます」
「何をです?」
上杉さんの問いかけに対するマクターナさんの返事は、なんだか妙な内容だった。
「後日組合から依頼が出されることになるでしょう。具体的には──」
多くのヒーラーと魔力タンクを抱え、四層でも普通に戦えている『一年一組』を確認したマクターナさんは『ごく限られた』組合上層部に提言をするらしい。内容としては『一年一組』を定期的に三層の階段付近に常駐させてはどうかといったものだ。
階位は上げられないまま、ただひたすら冒険者の安全に気を配る日々か。あり得ないよな。
「断ってください。それで終わりにさせます」
キッパリと言い切ったマクターナさんはとても良い笑顔であった。
終わりになるでも、終わると思いますでもなく、終わらせるのかよ。そういうところが実にマクターナさんだよなあ。
次回の投稿は明後日(2025/08/07)を予定しています。