第534話 事務員さんが望むもの
「っしゃあ。十二だ」
白菜に短剣を突き立てた野球少年海藤が大きな声を上げた。
ジャガイモとの戦闘中に背後から白菜の急襲を受けた一年一組だったが、一部のフードロスを除いて結果は悪くない。
当初は藍城委員長が、後半ではロリッ娘バッファーな奉谷さんから【身体補強】をもらった鮫女の綿原さんとアネゴな笹見さんがメイスで叩きまくった合計二十個のジャガイモが粉々になっている。残念な結果だが、挟み撃ちを回避するためには片側を手早く終わらせる必要があったのだ。
それでも遠距離からの先制攻撃と頼もしい騎士たちの盾で七体の白菜は受け止められた。ジャガイモの無力化を担当していたチャラ子な疋さんと木刀女子な中宮さんが前線に出るまでの時間を稼いでからは一方的だ。
麻痺毒を持つ蔓が厄介な白菜だけど、ウチのクラスの場合、中宮さんと疋さん、ミアはその手の敵に滅法強い。タイマンで叩き潰すのならば滝沢先生や陸上女子な春さんも強力なカードなのだけど、白菜の無力化にはあまり向いていないんだよな。
で、前衛数名が麻痺をもらい皮肉屋の田村に回復されつつも、トドメの全てを十二階位が間近だった海藤に回せたのだ。七体で登場した白菜を六体倒したところでのレベルアップである。
白菜相手は本来先手が有利なのだけど、盾メンバーは麻痺を食らいつつもよく頑張ってくれた。
「ふん。白菜の方はまあまあか」
「そりゃどうも」
強面料理番の佩丘から合格点をもらえる程度には奇麗に白菜を倒してみせた海藤は、中々大したものだと思う。だから佩丘、ジャガイモの方を見てため息を吐くのはやめろ。
「じゃあ残り一体は、草間かな」
「うん。やるよ」
俺に促されたメガネ忍者な草間が前に出た。
疋さんのムチで縛られ、イケメンオタな古韮の盾によるダブル【魔力伝導】で身動きすらできていない白菜など、前衛職なら誰でも倒せる。十二階位まではまだしばらくかかるだろうけど、トドメ力に欠ける草間には楽なシチュなら獲物を譲っておくべきだろう。
「えいっ」
草間の振り下ろした短剣は、見事一撃で白菜を倒したのだった。
◇◇◇
「挟み撃ちにも動じず、倒す人まで調整しますか」
「怪我も多かったし、素材は台無しですけどね。冒険者としては失格です」
副音声で白菜の到来を知っていたんじゃないだろうな? なんて聞こえるようなマクターナさんの声に胸がドキつくが、俺はなんとか苦笑いを浮かべてみせる。
実際素材の半分は台無しであるし、麻痺毒を筆頭に白菜の体当たりで結構なダメージももらってしまった。普通のパーティだったら【聖術師】の魔力がヤバかったかもしれない。
レベリング対象を選べたのは途中で白菜が来るだろうということを念頭に入れていたからであって、もうちょっと追加の敵の到着が早かったらヤバかった。今回はギリギリ運が良かっただけだ。
「必要でしたから仕方がないのは理解できます。これからのペルマでは、こういったことが増えるのでしょうね」
砕け散ったジャガイモの破片を見つめるマクターナさんが、そっとため息を吐く。
「お願いがあります」
突如皆に聞こえるように、マクターナさんが声を大きくした。そこに笑顔は無く、瞳にはなにかを決意したかのような色が見える。
「ここから『複数種』の魔獣と戦闘になった時、わたしとミーハも参戦させてもらえないでしょうか」
「……気持ちはわからなくもないですけど、組合職員として、いいんですか?」
事前の打ち合わせとは真逆の提案をしてきたマクターナさんに驚くクラスメイトたちの中、サメを泳がせる綿原さんが理解を前提にしたかのような問いかけをする。
驚く連中の気持ちも理解はできるというものだ。
今回の依頼はミーハさんが魔力量を数字として特定できるようになるのが目標であって、マクターナさんはオマケに過ぎない。あくまで十階位であるミーハさんの護衛である。
マクターナさんのことだから緊急時にはミーハさんだけでなく、『一年一組』全員を守ろうとはするだろうけど、初っ端から自発的にっていうのはダメだろう。
ここまで一年一組がやったことといえば『芋煮会』の実践やら、魔獣の群れとの戦闘あたりだけど、マクターナさんに何か思うところがあったのだろうか。いや、参加したいと言ってきた以上、そうなんだろうな。何となく言いたいことも想像できるし。
「ちょっと待って。一度みんなにもわかるようにしておこう」
そこに委員長が割って入った。たしかにこれは全員が理解しておいた方がいい。
洞察力の高い委員長はもちろんだろうし、先生や上杉さん、田村、古韮あたりも気づいてはいるだろう。ほかにも数名が納得しているような表情だ。
逆の筆頭格は安定安心のミア、春さん、奉谷さん、夏樹ってところだな。揃って首を傾げている。今回ばかりは『なんかやっちゃいましたか?』ムーブではない。
「わたしとミーハは、今後四層の魔獣の群れに対峙する可能性があります。わたしは緊急時の対応が主となりますが、ミーハは定期的に四層の魔力量を調査しなくてはいけません」
視線で委員長に説明を求められたマクターナさんは、落ち着いた声で話し始めた。
「見ているだけでも多くを学ばせていただきましたが、実際に体感してみたいと思ってしまいました」
続いた言葉は如何にも武闘派なマクターナさんらしいモノだった。伊達に『ペルマ七剣』をやってはいない。ミーハさんは……、ちょっと顔色を悪くしているけれど、それでも口を挟まない。上下関係だよなあ。
要はマクターナさん、俺たちと一緒に実戦経験をしておきたいと言っているのだ。非戦闘職のミーハさんまで巻き込んで。
組合職員としていろいろ見せつけられて、思うところがあるのもわかる。
「もちろん『一年一組』の階位上げを邪魔はしません。わたしは決してトドメを刺さないように気を付けますし、ミーハには防御に徹してもらいます。もちろんミーハの護衛にはわたしが責任を持ちますので二人とも居ない者として……、とはいきませんね」
参加条件を並べるマクターナさんは、最後で苦笑いを浮かべた。
物理的に存在している人間を戦闘状態で無視なんて、できるはずもない。
「ですので、わたしとミーハをヤヅさんの指揮下に入れてもらいたいと考えます」
「そうなりますよね」
キッパリと言い放つマクターナさんに、綿原さんがサメと一緒に深く頷く。ほかの面々も似たようなものだ。
結局はそうなるんだよな。もう慣れたよ。
最初の無茶振りはハウーズ救出騒動のヒルロッドさんで、そこから迷宮泊のキャルシヤさんだったっけ。最近ならティア様とメーラさんも当たり前になっているし、一年一組二十二人にプラスして二人くらいなら軽いものだと思ってしまう俺は、一体何様なんだろうなあ。
けれどもこのケースにおける問題点はそこじゃない。それこそクラスの同意をすっとばして綿原さんが率先してツッコミを入れた部分にある。
「指揮関係はそうなって当然ですけど、組合の職員さんが特定の組の狩りと階位上げに協力する形になりますよね」
どこが当然なのかちょっと意味不明だけど、綿原さんの言葉こそがマクターナさんの提案に含められた問題点そのものだ。
「それは否定できません」
そんなことをのたまったマクターナさんは、ここで笑顔になった。浮かべるべき表情が逆だと思うんだけど。
冒険者組合はあくまで冒険者の取りまとめをするための団体であって、各組のような活動は本来ではない。
顧問を除く組合職員は無国籍で冒険者の資格を持つものの、冒険者的活動をしてしまえば、それはもう巨大な組と変わらないことになってしまう。組合のなすべきことは、冒険者たちが健全に迷宮を探索できるようにする手助けだ。
どこかの組に肩入れなんて、とんでもない。
「今回の依頼とは別の形になりますが、そうですね……、『教導』ということで、どうでしょう」
「教導……」
「はい。ペルマ迷宮の現状は、明らかに異常事態と言えます。『一年一組』は対応策を持ち、わたしはそれが有効なものであるとこの目で確認しました。そこで、さらなる教えを請いたいのです」
「見るだけでは足りないんですか?」
詭弁とも取れそうな何とも微妙なラインを引いてくるマクターナさんと渡り合う綿原さんの図である。
「昨日の臨時総会でヤヅさんが語ったのと同じ扱いですね。あの場では言葉を交わし、ここでは共に戦うことで理解を深める。そういうことで」
「本当に大丈夫なんですよね? お互いにって意味ですよ?」
「わたしは一等書記官です。それなりの裁量権を持っていますのでご安心ください。皆さんが真っ当な冒険者であろうとしていることは重々承知しています。その上で今回の件は、組合上層部も納得するでしょう」
むしろ俺たちのことよりマクターナさんを心配するかのような綿原さんに、一等書記官さんはニコリと微笑んでみせた。
さて、この提案を受けたとして、俺たちのメリットとデメリットだ。
ミーハさんという荷物を背負うことにもなるが、一年一組にとってはプラスの方が巨大になる。マクターナさんなら、アタッカーでも盾役でも最高レベルでこなしてくれるのは間違いないだろう。中宮さんと佩丘を足して二で割って、かさを増したような人が参加してくれるのだ。
ミーハさんにしても専門の斥候職として優秀なのは、折り紙付きだしな。荷物とか表現してごめんなさい。
つまりはだ、双方に処罰みたいなものが無いのが確定するなら、俺たちにとっては非常にありがたい申し出ってことになる。
「最初は本当に見学だけをさせてもらうつもりだったんです。ですが皆さんの戦いっぷりと『魔獣溜まり』の実態を目の当たりにしてしまうと……」
綿原さんを筆頭に受け入れ容認の態度となっていく俺たちの様子を見たマクターナさんは、話を続ける。
彼女の体が微妙に震えているのは、これから予想される迷宮の異変がどれほどのものになるか、立ち向かう冒険者たちがどうなってしまうのかを想像しているからかもしれない。
マクターナさんは『手を伸ばす』人だ。組合のルールを少々逸脱したとしても、多くの命を選んだって不思議はない。
「正直を言えば、どうしても腕が疼いて仕方ないのです」
「あはははっ!」
「さすがはマクターナさんデス!」
右腕を握りしめながら発せられたとんでもないオチを聞いて反応したのは、普段は堅物で真面目な中宮さんと、ヤンチャの体現者たるミアだった。
こりゃあ俺たちの負けかな。
「わたしはマクターナさんの提案に賛成。さっきの演武じゃない、本物が見られるのよ?」
目元の涙を指で拭った中宮さんが、真っ先に手を挙げた。
「『ペルマ七剣』のリアルバトルだ。見逃すのは損だよ」
文系オタな野来が中宮さんに続く。視点がそこか。日本語の部分でマクターナさんたちが首を傾げているが、お構いなしだ。
「だったらやっぱりミーハさんの階位上げも」
「それは『一年一組』の利益になりません。獲物と機会を奪うのは、道理に反するでしょう」
性根が善良と正義に振り切れている春さんがミーハさんのレベリングを蒸し返すけれど、それはマクターナさんによって即却下された。境界線が厳しいなあ。
「ま、仕方ないかあ。でもまあハルも賛成」
それでも春さんはケロリと手を挙げる。切り替えが小気味いいのが彼女らしいよ。
「灰色っぽいけど、書記官を信じますよ。僕も賛成かな」
「教導だったら『灰羽』ってな。委員長も上手いこと言うじゃないか」
「言われて気付いたよ」
委員長と古韮もバカを言いながら賛成に回った。
「いいんじゃね」
「むしろ頼もしいっていうか」
「頑張ろうね」
こういう流れになれば、一年一組は意見が一致するのが特徴だ。ましてや今回はメリットが大きいものだから前向きになれる。
気づけば先生や、マクターナさんとのやり取りで正面に立っていた綿原さんも手を挙げている。
「八津くん?」
みんなの勢いに対し完全に出遅れた俺を綿原さんが不思議そうに見ているけれど、手を挙げる前にひとつだけ言っておきたいことがあるんだ。
「条件があります」
「なんでしょう」
マクターナさんの方を見てから横のミーハさんに視線を送り、俺は口を開いた。
「ミーハさんの護衛についてです。俺の指揮に従うっていうなら、ミーハさんも平等に扱いましょう。もちろん怪我の覚悟だってしてもらいます」
「……ありがとうございます」
俺のセリフに黙ってしまったマクターナさんを他所に、ミーハさんは笑顔で頭を下げたのだ。ならばとばかりに、仲間たちと同じく俺も右手を挙げる。
「ティア様とメーラさんの時とは違うコト言ってるよね。八津くん」
夏樹のツッコミは真っ当だ。なにしろ俺は普通に出遅れただけで、せっかくだからと何かカッコいいことを言ってみたかっただけだったのだから。
だから君たち、とくに女子。俺に冷たい視線を送るのはやめてくれたまえ。ミーハお姉さんのことはちゃんと防御を万全でいくからさあ。
こうしてマクターナさんとミーハさんは、謎の効果音が幻聴できるくらいの勢いで俺たちの仲間になったのだ。
◇◇◇
「海藤はともかく、委員長は何も取らなくて良かったのか?」
「俺はどうでもいいのかよ」
移動中の隊列前方から聞こえてきた古韮のセリフに、こちらは後方を行く海藤がボヤく。
「【視野拡大】か【鋭刃】で迷ってたんだけどね」
「五層の話でビビったか? 委員長」
「そんなところだよ。古韮は十二階位でどうする気なんだい?」
「まあ、俺も温存……、かな」
海藤の声が届かなかったのかどうかは不明だが、並んで歩く二人のしている会話の内容は、十二階位を達成した委員長が、結局技能を取らなかった理由だ。
海藤と委員長は二人ともして、技能の取得を見送った。
十二階位で海藤が取る可能性があった技能といえば【握力強化】【鉄拳】【聴覚強化】あたりが有力だったが、どれも必須という状況ではない。
【剛擲士】としてのアイツは完成の領域に入っている。勇者基本技能である【平静】【睡眠】【痛覚軽減】はさておき、【剛力】を含む身体強化系を網羅し、視覚強化系三点セットも持っているからなあ。そこに加えて【魔力付与】だ。ピッチャーとしてなら万全だよな。
俺の感覚だと【鉄拳】でメイスの強化を図るって感じになるのだが、海藤は迷っているようだ。
「【上半身強化】がお勧めデス。ワタシとお揃いになれマスよ?」
「体のバランスが崩れるのはゴメンだよ」
隊列の脇を固める【疾弓士】のミアが【上半身強化】仲間を増やそうと画策してくるが、海藤は苦笑いで断りを入れる。【安眠】の時といい、あのエセエルフはお揃いが大好きだよな。
「【鋭刃】が出ていればなあ」
「料理当番と解体を頑張るしかありませんね」
「ご指導頼むわ」
なおもボヤく海藤に、今度は聖女な上杉さんから素敵なツッコミが入った。
前衛職メンバーで【鋭刃】が出現していないのは先生と海藤だけだ。それぞれ【豪拳士】と【剛擲士】だから仕方ないという受け止め方もできるけど、ウチのクラスではバリバリな後衛の上杉さんほか数名がキッチリ出現させている。あまつさえメガネおさげな白石さんやポヤっとアルビノな深山さんに至っては普通に運用しているくらいだ。
一年一組には職を問わずに技能が連鎖しやすい『クラスチート』が存在しているが、ある程度は出現条件に縛られている。後衛職で【鋭刃】が出ているのは、総じて『刃物を使いまくっている』メンバーだ。
上杉さんは料理番としてもちろんだけど、白石さんや深山さんの場合は大型魔獣に刃物が通らなかったために、『多数の』小型魔獣を倒さざるを得なかったという事情がある。条件としては夏樹や奉谷さん、そして俺も該当するのだけど、この三名はまだ出ていない。予測では『めった刺しの赤目』事件の例もあるように、回数以外で精神的な要素もあるんじゃないかとされている。
結論としては追い詰められた状況で刃物を使いまくるのが手っ取り早いけど、そういう事態はイヤだなあって感じだ。
ということで、料理をするか解体作業を頑張るかってことになる。
「海藤なら【鋭刃】じゃなくても、メイスを殴りまくる方向でいいんじゃないか?」
「五層を拝んでからだな」
「まあ、そうだよな」
せっかくだから俺も会話に参加してみるけれど、行きつくところは結局そこだ。
「深刻にさせてしまいましたら……」
ミーハさんと並んで隊列の中段にいるマクターナさんの声には申し訳なさが詰め込まれていた。
「そんなことはありません。先を深く考えていなかったこちらの落ち度ですし、内魔力の温存は全体方針みたいなものですから」
「そうそう。当たって砕けたくないっしねぇ~」
湿っぽくなりかけた場に、優し気な上杉さんとチャラい疋さんの声が飛ぶ。
「現状で四層を問題なく戦えているし、前々から狙っていた技能でもない限り、って感じでいいんじゃないかしら」
「そうだね。ここで魔力の温存は悪い手だとは思わないし」
最後は、中宮副委員長と藍城委員長によるまとめであった。落としどころとしては無難だろうし、二人ともが気軽い調子なのは気遣いもあるはずだ。
「お気遣い、ありがとうございます」
まだちょっといつも通りの朗らかさまでは届いていないけど、それでもマクターナさんは笑ってくれた。
そうそう、五層の話を聞きたがったのはこっちからなんだから、気に病むことなんてどこにもないんだよ。
「皆さんはご立派です」
「ミーハさん?」
柔らかくなりかけた空気の中、ミーハさんがキリリとした表情で口を開いた。
魔力量の確認のために横にいたメガネ忍者な草間がミーハさんの唐突な発言に驚いているけど、みんなの気持ちも似たようなものだろう。なんでここで?
「当たり前のように全員で五層を目指すなんて、わたしには想像もつきません。半数が後衛職なのに」
心底から感心しているという響きを持つミーハさんの言葉だった。
通常の冒険者は十三階位を達成し、四層で安定した活動が可能な技術を身に着けた状態がゴールとなる。後衛職なら十階位だ。
そこから先、つまり五層への挑戦はチャレンジャーの領域。それこそまさに『冒険者』という単語がふさわしいと俺などは思うのだが、この世界では意味が違っている。
職業冒険者と逸脱した冒険者の違いってところか。
俺たちは二十二人が揃って壁を乗り越える覚悟でいる。ミーハさんはそれがどれだけ凄いことかと、そう言っているのだ。
「わたしも十三階位を目指したいと思います。そこから先は無理かもしれませんけど、後衛職が四層で戦えるところを皆さんに見せていただきましたから」
自分も上を目指すとキッパリと言い切ったミーハさんに、マクターナさんが優し気な表情で頷いている。美しい後輩と先輩の光景だなあ。
それにしても後衛職なのに十三階位を狙うと言い出したミーハさん、拳士であるにも関わらず十三階位など通過点だとのたまったティア様。アウローニヤでもたくさんの人たちが続々と、これまでの常識を乗り越えようとしている。
俺たちの周囲はそんな人たちばっかりだ。
明るく前向きな気持ちになって、俺たちは迷宮四層を突き進む。
◇◇◇
「取る。今すぐ取るわよ! あはっ、あははははははっ。こういうのを待っていたのよ、わたしはっ!」
そして三十分後、迷宮に狂気というか狂喜の叫びが鳴り響いた。
次回の投稿は明後日(2025/08/01)を予定しています。