第532話 戦い方を見せつけろ
「やっぱ蒸した方が美味いよなあ」
「迷宮で贅沢抜かしてんじゃねえ」
バターを乗せたジャガイモの欠片を口に放り込む野球少年海藤の言葉を聞いて、料理人な佩丘が顔をしかめて文句を付ける。
うん、俺も海藤と一緒でこっちの方が好みだ。ちなみに煮た方のジャガイモはマッシュポテトと化している。そっちも十分美味しいんだけどな。
芋煮会でジャガイモの経験値を後衛に食わせてから十数分、ちゃちゃっと料理を仕上げてくれた佩丘と上杉さんに感謝しつつ、俺たちは迷宮を移動中だ。食べながらというのが行儀が悪いとは、さすがに言われる筋合いではないだろう。
普段は一部屋に落ち着いて食事をするのが一年一組のスタイルではあるのだけど、今日はできる限り魔力測定の範囲を広げたい。そんな事情があるのだ。戦闘時間の伸びる芋煮会をやったのは、周囲がクリアだったのと、マクターナさんとミーハさんに見せておきたかったから。たぶん二度目以降はないと思う。
ちなみに今回の戦闘で十二階位は誕生しなかった。残念無念。もうちょっとなんだけどなあ。
「とか言いつつ佩丘だってこだわりたいんだろ?」
「少しでも美味い方がいいに決まってるだろうがよ」
「期待してるぜ」
そしてそう、二人の言っている通りで、料理番たる佩丘や上杉さんは迷宮での調理でも上を目指し続けている。
拠点の邸宅には大きなキッチンや石窯までもが設置されているし、調理器具や食器も豊富になってきた。毎日のように増えているんだよな。金銭的なチェックは会計の白石さんがしっかりしているし、副長の藍城委員長や中宮さん、そして組長たる滝沢先生が承認しているので、俺なんかが出る幕はない。
そもそもあの佩丘や上杉さんが無駄な買い物なんてするはずもないから、最初の時点で心配は無用だ。先日のコーヒーは微妙だったけど、あれはチャレンジだったし、先生が愛飲しているのでそれでよしってことになっている。
翻って迷宮だけど、それでもウチの料理番たちは全力を尽くしてくれていると思う。
今回は日帰りだから米と飯盒こそ持ち込んでいないものの、塩コショウやバターに加えてアウローニヤ風のスパイシーな香辛料ブレンド、さらにはコンブを砕いた粉まで用意してあるのだ。
芋煮会用の寸胴鍋に加えて、小型のバーベキューコンロと木炭まで担いでいる冒険者なんて、当たり前だけど俺たち以外で見かけることはない。
「迷宮でこういう凝った料理は、あまり……」
「そうですね。普通は保存食か、軽い菓子くらいです」
鉄製のマグカップに入れたマッシュポテトをスプーンですくうミーハさんとマクターナさんは、迷宮でこんな食事をするのに喜びと戸惑いが入り混じっているご様子だ。
前回マクターナさんと一緒した時は『雪山組』のウルドウさんとフュナーさんが転落してきて、食事どころじゃなかったもんなあ。たしかティア様の倒した青リンゴを齧ったくらいだっけ。
アウローニヤでもそうだったように、ペルマ迷宮に挑む冒険者たちも迷宮での食事は最低限に留めている。
拠点で朝食を済ませてから迷宮に潜り、道中で保存食を口にしつつ夕方には地上に戻るリズムである以上、たった一食にこだわる必要などどこにもない。
対する俺たちは、一日の迷宮で一回から二回は食べるようにしている。迷宮泊ならばもっとだな。材料はもっぱらその日の狩りの成果が使われるので、料理の内容は収穫次第。それこそ料理人たちの腕の見せ所になる。
通常、リンゴやミカンのようにすぐにそのまま食べられるような素材でもない限り、冒険者たちは持ち帰ることを選択するのだけど、一年一組はなんのそのってな。
「食べ終わった食器、洗うっすよー」
「魔獣がいつ出てくるかもしれないし、急ぎなよお」
歩きながらの食事でも警戒は怠らないと同時に、後始末にも余念はない。【水術】が使えるチャラ男な藤永やアネゴな笹見さんが周囲に声掛けをしている。もちろん冷徹なる深山さんもだ。
芋煮会で大活躍した笹見さんには、本当に頭が上がらないな。
ちなみにだけど、【熱導師】として水と熱を操る笹見さんだが、料理自体には積極的に参加しない。役割分担という側面もあるが、初手の湯沸かしくらいは手伝うけれど、彼女は『料理そのもの』はあまり得意でないのだ。
とはいえ俺たちだって高校一年生だ。魔力のある世界で魔術クッキングに挑まないはずもない。たとえば深山さんの【冷術】で氷ミカンを作って大成功に喜んだことだってある。
笹見さんは【熱術】で飲み物を温めるくらいのことはできるのだけど、『焼く』のは苦手だった。
繰り返しになるが、魔術は術者のイメージによるところが大きい。そして笹見さんの場合、水が沸騰する温度より上がどうにも想像し難いようなのだ。【雷術師】の藤永の【雷術】がスタン止まりであるように、笹見さんの【熱術】にしても、鉄をも溶かす、なんていうレベルには全く到達していない。
何度か肉を焼くイメージで加熱を試みたこともあるのだけれど、電子レンジで解凍したみたいな物体が出来上がった。
『得手不得手っていうのは、あるもんさ』
それでも笹見さんは落ち込まなかった。
温泉宿の娘の矜持か、彼女は一年一組の風呂を完全に司っている。それだけでも十分な価値があるし、芋煮会でも洗い物でも、笹見さんの出番は多い。
要はウチのアネゴは俺たちにとって欠かせない存在だということだ。
「ほら、洗い終わったよ」
「ありがとね!」
熱水を器用に操りマグカップとスプーンを洗い終えた笹見さんに、陸上女子な春さんが元気に礼を言う。
そんな微笑ましい光景を眺めつつ、俺は周囲への警戒を続けている。緩さを含みつつ、それでも絶対に油断をしないのが一年一組の迷宮行なのだ。
◇◇◇
「先程の芋煮……、戦法でしたか」
クラスメイトたちと違って言葉少なに食事をしていたマクターナさんとミーハさんが、奇麗になったマグカップを腰にぶら下げて、後方にいる俺の方へとやってきた。
俺たちは芋煮会と連呼していたけれど、マクターナさん的には戦法となるらしい。そりゃあそうだ。
戦闘終了直後ではなくこのタイミングってことは、お二人なりにまとめる時間が必要だったのかもしれない。
「資料で絵にしていませんでしたし、中々アレだったですよね?」
「はい。読むと見るとでは、全く別物ですね」
冗談みたいな軽い言い方で感想を聞いてみたつもりだけど、マクターナさんの返事はマジモードだった。
組合が入手した『迷宮のしおり』には芋煮会についても記載されている。
けれども細かい運用ともなれば、資料だけでは掴み切れないノウハウがあるのだ。さっきやった鍋の中身をぶちまけるなんていうのは、俺たちとしても初挑戦だし、蒸すのについてもまたしかり。
「必要な人員は【熱術師】と【水術師】、それと【援術師】、ですか」
「正確には【熱術】と【水術】です。王国では両方ができる【湯術師】の人に手伝ってもらいましたけど」
「なるほど。組合に、いなくもないですね」
探るように質問をしてくるマクターナさんだけど、ここで隠蔽するような要素はない。自信をもって回答する。
ちなみに【湯術師】というのは、今はウニエラ公国にいるアーケラさんのことだ。元気にしてるかな。
「【身体補強】に不安があるなら、用意できる限りの武器っていうのもアリだと思います。組合なら五層素材の短剣とかあるんじゃないですか?」
「敵いませんね」
「勝ち負けじゃなくて、危機への備えですよ。それとですけど、やるならちゃんとした護衛戦力も絶対です」
朗らかに苦笑なんていう器用な表情のマクターナさんに、俺はおちゃらけを引っ込める。芋煮会は手段でしかないのだから。
「ヤヅさんの見込みでは?」
「武器と支援次第ですけど、後衛職なら九階位、前衛なら八階位からイケると思います」
「適正階層を越えて、ですか。勇者の如くですね」
「大袈裟ですよ。それなら全部の迷宮探索者が勇者になれますから」
真剣さと軽さを交えたマクターナさんと俺の会話を聞いていたミーハさんが小さく笑っている。
俺の横を行くロリッ娘な奉谷さんやメガネおさげの白石さんまでもがだ。斜め前では綿原さんが肩を震わせて、サメがピチピチしているし、ウケが良かったならば何より。
「魔力量の測定だけでなく、芋煮戦法だけでも収穫です。同行を願った甲斐があるというものですね」
そんなマクターナさんのおべっかに、ミーハさんが大きく頷いた。
◇◇◇
「大きい。三角丸太だね」
「あちらからニ体です。二部屋向こうですね」
通常の移動に切り替えてから十分もしないうちに、メガネ忍者な草間と、あっちに合流していたミーハさんから魔獣の接近が伝えられた。
進行方向正面からの丸太か。すでに一部屋先の魔力量は計測してある。ここまでの道中では、まだ明確な魔力部屋は見つかっていない。さて、どうしたものか。
「避けよう。右に迂回してから。六部屋で予定経路に戻れる」
「ヤラないんデスか?」
念のために地図を再確認してから方針を打ち出した俺に、ミアがやたらと驚いた顔になっている。どこまでバトルモードなんだか。
「迂回経路に手ごろな魔獣がいたら、そっちを叩く。何もなければ、三角丸太の裏でも取るさ」
今回の迷宮に限って素材の持ち帰りは優先度を低くしてある。できれば丸太なんて持ち運びたくない。
一番の目標は満遍ないレベリングだが、同じくらい大切なのは探索範囲だ。組合が事前予約までして指定した区画だけに、できる限りの魔力量を調べておきたい。ほかの【捜術師】に教えることになるミーハさんには、魔力量の数値化にも慣れてもらいたいしな。
三角丸太は四層最大の経験値の持ち主だけど、それなりに戦闘時間が必要となる。サクっとトドメを刺せそうなメンバーは全員が十二階位を達成しているし、ここは後回しでいいだろう。
迂回先ですぐにべつの魔獣と遭遇したとしても、そこからさらに退避するルートは存在しているから、そっちも万全だ。
「指揮官のお達しだ。みんな、ここは素直に従おう」
「おう!」
冗談めかした委員長の言葉に、みんなが半笑いで声を合わせた。
◇◇◇
「これって、三方向から挟まれたってことね」
「強がりじゃなく、想定内だよ」
「そ」
それほど焦った感じでもない綿原さんのセリフに、俺も軽く答えてみせる。
三角丸太を迂回したルートを辿って四つ目の広間は、見事魔力部屋となっていた。魔力量はおおよそ八というのが、草間の見解。数字合わせをしていたミーハさんが頬に汗を浮かべている。
なにしろ扉の向こうには二体の三角丸太と七体のサトウキビ、そして三体の牛がいたわけで、いつこちらに襲い掛かってきても不思議ではない状況だ。
そこまでならば一年一組が恐れる要素はない。背後から来ているだろう三角丸太に気を付けつつ、魔力部屋の魔獣にちょいとつっかけて引き撃ちすればいいだけのことなんだけど。
問題だったのは──。
『右から、たぶんカニ! 四体』
ほんの五秒前、迂回ルートのさらに退避用を想定していた先から別口の魔獣が来ていることを草間が告げたのだ。
前方は魔獣がたくさんの魔力部屋、後方からはゆっくりだけど一度は見逃した三角丸太、そして右からはカニときた。全部のスルーは、ほぼ不可能である。
やってくれるじゃないか、ペルマ迷宮め。
「後退して三角丸太を相手にするのが一番楽そうだけど──」
「感づかれた。魔力部屋の牛が動いたよ! サトウキビも」
「だよなあ」
無難なコトを言いかけた俺だったけど、草間がそれを打ち消した。
さっきから草間がミーハさんに先んじて的確に情報をくれているのは、魔獣戦闘に対する慣れだろう。ミーハさんは遭難者の捜索をサブ業務にしているけれど、あくまで本業は組合事務職員であって、戦闘職ではない。
ましてやペルマ迷宮では珍しい魔獣に次ぐ魔獣との遭遇だ。ここで落ち着いていろという方に無理がある。
「まずはカニを抜く。そこから逆襲だ」
「らしくなってきたなあ!」
俺の決断を受けて、海藤が獰猛に笑う。
そんな海藤の声に乗せられて、前衛後衛問わず一年一組に気迫が満たされていく。そうそう、こうでなくっちゃいけない。
「助力は必要ですか?」
「今の時点ではまだ。ああ、いえ。ミーハさんをお願いできますか?」
マジ顔になったマクターナさんの問いかけに、俺は笑顔で答えてみせる。
これまでのペルマ迷宮の常識だったら隊存亡の危機みたいなシチュエーションかもしれないけれど、俺たちはアラウド迷宮でこれよりもっと酷い状況を乗り越えてきた。あちらでは二層と三層で、こっちは四層という違いはあっても、これくらいならまだまだいける。
「ここからは全部が速度重視です。マクターナさん」
「そういうことですか。ミーハ、背中に」
「は、はいっ」
速度という単語を聞いたマクターナさんはすぐに察してくれた。まあ、事前に可能性としては伝えてあったのだけどな。
マクターナさんに促されたミーハさんが、一瞬戸惑いつつも素直に背中におぶさる。長い杖はミーハさんの腰から上に突き立てるようにホールドされているので、走るのに邪魔ってことにはならないだろう。
そういえばマクターナさんに文字通りのキャリーをお願いするのは、『雪山組』遭難事件で【聖術師】のフュナーさんに続いて二度目か。
アウローニヤ流民冒険者たちとの運動会でも実感したのだが、ペルマ迷宮で戦う人たちは長距離行進や短距離のストップアンドゴーには慣れていても、ある程度以上の距離を稼ぐダッシュはワリと不得手だ。
もちろん高階位ともなれば力そのもので速度は出せるのだけど、走るという行為についての技術が不足しているんだよな。もちろん魔獣から逃走する事態も迷宮では頻繁に起きるのだし、全く鍛えていないということは無いのだろうけど、今後『魔獣溜まり』が増えることを考えると……。
いやいや、今はそうじゃない。目の前の戦闘に集中しないと。
現在一年一組がおかれている状況で重要なのは、手順とそれを成立できるだけの移動能力。ミリオタな馬那に言わせれば機動力ってヤツだ。いいよな、機動って単語。
俺たちにはそれが備わっている。陸上女子な春さんと野球部な海藤に普段からみっちりとランニングフォームを教え込まれているのだ。階位がほぼ変わらないミーハさんとでは、短距離走能力が違いすぎるのは仕方がない。
ミーハお姉さんには申し訳ないけれど、移動が落ち着くまではマクターナさんの荷物になってもらうしかないのだ。
「深山さん、ここに『氷床』を置いといてくれ。牛にはスケートしてもらおう」
「うん」
さて、ついでに牛の足止め程度に罠も残しておこう。
ポヤっとした深山さんが俺たちの背後に氷を張っていく。しかも三列もか。大人しい顔をしてえげつない。
「よっし。行こう!」
「おう!」
一年一組が迷宮四層を駆け出し始めた。
◇◇◇
「左側に押し込めろ。ドトメは必要ない!」
「やっちゃってもいいんでしょ?」
「構わない。好きにやってくれ。ただし、通り過ぎるのが最優先!」
「わかってるってぇ!」
俺の指示に春さんがノリノリで両手メイスを持ち直す。いつも通りに気合は満点。
カニに向かって突撃を掛けた俺たちの目標は、通り抜けざまにダメージを入れつつ二部屋先に到達することだ。こんなところで足を止めてまでカニを相手取れば、うしろから牛が追い付いてくる。バックアタックは勘弁してもらいたい。
「えいっ!」
「行きなさい!」
「イヤァ!」
「っす」
すでに夏樹の石、綿原さんのサメ、ミアの矢、藤永の水雷球が飛んでいるが、よろけさせる程度で明確な効果はちょっと。
海藤のボールは在庫の関係で温存だ。確実に回収できる場面でないと使えないっていうのが不自由だよな。どこかで解消しておかないとだ。
さておき初手は、これで十分。
「てぇい!」
「しゅあっ!」
「ああぁぁい!」
「へっへ~」
揺らぐカニを尻目に、広間に四つの声がほぼ同時に響く。全員が女性によるものだ。
振り回されるハサミを躱すように足からスライディングしつつメイスを振りぬいたのは【嵐剣士】の春さん。乱暴な攻撃だけど【鉄拳】で手首を強化した彼女のメイスは、カニの脚を数本叩き折るだけでなく【風術】で本体をひっくり返すところまでやってのけた。
間合いを稼ぐために普段は両手持ちをしている木刀を左腕だけで振るった【豪剣士】の中宮さんは、こちらも見事に脚を二本……、斬り飛ばした!? そんなコトもできるのか。
左ジャブをハサミに当ててカニ本体の回転を止めた【豪拳士】の滝沢先生は、得意のうねるようなローキックでこれまた脚を二本叩き折った。
気の抜けた声と共に繰り出された【裂鞭士】な疋さんのムチはカニの脚先に絡みつき、そのまま【魔力伝導】で魔力を削る。結果、カニはすっころばされるのだ。
一年一組の誇るアタッカーたちは、寸の隙さえあればこれくらいのコトをやってのける。
いちおう【忍術士】の草間と【剛擲士】の海藤もアタッカー枠だけど、二人には別の役割があるので安心してほしい。【疾弓士】のミアは……、元気に好き勝手してくれればいいか。
ともあれ最初の目標、カニ四体の行動不全は達成された。
背後に迫る牛の足音を背に、俺たちは立ち止まることなくカニを放置したまま二つ先の部屋を目指す。
◇◇◇
「二部屋先まで魔獣無し」
「こっちもです」
目標の広間に到達したところで、草間とマクターナさんの背中から降りたミーハさんが魔獣の有無を報告してくれた。
【気配察知】が二人って便利だなあ。俺に生えてくれないだろうか。
この部屋にある扉は三つ。俺たちが乱入してきた扉を除けば、残り二つはクリアだった。こういうあたりが魔獣の群れとしてはまだまだ温い。アラウド迷宮だったら、ここで魔獣のおかわりって展開すらあり得たぞ。
「よおっし。騎士組、それと海藤、盾の出番だ! 牛をせき止めろ!」
「おうよ!」
俺の声に従い、頼もしい騎士たちが大盾を並べていく。
「ここから牛、カニ、サトウキビの順番だ。全部を倒しきるぞ」
「ペイバックタイムってな」
みんなもわかっているはずのことを確認程度で言ってみれば、盾組の一人、【霧騎士】の古韮がどっかの映画で聴いたセリフを吐いた。軽いノリだが、それでいい。
「これが『群れ』との戦い、ということですか」
「真正面から戦わざるを得なかったこともありましたけど、今回は形を作れました。ここからですよ」
整然と並ぶ盾を見つめるマクターナさんの言葉に、俺はできる限りの余裕を持って答えてみせるのだ。
さっきカニを弱らせたのは女子ばかり。
今度は野郎どもが力を見せつける場面だ。参加していない俺が言うのもなんだけど、マクターナさんとミーハさんを驚かせてやってくれ。
次回の投稿は明後日(2025/07/28)を予定しています。