第517話 予定よりは早いけど
本話において田村が【身体操作】を取得していますが、ここまでの中ですでに取り終わっているかのような描写があったかもしれません。ご指摘を頂けた場合は出来る限りで修正しますが、ご了承ください。
「技能は取らないっすよ。【魔力受領】より、俺自身の魔力があった方がマシっすよね?」
チャラいワリに現状判断が的確な藤永の言葉だった。
たしかに【魔力受領】を取ることで効率的な魔力補給を受けることができるようになってくれたらいいが、そこはギャンブルになる。なにしろ【魔力受領】の仕様が明確になっていないからな。
魔力タンクとしての自覚がシッカリしている藤永は、十二階位になって増えた自分の内魔力量を重視することにしたらしい。
「だな。【魔力受領】を取るなら、俺からか。いや【身体操作】が先だけどよ」
今回の戦闘では十二階位に到達できなかった小太りの田村もまたリアルな判断をしている。
全然キャラが違うのに、共に前衛に立てる魔力タンクとヒーラーとして、立場を考慮した判断をしている二人なのだ。
ちなみに藤永がやらかした『ティア様のセリフを遮った罪』については、寛大な侯息女殿下からのお小言ひとつで贖われた。
「で、これからどうすんだ?」
「ティア様とメーラさんの依頼は達成。一年一組の十二階位が六人。順調ではあるのよね」
魔獣の解体を終えたヤンキー佩丘の問いに答えたのは綿原さんだ。こういう判断は迷宮委員のお仕事だからなあ。
十二階位を達成したのは滝沢先生をはじめ、木刀使いの中宮さん、硬くなったスプリンターの春さん、やらかし好きなミア、チャラっとやってのけた疋さん、そして下っ端っぽい藤永。
藤永以外は見事にアタッカーばかりだけど、これは狙い通りだ。間違いなく殲滅力は上がったワケで、それはそのまま魔獣の無力化が効率的にできるようになったことを意味する。つまり、前衛の騎士だけでなく、後衛のレベリングが楽になったってことだな。
加えてメガネ忍者な草間が十一階位になるのも重要目標だったのだけど、それは初日に達成されているし、むしろ十二階位レースに参加して欲しいくらいだ。
「そして……、魔力部屋が三つもあって、数こそ少なかったけれど魔獣が溜まっていた。予定の残り時間は一刻半」
綿原さんから視線でパスを受けた俺が、発言を引き継ぐ。
ポジションの関係もあってティア様とメーラさんには十二時単位を教えているけど、時刻については刻の方が受け入れやすいだろう。要は三時間ってことだ。
「早上がりも手だよな」
イケメンオタな古韮が壁際に並ぶ素材を見ながら会話に入ってきた。
積まれた素材がまさに山の様な状態だ。とくに丸太がなあ。
ティア様たちの倒した素材の多くは昨夜登場した侯爵家御一行に押し付けたけど、ここから二回も戦闘したら持ち帰ることのできる量を超えるだろう。それにしたって普通の戦闘だったらっていう前提で、相手が群れだったら一度でキャパオーバーだ。
「素材を捨てるのはもったいないけど、僕たちは階位を上げなきゃならないし、ティア様とメーラさんだって実戦経験を積みたいだろうから」
「この辺りの部屋の魔力だって確認しておきたいよね。地上に戻ったらマクターナさんに報告しなきゃだし」
「田村の十二階位はやっておきたいよな。できれば俺もだけど」
メガネな藍城委員長、文系オタの野来、ピッチャー海藤が意見を並べていく。こういう場面で遠慮のない発言が出てくるあたりが一年一組なのだ。
それぞれの意見は確かになるほどその通りなものばかりだな。さて、どうしたものか。
ティア様とメーラさんは、そんな俺たちを黙って見守っている。意見を言ってくれてもいいのだけど、行動についてはこちらに委ねるって感じか。
「わたしとしては早く戻るのに賛成よ」
「凛?」
そんなタイミングで出てきた中宮さんの発言は意外なもので、綿原さんが訝しげに首を傾げる。
らしくないよな。今回の迷宮は委員長が言った様にティア様の実戦経験という要素も含まれている。ティア様贔屓な中宮さんとしては、てっきりギリギリまでって言い出すかと思ったのに。
「わたしも中宮さんに賛成します」
さらに会話に加わってきたのは聖女な上杉さんだった。
先生程ではないにしろ、この手の議論で上杉さんが口を開くのは結構珍しい。というか、決定的なナニカがあるか、もしくは歴史が絡んだ時くらいか。
そのあたりをクラスメイトたちは十分理解しているので、みんなが沈黙して上杉さんの続く発言を待つ。
「予定通りの時刻でも問題ないとは思いますが、事務所で手続きや報告をしているところであの人たちに会う可能性がありますから」
「あの人たち?」
聖女な上杉さんらしくもない『会いたくない人』というフレーズに、聖女信仰を持つ古韮がツッコミを入れる。
彼女がそんなコトを言い出しそうな相手なんて、アウローニヤの元近衛騎士総長くらいしか……。
「『ホーシロ隊』です」
ああ、そうだった。
上杉さんの一言に中宮さんが大きく頷いているのは、同じ理由だったってことか。
「あちらも早い時間からの探索でしたし、そうなると上がりもでしょう」
「そうよね。迷宮でなら無視するのもいいけど、事務所でやらかされたら組合にバレるでしょうし。あの人たちなら周囲の目があるところでも……」
「わたしとしては、あの暴言を二度と聞きたくありません」
「前言撤回。たしかに無視なんて難しいわね。自分でも手を出さないでいられる自信がないわ」
暗黒聖女と気炎を吐きまくる木刀女子のやり取りに、周囲はドン引きするか、同意するかのどちらかだ。
いや、会話の後半部分で賛成多数ってところか。
ティア様まで深く頷いているし、やっぱり先生に対するあの発言は許しがたいよな。
どうして俺たちは多数決までしてスルーって結論を出したのだっけ。組合にチクってから、持てる総力でもって『ジャーク組』に殴り込みってことでいいじゃないか。
こちとらアウローニヤをぶっ壊した勇者だぞ? 俺たちにかかれば──。
「みなさん」
剣呑な雰囲気で気温が上昇した広間に声を響かせたのは、困った顔をした先生だ。
「ごっ、ごめんなさい」
「すみませんでした」
これには中宮さんと上杉さんも謝るしかない。
俺を含めた数名も、反射的に頭を下げてしまったくらいだ。みんなも心の中で『ジャーク組』をシバいていたんだろうなあ。
ティア様なんかもバツが悪そうに先生から視線を逸らしている。
「みなさんで話し合って決めたことです。事情が変わったなら構いませんが、そうでないのであれば全うした方がいいと、わたしは思います」
非常に珍しい、先生によるお説教であった。
けれども先生の言葉はそれだけで、ガミガミと同じことを延々とは繰り返しはしない。必要なコトを言い終えた先生は、俺たちを見つめるだけだ。
ちょっと耳が赤くなっているあたりが先生だよなあ。なんで説教すること自体が恥ずかしいって感じになっているのだろう。
「あー、えっと。建設的な方向で行こう。八津、綿原さん、案を頼めるかな」
なんか居たたまれなくなった空気の中、委員長が迷宮委員にぶん投げてきた。この期に及んで俺と綿原さんに仕事を押し付けたりしてくるのが、我らが委員長なのだ。
「……早上がりには賛成するわ。だけど、田村くんの十二階位と近くの調査はしておきたいわね」
少し考えてから綿原さんが出してきたのは、所謂折衷案だった。各人の意見はちゃんと組み込まれているあたりはさすがだな。迷宮委員も長くなったものだ。
「予定より一時間……、半刻縮めよう。階段に向かって戻りながら、道中で魔力部屋の近くだけを最低限調べるってことで、どうかな」
当然俺は綿原さんに乗っかる。迷宮委員の絆は太いのだよ。
もしもあの連中、『ホーシロ隊』に出会ってしまってまたも暴言を吐かれたら、俺だって我慢できる自信はない。その点なら上杉さんや中宮さんと思いは一緒だ。午後の三時に上がってしまえば、さすがに遭遇することもないだろう。
なんで俺たちの方がアイツらを避けなきゃいけないんだか。
「田村の十二階位か、時間切れか、それで区切ろう。素材の選定は佩丘に任せる」
「俺を引き合いに出すのかよ」
「ちっ、わかったよ。投棄が多くなりそうだな。もったいねえ」
続けた俺のセリフを受けて、嫌そうな田村と、ムスっとした佩丘がヤツららしい返しをする。
先生に悲しい顔をさせた上に委員長から妙な責任をパスされたんだ、これくらいはいいだろう?
「先生、こんな感じでいいですか?」
「わたしはみなさんを信じています」
苦笑を浮かべた先生のお墨付きでもって、俺たちの行動は決まった。普段はこんな聞き方しないからな。
あ、そうだ。
「ティア様、すみません」
「構いませんわ。わたくしは『一年一組』の判断を尊重いたしますわよ」
「ありがとうございます」
頭を下げた俺に、ティア様は鷹揚に答えてくれる。
レベリング依頼こそ達成したが、ティア様に了解を取るのは必須だよな。
こうして行動方針も決まり、一年一組は移動を再開した。
◇◇◇
「次回からは潜る時間をもっと遅らせるか、宿泊部屋も階段から離れたところにしよう。四・三キュビ」
「そうね。どらぁ!」
俺の指差した先に赤紫のサメが滑り込み、急降下してきたヒヨドリが減速したところに綿原さんがメイスを叩き込む。
うん、ヒヨドリに合わせることにも慣れてきた。後衛でも倒せるヒヨドリは美味しい敵だ。味についてはまだ確認していないけど、そっちは地上に持ち帰ればいいか。
早上がりを決めた俺たちが戦っているのは、本日最初に見つけた魔力部屋だ。挟み撃ちを食らった場所だな。
そこにいたのは七体のヒヨドリと三体の【多脚甘蔗】、所謂サトウキビだった。俺たちが居ない間に魔獣が補充されているあたりが、さすがは魔力部屋ってところだろう。
アラウド迷宮の四層では甜菜が、そしてペルマ迷宮では同じく四層でサトウキビが出現し、両都市の砂糖を賄っている。
異世界モノに在りがちな砂糖が超絶高級品ってことはなく、そこそこの値段で流通している理由がこれだ。
そんなサトウキビだけど、茎を包む葉っぱをわしゃわしゃさせながら、横倒しになって突撃してくる長さ二メートルくらいの魔獣だ。胴体の下にたくさんある小さなコブが足の役目を果たしている。
ヘビの様にヌルヌルと床を滑って、体当たりの直前に起き上がるようにしながら茎と葉を振るうのが攻撃パターンだ。
厄介なのは葉っぱ全体に嘔吐毒があって、よりにもよってこちらの顔面付近を集中的に狙ってくるのと、急所の茎がそこそこ硬いってところだろう。後衛職にはちょっとキツい。
「うぐっ。ちくしょう! 酷い戦法させやがって」
ヒヨドリを無力化させているのは術師とアタッカーを中心としたチームで、サトウキビと対峙しているのは大盾を持つ騎士たちと……、そして主役たる【聖盾師】の田村だ。
そう、田村は騎士に拘束されたサトウキビと真正面から戦っている。
「ウダウダ言ってねえで、早くやれや」
「これって、僕もやることになるんだろうなあ」
「てめえらぁ、もっとしっかり押さえておけよ」
佩丘は面倒くさそうに、委員長は同情たっぷりで田村を励ます。
田村は文句のセリフを出せるくらいなら、まだまだイケるな。指示した俺も大概酷いというのは理解しているから、最後まで頑張ってほしい。
ロリっ娘バッファーの奉谷さんから【身体補強】を貰った田村がやっているのは、自己回復をしながらの戦闘だ。そこには【聖術】によるヒールだけではなく、【解毒】も含まれる。
以前アラウド迷宮のカエルで試したように、ヒーラーたちは自分で毒状態を回復することができる。しかも他者を治すよりも素早くだ。
委員長と佩丘が体を逸らす様にして押さえ込んでいるサトウキビに、田村は正面から短剣を突き刺している。
トドメを刺しにいくということは、敵の反撃距離に入ることを覚悟しなければいけない。今回もしかりで、田村は何度も顔を葉っぱで殴られ強烈な吐き気を催し、その都度自分で【解毒】を使いながら戦っているのだ。葉っぱの部分を全部剥ぎ取ってからでもいいのだけど、それだとほかのメンバーが毒を貰うし、ここは時間効率と【解毒】の熟練上げという理屈もある。
うん、同じくヒーラーだけど上杉さんや奉谷さんにはやらせたくないな。本人も覚悟をしているようだし、委員長には是非ともチャレンジしてもらいたい。
男女不平等とかではなく、上杉さんと奉谷さんが【身体強化】を持っていないのが理由だぞ、念のため。
◇◇◇
「ふぅ、ふぅ」
「お疲れ様。やったね」
床に座り込んだ田村に元気な声を掛けたのは、こういう時に躊躇せずに近寄ることのできる弟系の夏樹だ。
サトウキビ三体では足りず、ヒヨドリを五体始末したところで田村は十二階位となった。
「……おう」
「【身体操作】取るんでしょ?」
「おう」
普段は減らず口を会話に挟まずにいられない田村だけど、疲労困憊なのと相手が夏樹だからか、普通に返事をしている。
対する夏樹は仲間が増えることを素直に喜んでいる様子だ。ほんと、ストレートだよなあ。
アラウド迷宮での騎馬戦騒動によって、一年一組は全員が【身体操作】を候補にすることができた。
戦闘素人の俺たち的には非常に有効な技能なのもあり、クラスメイトはみんなで順次取得しているのだけど、これで持っていないのは俺だけということになる。ははっ、俺って取り残されるケースが多いよな。
なんにしろ、これで田村は硬くて動けるヒーラーとして、ほぼ完成されたことになる。
つぎは【魔力受領】あたりの実験体になるっていう話もあるし、アイツには今後も頑張ってもらいたい。
「残りは一時間半。キリもいいし、戻ろうか」
「おーう!」
俺のセリフに異論は出てこなかった。むしろ早上がりを喜んでいるくらいだな。理由が理由だけに、気持ちはわかる。
予定を一時間繰り上げることにはしていたが、それよりさらに三十分の余裕だ。これなら『ホーシロ隊』と出会わずに、魔力部屋のことをマクターナさんに伝えることもできるだろう。
「っし。行くかぁ」
精神的な意味でバテバテだった田村も気合を入れて立ち上がり、部屋の片隅で山積みになっている素材に向かった。自分の担当する分を肩に担ぎながら、ところどころで体の様子を見ているのは【身体操作】の効きを確認しているからだろう。素直に羨ましい。
「地上に戻って素材を納めるまでが冒険者ってね」
「いや、拠点に戻るまでだよ」
「風呂と夕食もだな。バタバタしてて三時のオヤツが抜きだったし」
田村を見習う様に、クラスメイトたちがそれぞれ素材の入った革袋や丸太を肩に乗せていく。
デカい袋や、長大な丸太を普通の高校生たちが担いでいく光景は、ぶっちゃけ異常だ。こういうところが異世界なんだよな。どうせならマジックバッグがあればいいのに。
「間隔に気を付けるぞ。丸太担当はとくにだ」
「おう!」
広間に元気な声が響き渡る。さあ、地上に戻ろう。
◇◇◇
「有意義な時間でしたわ」
「明日は公務だったわね。侯息女様も大変」
「勤めですもの、仕方がありませんわよ。その代わり明後日は、リン」
「屋敷で修練ね。歓迎するわ」
「一刻も早く今のわたくしに慣れておきたいのですわ」
隊列の後方にいる俺の前方から、ティア様と中宮さんの会話が聞こえてくる。ティア様の声は良く通るなあ。
一年一組は一層から地上へ向かう階段を登っている途中だ。帰路の途中でトラブルも無く、もう少しで地上ということもあって、みんなの表情は明るい。そこかしこで雑談の花が咲いているけれど、リラックスのためにもむしろ推奨されているくらいだ。
とはいえ俺たちは階段の途中で拉致された経験があるので、周辺への警戒は切らしていない。
時刻は午後の三時。『水汲み』たちは午前中に仕事を終わらせているし、冒険者たちも地上に戻るにはまだまだ早い時間帯だ。お陰で前後に人影は見当たらない。
「ソウタ、前後に人は?」
「え? 居ませんけど」
まさに地上直前というタイミングで、ティア様が草間に人の気配を確認させた。命令系統は……、なんていうツッコミは要らないか。ティア様だしな。
「では僭越ながらタキザワ先生に成り代わり、わたくしから伝えておきますわ」
なにやら弁舌モードに入ったティア様が朗々と語り始めた。随分とまた、先生を高く買っているのが印象的だな。
「今朝の一件についてわたくしは『一年一組』の考えを尊重いたしますわ」
ティア様の切り出したのは、言うまでもなく俺たちに悪感情を持って絡んできた『ホーシロ隊』についてだ。
カバーストーリーを使ったからには、それによる不利益くらい受け止めてみせろと言って以来、彼女はこの話題には積極的に参加してこなかった。
ここで再び持ち出すのか。
「昨日今日の二日間、あなた方と行動を共にし、わたくし確信しましたの」
熱の入った声が階段に響く。自然と皆の足が止まり、前衛などは振り返ってティア様のセリフの続きに耳を傾ける姿勢になっている。
「『一年一組』はこれまで優秀で模範的な冒険者としての姿と、その実力を示してきましたわ」
元よりティア様が俺たちのことを認めてくれていたのは理解していた。
それでも明確な言葉にしてもらえると、嬉しさだって込み上げてくるというものだろう。
「ですが、本日はそれ以上ですわね。あなた方は異端、そして希望。今後起きうるペルマの異常に対する、大いなる力ですわ!」
俺たちのコトを悪い笑顔で異端と言い放つティア様は、とても楽しげだ。
「わたくしは魔獣の群れを見ました。そして、それが小規模だったとしても当然の様に対応したあなた方……、勇者たちの姿を見届けたのですわ」
一年一組の面々は、ティア様がノリノリになった時こそ邪悪に笑うのを知っている。まさに今がそうだ。
「繰り返しになりますが、侯爵家は冒険者同士の諍いに介入いたしません。ですが──」
熱弁を振るうティア様は、そこで一拍溜めた。
「わたくしが希望と見做した者たちが、俯くことなど許しませんわ。折れることも、ですわね。わたくしの名を使わず、タキザワ男爵と名乗らずとも、冒険者として勝利なさいませ!」
これこそ正しい悪役令嬢の姿だろう。答えの見えない問題に、当たり前の様に勝ってみせろとティア様は命令してしまうのだ。
「手助け無しで、好き勝手ね」
「まったくもってティア様だよ」
斜め前に立つ綿原さんがポツリと呟くけれど、そこに苦いものは混じっていない。俺もそれに楽しく同意してしまうのだ。
「さあさあ、凱旋ですわよ。地上は目前ですわ!」
足止めしていた張本人がコレである。
一年一組は、残り少ない地上への階段を登り始めた。
次回の投稿は明後日(2025/06/19)を予定しています。