第513話 態度を決めておかないと
「まったくもう。今回だけですわよっ!」
勢いよく罵声を飛ばすティア様だけど、そこには隠し切れない称賛が混じっていた。
なにしろ滝沢先生の本気を越えた本気モードを初めて見たのだ。圧倒されて、そこから感動って感じで感情が動くんだよな。俺もそうだったから、とても同意できる。
一年一組の状態が悪いからとティア様のレベリングを無視した先生の独断専行は、決してクラスに悪いムードをもたらすものではなかった。むしろ滅茶苦茶効果的。
『ホーシロ隊』の罵声で下がっていた俺たちだけど、もはや暗さはどこにもない。二度目があったらどうやって料理をしてくれようかという気概すら見えているくらいだ。
ちなみにさっきの全力戦闘で、先生は足首を捻っていた。
戦闘中には露とも表に出さないあたりが、これまたクラスメイトを引き付ける先生の魅力だよな。
「先生には敵わないわね」
「まったくだ」
呆れ声の綿原さんに俺も首肯するけれど、目の前のサメ使いさんだって大概だと思う。
一年一組は落ち込んだ時に立ち直る手段が多いのがウリだと俺なんかは感じている。
藍城委員長のたまに屁理屈が混じる正論、明け透けで無邪気な奉谷さんのバフ、不敵な冗談を使ってくる古韮、そして綿原さんのアジテーション。
それに加えて聖女な上杉さんとヤンキー佩丘の料理や、さっきはミスってたけれど笹見さんの風呂、白石さんのアニソンだってある。
俺もなんか一芸が欲しいな。宴会でも役立ちたいし。
「そもそもあの程度の罵詈雑言で心を乱すなど、恥と知りなさいませ!」
最近ではそんなポジションにティア様も加わった。劇薬だけどな。
「わたくしが羨ましいと言った時、あなたたちは反発するだけの意地を見せたではありませんか。民から吸い上げたとかいう三億? 五億? 勇者が成し遂げたコトは、そんな端金で済まされるものではありませんわ」
さすがは侯息女様。億単位の金を『端』と表現するのが凄い。
それとだけど『羨ましい』発言の一件を、まだちょっと根に持ってらっしゃるようだ。
「まったく、アウローニヤの女王もケチ臭いものですわね。わたくしならば……、そもそも手放しませんわ!」
「ダメじゃん。それ」
本末転倒なコトを言い出したティア様に、疋さんが持ち前のチャラさでツッコミを入れる。
これもまた、クラスの雰囲気を変える力のひとつだよな。人材が豊富過ぎる。
「なんにしろ、あなた方は勇者であることを隠蔽しながら、それでいて水準以上に安全で安定した生活を望んでしまった。そもそもが中途半端なのですから、弊害を受け止めるだけの覚悟を持ちなさいませ」
ティア様の正論にクラスメイトは黙ることしかできない。
まさにその通りってヤツだもんなあ。
「ティア様とこうしているのもリスク……、隙ではあるんだけどなあ」
「ユズル?」
「おっととっ。もちろん恩恵だってたくさんありますから、感謝してますって。魔族の件とかで」
軽い冗談で古韮が場をかき回す。アイツの度胸も大したものだ。
「わかっているのならよろしいですわ。それに……」
「それに?」
そこで一転、邪悪な笑顔になって意味深なコトを言い出したティア様に気圧されて、古韮が後ずさる。これ以上なにかあるのか?
「そちらについては、まだ準備が足りていませんの。時が来れば知らせますわ」
「お手柔らかにお願いします」
「あら、わたくし、苛烈さをウリにしていますのよ?」
それについては一年一組全員が実感できている。なにやらティア様は仕込みをしているようだけど、古韮よ、対応お疲れさまだ。
「ティア様の言う通りだ。僕たちは覚悟と想像力が足りていなかったんだと思う」
まとめに入った委員長の言葉に、皆が頷く。
とはいえ、こういうのはリアルで体験してみて初めて度合いが見えてくるというものだ。
それが想像していたのより数段階ヤバかったっていうのが、今回の一件で理解できた。アウローニヤ貴族め。
「で、どうすんだ?」
「様子見、組合に報告、直接『ジャーク組』へ抗議、どれかかな。ティア様が居たことをバラすのは、さすがに止めておこう」
現状はわかったから先を進めろと言う佩丘に対し、委員長は選択肢を並べていく。
どれもこれも一長一短……、いや、全部が面倒事だけだよな、これ。
クラスメイトの中でも比較的聡い連中が表情を曇らせていく。そんな雰囲気に釣られて、残ったメンバーも苦い顔だ。よくわかっていないかもしれないけれど、厄介そうなのだけは伝わったのだろう。
「普通なら組合に判定してもらうのがいい感じに思えるけど──」
委員長が選択肢の解説を始めてくれた。多数決の前の判断材料ってことだな。
繰り返しの愚痴になるけれど、こういうのは四層に降りる前にやっておくべきだった。みんなの精神状態が落ちていたからといって、地上に戻ってからとか考えていたのは温かったな。
とはいえ済んでしまったことを悔やんでも始まらない。今はどうするかを決める時だ。
選択肢の中だと丸投げ的な意味で組合に報告するのが一番マシなようにも思えるが、それはハッキリと悪手になる。
『ホーシロ隊』の暴言は許しがたいにしろ、言った言わないになる可能性が高い。いちおう白石さんのメモはあるけれど、相手からでっち上げだと言われてしまえば、たしかにそうだろう。
だけど組合は今回の迷宮泊で『一年一組』とティア様が一緒なのを完全に把握しているのだ。事前に提出した計画書だけでなく、グラハス副組合長とバスタ顧問が視認してしまっている。始末が悪いことに、侯爵家御一行立ち合いの下で。
『ホーシロ隊』はそんな高貴なお方をレベリングしていた『一年一組』の足止めをしてしまった。
あのバスタ顧問ならば、大した証拠が無くても嬉々として『ジャーク組』を糾弾するかもしれない。顧問が『ジャーク組』に悪感情を抱いているとかではなく、組合としての損得勘定でだ。
なにしろ『一年一組』は元が勇者であろうと没落貴族であろうとも、期待の新人で模範的な優良冒険者集団なのだから。なによりアウローニヤとペルメッダ侯爵家に強力なツテを持つのが強い。
俺たちは実績を残しつつあるし、組合側だって過去を知りつつ一年一組の全員を冒険者として認めたという体裁がある。おいそれとこちらを責めることなど不可能だ。
優良クランな『ジャーク組』は組合が守って潰されはしないだろうけど、『ホーシロ隊』は……。
だからこそ、組合にチクるという手段は採れない。
「──という感じだから、組合に報告っていうのは僕としては賛成しかねるかな」
「じゃあ殴り込み? いいねぇ~」
「ブッコミマスか?」
ざっと説明をしてくれた委員長の結論を受けて、ムチを手にした疋さんが意地の悪い笑みを浮かべれば、たぶんわかっていないだろうミアがそれに乗っかる。
「『ジャーク組』そのものがどう考えているかわからないし、組同士の抗争なんて映画だけで十分だよ」
任侠モノなどゴメンだと、委員長は肩を竦める。
あちらにも組としての体面がある以上、子たる組員を守る姿勢を取らざるを得ないはずだ。
まともっぽい『ジャーク組』だから、非があったくらいは認めるかもしれないけれど、キチンと『ホーシロ隊』を更生してくれるかはわからない。
ヘタをすれば組としてのお付き合いで遺恨が残る可能性もあるしなあ。
「結局は様子見ってことね」
先送りというのが現状で一番無難だという結論に、綿原さんがサメと一緒に肩を落とす。
「いいさあんなの。何度来たってシカトすればいい」
ピッチャーの海藤は、さっきの先生に感化されたのか、どこか吹っ切れている。いい傾向かな。
「いちおう決を採るよ。ティア様とメーラさんには申し訳ないけれど──」
「わかっていますわよ。冒険者同士の諍いに侯爵家が口を出すわけがありませんわ」
おおむね結論が出たムードでも委員長は念のために多数決を採用した。
悪いけれどティア様とメーラさんは除外だ。これは一年一組の問題だからな。
「じゃあ、組合に報告するのに賛成の人」
で、最初の選択肢だけど、当たり前の様に誰も手を挙げることはない。
これはまあ仕方ないだろう。俺たちは『ジャーク組』にダメージを入れたいわけじゃないんだし。
「つぎ。直接『ジャーク組』と話し合うべきだって人」
さくっと続けた委員長が言う二番目の選択肢には、ちょっとした反応があった。
幾つかの手が挙がったのだ。
具体的にはノリが軽い疋さん、面倒事の保留を嫌う佩丘、直情的な正義感を持つ春さん、クラスの特攻隊長を名乗るミア、そして変なところでイタズラっぽくなる古韮。
古韮だけはちょっと意外だな。逆に直接対決を好みそうな中宮さんや、真っすぐ面倒事に対峙しそうな馬那が手を挙げなかったのも、味がある。
とはいえ、手は五本。到底足りない。
「棄権があるとは思わないけど、念のため。様子見、というか警戒しながら相手の出方を待つ人?」
言っていて自分でもなんだかなあって感じなんだろうけど、委員長が疑問形で最後の選択肢を提示した。
ノロノロと手が挙がっていく。数秒掛けて十七の腕が……。
これなら殴り込みに賛成した連中の方がサバサバしていたくらいだ。本当に消極的なんだもんなあ。
みんなが苦笑を浮かべているのが仕方ない感を強調している。
「結論が出たならば動きますわよ。これ以降、腑抜けた態度は許しませんわ。さあ、コウシ」
「了解です」
最終的に出張ってきて仕切ってしまうのがティア様らしいけれど、心構えについてはその通り。
迷宮で気の抜けた心などもってのほかだ。なにしろここは四層で、俺たちはまだまだ楽勝と言い切れるだけの力を持ってはいない。
「あっちだ。行こう」
「おう!」
秒でマップを確認した俺の指差す扉に向けて、一年一組は動き出した。
◇◇◇
「年上のクセして、よくもまあ。恥ずかしくねぇのかよアイツら」
「俺も二度目は許せないかもな」
口の悪い田村が悪口を言われたコトに愚痴れば、苦笑いの海藤が同調する。海藤は田村に付き合ってやっているって感じか。
二人ともさっきの多数決で様子見に投票したクセにと言いたいところだけど、気持ちはわかる。むしろストレス発散としてはアリだと思うし、これくらいのノリの方がいいかも。
「悪口なんてスルーデスよ」
逆に殴り込みに投じたミアなどは飄々としたものだ。こういうところは実にミアらしい。
「なんか申し訳ないっす」
「いえ。藤永君は、よくやってくれています」
「っす」
前の方からはチャラ男な藤永を励ます先生の声が聞こえてくる。
さっきの戦闘で藤永が何かやらかしたわけではない。十二階位になった先生が新しい技能を取得しなかったのを、魔力タンクとしての藤永は自分のせいだと言っているのだ。
ここで新技能を取らないことで魔力タンクの負担を減らす方向性は、昨日十二階位を達成した中宮さんと同じスタンスってことになる。
これまたクラスの合意なんだから藤永は気にしなくていいのにな。
先生の場合、【聴覚強化】、【遠視】、【思考強化】、【握力向上】、【一点集中】、そして【冷徹】あたりが目下の対象だ。それでも基本以上の技能を持つ【豪拳士】としてならば、先生はほぼ完成の領域に近づいている。ぶっちゃけ先生には余裕があるくらいだと思うんだよな。これ以上技能を取らなくても、あとは階位を上げるだけで最強になれちゃいそうな。それができれば苦労しないんだけど。
五層を想定したらちょっと足りない可能性もあるけれど、それを言い出せばクラスの全員がそうだ。
個人的には気苦労の多い先生には、是非とも【安眠】を取ってもらいたいと思っている。
緊急避難的だったとはいえ、俺だけがっていうのが、ちょっと。【安眠】仲間が欲しいんだよ。
「あっ。草間、この部屋の魔力は?」
「えっと……、二、かな。もしかして?」
「ああ、魔獣の影だ。たぶんニンニクが三体」
そうして移動している途中でソレを見つけた俺は、【魔力察知】で部屋の魔力を測定できる草間に確認を取った。
「新発見ね」
「だな。魔力部屋じゃなくても、魔獣は生まれる。迷宮ならどこでもなのか、それとも魔力とは別の条件があるのか」
サメを連れ立って近づいてきた綿原さんが、俺の指差す床を見つめている。
「大した魔力でもない一層や二層の魔獣が補充されてるんだ。当たり前の結論だけど……、確認できたのは大きいかな」
「迷宮の謎がまたひとつ、ね。シシルノさんへ報告しないと。手紙を読んだらあの人、ペルメッダに来ちゃいそう」
「ありそうで笑えないよ」
肩を竦めて合わせてはみたけれど、綿原さんの冗談は成立しないだろう。
なにしろシシルノさんはアラウド迷宮で勇者帰還のヒントを探ると確約してくれたのだ。この手の約束を破るような人ではない。
綿原さんだってわかってますって顔でモチャってるもんなあ。
「で、どうするの? 待ち伏せ?」
本人的には何も見えない床に対して大盾を構えた文系オタな野来だけど、警戒感が高すぎじゃないか? いや、悪いことでもないか。
実際、野来の背後から覗き込むようにしている奉谷さんや白石さんを守れる位置取りになっているし、こういうのは意識高い系ってところだろう。
「うーん、ニンニク三体に時間は掛けたくないかな」
俺の考えを聞いたクラスメイトたちの数名が同意するように頷く。
魔獣の影が実体化するためには、俺たちが距離を置かなければいけない。しかも発生までの時間も読めないのだ。
ペルマ迷宮のニンニクは、アラウド迷宮ではダイコンに相当する魔獣だ。後衛でもなんとか倒せるという美味しさがあるが、そのぶん単体当たりの経験値は大きくない。ティア様やメーラさんにはお手頃な相手だけど、さて、どうしたものか。
「とりあえずさ~、うしろに注意しながら進むしかないっしょ」
「だな。じゃあ言い出しっぺの疋さんが警戒担当ってことで」
「うひひ、了解っしょ」
この場に留まる意味もないし、チャラい疋さんの提案は口調と違って非常に真っ当なので、当然採用だ。ただし後方警戒には責任を持ってもらおう。
というか、普段から一年一組の背後を見張るのは疋さんの定番なんだけどな。頼りにしてるよ。
「じゃあ背中はアタシに任せて、とっとと出発~」
まさに疋さんのセリフに背中を押されて、一年一組は移動を再開した。
◇◇◇
「うん。ヒヨドリで間違いないと思う。気配が天井に並んでるし、それに動きもない」
「数は?」
「八か九ってとこかな」
メガネ忍者な草間が魔獣の種類を断定する。まあ、小型で天井付近にいるなんて魔獣は、四層ではヒヨドリしかいないだろう。
ニンニク魔獣の影を見つけてから十分、部屋にして五つ目で、俺たちは魔獣の存在をキャッチした。もちろんさっきの影とは無関係だな。
ペルマ迷宮四層に出現する【三眼単脚鵯】は鳥型の魔獣だ。アラウド迷宮ではハトがいたけれど、それに相当する。
一本足なのは一緒だけれど、羽は左右と背中で三枚。飛行機というか、サメというか。頭の代わりに角が生えているのもハトと同じだが、ハトは地面から飛び立つのに対し、ヒヨドリは天井から急降下攻撃を仕掛けてくる。急所は胸に三つ、三角形に並ぶ目の中央だな。
「確認してきたよ。三部屋向こうまではニンニクも込みで魔獣は居ないね」
ヒヨドリに挑むかどうかを検討中に偵察を任せたスプリンターの春さんが、凄い勢いで戻ってきてくれた。
出発してから三分も経過していないけど、トラップとかが心配になる早さだ。迷宮は人の目が無ければ何でもありだからな。トラップの出現や変更なんてザラにある。
春さん自身、斥候やらトレインで大活躍なので、そういう点では信用してるのだけど……。
「春姉、罠に気を付けてた?」
「もちろんだよ。見てからジャンプだってできるし」
「試したらダメだよ?」
「冗談だって」
酒季弟の夏樹がちゃんと注意をしてくれたか。うん、俺が言うよりいいだろう。
なんにしろ、これでヒヨドリに集中できる。
「ハトに比べて角が鋭くないぶん、速さは上らしい。だけど、良い得物だ」
「後衛でも倒せちゃうもんね!」
最終確認をする俺に、奉谷さんが合せてくる。
そう、アラウド迷宮のハトは後衛でも短剣が普通に通った。こちらのヒヨドリもどうやらそうらしいのは、資料から読み取れている。ただし四層で後衛が魔獣を倒さないのはペルマ迷宮の冒険者でもアウローニヤと同じなので、絶対とは言い切れない。
とはいえ迷宮間における魔獣の共通性という点で、俺たちはイケると踏んだ。どのみち倒すのはティア様とメーラさんなので、そもそも問題にもならないし。
「奉谷さん、【身体補強】を」
「うんっ!」
俺の指示を受け、奉谷さんが『新柔らかグループ』に【身体補強】を掛けていく。対象者は俺、夏樹、上杉さん、深山さん、白石さんだ。今回このメンバーの身体能力を上げるのは、攻撃的な意味合いは薄い。高速攻撃を仕掛けてくるのがわかっている初見の魔獣に対し、避けも含めた防御力を上げておきたいのだ。
ヒヨドリはハトと同じく、部屋を跨いでまで襲ってこない。だからこうしてゆっくりと準備ができる。
「はい。ボクもオッケー!」
最後に自分自身に【身体補強】を掛け終わった奉谷さんが、小さな手を挙げて準備完了を宣言した。
「やることはハトと一緒だ。ある程度慣れるまで、後衛の柔らか組には大盾が付いてくれ。組み合わせはいいな?」
「おう!」
さっきのジャガイモ戦と違って、俺のセリフに答えるみんなの声は勇ましい。
ちゃんと切り替えられているようだ。そうこなくっちゃだよ。
「最初は敵の動きをよく見て、反撃はそれから」
「わかってるって」
不敵に笑う古韮だけど、相手は初見の魔獣だ。甘く見てはいけない、なんてな。
古韮当人こそ理解していて、ワザと軽口を叩いているのなんて、俺だって知っているさ。
「余程のコトが無い限り、ティア様とメーラさんに全部回す」
「羽をもいで、角も折る。トドメは刺さない」
ポヤっとした深山さんがおっかないことを呟いているけれど、彼女は【鋭刃】持ちだ。しかも【身体操作】と【冷徹】を併用できるので、動きを封じた敵を切り裂くならば、後衛であっても今回の戦闘では活躍が期待できる。
伊達に『めった刺し』の異名を持っているわけではないのだ。それを言ってしまったら本当に刺されそうだから、最近じゃ冗談好きの古韮すら触れないんだけどな。
「じゃあ行こう。せっかくだからやっておくか? 馬那」
「ああ」
昨日をもって俺より一つ年上になったミリオタの馬那に声を掛ければ、ちょっと嬉しげな雰囲気の返事が飛んできた。誕生日プレゼントの追加みたいなものだから、さあ、言ってくれ。
それとオタグループ、羨ましそうにしない。俺も大好きなセリフを譲ったんだから。
「総員、対空戦闘用意! 急降下爆撃に気を付けろ!」
「おう!」
馬那の素敵なセリフと共に、俺たちは魔獣の待ち受ける部屋に飛び込んだ。
相手はヒヨドリ。もちろん爆弾なんて積んでいない。
次回の投稿は明後日(2025/06/10)を予定しています。