第497話 談話室にご案内
「そ、そうでしたか。なら、二日くらいなら……、大丈夫なのかしら」
ある意味想像と違ったメーラハラさんからの返答を食らい、綿原さんの口調が動揺で怪しくなる。サメの動きも怪しくなっているな。
なにしろメーラハラさんは十階位の【堅騎士】。アウローニヤで女王様を守り続けているだろう『紅天』の騎士団長、『紅忠犬』のミルーマさんと一緒の神授職で、守備系の技能が生えやすく育ちやすい。
後衛系の俺にだって生えているくらいだ、候補に【疲労回復】が無いはずもないけれど、取得までしているとは。
「メーラは凄いですわよ。以前も三日続けて一人きりでわたくしの護衛を務めたこともありますの」
ティア様が自慢げに酷いコトをブッコンでくる。どれだけブラックなんだよ。
俺たちも休みらしい休みは取らないし、睡眠時間もこっちの人たちに比べたら短い方だけど、徹夜なんてことはしない。
適度な運動と食事、そして睡眠こそが筋肉、もとい身体を作るっていうのが一年一組のモットーだ。なにせ俺たちは成長期の真っただ中だからな。
とにかく、ティア様の前で休むつもりはないというメーラハラさんの意志だけは間違いなく伝わってきた。
しかもティア様はそれを咎める様子もない。
なんか気まずいんだけど……。このまま話を続けても大丈夫なんだろうか。
綿原さんもどうしたものかと俺に視線を送ってきているけれど、こんなの判断のしようがない。
「ナギやコウシが困っていますわね。わたくしはメーラなら本当に大丈夫だと思っていますけど……」
こちらの空気を察したティア様が軽く首を傾げてから、背後に控えるメーラハラさんに向き直る。
「メーラ」
「はっ」
「休憩について、わたくしは口出ししませんわ。ただし、彼らに無様を晒すのは許しませんわよ」
「はっ」
座ったままの主が護衛を見上げるようにしながらも、それでも上下関係が露骨な二人のやり取りだ。
「そしてメーラ、あなたも階位を上げなさいまし。そうすれば楽にもなりますわ」
「それは……、リン様」
続けざまに出てきたティア様の言葉を聞いたメーラハラさんは、非常に珍しいことに困惑した表情になっている。
とはいえ俺たちとしてもメーラハラさんのレベリングには賛成なんだよな。
そもそもティア様の守護騎士であるメーラハラさんが十階位というのが不自然なんだ。この国には十三階位な人たちが山ほどいるし、そうできるだけのレベリング手法が存在している。なのに、ってことだ。
これは想像になってしまうのだけど、メーラハラさんはティア様が七階位で停滞していたのを気に病んでいたんじゃないだろうか。
もしくは常にティア様を守れるように、ずっと近くにいたからかもしれないけれど。
「わたくしが機会を得たということは、メーラもまた同じく、ですわよ!」
「リン様。……ワタハラさん、よろしいでしょうか」
好き勝手を言い切ったティア様はこちらに向き直り、悪く笑う。
少しだけ間を置いて普段の無表情に戻ったメーラハラさんが、綿原さんに確認をする。
「もちろんです。こちらは最初からそのつもりでしたし」
「ありがとうございます」
宿泊の件を有耶無耶にされてしまったが、それでも綿原さんはキッパリと返事をした。メーラハラさんからの礼にはレベリングだけではなく、我儘を通すことへの詫びが混じっているようなそんな気がする。
どちらにしてもメーラハラさんには周辺警戒をお願いするわけでもないし、動きが鈍くならないかだけを確認しておけば良しとしておこう。
それよりも、またひとつティア様とメーラハラさんとの関係が見えたのが、俺としては楽しいくらいだ。初めて出会った時なんかは下僕扱いみたいに感じたものだが、間違いなく二人は信頼し合っている。ティア様と友人宣言をした俺たちとは、別次元の関係だよな。
とりあえずの目標はティア様主従の十一階位と、俺たちの中から十二階位か。いやいや、メガネな草間が十階位のままだった。そっちを優先してあげないと──。
「なにやら決まったかのようなやり取りだが、我はまだ許可を下していないぞ」
「わたくしもよね」
呆れたような声色で侯王様と王妃様がツッコミを入れてきた。
なるほどたしかに仰るとおり。まだ細かい説明も残っているし、お二人の許可を得るための説明会って場でもあったのだ。
「お父様! お母様まで酷いですわっ! せっかく素敵な雰囲気でしたのに」
これにはティア様もお怒りのご様子だ。両親を挟んだ反対側ではウィル様が苦笑いになっている。
なんとなくだけど、この御一家の夕食は騒がしいんだろうな、なんて思ってしまう。一見おしとやかそうな王妃様はおばちゃんのノリで喋るし、侯王様も威厳たっぷりだけど寡黙ってタイプじゃないもんな。
「ダメとは言っておらん」
「そうよ。ダメだなんて言わないわ」
怒れるティア様をものともしない侯爵ご夫妻の息はピッタリだ。なんか羨ましいな。
マズいな。侯王様とは全く似てもいないけど、亡くなってしまった父さんを思い出してしまった。ダメだぞ、今は蓋だ。こっそり【平静】を動かしつつ、冷静になろう。そういう感傷は日本に帰って墓の前ですればいい。
だから綿原さん、心配そうな視線をこっちに向けないでくれていいよ。サメも俺を見ているし、どれだけ敏感なんだか。
「まあ、問題はないだろう」
「そうね」
そんな俺の気も知らず、ティア様のご両親はあっさりと迷宮泊を許してくれた。
まあ説明の途中でネガティブなムードなんてなかったし、終わってみればこんなものか。
「ただなんというか、付いていきたいと思ってしまうな」
「そうなのよね。楽しそうだし」
「それは僕もだよ」
かと思えばこんなセリフが出てきた。お兄さんまで一緒になって。
迷宮に泊ることに忌避感があるはずの文化を持つ国のトップがこれだもんなあ。しかも王妃様に至っては、楽しいときたものだ。迷宮を楽しいと表現する人なんて、滅多に見かけないぞ。
一年一組はたしかに賑やかに迷宮を歩いているけれど、それはお互いに励まし合っているからだ。元々ウチのクラスが持つノリを迷宮でも引き出すことで、頑張ろうって意味がある。
アウローニヤの現騎士総長代理なキャルシヤさんが好んで迷宮に入っていたなんて例もあるけれど、アレは地上での貴族が面倒だったからっていう現実逃避な部分もあったからなあ。
まあ、世の中には迷宮で生を実感するなんていう人もいるかもしれない。繰り返しになるけれど、楽しいっていう人はほぼいないだろう。
「ダメに決まっていますわよ!」
ティア様の叫びは正当だ。宿泊研修に両親と兄が付いてくるなんて悪夢だよな。護衛はさておきだけど。
そういう私的な理由でなくても、侯王様たちの同伴は許されない。冒険者のルールでアウトだ。
冒険者は冒険者以外の人間の手を借りてはいけない。たとえそれが見物人だとしてもだ。迷宮の経路の関係上、冒険者と訓練中の兵士が出会うなんてことはありうるが、だからといって協力などしない。
もしもこの国の兵士と冒険者が迷宮で共闘するとすれば、それはよっぽどの事件か、もしくは異変の時のみだろう。
ウィル様と王妃様は十三階位で、侯王様に至っては頂点たる十六階位だ。
ティア様がこの国のお姫様だからと、護衛のメーラハラさんが同行しているのですらお目こぼしに近いのに、最強レベルの助っ人なんて問題外だぞ。
つまりこれは、ご両親アンドウィル様が娘さんをからかっている構図だ。
「だがなあ。興味深いではないか」
「わたくしも迷宮で料理をしてみたいわね」
「僕だけでも、ダメかな」
「ですからっ。これはわたくしと『一年一組』の活動なのですわよ!」
「あはは」
「ふふっ」
それでも仲良くぎゃあぎゃあやっているペルメッダ侯爵御一家を見ていると、誰とでもなく笑顔もこぼれるというものだ。
そして、もうひとつの感情も湧き上がる。
「あはははっ……」
ロリっ娘な奉谷さんが笑いながら……、涙をこぼしていた。笑い過ぎての涙ではない。悲しくて、寂しくて、彼女は泣いているのだ。笑いながらも。
さっき俺が侯王様に父さんの姿を見たように、クラスのみんなは家族を思い浮かべてしまったのだ。俺もそうだから、わかってしまう。
ガラリエさんがフェンタの実家で弟たちに再会したシーンが俺たちの望む未来なら、こういう騒がしい家族の姿は取り戻したい過去なんだろうな。そう、今現在失っているものだからこそ、泣けてしまう。
「ぐすっ」
誰かが決壊してしまえば、涙は伝播してしまうものだ。
「くっ」
「うぅっ」
チャラ男な藤永、メガネ忍者な草間、普段は明るい夏樹、文系女子の白石さん、アネゴな笹見さん、そしてエセエルフなミア。比較的涙もろい連中が連鎖した。
一緒になって泣きそうな深山さんはポヤっとした表情のままだけど、頬に涙が一筋こぼれているところでとどまっている。【冷徹】か。
なんとかこらえている連中も、心の中身は一緒だろう。深山さんの考察で心を誤魔化そうとした俺だってそうだ。
気付けば俺の向かいに立つ綿原さんも頬を濡らしていた。あ、ダメだ。俺もか。
そんな俺たちを見る滝沢先生は悲しげな瞳を揺らしている。先生にも家族はいるだろうに、この人はいつだって自分のことより俺たちだ。
「あ、あなた方、急にどうしましたのっ!?」
「いいのよ、ティア。素敵なご家族で羨ましいってこと」
俺たちの急変に取り乱したティア様を、無理やり笑顔を作った中宮さんが震える声で宥める。
「泣いちゃってごめんなさい。家のこと思い出して」
発端となった奉谷さんが袖でゴシゴシと涙を拭いながら、侯爵一家に向かってペコリと頭を下げた。真っすぐなんだよなあ。
「……そうですの。そうですわね」
事情を悟ったティア様は、らしくもなく沈痛な面持ちだ。
昨日はティア様が泣いて、今日は俺たちか。お互い泣き虫だな。
「そうだよね。それぞれに……」
「はしゃいでしまってごめんなさいね」
侯王様は難しい顔で黙っているが、ウィル様と王妃様は申し訳なさそうに声を掛けてくれる。
侯爵一家の騒ぎが一変、食堂内は寂しい空気になってしまった。
マズったなあ。一年一組の強さを宣伝する時間だったのに、こんな展開になってしまうとは。
「よい。泣いてばかりならば、そんな階位を得られるはずもない。そもそも生きてこの地に辿り着けてもいないだろう。貴様らの強靭さを疑う材料にはならん」
そんな気まずさを振り払ってくれたのは、他ならぬ侯王様だった。鋭い目つきをしているものの、なんだろう、そこに優しさが混じっているような。
「そもそもだ、家族を思いやる心を持たぬ者に、リンとの交流を認めてやるものか。我は貴様らの性根を知れて良かったと思っているくらいだ」
「そうですわよ! わたくしもそう思いますわ!」
口の端を吊り上げてニヤリと笑う侯王様の言葉にティア様も乗っかる。
「そう言ってもらえると助かります。大丈夫です。僕たちは仲間同士で励まし合えますから」
「そうか。ならば続けろ。まだ話は終わっていないのだろう?」
藍城委員長がいつもより気張った声で宣言すれば、笑顔のままで侯王様が先を促した。キリっとした顔がカッコいいぞ、委員長。
「じゃあ、迷宮泊の細かい注意点について説明しますね」
ならばとばかりに涙を拭い、メガネを掛け直した綿原さんは、笑顔を作って語り始めるのだ。
◇◇◇
「これはまた、珍妙な部屋だな」
「昨日とは随分違っているね」
装いを新たにした談話室を見た侯王様とウィル様が、それぞれの感想を並べた。
食堂で行われた授業参観の後半は、ティア様の練習風景の見学だ。授業参観というよりは、運動会の父兄観覧ってところかな。
さっきのしんみりムードを吹き飛ばすためにも、ここは元気で行こうじゃないか。
会場となる談話室はウィル様の言う様に昨日までとは違っている。
アウローニヤの離宮でもそうだったように、絨毯を素足で歩く俺たちは、こちらの文化では異質な存在だ。そのためのカスタマイズが今日のつい午前中に終了した談話室は、昨日までの赤いド派手な絨毯が撤去され、代わりに緑の絨毯が二枚くっ付けて敷かれている。
前日に比べて絨毯の面積が五割増しくらいになっていて、そのぶんテーブルや椅子が壁際に押し出されている形になっているのが、まあ侯王様たちからしてみれば奇妙なのだろう。貴族がお茶を楽しむって感じじゃないものなあ。
とはいえ今日に関しては靴を脱いでもらうわけではなく、靴底を拭いてからの入場だ。テーブルのあたりは元々土足オーケーな領域だけどな。
目立つものだといちおう暖炉があるにはあるが、季節的には初夏に当たるので、掃除はしたけど機能はしていない。
ちなみに壁に掛かっている組の認定証はともかく、槍の穂先からぶら下がる『帰還旗』はそのままだ。
『帰還旗』はアウローニヤ王国で正式に採用された、第七近衛騎士団『緑山』の騎士団章となるので、こんなところに飾られているのはマズいのだけど、ティア様には今更であるし、侯爵家ご一行は私人としてのご来場だから目をつむってもらうことにした。
なんだかんだで、俺たちの想いの結晶みたいな旗だから。
「これが『キュビ』の目安ということですわね」
「はい。そうです」
知っているぞと誇らしげなティア様に対して、これまた自慢げな綿原さんが返事をする。
迷宮戦闘を想定するなら絨毯なんか敷かずに石の床の上での方が状況が近い。なにしろティア様は気合の入った革鎧姿でやってきたのだし。
だけど今日はタイミング的にも俺たち本来の談話室を見せたかったために、こういう形にしたのだ。
綿原さんたちが街で発注した絨毯だけど、いくつかの指定があった。
ひとつはベースが緑色で装飾なんかは不必要であること。もうひとつが罫線だ。
この絨毯は端を除いた全体に、五ミリくらいの太さで萌黄色の格子が縫い込まれている。まるで方眼紙みたいだなっていうのが初見のイメージだけど、色使いが落ち着いているので目がチカチカするようなことはない。
もちろん単位は一マス一キュビ。見本の枠を作って、職人さんに手渡しておいた。
アウローニヤ時代でもやっていたことではあるが、借り物の絨毯ではさすがにというわけで、本日お披露目されたのだ。
これにて『一年一組』の談話室はほぼ完成された。
絨毯の端っこには裁縫が得意な疋さんや佩丘の作ったクッションが幾つか置かれていて、それらが増殖していくのが今後の変化かな。
「絨毯に上がっても?」
「どうぞ」
綿原さんの許可と共に、先んじてティア様が絨毯の中央に歩み出る。
ブーツ越しではあるが、踏み心地を確認するように足首をこねくり回してから、ティア様は少し腰を落とした。続けざま左足を踏み出し、腰を旋回させる。
「ですわっ!」
腰に肘を引き付けた右拳が凄まじい速度で突き出された。ズバっていう音が聞こえた気がする。
先生直伝の右正拳突き。ティア様は真っ先にそれを見せつけたかったのだろう。
「よく練習されていますね。今の調子で今後も繰り返してください」
「わかっていますわ!」
見届けた先生が嬉しそうに目を細めてティア様を褒める。邪悪な笑顔で答えるティア様の姿は高飛車だけど、それでこそだ。
うん、本当に凄い。アレはかなり練習したと見た。いくら【身体操作】持ちだからといって、技術への理解と反復練習がなければああはならないだろう。
根底にある原理が違うから比較に意味はないけれど、俺の『観察カウンター』とは速さが段違いだな。
ティア様が八階位になった今、俺には彼女の拳を避ける自信が無い。絡まれないように気を付けないと。
「お父様、お母様、見てくださいましたか?」
「ああ。中々のものだ」
「ええ、もちろん。格好良かったわよ」
さっそく両親に自慢するティア様は、武闘派な侯爵一家で愛されているんだろうな。
そんな親子の光景に俺たちは再びしんみりしたりはしない。なんかこうティア様の拳が、そんな空気を吹き飛ばしたかの様に感じたから。
同時にこんなご両親が政治的判断とはいえ、一度はアウローニヤに娘さんを嫁がせることに同意した事実に、恐ろしさも感じないでもない。
アウローニヤでもいろいろな人と関わったけれど、王族や貴族っていうのは本当に大変だ。
「さあさあ、始めますわよ、コウシ」
「はい。じゃあ『ティア様陣』で。奉谷さんは【身体補強】。メーラハラさん、疋さん、田村、藤永よろしく」
急かすティア様の誘いを受けて、俺を含めたクラスメイトたちが絨毯という舞台に上がった。
せっかくティア様がやる気満々なので、俺たちもここでは革鎧装備に着替えていたりするのだ。もちろん靴底はピカピカだぞ。
◇◇◇
「キシャキシャ」
「ぶーんぶーん」
ティア様に向かって二体のカニが迫る。その名もミアと春さん。
疑似ハサミとして両手に木製のメイスを持ち、腰を落としたその姿は、いちおうカニを想定している。姿勢を低くするために春さんは閉じた膝を深く折り曲げているけれど、ミアなんかは完全なガニ股だ。カニだけにってか。
妖精みたいな美少女のすることだろうか。本当にミアの中身は完全にやんちゃ坊主だ。召喚当初は違和感があったけど、今ではすっかり受け入れている俺がいたりする。ミアはミアという個体なのだ。
そんな二人はフィギュアスケートみたいにグルグル回転しながらジワジワと移動していく。よくもまあ目を回さないで済んでいるな。【三半規管強化】とかが生えてきそうな行動だ。
そういえば【鉄拳】の出現条件も検証しないと。昨日は夜遅くまで侯爵兄妹との会談があったから、手つかずなんだよな。
「右はメーラハラさんが止めてください。回転方向を見てハサミを止める感じで。疋さんはミアカニの足を拘束」
「了解っしょ」
俺の指示に無言で動くメーラハラさんと、軽口な疋さんの対比である。
春さんのメイスがメーラハラさんの構えた盾に当たり、動きが止まった。そこから力押しを掛ける姿は、昨日の経験が生かされているリアリティだな。足にムチが絡みついているのに、いまだガニ股で動こうとしているミアも中々。
「ティア様、八時二秒後、二キュビ。足の付け根を狙ってください」
「【視野拡大】が欲しいですわね!」
せっかくだからとキュビ単位での行動指示を求めたティア様は俺の声を受け、一瞬足元に視線を送ってから飛び出した。
本当は一・九キュビなのだけど、さすがにいきなりの小数点は無理がある。十センチ弱の誤差は、自身で調整してもらうとしよう。
「わはははっ。これは愉快だ。軍に取り入れたいくらいだな」
「わたくしなら盾を使って馬の真似かしら」
「母上……」
そんな練習光景はティア様の両親アンドお兄様にバカ受けだ。いや、ウィル様は魔物役をやりたがっている身内に引いているだけか。
迷宮泊に向けたティア様の特訓は、談話室に夕陽が差し込む頃まで続いたのだった。
次回の投稿は明後日(2025/05/05)を予定しています。