第407話 土産を残して
「なるほど、畝の形をもっと意識して、さらには等間隔に種を埋めていくわけか。だがそれでは畑の広さが無駄に」
「ある程度間隔を開けておく方が、一株当たりの生育が良くなって、結果的に収量が増えるんです。ただ、肥料がちょっと。連作の対策はしてるんですよね」
「ふむ。土は良いと言われているし、休ませてもいるのだけどね」
「上手くいってるところと悪いところ、見比べてなにが違うのかを検証するのが大切だと思います。年単位になっちゃいますけど。ほかに思いつくのだと──」
朝食の席であるにも関わらず、だらしなくノートを開いてメモに忙しいベゼースさんに、文系改め農業系男子な野来が偉そうなコトを言っている。
イトル領には伝統的な農法があるので一気にとはいかないが、ベゼースさんは一部の区画を試験農場的に使うのだそうだ。
「とても参考になったよ。ありがとう、ノキ。君とシライシをイトル領特別農業指導員として記録しておこう」
「あ、いえ、それはちょっと」
この手の話をすると、よくわからない反撃を受けてタジタジになるまでがワンセットだな。大人しく肩書を授かるがいい。
『南に徴兵された者たちの帰郷に、高階位者の派遣。そうか、陛下はそういう方針を取って下さるのか』
昨晩の会談の最後の方で女王様の策をちょっとだけ披露されたベゼースさんは、目に涙さえ浮かべていた。
『貴賤問わずに人そのものを財産だと考えるお方、か。キャルも僕も、イトル領の皆も……』
あの女王様は自分のおもちゃを大切に手入れするタイプの人だから、その点は安心してほしい。
一夜明け、もしかしてこの人って開拓オタなんじゃないかという疑念を抱くくらいノリノリになったベゼースさんは、半分以上は夢じゃないかっていう物語を語り始めたのだ。
そんな感じでギラつく父親を見てキャイキャイと嬉しそうにしているケイタールちゃん五歳は健気なのか、それとも素質があるのか。
なんにしろ、イトル領の短期的未来は明るい。あくまで短期では、だけど。
さすがに理由は隠したままで、それでも二年限定なのも伝えはしたが、ベゼースさんに曇りは無かった。女王様が帝国の第二皇子と密約を結んでいるなんて、さすがにコレは言えないよなあ。
バラすもバラさないも、アウローニヤ貴族の常識として帝国の脅威は遅かれ早かれなのだ。ある程度の期限を知れた方がマシなくらいかもしれない。
「キャルが通じている限り、陛下からの援助も手厚くなるだろう。他の領には申し訳ないが、これも時流だ。好きにやらせてもらうさ」
「あ、このあたりって木炭もウリでしたよね。そちらの増産を進めておいた方がいいと思います」
「理由は聞かないでおいた方がいいのかな。どちらにしろ、木炭はいくらあっても問題無いし、取り掛かるとしよう」
ちょっとしたサービスで言ったつもりの俺の言葉を、ベゼースさんはあっさりと受け止めてみせた。
俺としては王都のガラス事情を踏まえての発言だったのだけど、たしかに木炭需要は尽きることもないのだろうし、この領地がそれをウリにするのは当面としてはいい方針だと思う。
このあたりには事情があって、王国で広く使われている木炭の多くは、意外なことに迷宮産ではない。
迷宮内では動きこそ遅いものの重量に任せた攻撃が脅威とされる丸太シリーズだが、魔獣由来の素材としてもちょっとした特徴を持っている。
ひとつは大きくて重たいこと。すさまじく当たり前だな。だから肉や野菜のようにカットして持ち帰ることが難しいし、なにより木材は太くて長いままの方が価値がある。切ることはできても、元に戻すことはできないのだから。
そこで登場するのが運び屋だ。兵士や騎士に守られながらも、重たくてかさばる丸太を担いで迷宮を歩く人たち。ほとんど強制的に【体力向上】と【身体強化】を取らされて、内魔力がもったいないからと、個人的な理由では技能を取得させてもらえない存在だ。
とはいえ女王様の考える政策のひとつで、大体が四階位か五階位の彼らは七階位までのレベルアップを推奨されることになっている。
もちろん本人の希望も聞くことになるが、アラウド迷宮に入る平民としては王都軍とほぼ同じ待遇となる。
これにより短期的には迷宮に投入できる戦力が強化されることになるし、もっと長い目で見れば、いつか彼らを迷宮から解放し、地上での労働力として推薦するところまで持っていきたいというのが女王様の意志だ。二年ではムリだろうとのことだけど、アウローニヤが帝国に塗りつぶされるのではなく、属国として生き残れば、そうやって女王様の撒いた種は実を結ぶ時がくるかもしれない。
などという女王様の夢から木材に戻れば、運び出しには苦労するものの、魔獣素材に共通する特徴としてサイズが一定しているというのがデカい。とくに木材の場合は意味がでてくるらしい。そう、規格品として捉えることができるからだ。サンドボックス系ゲームを思い出せばいいだろう。
最小限の加工で共通した部品にできてしまうというのは、建築素材としてかなり大きい。
さらにアラウド迷宮の木材は紙作りに向いているというおまけつきだ。
王国の大事な輸出品のひとつ、アウロ紙だな。俺たちも今回、ペルメッダへのお土産として少量だけど荷車に積み込んでいるくらいには有名だったりする。
という諸々の事情があって、迷宮産の木材を木炭に回すのはもったいないという結論が下されてしまうのだ。
王都パス・アラウドは、五百年を使ってアラウド湖の南西方向に開拓が進んでいるものだから、近くに手っ取り早く伐採できる森が無い。
ただでさえ王都では鉄の加工品が主力産業で木炭の消費量が多い。そこにこんどはガラス作りだ。
というわけで、女王様の考えるシム・アウローニヤを実現するとなれば、木炭は確実に近郊からの運び込みとなる。
王都から一日の距離。しかも王都側となる西に林が広がるイトル領は、条件にバッチリなのだ。
「王城から来た君たちがそう言うからには、炭焼き施設は西側かな」
やはりベゼースさんはできる人なんだろう。木炭という言葉だけで、いろいろ妄想が捗っているようだ。
「街道を広げるという名目も使えそうだ。キャルの褒賞と合わせて交渉になりそうだね」
「キャルシヤさんの財布に手を出して大丈夫なんですか?」
「僕は代官で彼女の夫だよ。キャルの俸禄も合せて今でも全額イトル領の扱いさ」
ノリノリのベゼースさんがキャルシヤさんの金に勢いで手を付けそうな雰囲気を感じた俺がツッコミを入れるものの、どうやら家の財布は旦那のモノらしい。
キャルシヤさんが単身赴任で、ベゼースさんが家を守っているみたいだけど、それもまた家族の形か。
とはいえ歴史あるイトル領領主としての子爵と、代々近衛騎士団長を務めている子爵という二重の面でキャルシヤさんは子爵なのだ。とても偉い。
アヴェステラさんはラルドール男爵領領主であり、筆頭事務官としては子爵という風に、この国の領地持ち貴族には立ち位置によって爵位が変わる人もいる。大抵の場合は一番上の爵位で呼ばれることになるので、キャルシヤさんもアヴェステラさんも今後は伯爵だな。
伯爵になったからといって領地が増えるかどうかは知らないが、それでもイトル領はイトル領のままなので、ベゼースさんは代官として頑張ろうとしている。
人は少ないけれど、質素で綺麗な街並みを思い出し、俺はベゼースさんにエールを送るのだ。ケイタールちゃんの未来も懸っているのだから。
◇◇◇
「すまないね。東方で売れそうな品に備蓄があれば良かったのだけど」
「いえ、事前に特産品は調べてあったので、気にしないでください。最初から薪と木炭狙いでしたから」
長身なベゼースさんが申し訳なさそうにしているが、サメを泳がせながら歩く綿原さんは、気にした風もない。
朝食も終わりいよいよ出発準備ということで、彼女は荷物の最終確認をしているところだ。俺は付き添い。
とはいえイトル領では薪と木炭の補充くらいしか予定していない。
さっきまでタダで押し付けようとするベゼースさんと現地相場の八割と言い張る綿原さんの逆値切り合戦が開催されていたのだが、七割ということで落ち着いた。この場合、勝ったのはどちらなんだろう。
俺たちは五台の荷車にいろいろな物資を積んでいるのだが、その中には報奨金という名の勇者へのご褒美も含まれている。ちょっとすごい金額で、使い道に悩むくらい。
本命はペルメッダに渡ってからの新生活に使う資金なのだが、道中で交易紛いの行動を取っても問題無しと聞いている。ちょっとした投資だな。けれど残念ながらイトル領に特産品の在庫は無いときた。
農業と林業が売りな土地だけあって、王都への物資の送り出しがメインなのがイトル領の特徴だ。
木工工芸品なんかが他国でも通用しそうな数少ない産業なのだけど、人手不足で品不足。そんなのを気合を入れて仕入れると買占めになってしまうからなあ。
「えいっ、やあっ!」
「いいわよ。ケイちゃん、その調子」
「はいっ!」
荷車が並ぶイトル邸前の広場では、可愛い声と、凛とした声が交錯している。
小枝みたいな木剣を持ったケイタールちゃんと木刀を振るう中宮さんの模擬戦だ。
ごっこ遊びの領域を出ないが、それでも中宮さんはとても嬉しそうにキリリとした顔を時折ニチャっと歪ませている。
それを見ながら自らメイスを振るってアピールしている陸上女子の春さんとエセエルフなミアだけど、無駄な努力だと思うぞ?
中宮さんは『北方中宮流』の跡継ぎだから教えることに慣れているけど、春さんはド素人でミアは野生なんだから。
ところで中宮さん、ケイタールちゃんのこと、普通に愛称呼びになってたんだな。
まだ五歳の貴族の女子がなんてことを、なんていう風潮はこの国では全くの逆だ。神授職のせいで。
どうしたら狙った神授職が得られるかは、この国でもちゃんと研究されている。御家の大事だから。
つい一昨日やった階位システム研究のアバウトさとは大違いだな。
結論から言えば俺たちも納得のとおり、血統と幼い頃からの行動、そして心根。概ね三要素で決まると考えられている。
一人っ子のケイタールちゃんは、弟か妹が生まれない限りイトル家を継ぐことを期待される。帝国の動向を無視すればの話だけど、それは置いておくとしてだ。
となれば、第一近衛騎士団『紫心』の団長か、はたまた近衛騎士総長ということになるわけで、どちらにしても騎士職を得ることが必須だ。
もしもケイトールちゃんが騎士職になれなかった場合、なるべく近い親戚から婿入りさせるか、その人物が女性なら養子にするか。酷いケースでは本家を移すなんて話にまでコトが及んでしまう。
なんとなくキャルシヤさんもベゼースさんもそういうのはあまり気にしなさそうだけど、貴族としての体裁もある。よって五歳のあの子はこうして木剣を振るっているのだ。
本人が余程嫌がらない限り、生まれた家で幼い頃の行動が決められるというのは、日本人としてはキツい部分があるよな。
ジェサル家という軍家に生まれ、親戚の軍人と婚約していたシシルノさんは、【瞳術師】となったことで婚約を破棄された。生まれてくる前から子供の神授職を守るために。
シシルノさんに悪役令嬢が似合うかどうかはさておき、ここはこういう世界なのだ。
ケイタールちゃんの場合は、剣を振り回すのを嫌がっているように見えないのがちょっとした救いか。
「八津くんって妹さんいたわよね。やっぱり思い出す?」
ケイタールちゃんを見つめていた俺に、綿原さんがサメを滑り込ませながら話しかけてきた。
視線を遮るのは構わないのだけど、不審者を見るような目はやめてもらえないかな。
「心尋は中一だからなあ。歳が近いから、ケイタールちゃんを見て妹って感じにはならないかな」
「じゃあ幼女を愛でているだけかしら」
「合ってるけど言い方」
そもそも妹の心尋とは、綿原さんも何度か会ったコトがあるって言ってたじゃないか。
さらに念を押すけど、俺にそういう趣味はない。
「帝国のことと、この世界の貴族って大変だなって思ってただけだよ」
「そ……。それはわたしも、そう思う」
「女王様が上手くやってくれるといいんだけど」
俺への疑惑を解いてくれた綿原さんだけど、こんどは悲しげな視線をケイタールちゃんに向けることになった。
小さな子供の将来が曇り空って、嫌な気分になるよなあ。
「わたしたちも帰還のついでにできることって、あるのかしら」
「ちょっと想像もできないけど、とりあえずは強くなるくらいかな」
「戦うの?」
「まさか。二十階位くらいになって、ほら、あの荷車に知り合い全員乗せてさ、逃げる」
「アリね。わたしもサメに人を乗せられるようにしないと」
「いいな、それ」
「でしょ」
一人では心の中で強がるだけでも、二人ならこうやって冗談交じりの前向きにもなれるというものだ。
そんな連中が二十二人もいれば、無敵だな。だからこそ──。
中宮さんにじゃれつくように細い剣を振るケイタールちゃんを見て、世界のルールは変えられなくても、せめて抗うくらいはしてもいいんじゃないかと思ってしまうのだ。
◇◇◇
「ノキやシライシといい、教えてもらうばかりだと申し訳なく思ってしまうよ。ナカミヤもケイを構ってくれてありがとう」
「いえ。ケイちゃんが良い剣士になるのを祈っています」
荷物の積み込みも完了し、いよいよ出発という段になって、ケイタールちゃんを抱いたベゼースさんが中宮さんに頭を下げている。
そこは剣士じゃなくて騎士だろうと多くの仲間が心の中でツッコミを入れたはずだが、ベゼースさんが笑って流しているので、あえて口には出さない。
それどころか、ベゼースさんに抱っこされているケイタールちゃんが、別れの空気を感じたのか泣きそうになっているのが大問題だ。
「ケイちゃん、その人たち、誰?」
「髪の毛、黒ーい」
「勇者みたいだっ!」
「勇者って、勇者かよ」
そんなタイミングで登場したのはケイタールちゃんと同じくらいのちびっ子たちだった。男女合わせて四人。
イトル邸の石垣の上に顔だけを出していた子供たちがいたのには気付いていた。ベゼースさんもわかっていたようだし、単なる近所の子供たちが怖いもの見たさでこちらを窺っているだけかと放置していたんだけど、声を掛けてくるような仲なのか。
「入っておいで」
「はーい!」
「やったー」
ベゼースさんが促せば、文字通り平民と貴族の石垣を飛び越えた子供たちは、俺たちの傍に駆け込んでくる。
汚れてもいいような服を着た子ばかりで、いかにも平民といった風情だが、極端に痩せているような印象はない。そういうところがイトル領らしいかな。ベゼースさんが先頭になって、お年寄りたちも子供を大事にしてそうだし。
「そうだよ! 勇者様たちなのっ!」
「すげー!」
ピョンとベゼースさんからリリースされたケイタールちゃんが、俺たちの正体を暴露する。
こちとら『帰還章』まで掲げての行進なので、べつに隠密行動をしているわけではない。隠れながらの長距離移動なんて、そんなの俺たちにはムリだしな。ちょっとした小細工はしているけれど。
それはさておき、勇者勇者と言われてまとわりつかれるのはムズ痒いなあ。
「この人がね、レイコお姉ちゃんで、こっちがユキノお姉ちゃん、それとね、それとね」
ついさっきまで半べそモードだったケイタールちゃんだけど、今は満面の笑顔だ。
そうだよな。やっぱり友達と一緒ならアガるのはわかる。俺もそうだぞ。
「この人はリンお姉ちゃん。ケイのししょーなんだよ!」
「ししょーだってよ。すげー!」
滅茶苦茶自慢げに中宮さんを師匠呼ばわりしているケイタールちゃんだけど、いつの間にそんなフレーズを吹き込んだのやら。
当の中宮さんは木刀を謎にカッコいいポーズで構えてキメ顔だけど、綿原さんのサメがあらぶっているぞ?
「勇者たちはもうすぐ出発だから、みんなで遊んでおいで。ケイ、午後からは畑の見回りだからね」
「はーい!」
もはやケイタールちゃんの意識は友達と遊ぶことでいっぱいのようだ。泣かれる別れよりはずっとマシだよな。
だから中宮さんと笹見さん、君たちこそ泣きそうな顔をしないでほしいんだけど。
「ケイ。ちゃんとお別れしておきないさい」
「うんっ、またね!」
ベゼースさんから出た決定的な言葉を聞いて、それでも笑顔なケイタールちゃんが元気に手を振ってくる。
「……そうね。またね」
「ああ、またな」
「またねー」
連れ立って広場から駆け去って行く子供たちの背中に向けて、俺たちは思い思いに別れの言葉を投げかけた。
もう一度会えるかどうかなんて、欠片も約束できないけれど、それでもこういうセリフになるんだよな。
「じゃあ、わたしたちも出発ね」
離れていくケイタールちゃんたちを見届けてから、綿原さんが振り返って宣言した。
傍を泳ぐサメは……、大丈夫、元気そうだ。強がりかもしれないけれど、空元気も元気の内。
「ところでナカミヤ、ちょっといいかな」
「わたしですか」
「ああ。君の武器、ソレを見せてもらいたいのだけど──」
◇◇◇
「あはははっ! 面白かったよね~」
「ベゼースさんってやり手かよ」
チャラ子な疋さんが心から楽しそうに笑い、横を歩く野球少年な海藤が同調する。
イトルタを出発して一時間、すでに街並みは遥か彼方だ。
『ナカミヤのこの剣、『ぼくとー』だったか。コレを作ってもいいかな』
ベゼースさんの最後の望みは、勇者印の木刀の生産と販売だった。
中宮さんの木刀はこの国では見ない形で、たしかに異国情緒はあるだろう。だけどアウローニヤの剣は基本的に両刃の直剣なので、実用性には欠ける。
だからこそ面白いのだと、ベゼースさんは主張したのだ。
「旅の途中で売られている木刀とか、最強じゃね?」
ニカっとした笑顔の海藤が俺たちの想いを代弁してくれるのだけど、全くもってそのとおりだよ。
そんなベゼースさんの提案に悪乗りするのが一年一組だ。
全員が漢字とフィルド語を対応させたフルネームをメモに書いて、渡しておいた。彫刻よりも焼き印でよろしくってな。
ついでにケイタールちゃんに宛てた色紙も急遽作成が決定。忘れるところだったよ。
中央で泳ぐサメとクロスする木刀が印象的だけど、意味はわからない。
「誰のが一番売れるかなぁ」
「ははっ、中宮のが一番じゃなかったら笑うよな」
疋さんの煽りに海藤も乗っかり、名指しされた中宮さんはぐぬぬっている。区別つかないよな、こっちの人たちには。神授職は入れないでくれって伝えてあるし。
俺の予想では聖女パワーで上杉さんのが一番な気がするけれど。ご利益ありそうだろ?
「ますますアウローニヤには頑張ってもらうしかないわね。せっかくの特産品なんだから、長く続いてくれないと」
「女王様がコンプリートしそうな気がするよ。二十二本」
モチャっと笑う綿原さんに、俺も笑顔を返す。
木工が得意なイトル領に新たな名産品が誕生したんだ。しかも勇者ゆかりの品。これが痛快でなくてどうすると。
こうして明るいムードで旅の二日目が始まった。