第402話 アウローニヤ王国人物図鑑:資料
(本日は三話連続投稿となります。こちらは3/3)
本話では一年一組が関わったアウローニヤのキャラクター設定(ひとりだけ日本人)を紹介します。
あくまで現段階のものであり、予告なく新しいプロパティが追加されたり、設定が変更される場合もありますので、フレーバーとしてお読みください。
前話までのネタバレを多数含みますので、その点についてはご了承ください。
各人物の所属については、最新話ではなく登場時のものなっています(そちらの方が期間が長いので)。
◇◇◇
『勇者担当者たち』
●アヴェステラ・フォウ・ラルドール子爵、二十八歳、女性 → 『セクレタリー』アヴェステラ・シ・フォウ・ラルドール伯爵
●【思術師】十階位
焦げ茶髪をショートにした碧眼のお姉さん。王室付筆頭事務官という肩書の通り、イメージとしてはキャリアウーマンで間違っていない。
アウローニヤ側からの勇者担当者第一号にして、建前上は宰相派に属していた。
嫁ぎ先の家と実家を宰相派による派閥争いの不手際が原因で、全員が毒殺されることで失った過去を持つ。偶然生き残ってしまった彼女は結果的に実家のラルドール男爵家を引き継ぎ、気付けば王室付き筆頭事務官として子爵に上り詰めていた。とはいえ両親、夫はすでになく、子供もいない孤独な身の上である。
ここまで出世してしまったのは自身の優秀さとラルドール家に対する宰相のうしろめたさが影響していたが、アヴェステラはそれを恩義とも感じていない。ある時期に第三王女と接触し、すっかりその野望にヤられてしまった後は完全なる王女派となり、宰相派としての体裁は欺瞞と情報を得るための仮面と化している。
最初こそ勇者の性質を見極め、どうやって第三王女側に引き込むかを画策していたが、付き合っていくうちに一年一組の善良さにヤラれてしまった。
冷静さを務めつつ勇者の動向を王女に伝えてはいたが、途中から本人がどこに重みを置いてしまっているかは見え見えであったようだ。その点については第三王女の狙い通りであったので問題はない。
最新話時点で内務卿という臨時職に就任している。
●シシルノ・ジェサル騎士爵、三十一歳、女性 → 『プロフェッサー』シシルノ・ヒトミ・ジェサル男爵
●【瞳術師】十階位
金髪ミドルで碧眼なお姉さん。
アウローニヤによる刺客二号。体面上は中立派。
『王国軍総合魔力研究所』研究員にして、魔力研究の第一人者として勇者担当となった。性根はマッドサイエンティストだが、知性に対する開明的な思想を持ち、日本の教育課程を経た高校一年生たちの思考形態に極度の感銘を受けることとなる。
アウローニヤ側の人物としては、勇者たちに対し最も早い段階で傾倒したのがシシルノだ。その心情は勇者側にもダイレクトに伝わり、話の通じる相手として信頼を一身に集めることとなった。
軍家であるジェサル家の出身でありながら【瞳術師】という神授職を得てしまったため、婚約破棄を経験したことのある悪役令嬢的エピソードを持つ。
一年一組全員を勇者ではなく知性ある人間として見ており、とくに話の合う白石と野来を気に入っている。
最新話時点で王国軍総合魔力研究所所長兼王室付相談役という謎に長い役職を持つこととなった。
●ヒルロッド・ミームス騎士爵、三十六歳、男性 → 『コーチ』ヒルロッド・キョウ・ミームス男爵
●【強騎士】十三階位
短い金髪を整えた、お疲れ顔がデフォなおじさん。ただし実力はしっかりしている。
第六近衛騎士団『灰羽』副長にしてミームス隊の隊長。『灰羽』は教導専門の騎士団であり、実際に勇者を迷宮に案内し、直接レベリングすることを担当する。
平民出身の騎士爵であるため、貴族子弟の訓練をすることはあまりないが、第三王女の策略により勇者の担当にされてしまった。勇者篭絡を目論む第三王女による第三の矢。
一年一組に同行することになった騎士としては最多の期間の付き合いとなり、勇者たちの人となりをただの若者だと理解してからは、同情的な気持ちと、可能性に眩しさを感じるようになる。
立場上は近衛騎士総長派、すなわち継戦的第一王子派という建前になるが、本人の意識としては日和見な無派閥。
城下町に住居を構え妻子を持つため、ギャンブル的に第三王女に協力することができず、板挟みに苦しむことになる。娘の名はシェウリィちゃん七歳。
最新話時点で第六近衛騎士団『灰羽』筆頭副長となった。
●アーケラ・ディレフ騎士爵、二十一歳、女性 → 『メイド』アーケラ・(タウ)・ディレフ
●【湯術師】十階位
燃えるような赤髪が特徴だが、常に温厚で微笑みを絶やさない穏便な女性。ただし内心は不明。
ディレフ宮中男爵家は代々王家に仕えるため、幼少より第一王子の傍仕えをしてきた。生粋の第一王子派。
勇者担当として、第一王子派からも人を送り込むことが第三王女の誘導により決定され、優秀とされるアーケラが選ばれることとなった。
基本にあるのは第一王子の安寧ではあるが、勇者たちの活躍と第三王女の目的が噛み合うことを実感させられる。さらには暴走した宰相派がガードの硬い第三王女からターゲットを王室全体に変え始めたあたりで、半ば第一王子の戴冠を諦め、命だけは救うという方向を目指すこととなる。
そのために第三王女に降る決意をするが、同時に勇者の善性には深い共感を持つようにもなっていた。
よって第三王女の命令が勇者の意志を上回ることはないという確約の下、クーデターに向けて協力態勢を持つことになる。
事変の後、北方のウニエラ公国に逃れることになった第一王子に付き従うという道を選んだ。
●ベスティ・エクラー騎士爵、二十二歳、女性 → 『ヴァイス』ベスティ・(レイ)・エクラー騎士爵
●【冷術師】十階位
紺色の髪をうしろでまとめた、明るめのお姉さん。
第三王女の侍女としての立場から、明確に第三王女派として勇者担当に選ばれた。
最初の頃こそ猫を被ってたが、勇者たちの本質を知るにつれ、本来の明け透けな気性をさらけ出すようになる。
平民上がりの軍人で、後方支援をしていたところをたまたま目に付けた第三王女に拾われ城中侍女となる。その際、病に罹っていた両親の治療費を、王女が肩代わりしてくれたことに恩義を感じることとなった。両親が死亡し天涯孤独となったのちは、戦力不足で燃やし尽くしきれていない気性をくすぶらせている王女を助けるために忠義を誓っている。
勇者担当となり、勇者たちの在り方と王女の考える方向が噛み合うと感じるようになった。
さらには勇者たちの善性に触れることで、いかな女王の野望のためとはいえ、彼らを使い潰すような行いに加担しまいと決意する。実際には杞憂であったのはお互いのためであっただろう。
最新話時点で、新部隊、王室直轄迷宮特務戦隊『緑風』の術師統括を担当することになった。
●ガラリエ・フェンタ騎士爵、二十歳、女性 → 『キャプテン』ガラリエ・ショウ・フェンタ男爵
●【翔騎士】十一階位
金髪碧眼ですらりとした長身のお姉さん。
どちらかといえば真面目頑固系だが、精神的揺さぶりには強い方ではない。
建前上ではアーケラ、ベスティと並び、勇者の住まう離宮のメイドとして仕事に臨んでいるが、実体としては護衛の要素が強い。
王女派の色が強い第三近衛騎士『紅天』からの出向組であり、実家であるフェンタ子爵家は苦し紛れで第三王女派になった苦しい台所事情を抱えている。
勇者による騎士団『緑山』設立時には従者として入団し、紋章官の資格を持つため書類整理や騎士としての訓練を担当することになった。とはいえ、それも短い期間であり、むしろ迷宮で行う一年一組の破天荒さに感化されてしまったクチだ。
最新話時点で『緑風』の隊長に就任し、心に重圧を感じながらも、同時に男爵となっている。
『レムト王家の人たち』
●リーサリット・フェル・レムト、十六歳、女性 → 『クイーン』リーサリット・アウローニヤ・フェル・リード・レムト
●【導術師】十一階位
アウローニヤ編における……、もしかしたら物語全般に渡る裏主人公。
金髪碧眼の超絶美少女設定で、勇者サイドで対抗できるのは、金髪翠眼エセエルフのミアだけではないかとされている。ただし中味は全くの別物だけど。
帝国の脅威に怯えてボロボロなアウローニヤ王国の第三王女として生まれ、幼い頃から事態をマシにできるのではないかという『野望』を抱くに至った。
絶対に勘違いしてはいけないのは、彼女が善政で民に安らぎを与えたい、などとは考えていないということだ。
彼女が王位を望んだ理由はただひとつ。自分の望むアウローニヤを作り上げ、真っ当に滅亡をさせるための手段でしかない。結果として貴族の腐敗が払拭され、民の生活が安定させる政策に傾くのは、それが彼女の理想とする国家像だからにすぎないのだ。彼女にとっての平民は、慈しみつつも自らの財産でしかないのだから。
自らの自由にできる武力はミルーマ団長を含む『紅天』の一部だけであり、ただひたすら謀略で味方を増やすことに時間を費やしてきた。基盤となったのは姉である、第二王女の残した『第二王女派』。
彼女の派閥への勧誘は、誘惑、利権、脅し、懐柔、弱みへの付け込みなどなどと、手段を選ぶことはないが、代償として将来への約束と利益誘導を確約し、実際にそれを破ることはないという信用を担保としてきた。
そんな折に自らが巫女を務め行った『召喚の儀』において、一年一組が現れたことに運命的な狂喜を覚える。
王国首脳部の誰よりも強く勇者たちを所望し、ひたすら自らの派閥に協力せざるを得ないように誘導してきた。そこにあったのは自らの持つ理想に勇者たちが共感できるであろうという、半ば妄信であったかもしれない。
そしてそれは間違っていなかった。報告書を見る度に彼女の中で勇者たちへの崇拝が高まっていくのも仕方がないだろう。なにせ彼らは予想を超え続けてみせるのだから。
同時に勇者たちが自らと変わらぬ十代半ばの子供たちであることも意識し、それは親愛の情ともなった。要は彼女は両者の自覚無しのまま勇者に篭絡されたのだ。
結果として彼女は勇者の権威を最大限に活用することでクーデターを成功させ、アウローニヤ王国第四十三代国王として即位した。そして約束通りに勇者たちの追放を成し遂げる。
彼女は野望を達成するために手段を選ばないが、そのために手駒とした者たちに報いることを厭わない。両立のために苦悩し、必要のない労力を払おうとも、それがリーサリットという人物のやり方であるからだ。
今後、彼女は全てを賭けて勇者たちの望む帰還の助けとなるだろう。それこそが彼女の望みであり、新たなる野望でもあるのだから。
●バールラッド・フォール・レムト、二十三歳、男性
●神授職、階位設定なし。騎士職と思われる。
金髪碧眼イケメンなアウローニヤ王国第一王子。
物事を楽観視する、天然系王子様。決して凡庸なわけではなく、配下に対し鷹揚な態度を取ることのできる器を持っている。ただしそれが自らの取るべき処世術として捉えている部分もあったかもしれない。
宰相派と第一王子派からは次世代の王として認められていたが、それは軽い神輿だからという悲しい現実を伴っていた。
そもそも彼の戴冠までにアウローニヤが存続していたかどうかも怪しく、物語中では帝国への手土産として狙われることにもなる。
その事件により心を負った第一王子の姿を見た第三王女がクーデターの決行を決意したのは、予定されていた流れとはいえ不幸であったことは間違いない。
第三王女とて、家族を弑逆したいとまでは思っておらず、全員の命に配慮しながら政権の転覆を狙っていた。
クーデターの最終局面において立ち向かう姿を見せるも、時はすでに遅し。だか、彼の侍女たるアーケラはそれを美しい反抗だと心に刻みつけることになった。
今後ウニエラ公国にて余生を過ごす予定である。
●ガルシュレッド・アウローニヤ・ヴィクス・レムト、五十代、男性
●神授職、階位設定なし。
アウローニヤ王国第四十二代国王。小太りで語調がどもりがちなのが特徴。
実は意識外で勇者最大の味方となった人物でもある。第三王女に誘導されたとはいえ、勇者降臨の際に調子に乗って伝承に残された『勇者との約定』を公式に締結したため、勇者を手に入れることで悪いことを考えていた貴族たちに一定のブレーキをかける形になった。
その縛りこそがのちの第三王女クーデター事件に繋がっていく。
本人は無邪気で派手好きな人物で、典型的なバカ殿様ではあるが性根が腐っているわけではない。ただ、時代がそれを求めていなかっただけだ。
クーデターにて退位後は、王国北方の保養地であるメルファールで余生を過ごす予定。
●ベルサリア・ハィリ・レムト=ラハイド、二十一歳、女性
●神授職、階位設定なし
アウローニヤ王国元第二王女にして、現ラハイド侯爵夫人。一男の母親。
身長が百五十程度の釣り目がちな金髪碧眼の、俗に言う合法ロリ。
ただし性格は苛烈にして、自分視点での悪に対しては容赦ができないタイプ。とくに私財を不当に肥やす文官たちが大嫌い。
そのため宰相派に対抗するために『第二王女派』を立ち上げるも、過激思想のために思ったように勢力拡大にはつながっていなかった。
そんな折、自らの妹である第三王女リーサリット、当時八歳に自分にはない才覚を見出し。自らは北方を制するためにラハイド侯家に降家。『第二王女派』の全てを第三王女に引き継ぐことにした。
何気に苛烈ロリとタヌキ侯爵として仲良し夫妻をやっている。
●王妃、第一王女、第二王子
名称未設定。
王妃はアウローニヤの友好国であるウニエラ公家の出身。現公王の妹にあたる。
第一王女は公王の息子に嫁ぎ、所謂従兄妹婚となるが、次代のウニエラを継ぐことになるだろう。
第二王子はいまだ八歳で才覚も定かではなく、政争に参加するまでもなく王妃や第一王子と共にウニエラ公国に送られることとなった。
『近衛騎士関連:総長直轄もしくは騎士団所属外』
●ラペリート・ヘィグ・ベリィラント伯爵、五十一歳、男性
●【豪騎士】十六階位。
近衛騎士を統括する立場となる近衛騎士総長であり、アウローニヤ編(仮)におけるラスボスとなった。
現時点では最高の階位を持つ化け物。
まだ五階位であった頃の勇者たちが自分の管轄から外されそうになったことに癇癪を起し、訓練という体裁でいたぶりをかますという容赦のないマネをしでかした。
その様子を見ていた聖女上杉からは、子供としか言えない人物と評価される。
極度の血統、階位主義者であり、金で買った男爵などを鼻で笑い、同時に階位の低い文官たちを低く見る傾向が強い。当然対象者たちからは嫌われる。
帝国からの度重なる離反要求を無視し続けており、そんな崇高な自分とは異なり、王国からの脱出を図ろうとしていた宰相らを蔑んでいた。逆に宰相からは血統階位バカと思われているのは鏡写しのようなものだろう。
イザとなれば城を枕に朽ち果てる覚悟でいたが事態はそれを許さず、第三王女のクーデターが勃発する。そこで彼が取った行動は秩序を乱した第三王女へのお仕置きであり、相手の覚悟を舐めた根本的な傲慢さが最終的に敗北を呼び込むことになった。
勇者騎士団である『緑山』の奮戦により迷宮罠により(たぶん)五層に転落。
その数日後、八津の【魔力観察】により、四層で力尽きて迷宮に吸収されているところを発見された。まさに死亡確認であるが、死してなお八津に深い傷を残すことになる。
●シャーレア・モルカノ、五十代半ば、女性
●【聖術師】階位未設定。
白髪の優しげな老婆をイメージしていただければ。
地上での訓練中に怪我をした笹見に【聖術】を行使することで、一年一組が同色の魔力を持つ『クラスチート』を持つことに気付くヒントを与えた。本人は無自覚。
勇者たちの迷宮行にも三度ほど同行しているが、彼らが迷宮泊を当たり前とするようになってからは任務からは外れている。
基本的には勇者側に立った善良サイド。
●パード・リンラ・エラスダ男爵、三十代後半、男性
●【聖術師】階位未設定だが、五階位か六階位相当。
前述のシャーレアが味方サイドなら、パードは敵側の【聖術】使い。
勇者たちが出現し、『王家の客人』となったことを疎ましく思う『排斥派』のひとり。
情報を官僚貴族たちに売り渡すために自発的に勇者との迷宮行を望むが、それは第三王女の罠でもあった。案の定、勇者のご機嫌を損ねるというヘタを打ち、立場を失う。
以後フェードアウトするかとも思われたが、何故かハウーズ遭難事件や総長ラストバトルに観客的存在として登場するなどチョロチョロと出場機会が得られれた。
だからといって何ができるわけでもなく、生存こそ間違いないが、行方は知れずとなっている。状況的には地方送りといったところだろうか。
上杉の聖女覚醒シーンを見届けシンパと化し、志願して『緑風』に参入なんていうパターンも考えていたのだが、文章が長くなりそうなのでパージされた可哀想なキャラだったりする。
●フューラの工房長、平民
●神授職、階位設定なし
近衛騎士専属工房『フューラの工房』の工房長。
腕の良い鍛冶師で、近衛騎士たちの標準装備だけでなく、勇者の妙なオーダー、滝沢先生のフィンガーグローブ、海藤のボール、中宮の木刀などを手掛けた。
『近衛騎士関連:第一近衛騎士団『紫心』』
●パルハート子爵、四十代、男性
●神授職、階位設定なし(多分十三階位)
第一近衛騎士団『紫心』団長。パルハートは家名であり、ファーストネームすら設定されていないモブキャラ。
第一王子派というか近衛騎士総長派とも言うべき人物で、クーデター時に王族を守護すべく最後の壁になるはずが、ミームス隊の登場により抵抗の意思すらみせず投降してしまう。
当然、賊として捕縛され、クーデター後には王族監禁の罪に問われるという末路を辿る。女王即位の恩赦で死罪こそは免れるはずだが、末路は哀れなことになっているはずだ。
●ナイメル男爵/カラハリタ男爵 性別設定なし
●神授職、階位設定なし
『紫心』所属の王女派騎士。分隊長格とされている。
クーデター初期段階で近衛騎士総長の手により戦死。
●ベリィラント男爵、男性
●神授職、階位設定なし
『紫心』副長で総長派騎士。近衛騎士総長ベリィラントの養子で、次世代の総長を目されていた。
クーデター後に『戦死』が確認されている。
●ギィラス・タイ・レギサー男爵、三十代半ば、男性
●神授職、階位設定なし(たぶん七階位から十階位のあいだ)
『紫心』副長で宰相派騎士。
ハシュテル副長による勇者拉致計画の露払い兼運び屋として行動するが、失敗に終わる。
事件当日は言い逃れるも、以後の取り調べにより追い詰められ、ついには第一王子拉致を実行し、これまた失敗、捕縛された。
後日、爵位剥奪の上、部隊ごと西方フィーマルトに送られたはず。
実家は帝国に吸収された旧ハウハ王国貴族であるレギサー宮中伯家で、連座により国外追放処分となる。実は一連の王家騒乱により、現時点では一番重い罪を受けた、言い換えれば女王から完全に不要とされた家となった。
●アートニア・イェハ・ミルトラル男爵 → 子爵、五十歳くらいの男性
●神授職、階位設定なし(たぶん十三階位)
『紫心』副長で王女派騎士。
白髪のご老人で、長年に渡り『紫心』の副長を務めてきた人物。クーデター騒動の結果、子爵に陞爵され、第二近衛騎士団『白水』団長となる。
いきなり出てきた一発キャラの中では最高の栄達を得た人物かもしれない。
実は前述のナイメル男爵かカラハリタ男爵が生き残っていた場合、どちらかが『白水』の団長になっていたかもしれないという裏設定があったりする。
『近衛騎士関連:第二近衛騎士団『白水』』
●オウラスタ子爵、三十代半ば、男性
●神授職、階位設定なし(多分十三階位)
第二近衛騎士団『白水』団長。オウラスタは家名であり、ファーストネームすら設定されていないモブキャラ。
宰相と近衛騎士総長の手引きで第四近衛騎士団長キャルシヤを追い落し、団長の座を手に入れた。そのせいもあり、完全な宰相派となる。王都軍パラスタ隊と並び、宰相の手駒としては最強戦力であった。
リーサリットの起こしたクーデター時に『白水』本部にて宰相と軍務卿を庇っていたため、そこを狙われる。結果としてカリハ隊との戦闘で死亡。
『近衛騎士関連:第三近衛騎士団『紅天』』
●ミルーマ・リィ・ヘルベット子爵、二十代半ば、女性
●【堅騎士】十三階位
第三近衛騎士団『紅天』団長。騎士団の名前に寄せたかのようにルビーのような赤い目とストレートに伸ばした銀髪が特徴。
元々熱狂的な第二王女派であったが、主人の願いに応え、妹である第三王女を支えることを誓う。そうしたら、今度は第三王女リーサリットが傑物であることを知っていしまい、完全なるシンパと化した。
内外でも第三王女への敬愛を隠すことをせず、ついたあだ名は『紅忠犬』。本人はそれを聞かされてもなんとも思わなかったらしい。事実だからと。
クーデターでは自らのヘルベット隊を率いて王室区画『黒い帳』攻略を担当し、犠牲を出しながらも『紫心』の防衛を突破し、これを成し遂げる。
だが、戦後の報奨として立場の継続を女王に懇願し、護衛の座を譲らなかった。贈られたのは『赤き銀たるミルーマは、リーサリットと共にあり』という言葉をアウローニヤの正史に残すという確約だった。
●ウルハイア・マージ・ラスキトラ男爵、三十代後半、女性
●神授職、階位設定なし(多分十三階位)
ミルーマ率いるヘルベット隊の副隊長にして、『紅天』副長を兼任する優しく落ち着いた女性。
クーデター時に混乱状態になった『白水』本部の後事を託される程にミルーマには信頼されている。
戦後の報奨というか人材不足の結果、第五近衛騎士団『黄石』の団長に任命された。
『近衛騎士関連:第四近衛騎士団『蒼雷』』
●キャルシヤ・ケイ・イトル子爵 → 伯爵、三十くらい、女性
●【斬騎士】十四階位
第四近衛騎士団『蒼雷』団長。大柄な体躯に金髪碧眼のアネゴタイプな女性。口調も男風になっている。
元々イトル家は第二騎士団『白水』の団長を歴任していたが、キャルシヤの父が近衛騎士総長と折り合いが悪く、政争の果てに病死してしまい、家督を継ぐ形になった。
折しも娘を産んだ直後であったため騎士団への復帰が遅れ、戻った時点で居場所が微妙になっていたところを宰相の推しで第四騎士団『蒼雷』の団長職に就くことになる。アウローニヤ的には末代まで続く完全な降格人事であり、以後は降格子爵などと揶揄されてしまう。
本人は豪放磊落な性格であり、政争を良しとせず、むしろ迷宮での活躍が期待される『蒼雷』を気に入っていた。頻繁に迷宮に入るようにもなり、五層にまで手を付け十四階位を達成してしまう。周囲に曰く『迷宮子爵』の誕生である。アウローニヤで子爵位を持つ者が頻繁に迷宮に入ることは希少であり、そして下賤とされるが、本人はそのような評価をものともせず、そしてそんな彼女を平民出身者で編成された騎士団たる『蒼雷』は歓迎した。
キャルシヤに押し出される形で副長になってしまった、本来の団長たるバレバットまでがである。
そういう人望を目に付けられたのか、第三王女により秘匿されていた父親の過去の罪を目の前にされ、王女派に与することとなった。キャルシヤ本人は政争などはまっぴらであったのだが、もはや完全な被害者ポジだ。
魔獣の群れに対応するための調査会議に出席した折に勇者に興味を持ち、のちに迷宮を同行するが、彼らの知と連携に圧倒されてしまう。とくに『指揮官』八津には畏怖すら抱いてしまった。
勇者たちと近しくする者の多くは、彼らの無垢な精神性に惹かれる傾向が強いが、キャルシヤの場合は怖れが先行しているという珍しい受け止め方になっている。
クーデターの折にはミルーマと同じく『黒い帳』攻略を成功させており、両者は同等の功績を上げたこととなった。
なのに言葉だけを得たミルーマに対し、キャルシヤは第一騎士団の『蒼雷』団長兼近衛騎士総長代理という大掛かりな昇進、というか王国的には栄達を果たしてしまう。同時に伯爵へ陞爵。
苦労人の素質たっぷりのキャルシヤはこの先どうなるのか。
●バレバット・キュラ・ジクート男爵、四十代、男性
●神授職、階位設定なし(多分十三階位)
第四近衛騎士団『蒼雷』副長。
ジクート男爵家は代々続く『蒼雷』騎士団長の家系であり、事実三年程前までは団長を務めていた。そこに政争で追い落とされた『白水』副長のキャルシヤが団長として収まったことで副長となる。
当初こそ名門貴族で女性のキャルシヤになにができるのかという疑念を抱いていたが、存外の好人物であることを知り、以来共に『蒼雷』を盛り立てる者としての行動をとる。
クーデター時にキャルシヤが第三王女に取り込まれたことを知り、表立って同調する路線は取らなかったものの『蒼雷』が宰相派に傾かないように尽力した。騒乱後にキャルシヤが近衛騎士総長代理兼『紫心』団長となることで、『蒼雷』団長に復帰。名実ともに女王派、というよりはキャルシヤ派として活動することになる。
●ハウーズ・ミン・バスマン騎士爵 → ハウーズ・バスマン、十六歳、男性
●神授職未設定、初登場時七階位
血筋的には宰相の孫に当たり、バスマン男爵家次期当主が内定している人物。
初登場時は勇者たちに絡むチンピラ騎士として、テンプレな活躍をしてくれた。すなわち主人公サイドの餌である。
訓練期間中に二層での魔獣の群れに遭遇し、遭難。勇者に救出されるなどという事件を起こし、本来ならば第一騎士団『紫心』に入るべきところを懲罰的に第四の『蒼雷』扱いとなった。
様々な経験を経て、最終的に騎士の誓い的な意思を胸に第一王子を守る盾となるも全く力及ばず無力化されてしまう。それでも最後の盾として戦い抜いたことを敵となったヒルロッドたちは立派と認めた。
結果としてアーケラと同じく第一王子の守護者としてウニエラ公国に渡ることを決意する。
ライバルっぽいキャラとしてフェードアウトした感じはあるが、もしもウニエラ編があったならば、再登場確実な存在だ。
●シュラハー/ルカリマ/ミスバート/キュラック、全員騎士爵
●神授職設定なし、初登場時六階位、のちに七階位を達成
上記ハウーズの取り巻き。七階位になると共に第二近衛の『白水』が内定していたが、ハウーズと同様の罰として『蒼雷』預かりとなる。
だが、本人たちはそれを当然とし、迷宮に入ることのできる騎士を目指していた。
クーデター時には職務を全うすべく第一王子の守護にあたるが、ヒルロッドたちミームス隊に一掃される。だが、その姿勢そのものは高く評価され、ウニエラに送られる第一王子と行動を共にするようだ。
『近衛騎士関連:第五近衛騎士団『黄石』』
●ヴァフター・セユ・バークマット男爵 → ヴァフター・バークマット。犯罪認定により平民へ、四十くらい、男性
●神授職設定なし、十三階位
第五近衛騎士団『黄石』団長。
初登場時は勇者たちにフレンドリーな態度を示していたが、後日勇者拉致事件に加担し、八津、綿原、笹見の三名を『黄石』の隠し部屋に捕らえてしまう。
宰相と共謀しての行動ではあったが、本人としては王国に未来はないという判断でしかなく、派閥力学的なものではなかった。ただ、家族や部下ともども帝国に降るための駒が必要だったというだけで。
しかし拉致した三人は脱走、さらには救助に現れた一年一組にコテンパンにされ、捕縛される。
犯罪者となったヴァフターだが、家族の無事と助命を引き換えに、クーデター時に迷宮に避難する第三王女の護衛として勇者に雇われ、さらには近衛騎士総長との戦闘にまで参加するハメとなった。
十三階位であることを買われて同行したにも関わらず、勇者のひとり馬那に庇われ重傷を負わせてしまうという失態を犯す。
そしてクーデター終了後、勇者の意志を継ぐ新部隊『緑風』の隊員に勧誘された。すっかり勇者に毒されたせいか、自らよりも階位が低いガラリエを隊長として仰ぐことに抵抗はないようだ。
●マルライ・ファイベル騎士爵、犯罪認定により平民へ、男性
●神授職設定なし、十三階位
前述ヴァフターと共に勇者拉致に加担したファイベル隊隊長。行動はヴァフターと同じ。
●ポウトル騎士爵、犯罪認定により平民へ、男性
●神授職設定なし、十三階位
前述ヴァフターと共に勇者拉致に加担したファイベル隊隊員。行動はヴァフターと同じ。
近衛騎士総長との戦いで大怪我を負い、上杉より【聖導術】による治療を受けることとなった。また、戦いの後半でワザと裏切った演技をすることで、敵の隙を作り出す殊勲を上げる。
●ジェブリー・カリハ騎士爵 → ジェブリー・セン・カリハ男爵、三十五歳、男性
●閃騎士、十三階位
第五近衛騎士団『黄石』副長兼カリハ隊隊長。
初期における勇者たちのレベリングに同行する。平民上がりらしく遠慮の無い豪放な性格で勇者に接する気のいいおじさん。
八津らの起こした勇者二層転落事件では、責任問題になる可能性を抱えつつも勇者を連れて二層に向かい、無事救出に成功した。
その後ヴァフターの勇者拉致事件に遭遇して以来、完全に勇者派、言い換えれば第三王女派に与する形でクーデターを迎える。結果、宰相をかくまう『白水』本部での激闘により、乱入してきた近衛騎士総長に左足を斬られるという大怪我を負う。
最終的に上杉の【聖導術】により足は癒着するものの、戦士としての動きを取り戻す段には至っていない。王女戴冠に伴い、報奨という形で『黄石』から教導騎士団『灰羽』へ移動。男爵を賜り地上での戦技教官として活動することとなった。
●ヴェッツ・ミレドハ騎士爵、二十代、男性
●神授職未設定、十三階位
第五近衛騎士団『黄石』カリハ隊第一分隊長。
平民騎士団らしく荒々しさが目立ち、当初は勇者のレベリングを小僧のお守だと捉えていた節がある。
だが、一層でのトラブルにより多数のネズミを勇者の卵が撃退する様を見て、考え方を改めるに至った。
その後の行動は上司たるジェブリーとほぼ同一であるが、負傷によるジェブリー隊長の穴を埋めるべく、カリハ隊を引き継ぐ形でミレドハ隊を結成し、近衛騎士としての任務に当たることになる。
●マキェス/ケリーグ/ロブヘリト、全員が騎士爵
●神授職、階位未設定
ジェブリー・カリハ率いるカリハ隊隊員。
勇者に教導補助として同行することになり、二層転落事件でも救出活動に尽力した。
カリハ隊がミレドハ隊となったあとも、ヴェッツ・ミレドハを盛り立てていくことだろう。
『近衛騎士関連:第六近衛騎士団『灰羽』』
●ケスリャー・カー・ギッテル男爵、四十代、男性
●神授職未設定、たぶん十三階位
第六近衛騎士団『灰羽』団長。気取った口ひげがトレードマーク。
総長寄りの日和見派閥でクーデターの際には自らの掌握下にある部隊を動かすことはなかった。ただし後述されるミームス隊ほか平民上がりの部隊を除く。
クーデター終了時に第三王女が優勢と知り、即傘下に加わることを表明し、自らの地位を守ろうとする。
物語上でも最高レベルの小物オブ小物として扱われているが、生き残っているのだから仕方がない。
●ウラリー・パイラ・ハシュテル男爵 → 犯罪認定により平民へ、三十代、男性
●神授職未設定、十一階位
第六近衛騎士団『灰羽』筆頭副長兼ハシュテル隊隊長
本物語における典型的小物悪役。
魔獣の行動が未確定だった頃に貴族訓練騎士ハウーズらを連れて二層で活動していた際に群れに遭遇。戦闘状態に陥り、本来守るべきハウーズたちとはぐれてしまう。
逃亡の際に迷宮内で勇者一行と遭遇。ハウーズの捜索を一方的に勇者とヒルロッドたちに押し付け、自らは地上に帰還した。
その後、勇者たちは見事にハウーズらの救出に成功し、ハシュテルは名を下げることになる。その結果として懲罰的に迷宮探索を命じられるも、勇者への反感は収まらず、宰相派の手引きにより勇者拉致を画策するも逆に撃破され捕縛された。
現時点では爵位を剥奪された上で西のフィーマルト迷宮に送られることになっている。
●ラウックス騎士爵、二十代後半、男性
●神授職未設定、十三階位
ヒルロッド率いるミームス隊、第一分隊長。
ミームス隊が勇者と関与する場合のほぼ全てで登場していた。
好漢とも言うべき人物で、勇者の立場を理解しつつ、彼らが強くなることに尽力し、ミームス隊の副隊長としても活躍している。
『王都軍関連』
●カルフォン・テウ・ゲイヘン伯爵、五十代、男性
●神授職、階位未設定
国軍第一軍団とされる王都軍団長。
元から迷宮探索に熱心なこともあり、第三王女の考えに共感する王女派となる。
迷宮に魔獣の群れが確認された際にも、勇者の提案を取り入れつつも現有の戦力で対応できるよう、差配を行った。アウローニヤとしては稀有ともいえる、現実を見据えている真っ当な人物でもある。
女王側に立つ形でクーデターに参加し、王都軍全軍の掌握には手間取るものの、勝利に貢献した。近衛騎士団が目立つ中、指示を出す側として活躍した人物でもある。
女王戴冠時には軍務卿代理を任じられ、王国の軍部に多大な影響力を及ぼすことが可能な立場となった。
●ハーレッダ・コウ・ゲイヘン男爵、二十代、男性
●神授職、階位未設定
ゲイヘン軍団長の子息で、王都軍第一大隊副長。
世襲が基本となるアウローニヤにおいて将来の王都軍団長を目指す立場であったが、クーデターの影響で父が軍務卿代理となったため、急遽昇進、王都軍軍団長補佐となる。
やたらキラキラしたイメージのある優男。
●シャルフォ・ヘピーニム騎士爵、三十代、女性
●【強剣士】、初出十階位 → 十一階位へ
王都軍第三大隊、ヘピーニム隊隊長。
女王派を裏切らないとゲイヘン軍団長に見込まれ、事あるごとに勇者たちとの接触を要求された、幸運にして不幸な人物。
調査会議での模擬戦、迷宮内での勇者たちとの訓練、クーデター時の同行など、勇者が死力を尽くす場面に立ち会こととなり、多大な影響を受けることになった。
迷宮に魔獣の群れが出現したことを受け、いち早くその対応のために部隊編成を見直し、斥候二名、【聖術師】一名を取り入れることで、安定を目指していた。
意図的ではあったものの、その後勇者たちとの共闘を経ること勇者の戦い方に心服する。
クーデター時にも女王の護衛として選抜され、総長との死闘を乗り越えた。
勇者の意志を作部隊として設立された『緑風』の由来と目的にも賛同し、ひとりの剣士として参加することを決意した。
●パラスタ隊
●固有キャラ名登場せず
王都軍第二大隊所属、女王派の主戦力と目されていたが、宰相主導による勇者拉致の実行犯となり、完全に敵対した者として判断された。
クーデター時には宰相派の第二近衛騎士団と組んで『白水』本部の守護に回るが、総長に恫喝され、宰相や軍務卿とともに迷宮に入ることとなる。
結果として勇者に敗れ、現状では爵位剥奪とされ北部ラハイダラ迷宮送りと裁定されている。
●ミハット・ガスティル騎士爵、男性
●速剣士、八階位
王都軍第一大隊、ヤルバ隊、第三分隊長。
迷宮における、ごく普通の兵士の見本として登場してもらったキャラ。
狩った獲物の素材を綿原の提案で譲り受けるも、恩義を感じなかったわけではない。
その時に綿原画伯によるサメイラストを渡されており、お互い顔すら知らずとも綿原と娘の交流が深まっているのが痛しかゆしである。
娘の名は、ハーナ・ガスティルちゃん八歳。
●パーラッタ・ビレアス騎士爵、男性
●神授職、階位未設定
クーデターの功績で昇進。
王都軍第三大隊所属でビレア隊隊長を打診されるも、家族を人質に取られ戴冠式にて女王暗殺を強要されていた
事前の調査で事件そのものが起こらなかったため、そのまま隊長職に就任する。
●ハンガート・ベイラ騎士爵、男性
●神授職、階位未設定
クーデターの功績で昇進。
騎士爵王都軍第二大隊にてベイラ隊隊長に就任する。
●ナハム師、男性
●神授職、階位未設定
約二百年前に活躍した迷宮研究者。
その際に提出された各種論文は現在に至っても『あるべき迷宮の姿』として信仰としての対象となっている。
シシルノさんなどは昔の見解として一定の理解を示しているが、過去は過去として現状を見定めることに現実主義者として迷宮を見定めている。
『行政府関連(以下、神授職、階位設定なし)』
●バルトロア侯爵、六十代、男性
王国宰相にして、当初のラスボス候補最強格……、だった人物。一見好好爺で白髪白髭がトレードマーク。なのにフルネーム設定すら与えられていない。
近衛騎士総長が悪い武のトップならば、宰相は悪い政治家の首魁という扱いだが、そちら方面では第三王女が上を行き、しかもイレギュラーとして登場した勇者により思惑が空振りしてしまった。
もしも召喚された勇者たちが『普通の高校生たち』だったらなら、宰相の目論見は上手くいった可能性は高かっただろう。金や名誉で釣りあげて、仲間割れからの分断である。
だが、そんなマネが山士幌高校一年一組に通用するはずもない。
実際の悪どさでは間違いなく王国随一の売国奴っぷりであるが、帝国への手土産として計画した勇者拉致に失敗したあたりでケチがつき、その後は王女の後手に回る。
クーデター時には行政府ではなく、より安全と思われた『白水』本部に籠るも、思いもよらなかった近衛騎士総長の乱入により見届け人として迷宮に連れ込まれることになった。
女王戴冠時には病気により一時政務を離れると発表され、宰相職を解かれたわけではないが、帝国の第二皇子に引き渡されることが確定しており、元の席に戻ることはないだろう。
そういう措置を取られたのも、全ては宰相派並びに南部のバルトロア縁者への牽制であり、事実上の人質となっている。
もうちょっと政治的に活躍させてあげたかったキャラだったのが残念。
●ピービルナ伯爵、男性
宰相派の軍務卿。
軍務卿という職は軍部というより軍政側の立場となる。
クーデター時に宰相と同じく総長により迷宮に連れ込まれ、勇者との激闘を見届けることになるが、結局は捕縛された。
しかも宰相とは違い、普通に有罪とされて軍務卿の職を解かれることになった。後日、宰相と一緒に帝国第二皇子に差し出される予定となっている。
●ナターレン伯爵、男性
現法務卿で、宰相派。
クーデター前後で立場が変わらなかった希少な人物であるが、女王による宰相派に対するガス抜き、もしくは軽い神輿と判断されたからに過ぎない。
状況次第ではいつでも首を切られる立場であり、本人も半分方は気付いているので、今後の立ち回りには気を配っているようだ。
●レギサー伯爵、男性
元ハウハ王国の侯爵家の流れを継ぐ人物。帝国によるハウハ王国攻略時にアウローニヤに流れ着き大した役職も無いのに宮中伯の立場を得た。全ては金である。
親族である『紫心』所属のギィラス・タイ・レギサーが勇者や第一王子拉致に加担したため連座となる。とはいえ、帝国経由で指示を受けていたのは当のレギサー伯であり、黒幕だった。
捕縛後、資産は没収され、一家は帝国旧ハウハ領に国外追放となった。
●ディレフ男爵、男性
アーケラ・ディレフの父であり、生粋の第一王子派。
代々王家の傍仕えを責務とする家であり、当初から次王が内定していた第一王子に仕えていた。
●ハシュテル男爵、男性
勇者拉致を画策した『灰羽』所属、ウラリー・パイラ・ハシュテルの実兄。
元は商人の家であったが、金銭とコネでもって男爵位を得て、さらには血統貴族として認められるに至る。繰り返すが金とコネだ。
弟であるウラリー・ハシュテルがやらかした段階で第三王女に白旗を上げ、従属を誓う。
●ジャスリム、ケドルナ、ガルカンハ
女王様のグチに登場した宮中貴族たち。かなり嫌われていたらしい。派閥は不明だが、宰相派か第一王子派だろう。
『地方領主関連』
●イスライド・キャス・ラハイド侯爵、男性
王国北部、ラハイド侯爵領を預かる大貴族。妻は元第二王女であるベルサリア。
ラハイダラ迷宮の管理を担当している、王国三侯爵のひとりだ。
見た目は太ったおじさんだが、王国内の政争には積極的に加担しない中立派を装っていた。
妻としてベルサリアを迎え、その影響を受けてからは潜在的第三王女派として行動するようになる。
クーデター後には外交官としての役目も果たすことになった。
●ウェラル侯爵、男性
王国西部、ウェラル侯爵領を預かる大貴族。
フィーマルト迷宮の管理を担当している、王国三侯爵のひとり。
現在はレムト王家によって統治されているアウローニヤ王国の前王朝、ウーウェラ王家の末裔であり、元から王家には反発的であった。自動的に宰相派となるが、前王家の血を引くという立場から宰相本人を見下していた節もある。
私腹を肥やすことに腐心しており、女王が口惜しく思っていた西部開拓の遅れを招いた張本人。
クーデターにて立場が危うくなると判断し、即女王に帰順したあたりは政治力に長けているかもしれない。監視付きの下、今後の西部開拓が期待される。
●バルトロア男爵、男性
宰相バルトロア侯爵の実子であり、中央に出仕している父に代わりバルトロア侯爵領を守っている。
南部のバスラ迷宮の管理を担っており、父親が王国三侯爵のひとり。南部のバルトロア領は肥沃な土地として知られており、三侯爵の中でも最大の勢力を誇っている。
もちろんバリバリの宰相派。張本人の息子なので当たり前である。
今後は女王による南部弱体化戦略を真正面から受け止めることになるだろう。
『その他』
●淡崎佐和(たんざきさわ)、日本では十五歳のはず、女性
昨年度まで山士幌中学三年一組に在籍していた、要は山士幌高校一年一組の仲間のひとり。
中学卒業後に帯広の進学校へ入学したため、召喚には巻き込まれていない。
明るく快活な性格とされていて、ヒロイン綿原とも交流が深かったようだ。
名前のみの登場であるが、その名から、とある小説が思い浮かぶ人には感謝しかない。
◇◇◇
以上、アウロニーヤ人物辞典でした。次話からは通常の進行となります。