第336話 もちろん助ける方を選ぶさ
「こりゃあ……」
その部屋こっそり覗き込みながら、お坊ちゃん風の顔をした田村の表情が歪んだ。
ヴェッツさんたちカリハ隊が二層にやってきてから少し経ち、治療と炊き出しがひと段落したところで、俺たちは女王様に促されこの部屋の前まで移動してきた。
メンバーは『緑山』の全員と王女様とミルーマさんだけ。たぶんこの件についてきっかけになったヴェッツさんや、戦闘が終わったヴァフターやシャルフォさんたちは居残りだ。
さっきまでいた広間から三部屋だけ離れたこのあたりに魔獣はいない。その代わりというわけではないだろうが、入り口では『紅天』の騎士たちが厳重にその部屋を警備をしていた。
「ジェブリーさん……」
交代で部屋を覗く俺たちは向こう側から悟られないように心掛けているが、それでも声がこぼれてしまう。
そこに寝かされていたのは全部で七名。
全員に共通しているのは薬で眠らされていることと、そして体のどこかが欠損しているという事実だ。
ジェブリーさんの場合は、左足の膝から下が失われていた。
片方の手首が無い人がいて、片目を失っているように思われる人もいる。なまじ【観察】があるものだから、そういう部分が全部見えてしまうのがキツいな。
「卑怯だという自覚はしています。わたくしからお願いすることはいたしません。勇者の皆様方の選択にお任せします」
一度全員が部屋の中の状況を確認し終えたところで、女王様が切り出した。
声は小さく、眠っているジェブリーさんたちはもちろん、警備の人たちにも聞こえないくらいに気を使ってだ。
「だからといって、お知らせしないのも不義理であると考えました。とくにジェブリー・カリハについては」
「そう、ですね。ありがとうございます」
複雑そうな口調になった女王様の言葉に、クラスを代表して藍城委員長が礼を述べる。
そう、お礼だ。
女王様はこのことを俺たちに知らせずに済ませることもできただろう。あの部屋に寝かされているジェブリーさん以外の六人となると、一人だけキャルシヤさんが率いるイトル隊の人が顔を見知っているくらいで、残りの五人は本当に知らない人たちだ。聞けば『宰相派』の人まで混じっているらしい。
「これで全員というわけではありませんが、とりあえず集められる者をここに」
女王様はそう言うが、こんな感じの人はそう多くないと、俺たちは事前に聞かされている。
この世界の戦闘は、とくに王城や迷宮でとなると、剣と盾がメインになる。
これが屋外でする戦争ともなれば槍や弓、投石、魔術などが登場するが、今回は当てはまらない。俺の認識だと地球ならば中世レベルというありがちな表現になってしまうな。ほんと、いかにも異世界モノだ。
さらにそこに階位と技能、そして【聖術】が存在しているお陰で、戦闘における死亡者は少ない。総長みたいな化け物を筆頭とした十三階位クラスに殺意を持って襲われない限り、【聖術】さえあればなんとか生き残ってしまうのだ。
もちろん俺たちは地球の中世で行われた戦争における戦死者の割合なんてものは知らないから、比較することもできないが、どうにもこの世界は防御有利だと思えてしまう。階位が上がれば、自然回復すら速度が上がるのが世界のルールだ。
話を戻すとつまり【聖術】が間に合えばセーフ、でなければアウト、中間は少ない、と。
その中間がまさに目の前にいる人たちということになる。鎧や頑丈な肉体もあって、即死や部位欠損は起こりにくく、そういう怪我は【聖術】で治せない。けれど、ギリギリ止血が間に合ったというケースだ。
そんな人たちの中に、足を失ったジェブリーさんが混じっている。
助かっていてくれて嬉しいという気持ちはある。だけどそれ以上に胸に刺さるのは痛みだ。
「わたしは助けたいと思います」
真っ先にそう言い切ったのは【聖導師】の上杉さんだった。
まさに当事者中の当事者。
女王様がこんな回りくどい手段を取ってまで俺たちに選択肢を渡してきたのは、上杉さんを思ってのことに他ならない。
「バレますよね。絶対」
「はい。マナ様ともうひとりだけでしたら、時間も稼げたとは思いますが……」
上杉さんの決意を聞いた委員長が女王様に問うが、聞くまでもなく確信しているのだろう。
この状況で問題になるのは上杉さんが『マジモノの聖女』であること、すなわち【聖導術】が使えることが、どこまで露見するかだ。
総長たちの目の前であっても、上杉さんは躊躇することなく【聖導術】を使い、筋トレ野郎な馬那やヴァフター隊のポウトルを救った。当然の行いだと俺も思う。
それを宰相や軍務卿、パードやベリィラント隊、パラスタ隊の連中は目撃してしまった。
だけど、このあたりはもみ消すことも不可能ではない。彼らは犯罪者扱いになって捕縛されているし、仮に上杉さんが聖女であると喚いたところで、目撃者はいないのだ。
もちろん味方側となる『緑山』やヘピーニム隊、ヴァフター隊はそんな『デマカセ』を否定することができる。反逆者共がなにをほざくのか、と。転向者のヴァフターたちには強く言い含めればいいだけだ。もちろん命を助けられたポウトルにも。
「大怪我したのに、治っちゃったら面倒なんて……。いいことなのにさ」
忍者な草間が辺りを警戒しながらも、悔しそうに俺たちの総意を代弁してくれた。
この人たちが手足を失うような大怪我を負ったことを知る者は多いはずだ。そんな人たちが普通に治ってしまったらどうなるか。
誰が治した? そんなの勇者に決まっている。その中でもひときわ燦然と輝く【聖導師】、すなわち聖女の存在。
口止めできない目撃者が多すぎるのだ。
この場にいる人たちを治してから、当面のあいだ監禁するなんていう手もある。死んだことにしておいてだ。
それでも噂は流れるだろう。地上で一命をとりとめたのを知る人もたくさんいるのだ。そんな怪我人たちが迷宮に連れていかれて行方不明とか、女王様の名声がどうなるか。
本当に女王様も無茶をする。
「帝国、帝国って、イヤになるねえ」
アネゴな笹見さんが大きくため息を吐いた。
そう、俺たちがこんなことで頭を悩ませているのは、全てジアルト=ソーン、つまり帝国が悪い。
そもそもこの一件が終わり、俺たちがアウローニヤから追放という名の出奔する理由は、帝国に目を付けられる可能性が非常に高いからだ。
そこに聖女降臨なんて噂が追加されたらどうなるか。
「付け加えますと、聖法国にも教会経由で伝わる可能性があります」
「げっ」
女王様がネガティブ要素を追加してきた。クラスメイトの誰かが嫌そうに声を出す。
「いかに没交渉とはいえ、勇者降臨の情報は渡っているでしょう。彼の国の性質と我が国との関係を鑑みれば、偽勇者として無視するという路線を取るはずですが、聖女ともなれば……」
「言いたくないことを言ってもらえるのは、その、助かります」
女王様の言葉に委員長が再び礼を言う。そうか、聖法国アゥサまで動くかもしれない、と。
こういう風に隠しておいてもいいことまで教えてくれるのが、最近になって一年一組と交流を持ってからの女王様のやり口だ。最初の頃と違い材料を選ばずに提供し、俺たち自身の判断に委ねるという姿勢は助かる。助かるのだけれど、重いよなあ。
「もう仕方ないじゃない。わたしたちは見ちゃったんだから」
副委員長の中宮さんが、真面目な顔でまとめに入った。
俺たちはこのあと、少しだけの時間を挟んでアウローニヤから立ち去る予定になっている。
だけどここでもし聖女の噂が広まれば、帝国の、それこそ女王様と密約を結んでいる第二皇子張本人の気が変わるかもしれない。
二年待ってやるという話を保証するために聖女を差し出せ、なんて言えるくらい帝国側はアウローニヤに強く出ることのできる立場にある。少々の無茶を通すだけの力があるのだ。
「出発を早めるしかないでしょう?」
「だねぇ。けどまぁ、アタシはちょっと寂しい、かな」
仕方ないと顔で語る中宮さんに、チャラ子な疋さんは珍しく悲しそうだ。
気持ちはわかる。俺にとってこの国に愛着は無いが、それでも知り合った人たちは違う。やっぱり別れを惜しむ気持ちはあるんだ。
クラスメイトたちは、それぞれ複雑な表情を浮かべながら、小声で言葉を交わしていく。
「八津くんは、誰と別れるのが一番寂しい?」
出会ってきたアウローニヤの人たちを思い浮かべていたところにボソっと話しかけてきたのは、サメをまとわせた綿原さんだった。
「……みんなだよ。比べるなんてできないかな。綿原さんは?」
個人的にはシシルノさんとの思い出が面白かった、なんていうセリフは呑み込んだ。
それを言ったら地雷が爆発しそうな気がする。ここで女性の名を挙げるのは危険行為に違いない。
俺も成長したものだな。一瞬の間があったかもしれないが、すごく無難な返答になっているはずだ。
「わたしは……、シシルノさんかな」
「……綿原さん」
イタズラっぽくモチャリと笑う綿原さんに、ため息がこぼれてしまう。わかってて言うのは止めてほしいのだけど。
「だけどやっぱりみんな。アヴェステラさんも、ヒルロッドさんも、アーケラさん、ベスティさん、ガラリエさん、キャルシヤさんもそうだし、シャルフォさんもミルーマさんも、それに王女様……、女王様もね」
「ヴァフターはどうでもいいけど、ラウックスさんやヴェッツさんもだよな。綿原さんならミハットさんも追加じゃないか?」
「そうね」
本当にたくさんの人たちと知り合いになってしまった。
みんな親切だったり、俺たちと仲良くしてくれたり。そんな人たちのひとりが、そこにいる。
「もちろんジェブリーさんも」
「だよな」
綿原さんと俺は、そんな会話をしながら手を挙げた。
委員長が多数決とか言い出す前に、ヤンキーな佩丘が宣言もせずに最初に手を挙げ、それを見た上杉さんがすぐに続いていたんだ。すかさず海藤も夏樹も、そしてミアも。
二班をしていた頃、ジェブリーさんにはお世話になったもんな。
気付けば滝沢先生を含めた一年一組全員が手を挙げ終わっていた。
満場一致。やることは決まったな。
「上杉の【聖導術】だけで治せるんじゃない。勇者全員が揃ってないと起こせない奇跡ってのでどうだ?」
古韮は軽口でそう言うが、なるほど、その路線はアリだな。
「うん」
「いいな、それ」
「やるじゃないか、古韮」
「それはそれで面倒もありそうだけど、全員一緒というなら」
今回の件で上杉さんが聖女だとされたとしても、彼女だけに名を背負わせることはしたくない。勇者全員が一丸となったから起こせた奇跡。いいじゃないか。
そんな俺たちを見るアウローニヤの人たちの目に、最初からの信頼があるような気がするのが、ちょっとこそばゆい。
◇◇◇
「やるのには賛成したけどよ。そもそも治せるかどうかすら、わかんねぇぞ。中途半端に傷を塞いだんだろ、これ」
なんとも複雑な表情をした田村だが、こと治療となると理性と根性を見せる。
上杉さんの【聖導術】を使うからには、少しでも成功率を上げたいというのが本音なのだろう。
一年一組のヒーラーは四人いるが、専属は上杉さんと田村の二人だ。実力ならば上杉さんなのだが、判断をするという点では田村こそがヒーラーのリーダーと言っても過言ではない。
そんな田村は考え込んでいる。
クラスチートが通用しない相手で、しかも一度【聖術】が使われた上に、怪我をしてから時間も経っている。悪条件ばかりが並ぶこの状況で、はたして上杉さんの【聖導術】がどこまで通用するかすら定かではないのだ。
「……女王様、【魔力定着】お願いできるかな」
「ええ、喜んで」
謎のゾーンに入ったのか田村の口調に敬語は含まれていない。それでも女王様はまったく動じず、素直に床に手を突いた。そのまま全力で【魔力定着】を使っているのだろう。
「睡眠薬は迷宮素材だったよな」
「ああ、そうだよ。面白いことを考えているようだね、タムラくんは」
誰にともつかない言葉に返事をするのは、目を輝かせたシシルノさんだ。
なるほど、迷宮産の薬ときたか。
「起こす前に、ひと手間入れるか。ミア、中宮、春さん、護衛で古韮と佩丘。カエルを連れてきてくれ。いいよな? 八津」
「田村お前……、わかった。みんな行ってくれ」
迷宮内で魔獣が関わることならばと、田村は俺に判断を求めてきた。ゴーサインを出すのは構わないけれど、田村め、恐ろしいことを考えるヤツだな。
ところで春さんだけはさん付けなんだな、田村の場合。さすがに下の名前で呼び捨ては難しいか。
この提案にすぐ理解の色を見せたのは古韮と佩丘、そして中宮さん。わかっていない側はミアと春さんだが、それでも彼らは脱兎のごとくカエルを求めて走り去っていった。
「さて、俺らはここで休憩だ。俺と上杉もそうだが、委員長、奉谷、深山、白石、藤永、念のために女王様も。魔力貯めるぞ」
田村は女王様が魔力を固定した場所にヒーラーと魔力タンクをロールにしている連中を集める。
これからの展開次第では、どれだけ魔力が持っていかれるかわかったものではないからな。
謎の気合っぷりを見せる田村に、誰も文句はつけない。コトが人の命……、この場合は手足や目に関わる事態だ、全力を尽くすのは当然だ。
◇◇◇
「持ってきマシた!」
二層のカエルキラーとして定番のミアが、元気よくカエルを引きずって戻ってきたのは出かけてから五分もしないうちだった。
周りの表情からするに、ほかの連中は手出しをしたのかも怪しい。なにせカエルの体は急所を外しながらも身動きが取れないように、そこかしこに鉄の矢が突き立っているのだから。
とくに舌が口の外に出た状態で固定されているあたり、芸が細かい。俺の想像どおりなら、これぞまさに田村のオーダー通りの仕事だ。
「お、おう」
対する田村はちょっと引き気味だけどな。
「んじゃあやるか。ミルーマさん、準備できてるかい?」
「いちおうササミにやってもらったわ。これって意味あるの?」
「念のためだよ」
指名を受けて、自身の片手剣を抜いたミルーマさんは首を傾げている。
ついさっきまでの時間を使って、笹見さんの『熱水球』で気休めの消毒をしてもらったのだが、どうやら意味は通じていないようだ。
それよりやっぱり敬語を使えよ、田村。もういいか、このツッコミは。
もとより迷宮は清浄な世界だ。床に埃はないし、水路に流れる水を飲んで腹を下すこともない。もっといえば、魔獣の肉を生で食べることすらできる。
前にも話題に出たことがあるが、細菌や微生物を迷宮が呑み込んでるんじゃないかというのが、俺たちの説だったりする。
「手術室にはピッタリってなぁ。やるぞ上杉、委員長」
「はい」
「ああ」
田村のコールで手術が始まる。
「【解毒】したよ」
「ああ、ジェブリーさんよ、悪いけど起きてくれ」
委員長が【解毒】を使うことで、迷宮産の睡眠薬は効果を失った。ここで【覚醒】を使ってもいいのだが、魔力はケチった田村はジェブリーさんの頬を叩く。
最初の治療はジェブリーさんからとなった。
一番最初にしたのはえこひいきでもあるし、実験台とも表現できる。幸いというとアレだけど、斬られたジェブリーさんの左脚は本人と一緒に持ち込まれているし、条件としては悪くないのだ。
「ん、ここ、は? タムラ?」
「迷宮だよ。今からアンタを治す。上杉がだ。受け入れてくれるだろ?」
「治すって、おい。どういうことだ」
最初はおぼろげだったジェブリーさんの意識が、そのあたりで完全に覚醒したようだ。辺りを見渡し、そこにいるメンツを見て顔色を変えた。女王様がいるもんなあ。
「俺の足をか? ムリだろう」
「ムリかどうかを試すんだよ。上杉が【聖導術】を使うんだからな」
「【聖導術】って、冗談か?」
「本当ですよ。わたしは【聖導術】を取得して、もう二度も行使に成功していますから」
信じられないという顔をするジェブリーさんに、上杉さんは落ち着いた声で語り掛ける。まるで成功して当たり前といった風情なのがすごいな。【聖術】だけじゃなく、そういうメンタルが上杉さんを聖女にしてしまうんだと俺などは思うのだ。もともとが聖女だから【聖導師】という神授職になったんだと。
「……わかった。頼む。俺はお前らの【聖術】を全部受け入れよう」
「じゃあまずだ、手を貸してくれ」
「手?」
観念したように魔術を受け入れると宣言したジェブリーさんに対して田村は妙なコトを言い出す。
ジェブリーさんからしてみれば意味不明だろう。
「いいから貸せ」
「なにを……、カエル!? タムラ、おまっ」
横になったままのジェブリーさんの腕を田村が掴み、そのまますぐ横に配置されたカエルに近づけていく。気付いたジェブリーさんが愕然としているあいだに、手の先はカエルの舌に触れていた。
ジェブリーさんは手甲を外され素手になっていたわけで、カエルのマヒ毒は即発動する。
「あ、あ、なに、を」
「麻酔だよ。気休めにはなる。俺たちは体感してるからな」
俺たちは【毒耐性】が生えないか、などという理由で繰り返しカエルの毒を食らっている。
自分ですぐに【解毒】を使う練習をしていた上杉さんや田村などは、とくに念入りにだ。
そんな中で発覚したカエルのマヒ毒の特性は、体が動かなくなり触覚と痛覚が弱くなること、それなのに意識が保たれるというものだ。
動けずに意識がありながらも魔獣に襲われるのが理解できてしまう恐怖、なんていう意味では意地の悪い毒だと思うが、見方を変えると【聖術】に適した麻酔として使えてしまう。なんといっても意識が保たれるというのが大きいのだ。
痛みが抑えられる上に【聖術】に対する合意が継続されるのだから、本当に迷宮はワザとそういう仕様にしたのではないかと疑ってしまうほどに胡散臭い毒だよな。
「……ミルーマさん、頼む」
「わかったわ」
ジェブリーさんが完全にマヒったのを確認した田村は、剣を構えたミルーマさんの名を呼んだ。
ここで躊躇なく剣を振るえるミルーマさんが怖い。彼女の振り下ろした剣は、見事ジェブリーさんの塞がった傷口を三ミリほどだけ削ぎ落としてのけた。
そういうのが全部見えてしまう【観察】がちょっとだけ恨めしい。見ているだけで痛いぞ、これ。
「上杉、やれっ!」
切り落とされた足を手に持ち、それを血が吹き出した傷口に押し付けながら、田村が叫ぶ。
マヒのせいでジェブリーさんは暴れることもできない。顔に汗は浮かべているものの、苦悶の表情とまではなっていないようだ。たぶん痛みはかなり抑えられている。
これってすごいことなんじゃないだろうか。馬那の時には余裕がなかったから無理やりの施術だったけど、よくも短期間で田村もいろいろ考えたものだ。
「ジェブリーさん、治りますからね。わたしの【聖導術】を受け入れてください」
手に血を浴びながら、それでも上杉さんは微笑んで宣言した。