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Λάθος επαναφορά

 

 身体が浮くような心地に包まれて、エミリアは目を開けた。

 ここは眠りについたモクバのベッドではない、すぐにエミリアは気が付きあたりを見回した。


「幼い頃見たきりだったけど…」


 エミリアは真っ暗な()()()()に再び訪れていた。

 幼い頃記憶を取り戻した日、あたりのスクリーンに触れて自身の前世を見たり、この世界のことも見た。


 …前回と雰囲気が違う。

 そう思ったエミリアは自身の目の前で流れる映像を見つめた。


 *


「モクバ、貴方はこの家を継ぐの。だから泣いてはいけないわ」


 小さなエミリアの視点だろうか。彼女はモクバにそう言い聞かす。腕を引かれたモクバは涙を拭って頷く。


「偉いわ。貴方のような弟を持てて誇らしい…私にそう思わせなさい」


 *


 こんな記憶知らない。


 エミリアはそう思った。確かにこの視点となっている小さな少女はエミリアだろう。

 だがこんなシーンは小説にもなかったし、今世の記憶にもない。


「今更だけど、どうして小説世界のはずなのに私は各シーンを映像で知っているの?」


 些細な疑問に感じたが、今思えば不思議だ。

 前世の女子高生のころを映像で思い出すのはわかる。だって体験したことだから。

 ドラマ化したわけでもないこの小説の世界を、どういうわけかエミリアは映像で思い出せる。

 それこそ艶めかしいシーンから、血の気が引くような恐ろしいシーンまで。

 どういうわけかどれも断片的で、時々活字で思い出す。不思議な記憶の構成だ。


 ハッと顔を上げるとまた、エミリアの知らない記憶がスクリーンに流れた。


 *


「モクバ、逃げなさい!」


 足首を切られたのだろうか、エミリアであろう少女の声が血だらけの足を抑え叫ぶ。

 視点が動くとそこには成長し青年となったモクバがこちらに向かって走ってきていた。


「お姉様!いけません!僕は、僕は…!」


 目に涙をためたモクバがこちらに縋り付こうとする。

 少女は足元に転がった短剣を拾うとモクバに向け「今すぐ馬にまたがり、報せを!」と叫んだ。


 モクバを引っ張る騎士が「モクバ様…!」と懇願するようにモクバを見つめる。

 意を決したようにモクバは馬にまたがると「絶対に戻ります!」とだけ残し走り去っていった。


 *


 エミリアの記憶?


 頭が痛む。エミリアは自分の頭を抱え、ふらふらと前進する。

 すると、また新たな映像が見える。


 そこでは病床にふけっているのか、ベッドから眺めるような視点の映像だった。


 *


「お姉様を助けてください」


 そう言ったモクバの服をナイフでオーランドは裂いた。

「ここで僕を満足させてくれたら考えよう」

「僕には、お姉様だけなんです」

 声を出せない。ダメだとエミリアはどうにか腕を伸ばすも、干からびたような細い腕は全く届かない。

 目の前で始まる情事、だんだんと視界が揺らめぎにじむ。


「時間を巻き戻す方法でも教えてやろうか…まあまじないのようなものだがな」


 そう言ったオーランドの高笑いだけが響く。


 *


 汗だくになりながら、エミリア耳をふさいだ。


 私は、私は小説の世界に入り込み、転生したわけじゃない。

 私はずっとずっとエミリアだった。

 女子高生とな小説を読んだ記憶はどこかのはずみでエミリアの輪廻から外れた際の記憶だったのか、死に際の夢だったのか。


「そんな馬鹿なこと」


 エミリアはそう呟き、膝をついた。


 地面にもスクリーンは広がり無限に映像が流れ込んでくる。


 *


「痛い…!」


 エミリアがモクバを突き飛ばしたのだろうか。

 恐怖に濡れたモクバがエミリアを見つめる。


「目障り」


 そうエミリアは冷たく言い放ったが、心の中の悲しみが映像と一緒に現在のエミリアに流れ込んでくる。

 本当はモクバをいじめたくなんかない、ひどいことなど言いたくない。

 けど、大切にすればするほどモクバはエミリアを失いたくないと必死になる。

 何度も時間を巻き戻す。

 エミリアは何度も繰り返される人生の中で気が付いた。


 この世界が繰り返される根幹のルールは"モクバ"だ。


「お姉様…?」


 大きな瞳からぼろりと真珠のような涙があふれる。

 モクバは俯き「治さなくちゃ」と呟いた。


 *


 *


 *


 日が昇ってすぐ


 モクバの部屋にはエミリアしかいない


 モクバはいつも早朝剣術の稽古のために日が昇る前に出ていくのだ


 エミリアは一人呟いた


「私、間違えたわ」

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