エミリアの説教
マーティンとモクバはじゃれあっているうちに気が付けば公共廊下まで来てしまっていたようだった。
そして二人はその広場でエミリアにつかまっている。
エミリアの専属侍女であるハエルが即興でパラソル付きの机を用意し、椅子を引いた。
有無を言わさぬその動きにモクバとマーティンは席に着く。
「では、言い訳をどうぞ」
小動物なら死んでいる。と言いたいほどの眼光をエミリアはマーティンに浴びせる。
マーティンは嫌に背中がぞくぞくしながら「う…」と声を漏らし涙目になっている。モクバはそんなマーティンを横目に「あれ、マーティンって女性が苦手だったっけ」と頭に疑問符を浮かべた。
「お、お姉様。先ほども申し上げた通り二人で話していたらヒートアップしてしまって」
「ヒートアップ…?」
「は…はい。ちょっとした口論になって…あ、喧嘩というほどではなくじゃれあいのような…」
「じゃれあい……?」
エミリアはモクバの言葉に肩が戦慄いている。
「モクバ、あなたは私の言いつけを破って執事を付けず…友人と二人きりになったのね」
そう言ってエミリアはモクバを見た。モクバはエミリアからこんな冷たい視線を受けたことがなかったので今にも泣きそうだ。
「そしてマーティン、あなたも私の忠告を聞かなかったようね」
マーティンは力なく手を机に乗せていた。その手をエミリアは扇子でツンっとつついた。大した衝撃でもないのに突かれた瞬間、肩を揺らしたマーティンは頬を紅潮させ「も、申し訳ございません…」と囁くような声で謝った。
数分席を外していたハエルがラタンを引きずって戻ってくるとエミリアは勢いよくラタンを睨む。
「なんのためにあなたをモクバに付けさせたの」
エミリアが言うと「すんませ~ん、坊ちゃん授業中は一人になりたいって言われるもんだから…」とラタンはへらついている。
「今回は私がすぐ見つけらから良かったものを」
軽く頬を膨らませたエミリアは、ハエルの入れた紅茶を一口のみ長い溜息を吐いた。
「ふー…あなたたちは、」
ドキドキとマーティンとモクバはエミリアの顔をうかがう。
人形と見間違うほど整った白い頬に日差しが当たっている。モクバはさりげなくパラソルの向きを整え、エミリアに日が当たらないようにした。
「接近!禁止!」
いきなりカッと目を見開いたエミリアはそう叫ぶと「以上」と席を立った。
残されたマーティンとモクバは呆然とエミリアの後姿を見つめることしかできなかった。




