another④
おまけです
サフロンとトゥリアンダ姉弟の初対面時
サフロンのナルシスト原因です
とても綺麗な姉弟だと思った。
青みのある銀髪に苺色の瞳。そしてその隣で不思議そうにこちらを見つめる青色の瞳の少年。
「サフロン、挨拶なさい」
ミルク色の髪を揺らしたサフロンの父は、その場でまごつくサフロンの背を優しく押した。
小さな歩幅で目の前の従姉弟に近付いたサフロンは、ちらっと上目遣いで二人の様子を見る。
彼女は凛と背筋を伸ばしたままこちらを見つめている。
自分よりも一つ歳が小さいと聞いたが、そんなことは感じさせないくらいに彼女は大人びていた。
傍に寄り添うその弟も、大きな瞳を瞬かせながらこちらを見たり自身の姉を見たり忙しそうだ。
「…サフロン。サフロン・ティス・トゥリアだ」
そう言って礼をすると、習うように少女も頭を下げ「エミリア・トロイ・トゥリアンダです。サフロンお兄様」と返事をした。
小さな弟は姉の礼を真似し「モクバ・トロイ…トゥリアンダ、です」と言った。カーテシーの型をとったモクバをエミリアは「それは女の子の御辞儀よ」と釘さす。
モクバは慌てて目の前のサフロンに目を向け、見よう見まねで男性の礼の型を取った。
「お兄様なんて堅苦しいのはよして、年齢も一つしか違わない。サフロンと呼んでください」
そう言うとエミリアは頷き「わかりました、サフロン」と早速呼び捨てにしてきた。
この子は父親にだな、と氷のように冷たく表情のない彼女の父親に目を向けた。
サフロンの父と何やら話しているようだが、話の内容が難しく異国の言葉を話しているように聞こえる。
「よかったら今から3人で遊ばないか」
サフロンが言うと、モクバは嬉しそうに目を輝かせた。
しかし、そんなモクバの期待をバッサリとエミリアは切る。
「よくありません」
と、一言。驚きのあまり目を瞬かせたサフロンは「なぜ?」と聞く。
「今から、モクバはお昼寝の時間です」
そう言ってエミリアは「2人で遊びましょう」と告げた。
それを聞いたモクバは「いやだいやだ」と地団太を踏んだものの、屋敷から出てきた侍女に抱えられ屋敷へと消えていった。
*
「…すごい、強いんだね」
神経衰弱を初めて早1時間。サフロンは一度も勝てていない。
何度も挑戦するも10分も経たずにサフロンはエミリアに叩きのめされている。
「…強いも何もあるんですかね」
「記憶力がいいね」
一度捲った札をすべて記憶しているのかと思うくらいエミリアはたくさんのペアをとった。
サフロンも5組程度は取れるのだが、一度ミスをすると次のターンのエミリアにすべて持っていかれてしまう。
「お父様とやった時でもこんなに負けないのにな」
「叔父様とカードゲームをされるんですか?」
「ん、ああ。母が亡くなって、気を遣っているみたいだ」
そういってサフロンが笑うと、エミリアは何を考えているのかわからない無表情のままサフロンを眺めていた。
「…サフロンの瞳は、お母様似ですか?」
エミリアが尋ねると「そうだと思う。お母様にあったことがないから。定かじゃないけど」と、サフロンは家に飾られた肖像画を思い出しながら言った。海のように深い藍色の瞳に描かれた実際には見たことのない母の瞳をサフロンは思い出す。
「じゃあきっと、気遣いではないですよ」
そういってエミリアはつぎつぎにカードを捲りペアを揃えていく。また僕の負けかとサフロンはすでに力を抜き、胡坐をかいている。
「どうして?」
「サフロンをみて、夫人を思い出して幸せになるのでしょう」
全てのペアを揃え切ったエミリアは「私の勝ちです」と胸を張った。
「…思い出しては、辛くないかな」
サフロンの言葉にエミリアは首を傾げ「確かに、つらいはつらいでしょうね」と答える。
「けど、心から愛した方なんですもの、それ以上に幸せでしょう」
そう続けたエミリアはにっこり微笑む。サフロンは初めてエミリアの無表情以外の顔を見た。
どきどきとサフロンの胸が高鳴り、エミリアから目が離せなくなった。
「それに、」
「…ん?」
「サフロンはとっても、綺麗だから」
そう言ってエミリアは手元に集めたトランプを軽くシャッフルした。
「綺麗?」
サフロンのつぶやきに、エミリアは顔を上げる。
「綺麗ですわ。慈しまれて大切にされていたのが伝わります」
そう続けたエミリアをみて、サフロンは「君の方こそ綺麗なのに」と思ったがどうにも恥ずかしくて口にはできなかった。




