エミリアとモクバは生徒会に属する
モクバが入学して早くも二年が経った。
モクバは16歳、そしてエミリアは17歳になった。学年で言うとモクバは3年生となり、エミリアは4年生になった。
現状として未だにトゥリアンダ家の母、アルトゥヌは健在だし、モクバが15歳のころに起こすはずだったイベント…『トゥリアンダ家に居場所を見い出せず騎士団を受ける』も陰すら見せなかった。
エミリアは学園で一緒に居られる時間すべてをつぎ込み、常にモクバのディフェンス役を務めあげこれまで男どもがモクバに寄ってたかることもなかった。
たびたび第一王子は突っかかってきてはいたものの王家と侯爵家という垣根は高く今も顔を合わせれば挨拶をする程度で済んでいる。モクバは何度もお茶会に誘われたが毎度のことながらエミリアが強制的に一緒に参加し大事には至っていない。
モクバの監視役についているメイドからも「坊ちゃまのお部屋にたびたびご友人が来られますが常に同席し監視、友人以上の関係にない」と聞いている。
16歳になったモクバは、エミリアの想像通り麗しい紳士に成長していた。
華奢ではあるが細すぎない身体、真っ白だけど血色は悪くない艶のある肌。
サラサラで柔らかそうな紺の髪、蜜でも溢れているかのようなバラ色のぷるぷる唇に、宝石のような青い瞳。
エミリアは正直モクバを直視できずにいた。
いつもぐっと眉間に力を入れて目を細めてモクバを見ている。
モクバは「シワになりますよ!」とエミリアの眉間をいつも親指でこすってくるが、どうにも眩しすぎて直視できない。
エミリアは今年なんと生徒会副会長となった。
そしてモクバも一緒に会計として生徒会に属することになった。
エミリアは異例ではあるものの2年のころからずっと推薦され続けてていたがモクバのフラグ破壊及びディフェンス作業のために入会を拒否していた。…だが今年はモクバが推薦され「やってみたい」と入会してしまったためおめおめエミリアも一緒に属することになってしまったのだ。
「エミリア嬢やっと振り向いてくれたね」
そう言って両手を広げる目の前の男はオーランドとは違う優しいベージュがかった金髪を揺らしてエミリアに微笑んだ。…この国の第二王子である【ティタン・テセリス・ミデン】だ。
「ティタン第二王子、昨年は推薦をいただいたのに入会できず申し訳ございませんでした」
エミリアが丁寧に礼をすると「いやいや」と微笑んだ。ちなみに第二王子は小説にはちょい役でしか出てこないのでほぼノーマークだ。
「お姉さまがお世話になっております。初めまして、モクバ・トロイ・トゥリアンダです」
モクバは一歩前に出てにこやかに挨拶をする。
うんうんと頷きティタンは「エミリア嬢に似て麗しい令息だ」と笑った。
「…似てますかね」
エミリアが首を傾げる。
…父親は同じだけどね。とエミリアは頭の中で父であるヴィネヴァの顔を思い出す。
自分とほぼ同じパーツをしたきつい顔をした父…、モクバに視線を向けるとくりんとした丸い瞳が不思議そうにエミリアを覗いていた。
「…モクバの方が可愛いです」
エミリアが言うとティタンは吹き出し「噂通りだな」と声を上げて笑った。
その発言にエミリアはさらに首を傾げ「噂とは?」と尋ねるもモクバが「お姉様…」と真っ赤な顔で制止をするものだから話が終わってしまった。
*
もう一人、エミリアが注視する人物
【マーティン・デリック・ペンデ】
モクバと同級生であり、これまで何度かモクバと接触をしている。というか、3年間モクバとずっと同じクラスだ。
常に仏頂面で何を考えているかわからない青年だが、モクバの前では花が飛ぶように雰囲気が柔らかくなる。好意を抱いているのは第三者目線から眺めているも明確だとエミリアは感じていた。
「モクバ、マーティン男爵令息と二人きりになってはダメよ」
エミリアは恒例のモクバとの定例報告会…もとい、週3回のお茶会で凄んだ。
困ったようにモクバは「あいつはいい奴ですよ」とエミリアに返事し「それに二人きりになんてなかなか学園でなれるものでもありません」と続けた。
「今こうやって学園だというのに私と二人きりでしょ!」
エミリアがカッと大きな声を上げると、モクバは吹き出す。
「いきなり変な顔しないでください」
「変な顔とは何。生まれた時からこれよ」
紅茶の香りを吸い、エミリアは気持ちを落ち着けると「心配なの」と呟いた。
モクバは小ぶりなマカロンを口に運ぶ。幼い頃から甘いものが好きなままだとエミリアは少しうれしくなる。
「そんなに心配されなくても…僕も男ですし、こう見えで剣術の授業でも学園で3本の指に入るといわれているんですよ」
そう言ってモクバは胸を張る。
エミリアはそんなモクバをみて溜息を吐くと、オーランドが寄ってきていたのをもう過去のことだと思っているのね。とエミリアは呆れた。
オーランドは昨年最終学年ということもあり、あっけなく卒業し学園から消えた。
いまだに時たま手紙は来るものの、全盛期に比べたらかわいいものだ。
「気をつけすぎて困ることなんて、ないんですからね」
エミリアはそう言ってモクバをじっと見ると、怯えたようにモクバは肩を揺らした。
「あはは、気を付けます…」
ミルクをたっぷり入れた紅茶を口にし、モクバは一息ついたようだった。




