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エミリアは夏に憂う

 

 もう夏も終わる。

 秋入学のこの学園に、エミリアが通い始めて1年が経とうとしていた。

 来年にはモクバがこの学園に入学するというのだからエミリアの悩みは尽きない。


「エミ、今日は放課後どうだ」


 気さくに声をかけてくる緑頭の眼鏡少年。

 そう、モクバが5歳の生誕パーティに参加していた【エリック・メネラ・エーナス】だ。


「エリック、愛称で呼ばないでくださる。今日もすぐに帰宅予定よ」

 机を整理しながらエミリアは呆れたように言った。

 エリックは満足げに微笑み「幼馴染だろう、そう言うな」と答えた。

 彼の後ろでは女子がグループを作り「かっこいい!」だの「知的!」だの黄色い声を上げている。

 みんな端正な顔に騙されないで!この男は官能BL小説のかませ犬軍団筆頭!眼鏡なのに別に頭はよくない系男子代表なのよ!


「それに、ここは女子教室よ。どうしてここにいるの?」

「どうしてって冷たいな、申請を出せば互いの校舎は行き来自由だろ」

「どんな理由をつけてこの教室にいるのかという意味よ」

「君に会いに、といいたいところだけど」


 なんだか最近になってこのエリック、変に歯の浮くようなセリフを言ってくる。

 ちょっと早めの中二病かしら、とエミリアは知らん顔をしているが最近顕著だ。


「こちらの校舎にしか所蔵されてない書籍があってね、それを探してたらこの教室にたどり着いたというわけ」

「…そう、ではそれをもって自分の校舎に戻ったら?」


 次の授業は移動教室だった、とエミリアは荷物の用意をし席を立った。

 するとエリックものこのことエミリアのあとについてくる。

「どうしてついてくるの」

「君の言うように自分の校舎に戻ってるんだよ、本も貸してもらえたしね。次は共用講堂で授業かい?そこまで一緒しよう」

 エリックが変にしつこくて情熱的なのは原作通りだが、まさか自分に矛先を向けられるなど思ってもいなかった。…こんなキザったらしいしゃべり方だったかは記憶にないが、かませ犬要因なのだから仕方がない。

 幼馴染ゆえなのか不明だが、定期的にこのように構われるのはうっとうしいことこの上ない。


「そう、紳士ね。お見送りありがとう。けどこれ以上は着いてこなくて結構よ」


 ニコニコとエミリアについて歩いていたエリックだったが、エミリアのその言葉に目を開ける。

 そこが女子トイレに入る一歩手前と気が付くとエリックは慌てて後ずさった。

「あ、す、すまない!ま、また!」

 その様子は10歳の少年相応の慌てぶりで、エミリアは苦笑した。

 どうして自分が付きまとわれているのかは不明だが、これでモクバに引っ付くことはないだろう…と思いたい。


 一番の正念場はモクバが入学した時の男どもだ。

 エミリアは既に気が気ではなかった。できる限りのことは尽くしているものの、これからの学園生活が前途多難なことに間違いはない…エミリアは女子トイレのパウダールームで大きなため息を吐いた。

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