表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/63

俺の思惑伝わってますか?

 あれ? 浅見先生、手作りとかいってなかったか? 空耳かな。


 でもそれならあまり気兼ねせずに食えるな。そんなことを思った俺は手を合わせて、パクパク食べ始めた。しかしこれ全部冷食じゃねえのか? まあ、どうでもいいな。


「ほほ。ほほほ! そんなことないわよ。冷食のように美味しいってことでしょう?」


 なにやら変な笑い方をする先生を振り向くと、綺麗な口元がひきつっているのがみえた。


 あ。図星かよ。たまにいるんだよな。「わたしが作りました詐欺」。しかし冷食って……あんた。さすがに俺だって気づくわ。


 しかし、これは好機だな。もう二度と弁当なんか持ってこないように釘を刺す必要がある。なんてったって浅見先生はアイアンメンタルの持ち主だ。軽い拒否ではぬるいかもしれん。


 俺は箸を置いて、わざとらしくため息をつく。


「俺、冷食って嫌いなんですよね。健康志向なもので。冷食でしか弁当作れない女性って将来的にも不安じゃないですか」


 8割がた弁当を食ってからいっても、あまり説得力はないかもしれんが。


 いや、残ってるのはミニトマトだけだ。9割ってことにしとくか。弁当なんてあっという間に食い終わるからな。なんなら二つは欲しいところだろ。


 この学園は学食もあるし、朝昼晩とパン屋も開くから俺は瓶底メガネをキリッと装着して、「焼きそばパン3つ、コロッケパン3つ、クリームパン2つ」と無表情を装って注文するんだが、机いっぱいに乗ったパンの山にクラスメイトはドン引きしたようだった。


 いつもおとなしそうにしている陰キャの俺がそれだけの量を食うとは思わなかったんだろうな。気持ちは分かるが、俺はもともと運動部だったんだ。量も食うし運動神経もいい。リレーでは必ずアンカーだったしな。


 だがそんなことで周囲の目を引いてしまうのは俺の本意ではない。ということで、昼はパン二つに留めた。涙ぐましい俺の努力。誰か褒めてくれ。


 そのツケは陽平んちのおばちゃんに回ってるんだが、嫌な顔ひとつせず毎日食べにおいでと言ってくれているので、ここ最近夜は必ず陽平んちでご馳走になっていた。おばちゃん、マジですまねえ。今度何か持って行こう。


 遠回しのジャブを食らわせた俺の思考が陽平のおばちゃんに向いているとは知らない浅見先生は、ショックを受けたように固まった。それが狙いだから同情なんてしないけどな。


「そ……そうよね。将来的に……不安よね」

「はい。婚期、逃しますよ」

 

 まあ、そんなお色気ボディを持ってれば婚期を逃すなんてことはないだろうが。


 と、思ったがそこは口に出さない。


「婚期……。彰くん、わたしの婚期を心配してくれるのね」


 いや。ぶっちゃけどうでもいい。てかしてない。


「余計な口出しでしたね、すみません。ご馳走様でした。先生、そろそろ職員室に行く時間じゃないですか?」


 弁当の包みを直して手を合わせた俺に、浅見先生はなぜか頬を赤らめる。


 んん? なんだ、この反応は。てっきり怒ると思っていたんだが。


 瓶底メガネに隠れて眉をひそめた俺には気づかず、浅見先生はなぜかとても嬉しそうな笑顔を浮かべて弁当箱を受け取った。


「そうね。もう行かなきゃ。ありがとう、彰くん。わたし頑張るわね」


 なにを?


 コテンと首を傾げた俺は、軽く手を振って放送室を出て行った浅見先生の後ろ姿を眺める。閉じかけたドアの隙間からスキップしているのがみえた。


 なぜにスキップ? 



 浅見は横から射し込む朝日を受けて長い髪をふぁさっと掻き上げ、軽やかにステップを踏みながら廊下をゆく。昨日の晩は本当に大変だった。何度も何度も彰くんと至近距離で見つめ合ったあの瞬間を思い出しでは頬を赤らめ、クッションに顔を埋めてキャーキャーと奇声を発し身もだえた。


 いまでもちょっと考えるだけで顔が熱くなる。自分をみつめるあの冷めた眼差し。力強さ。俺様気質。なにをとっても本当にカッコよかった。いままで会った男の中でもダントツ。


 あの時、豹変ぶりに驚きすぎて固まってしまったのが悔やまれる。キスしてくれれば良かったのに! キャーキャーいいながら歯ぎしりをする浅見だったが、ふと良いことを思いついた。また二人きりになれば、あんなことが起きるじゃないかって。


 そこで思いついたのが「朝練」だ。放課後は他の部員も集まるし、二人きりの時間を作るにはそこしかない。そんなわけで当然「朝練」のことは他の部員に伝えていない。


 だけど彰くんは女性が苦手だといっていたから、あんまり積極的にいくと嫌われる可能性がある。だからじわじわと距離を詰めることにした。


 まずは胃袋を掴もうと思ったのだけど、残念なことに浅見に料理のスキルはなかった。一応サイトをみて勉強してみたのだが、なぜか自分で作ると違うものができる。不味い料理を食べさせるくらいなら冷食にした方がいいと思って、意気揚々と冷食弁当を作ってみたけれど結果は惨敗。


 だけどそこで嬉しい言葉が彼の口から出た。

 

『冷食しか作れない女性って将来的に不安じゃないですか』


 それはつまり、自分との未来を考えてくれるということ。そうよね、奥さんになるのならやはり料理上手でなければ。健康志向だといっていたし、夫の健康を考えるのは妻の務めだわ!


 職員室に戻った浅見はみんなが真剣に会議を行っている中、身をよじりながらサイトで料理教室を検索し速攻で申し込んだ。 

どこまでも思惑が空振りしていることを彼はまだ知らない・・・・・・


浅見先生面白いなって思った方はぜひブクマと★で評価をお願いします!


今後も浅見ワールドは広がりますよ!


感想もどしどしお待ちしています☆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この思惑のすれ違いこそラノベの花ですなwww こういうの大好きです(*´∇`*)
[一言] 臨海学校イベントが必須ですね 急接近するために!
[良い点] わー!!続きキタワァ!! 浅見先生めっちゃつおい笑 恋する妄想乙女はマジ最強ですね。 暴走爆走( ˘ω˘ )良き なんとなく彰くんを応援したいけど、勝てる気がしません笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ