表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/63

ストーカー事件勃発

 今日一日限りだ。俺の見た目は陰キャモードにしてあるし、仮に先生と歩いてる所を誰かにみられてもデキてるなんて噂は立たないだろう。


 俺はよれたネクタイを締め直し、先生と夜の街を歩き始めた。


「料理教室って毎日行ってるんですか?」

「ううん。月・水・土だけよ。土曜日は日中のスクールにしてあるから怖くないんだけどね。ここ最近帰り道に誰かに付けられてる気がして。ちょっと怖かったのよ」


 なんだそれ。ストーカーか?


 浅見先生ならストーカーのひとりやふたり軽くゲットしても不思議じゃないが。


 チラッと後ろを振り返る。まだ駅前からそう離れていないし、人通りも多い。仮にこの中にストーカーがいても、ここじゃわからないな。でも金木町なら住宅街だし夜だとそれほど人通りはない。誰かいれば気づくだろう。


「きっと気のせいですよ。あんまり心配すると禿げますよ」

「ちょっと! この歳で禿げたら大変じゃない」

「はは。だから悩むなっていってるんです」

「やだもう。ワカメ食べなきゃ」

「ははっ」


 冗談でいったつもりだったのに先生は本気にしたらしい。途中でコンビニに寄って「す・こんぶ」を買ってきた。うん、それワカメじゃないけどな。まあ、似たようなものだからいっか。先生、もしかしてレタスとキャベツの違い分かんないんじゃ?


 彼女の将来に一抹の不安を抱いたが、料理教室できっと色々学ぶだろう。それを考えれば俺はなんてナイスなアドバイスをしたんだろうか。


 駅前から電車に乗って二駅。そこが金木町だ。


 小さな駅をくぐると急に辺りが暗くなった。ポツポツと電柱の灯りはあるものの、煌びやかな駅前とは違って静かな闇が広がっている。住民はとっくに帰宅しているのか、狭い道路には人っ子ひとり見当たらなかった。


 ああ、これは少し怖いだろうなあ。


 もしストーカーがいれば電車に乗って付いて来てるってことだろ? 駅から出てきたのは今のところ俺と浅見先生だけだ。やっぱり気のせいなのかもな。


 と、再び駅を振り返った俺の目に動く影がみえた……気がした。


 このメガネかけてるとわかんねーな。


 駅前では誰にみられるか不安だったからメガネかけたけど、ここまで来たならもう外してもいいんじゃね? まわり、誰もいないし。浅見先生には一度みせちゃってるしな。俺はメガネを鞄にしまい込んだ。


 浅見先生はすぐに気づいて少し驚いた顔をしたが、特に何もいわなかった。むしろ大げさに反応されると困るので丁度良い。


「メガネ……なくても見えるのね」


 ゆっくり歩きながら地面に視線を落とし、浅見先生が小さな声でもらす。


「視力はいいので」

「じゃあ、どうしてメガネをかけてるの? あ……答えたくないなら無理にいわなくてもいいけど」

「顔、他の奴にみられたくないんです」

「そう……だったの」


 ひと言ひと言噛みしめるように発する浅見先生の後方で、また影が動いた。俺は動体視力がいい。目の端にチラッと映ればどこにいるかなんてすぐ分かる。


 これ……マジでストーカー付いてるな。


「先生の家ってもう近いですか?」

「ええ。ほら、あそこよ」


 指をさされた方向に目を向けると、二階建てのアパートが見えた。あと数分ってとこか。


「じゃあ、もうすぐですね。俺も帰らないといけないし、ここでいいですか?」

「あ。そうね。近くまでっていったのに。わたしったらごめんなさい。もう大丈夫よ。本当にありがとう」

「いえ。戸締まりだけはしっかりしてくださいね」

「ええ」

「それじゃ」

「さよなら。帰り、気をつけてね」 


 まだ不安そうな顔をする浅見先生に手を振り、アパートの手前の道を折れた。そしてそのまま真っ直ぐ進む。ずっと真っ直ぐ。そして突き当たりを折れて真っ直ぐ。また突き当たりを折れて真っ直ぐ。もう一回突き当たりを折れるとあら不思議。正面に先生のアパートが小さく映るじゃないですか。


 簡単にいえば、近所をぐるっと回ってきただけだ。


 そんで浅見先生のアパート近くの電柱に身を寄せる男の背中を冷めた目で捉える。こんなこったろうと思った。


 ポケットからスマホを取り出してカメラモードに切り替え、画面に男を映しながら静かに背後から近づき、


「バアッ!!」

「うわああっ!」


 カシャカシャカシャカシャ!


 飛び上がった男の顔を連射。なにが悲しくて知らない男の顔をスマホに収めなきゃならんのだ。


 カシャカシャカシャカシャカシャカシャ!


「なっ、なんだよ! 撮るなっ!」


 腰を抜かした男の顔に近寄って更にアップで連射。ていうかこいつ、俺の隣でパン食ってた奴じゃん。あそこからずっと付いてきてたのか? マジでキモいな。


「で。あんた、誰」

「きみに関係ないだろう! 別に怪しい者じゃない! 写真を消せっ!」

「別にSNSで拡散なんてしねーよ? 俺は一応、モラルのある男だからな」

「じゃあなんで撮ったんだよ! 盗撮だぞ! プライバシーの侵害だ!」

「ああ、これな。警察に出す証拠だから。ストーカー規制法って知ってる? 俺の勘違いなら、警察で弁明すればいいんじゃね?」


 で、男が口を開くより先に短縮ダイアルを回し。


「あ。もしもし、おまわりさん? いま金木町の駅付近でストーカーらしき男をみつけたんですけど~」


 肩でスマホを挟んで電話すると、男は一目散に逃げていった。


 大体身長は170くらいで、痩せ型。歳は30代前半ってとこか。くせっ毛の黒髪メガネで、いまにも穴の空きそうなボロボロのスニーカーをはいてた。いまなら似顔絵描けそう。


 いまは警察もすぐ動いてくれるっていうけど、昔は相手にされなかったって話よく聞いたからな。これは保険だ。明日にでも警察に行かないとな。


『はいはーい。こちら陽平警察学校です~。ボコボコにしちゃってくださ~い』 

「それじゃ俺が捕まるわ」


 電話の奥で間の抜けた声を出す陽平に吹き出して、俺はその場を後にした。



サラッとストーカーの写真を撮った彰。

今後はどう出る!?


面白い。続きが気になる!という方はブクマと★で評価をお願いします!


作者の励みになるので、感想などもくれると嬉しいよ!

お礼は活動報告にて行っています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 展開がだいぶ変わった!! そうきましたか!!
[良い点] 更新された分、一気に読みました。 ヤバいよ、コレ、どんどん惚れられる展開になってる(๑´艸`๑) 彰くんが落ちるのか、あるいは諦めるのか……どうくっつくのか楽しみです! ……くっつく?
[一言] 陽平警察学校、血の気スゴッ(⊙o⊙) 今回も面白かったです✨
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ