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~薫、散々な一日の始まり3~

<第9章天河久のファンクラブ(非公式)登場其参>

45秒たち、やっと笑い終わった皐希は、涙をふきながらこう言った。

「まっさか天河君が薫の仲間だったなんてねえ。」

それに対し、薫も、

「ほんっとそうだよね。私だってまだ疑ってるくらいだもん。」

と返す。だが、机の上に置いてある怖い内容が綴られた手紙を見て、早急に解決しなければならない問題を思い出し、そんなことで意気投合している場合ではないと、思考をそちらに方向転換させた。そして、聡明な友人の助言を得るために放った、

「それで、体育館裏行った方がいいと思う?」

という薫の問いに対して皐希は、

「やっぱり行った方がいいと思うよ。冗談抜きで、行かなかったら9割以上の確率で明日の朝校門で待ち伏せされるから。」

と、さらりと怖い返しを投げつけてきた。

「じゃ、ついてきてよ。」

と、不満げに口をとがらせて言えば、

「無理。今日は○○(本の題名)の発売日だから。」

と、バッサリ切られた。一刀両断とは、まさにこのことをいうのだろう。彼女に反論しても精神をすり減らすだけだと、この一週間の経験上、理解するより先に体が覚えてしまった薫は、なし崩し的に一人で体育館裏に行くことになってしまった。。。

薫のその日の授業は、まるで頭に入ってこなかった。左の耳から入ってきた内容が、右の耳から抜けていく現象を一日中体験することができた。(不本意ではあったが)そして、運命の時が来た。薫は、いつもは退屈で仕方がない担任のなかなか終わらないホームルームの話が、とても面白く、聞いても聞いても飽きない話を聞いている気分だった。何なら永遠に終わってほしくないとまで思ったホームルームだったが、無情にも終了のチャイムは鳴ってしまった。薫には、それが自身の葬式の鐘が鳴っているようにしか聞こえなかった。

言われた通り、体育館裏にやってきた薫は、今まで生きてきた中で2番目だと言っていた恐怖が、一番になりかけるのを感じていた。薫は、ああ、やっぱし精神をすり減らしてでも皐希を連れてくるんだったと思いながらも、「彼女たち」がやってくるのを待っていた。薫にとって一時間くらいだった一分後、「彼女たち」はやってきた。彼女たちは、中等部の女子が7割、高等部が2割、大学部が1割という割合で、30人ほどの集団でやってきた。思ったよりも多かったが、後に皐希に聞いたところ、その人たちがファンクラブの上層部に位置しているファンクラブの「代表者」だそうで、会員自体はもっともっといるそうだ。なんせ他校の生徒もファンクラブに入っているらしいから、その規模はちょっと想像がつかない。そして、代表者(30人の中の)と思われる、肩まである栗色の髪の両端を三つ編みにし、それを後ろで一つに結んだ、かなり時間がかかってそうな髪型をした超絶かわいい女子が前に出てきて、笑顔でこう言った。

「突然お呼び出ししてしまい、誠に申し訳ございません。私は、天河久様ファンクラブ会長、中等部2年生の南小路みなみこうじときわと申します。非公式のファンクラブではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。」

挿絵(By みてみん)

その時の薫の思考。

「ヤバいヤバいヤバい、目が笑ってないし、威圧感ハンパない。後ろのファンクラブの皆さんも怖すぎません?みんな判で押したような笑い方してるし全員例外なく目が笑ってないし。この状況、私は生きて帰れるんだろうか?もう~なんで私こういう状況に追い込まれてるわけ?なんも悪いことしてないのに~。法律だって、たまに自転車走行禁止の歩道走るとか、右側通行したりする以外は破ってないのに~」

そういう事を薫が考え、ぐるぐると思考の海に沈んでいる間に、ときわはこう続ける。

「本日は、誠に申し訳ないのですが、金曜の放課後に、あなたが久様のお宅に入っていくところを見た、という会員がおりまして、そのことが真実かどうかを確かめに参った次第です。どうか、お答えください。」

「いや、そのためだけに上層部の会員引き連れてこんなとこまで連れて来たんかい!」

と、心中で盛大にツッコミながら、薫は慎重に言葉を選んで答えた。

「確かに、私は天河君のお宅に入れていただきましたが、それはただ、私が天河君の忘れ物を届けに行き、それをきっかけに共通の趣味を持っていることが分かって、そのコレクションを見せていただいただけなのです。けして、皆さま方が危惧していらっしゃるような関係ではございませんので、その点はご安心ください。」

そう薫が説明すれば、皆様、あからさまにホッとした顔をしていた。中には、地面にへたり込む人も出る始末。ときわも例外ではなく、ホッとした顔をしつつも、まだ聞きたいことがあるようで、パンパンっと手をたたいた。途端に周りが静まり返る。そして、

「そ、その趣味とは何なのですか?ぜ、ぜひ教えていただきたいのですが?」

と、やや上ずった声で聞いてきた。薫は、教えるかどうか一瞬躊躇したが、

「消しゴムの収集です。」

と、正直に答えてあげた。すると、本日2度目の沈黙が、その場を支配した。



佐藤カドさんの、ときわのイラストが掲載されてます!佐藤カドさん、再現力半端ない。ファンクラブの皆、怖いですね~。薫、頑張れ。

あと、最近、消しゴムを全然出せていないんですよね~。どうしたものやら…

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