~薫、散々な一日の始まり~
<第7章天河久のファンクラブ(非公式)登場其壱>
2階にある薫の部屋のカーテンの隙間から、キラキラと朝日が差し込み、ピピピ・ピピピと、目覚まし時計のアラームが鳴った。
2回目のアラームで起きた薫は、3回目が鳴る直前にそれを止めた。
いつも早起きで、目覚まし時計がなる前に起きるのが当たり前な薫は、なぜアラーム音で目を覚ましたのかを少し疑問に思ったが、すぐにその理由となる出来事を思い出した。
昨夜は、同じ消しゴムマニアの同志ができたことに対する喜びと、その同志の持っている桃源郷にも等しいコレクションルームを見たことによるテンションの上がりすぎにより、なかなか寝付けなかったのだ。(金曜の夜から3日連続で)
「いけない。」
ポツリとそう呟きながら、薫は学校に行く支度を始めた。薫や久が通う都学園は、主に良家の子女が通う、日本の私立の中でも5指に入る名門校で、幼稚園から大学までエスカレーター式の学校である。
久は幼稚園のころからいるが、薫は、薫の家が、「お金持ち」の仲間入りをしたのが、薫が小5の時だったため、中等部からの編入組だ。余談だが、薫が新しいクラスで初めて仲良くなった本好きの友人、竜胆皐希も中等部からの編入組だ。
そしてこの学園、先日久が言っていたように、校則が厳しいことで有名だ。スマホは持って行ってもいいのだが、授業中にいじったりすれば、即没収されるし、ピアスやアクセサリーは言語道断。男子生徒は髪を伸ばすのも禁止だ。
だが、髪染めも、メイクも、ましてやスカートの丈を短くすることなどにも興味がない薫は、特に不自由を感じたことはなかった。
そんなことを解説している間に、薫は制服に着替え、顔を洗いに下の階に降りて行った。手早く顔を洗い、髪をおさげに編む。そして朝食を取り、歯を磨くと、ラッシュに合わなくて済む時間帯に家を出た。
学校に着き、自分の靴箱を覗くと、何か白いものが入っている。取り出してみると、それは封筒だった。中に何か入っているようで、糊で封がしてある。どこか不吉な予感を感じながら、薫は自分のクラスへと向かったのだった。
クラスに着き、何気なく
「おはよう」と言うと、先に着いていたらしい皐希が、
「おはよう」
と返してくれた。
「早いね」と薫が言うと、
「私も今来たところだから。」
という返事が返ってくる。
確かに、皐希の机の上には、学校指定の通学バックが置かれていた。
薫も自分の席に行き、手早く教科書や筆記用具を机に入れていった。すべて入れ終わったところで、薫は用心深くあの封筒を取り出し、封を切った。中にはたった一行、こう書いてあった。「今日の放課後、中等部体育館裏まで来て下さい。天河久様ファンクラブ一同」、と。
いちいちツッコんではいませんが、ちょこちょこ脱線していますね。