~消しゴムマニアを極めるチャンスが目の前にやってきたことに舞い上がる少女6~
第二十章<日本の消しゴムコンテスト、開催其参>
「ほ、本当に…?」
開口一番、薫の口から出てきた言葉は、久の言葉を疑う、又は確認するものだった。
少女漫画では、モテモテ男からの愛の告白直後のヒロインの言葉だったと推測されるが、この二人の消しゴムに注ぐ気持ちの名は、愛と同意語なので、問題はなし。
「ああ。本当だ。」
少女漫画風台詞、継続中。
「夢みたい…shineを、もう一度買えるなんて…コレクションに加えられるなんて…学校に持って行って、さり気なく使えるなんて…」
あ、壊れた。
そんな作者のややがっかりした情を織り込んだ地の文(6文字)はあっけなく無視され、無情にも本編は過ぎてゆく。
「天河君…なんて素晴らしい情熱…美しい消しゴム魂…厳しいことで有名な天河グループ社長の説得に成功した数日前の貴方は、正しく消しゴムマニア界の救世主よ…」
うっとりと久(の後ろのshine)を見つめて賞賛を口にする薫。
「久様…なんて慈悲深い…そして、なんて素敵なそのお顔…いつもにも増して、表情を緩められた今日の貴方は、正しく我が天河久様ファンクラブ全会員の救世主ですわ…」
うっとりと久(の顔を連写しながら)を見つめて賞賛を口にするときわ。
またまた同調するお二方。
しかし、薫は(以下略)で、ときわは(以下略)である。
周りの三割は、ああ仲直りしたんだなと安堵し、五割は未だH君に見惚れており、二割はH君の周りに三人もの女性がおり、どことなくハレムってる感のあることに嫉妬し、約一名は、
(仲直りしたのはいいけど、会話の違和感パない…)
と、生来の微妙に鋭い観察眼とお人好し又はお節介を焼いて、ついでに溜息を吐き、H君に見惚れていた彼氏を引きずって会場の奥へ消えた。
彼らの行動をいち早く目に留め、反応したのは薫だ。
「ねえねえ、ここが一番奥なら、もう全部見たってこと?」
「そうですね。貰ったマップを拝見しましたが、やはり、この消しゴムがトリのようですね。」
まあ、久様が見込まれた消しゴムならば、当然のことですけれど!と、我がことのように胸を張ってドヤるときわ。
彼女のこんな顔も珍しいっちゃ珍しいので、一枚撮らせていただいた。
薫の記憶が正しければ、確か都学園には、本人からは放置されているときわのファンクラブがあったはずだ。
薫は、ときわから許可をもらえれば、焼いた写真をそこの会員に売りつけようと目論んだ。
「じゃあ、そろそろコンテストも始まるみたいだし、会場へ移ろう。」
久の言葉をもって、三人(薫、久、ときわ)+一人(案内役)+その他ぞろぞろ(五割女子、四割その彼氏、一割ゲイ)は、コンテスト会場へと足を運んだのだった。
そして、次作から、コンテストは本番を迎える。
ついでに言うと、エントリーモデルの展示室に残ったのは部屋にいた三十人中四人で、全員が年齢=彼女いない歴の四十路男だったとか何とか。
というわけで、次回から本番です!
ところで、ゲイの方をレギュラーにしようかどうかを迷っています。
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