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~消しゴムマニアを極めるチャンスが目の前にやってきたことに舞い上がる少女3~

第十七章<日本の消しゴムコンテスト其弐>

 「着いたよ」

リムジンが高層ビルの前で止まり、久がそう言った瞬間、薫はここ数年で一番興奮した。

「ここが会場…広い…」

「お金持ち」の仲間入りをしたからといって、薫はパーティーに同伴したことなど一度もない。

それはひとえに、薫が人見知りなことと、まだ中学生だからだ。そのため、高校生になったら連れていかれそうになっているので、とりあえず、ひきたいときに風邪をひけるようになる精神術を特訓中だ。

「さあ、入ろう。」

と、久が手を差し伸べてきたが、薫が「えっ!?手を取れってこと!?」と躊躇している間に、ときわが

「はいっ!久様!」

と言って手を取るどころか握りつぶさんばかりに握りしめた。

薫は傍観者に徹し、久は苦笑いしていた。ときわは、今までで一番機嫌が良かった。

 そのままの状態でビルに入り、入場料を払おうとしたのだが、久が見せたカードで、すんなり通してもらった。

「そのカード、何?」

薫が聞くと、久は

「招待者証明書。行くって連絡したら送られてきた。」

そらそうだろう。なにせ、彼は天河グループの御曹司だ。この大会を主催する会社も久に恩を売ることで徳こそすれ、損をすることは絶対にない。

「この先が会場になります。」

わざわざつけてくれた案内役の女性ひとに、

「ありがとうございます。助かりました。」

と、笑顔で礼を言う久。

「うん。その笑顔のは、十中八九消しゴムに対しての笑顔だね。」

と、ちゃっかりその写真レアショットを撮りながらもぼやく薫。

だが、その言葉は久の貴重な笑顔に見()れているときわと、滅多にお目にかかれない美男イケメンに笑顔と共に礼を言われ、朝もはよから会場準備に駆り出され、おまけに案内役を押し付けられたストレスなど銀河の外に捨てた、おそらく桃源郷にいる案内役(女性)(27歳独身)には聞こえない。

「じゃ、行こうか。」

その笑顔を崩さず、二人に声をかける久。

「はい!そうですわね。」

「うん。早く行行こう。」

興奮(久の笑顔に対する)+ときめき(久と目が合ったことに対する)÷2=ときわの声。

興奮(消しゴムコンテストに対する)+ときめき(大量の日用芸術作品(消しゴム)を鑑賞できることに対する)=薫の声。

対象は違うが、声色が全く同じになった薫とときわだった。

だが、お互いにそのことには気付かず、ただ一方は今日一日、学園では閲覧不可能な久の姿を見ることに。一方は久の家以外では滅多にお目にかかれない大量の消しゴムたちの姿を見ることに、心を躍らせ、胸を弾ませていた。

 「ここが、エントリーモデル(消しゴム)の展示室になります。」

ドアの前で、こちらも、桃源郷満喫中の夢見心地の声で案内をする案内役(女性)(27歳独身)さん。

さあ、始まる。消しゴムマニアを極めるチャンスが。

次回でいよいよ、日本の消しゴムコンテスト開催です!

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