第一部☆火星の王女 第三章☆火星へ
地球の宇宙港から火星の宇宙港へ宇宙船は無事に着いた。火星の宇宙港は軌道エレベーターの上にあり、そこから軌道エレベーター内のエレベーターで火星へ降りる。
「あれはなに?」
「ドーム都市だ。火星には大気がないから、ドームを幾重にも作って内部に居住地を置いたんだ。あそこの一番要の場所に王宮がある」
始末屋はミリーを連れて、火星のドーム都市の奥へと進んだ。
大きな扉があり、両側を門番が守っていた。
長い槍を持っていて、見間違いでなければ、先端に血糊がついていた。
もし門前払いを食ったらどうなるのだろうと、ミリーは思い、身震いした。
「この子どもを連れて参りました」
うやうやしく始末屋が言うと、監視カメラで見ていた内部の方から指示が出て、門が開かれた。
「第一関門突破?」
始末屋がにやりと笑った。
中に入ってしまったらもう出られないんじゃないか?とミリーは心配した。
巨大な白亜の城がそびえ立っていた。広い庭を抜けて、奥へ進んでいく。
「こっちでいいの?」
ミリーが聞くと、始末屋がレンガの道の外側へマントをひらめかせた。
途端にマントに風穴が空いた。
「俺の一張羅……。ほら、道を間違えるとこうなる」
「わかった」
道なりに進むと執事が現れた。
「ご案内致します」
「頼む」
調度品など豪華な造りだった。
「王がお待ちです」
「ああ」
まるで巨大な鳥かごだな、と始末屋は思った。しかも要塞として申し分ない。
謁見の間に通された。
「その子どもか?」
「はい」
始末屋はひれ伏して応えた。
「名は?」
「……」
ここは自分で言わなきゃいけないのね?とミリーは思った。
「ミリー・グリーンと申します。王様」
「……いいだろう。今日から私を父と思え」
そう言うと、王は玉座から立ち上がり、杓を持って赤い上質なマントをひるがえして奥へ去って行った。
「良かったな!気に入られたぞ」
始末屋はミリーの頭をがしがしなでた。
「王女に無礼ですぞ」
執事が注意した。
「こいつは失敬!」
始末屋は別室で高額を受け取る手続きをすると、ほくほく顔で王宮をあとにした。
しかし、来るときくぐった門を出た途端、門番たちから長槍で突かれそうになって、間一髪逃げ出した。
「ミリー!うまくやれよ」
彼はそう言い捨てて何処かへと去って行った。




