第二部☆金星のリラ 第三章☆ミリーとリラシナ
「お母さん!」
夜中にミリーの声でリラシナは飛び起きた。
「なんだ。夢見て泣いてるんだ……」
頬づえをついてミリーの寝顔を見る。こぼれてきた涙をぬぐってやる。
「!。リラ?」
「目が覚めた?」
「ええ」
「ちょっと話を聞きたいから待ってて」
「?」
じゃー、バシャバシャ。
化粧をおとすリラ。
「あな、あなた男……?」
「そう」
「すっかり女の人だと思いこんでたわ」
「きみの変装よりもうまいだろ?」
「まあ」
「どんなに強がっていて孤高の存在でも、胸をしめつけるような思いを持っているものだよ」
「私は、しっかりしなきゃいけないの!」
「僕の前では気を緩めていいよ」
「でも」
すると、リラシナはひざまずき、ミリーの手をとって、手の甲に口づけをした。
「火星の王女ミリー・グリーン」
「リラ、マイリラ」
「僕の名はリラシナ。女装しているときはリラ」
「リラシナ。私は帰る場所を持たない者です」
「ならば、いつでも僕の胸に戻っておいで」
「本当に?」
「本当に」
ミリーは張りつめていた気持ちが堰を切って溢れてきた。
「おいで。僕の胸に」
ミリーはリラシナに抱きついた。そしてわんわん泣き続けた。
リラシナはミリーの背中を軽く叩いて落ち着かせた。
「私はあなたにこの心を捧げます」
「ありがとうございます」
「リラシナ。あなたがここにいてくれてよかった」
「いつでもきみのことを待っています」
「リラシナ」
ミリーはリラシナをきつく抱きしめた。
リラシナもそれに答えるように抱きしめてくれた。