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第一部☆火星の王女 第十一章☆婚約
いつも通りの朝だった。
ロカワ氏は朝食をとろうと回廊を歩いていたが、隠し扉から執事が姿を現した。
「脅かさんでくれ」
危うく武器の一つで攻撃するところだった。
「王がお呼びです」
「わーった」
だるそうに返事して
「朝飯食ってからじゃだめなのか?」
と聞く。
「王女との婚約の件ですが、あとでよろしいので?」
「婚約ぅ?」
思わずにやけるロカワ氏。あのかたいミリーが、実は、俺のこと好きだったのかなぁと
ニヤニヤしながら
「すぐ行く、今行く!」
と執事の後について方向転換した。
王の謁見の間に行くと、王女はいなかった。ただ王が玉座から王女と婚約する意思があるかどうかだけ確認された。
「もちろん!ありがたき幸せ」
ロカワ氏は心底嬉しそうに返事した。
「では、エバ王女にそのように伝えるように」
「?!エバ王女。ミリー王女じゃなくて?」
「左様でございます」
執事は知っていてことの成り行きを見ていたようだ。一度ロカワ氏から殺された執事としては、ささやかな復讐だったかもしれない。
「待ってください!王……」
すでに王は謁見の間にはいなかった。