第一部☆火星の王女 第十章☆メイ
爆発音が鳴った。
何事か?と皆が浮き足だった。
金星からの偵察機が撃墜されたのだと後で周知された。
「これは……乗っていた金星人は助からないな」
ケインがミリーに言った。ミリーもそう思った。
「金星人に興味がありますか?」
ロカワ氏が話しかけてきた。
「ケイン義兄さん、行きましょ」
逃げようとしたミリーの背中に、ロカワ氏の声が届いた。
「彼女と会って話せますよ」
ミリーは足を止めて振り向いた。
「大怪我だったのでは?」
「もちろん、一度絶命しましたが、貴女のお義父様の再生槽で生き返りました。……メイ、という女です」
「ミリー」
ケインがどうしたいのかと目で聞いていた。
「会いたいです。会って話しをしたい」
ミリーはそう言った。
「そうですか」
ロカワ氏はほくそ笑んだ。
これで貸しをひとつつくれる。
罪人などを幽閉しておくための塔の一つにメイはいた。ロカワ氏の案内でケインとミリーがやってきた。
「あなたがメイ?」
「死ぬこともできないなんて……」
長い黒髪の少女が顔を上げた。
「死んだらなんにもなくなるのよ。生きていて欲しいわ」
「あなたは誰?」
「火星の王女ミリー・グリーン」
「火星の王女……。どうせあなたも金星と戦うことしか考えていないのでしょう?」
「いいえ。一刻も早く戦争を終わらせたいわ」
おいおい、とロカワ氏は焦った。
少女2人はお互いに目を見つめあって本気で話していた。
「憲兵にみつかります。そのくらいで」
そう言ってロカワ氏はミリーたちを連れて塔をあとにした。