第一部☆火星の王女 第九章☆イヤリング
「この度は、王女とは知らず、無礼を働きました」
手紙には流れるような優雅な文字が踊っていた。
ミリーは始めはわなわなと手をふるわせていたが、しだいに落ち着き、ロカワ氏からのお詫びの品を開けてみた。
美しい緑の宝石のついたイヤリング。……が、ニ揃い?
不思議に思って手紙の続きを読み進めた。
「これはアクセサリーでもあり、通信機器でもある優れものです。感度が良く、近隣の惑星間でも通信が可能です。非常時用に貴女と貴女が大切な人につけておかれたらと思っています」
「私の大切な人って言いながら、イヤリングなら女性しかつけないじゃない!片方はカフスボタンとかにすればいいのに」
でも、いつか役立つようなそんな予感がして、ミリーは二組のイヤリングを引き出しの奥にしまった。
夕食のテーブルに当然のようにロカワ氏が同席している。
「贈り物は気に入ってもらえましたか?その、つけてみせてもらえないのかな」
ミリーはじろっと自前の宝石の瞳でひと睨みして黙らせた。
ロカワ氏は内心、どうやってミリーの心を掴もうかという考えで楽しんでいた。
「隙を見せちゃダメだわ」とミリーはぞくっとした。
それからもなにかとちょっかいをかけてくる。
「ケイン義兄様。なるべくロカワ氏と二人きりにしないでね」
とミリーが頼むと、ケインは快く引き受けた。