1 プロローグ(建前)
私ローズマリー・アンダーソン(10)は、人生3度目の奇跡を体験する事になりました。
ひとつは流行病に打ち勝ったこと。
もうひとつは朦朧とする意識の中で前世たるものを思い出したこと。
そしてもうひとつは…
◇◇◇
「エリザベス。これが君の妹だよ。」
そう言って強く手を引っ張って来た父親が私を前へ押し出した。
久しぶりに顔見せたと思ったら「来い」って言われここまで引きづられる様に来たんだけど、酷すぎないこいつ。
私を見る目はとても冷たかったくせに今は優しい目をしていて腹が立つ。そりゃ今はみすぼらしい格好してるけどあんたの趣味だし、前世よりも顔面偏差値が物凄く高い私の顔になんか文句でもあんのか、と父親を睨む、
「まぁ」
と、綺麗な声が聞こえた。出来ればそっちを見たくない。だってエリザベスって、エリザベス・アンダーソンっていったら前世私が亡くなる前にプレーした乙女ゲームの悪…
「可愛い!!」
悪役…
「こっち向いてぇ〜お顔をもっと良く見せてぇ〜」
悪役令嬢さん?
恐る恐る見てみると私が知ってるエリザベス・アンダーソンより幼い顔が満悦の笑みで私を覗いていた。
「エ、エリザベス?」
父親さんの驚いた声が聞こえるが私もクエスチョンマークでいっぱいだよ?私が知ってるエリザベスだったら「なんてみすぼらしいの!?こんなんか妹なんて信じられない!」とかヒステリックに言うよ?どっちかっていうと、勤務先の動物好きな先輩が猫見つけた様な反応だよ?
「お父様!わたくしもっと妹とお話したいの!いいでしょう?」
「あ、あぁ、好きにするといい。」
「ありがとうお父様!」
そして父親はエリザベスの頭にキスして部屋から出ていった。ちょっと待って悪役令嬢といきなり2人きりはキツい!!
「あなたローズマリーよね!わたくしお姉さんのエリザベスよ!よろしくね!」
そういうと手を優しく握ってきた!グイグイくるこの悪役令嬢!
「は、はい」
ちょっと裏返った。恥ずかしい。
「お腹空いてない?わたくしのおすすめのお菓子があるのよ!2人でお茶会をしましょう!その前にボロボロのお洋服を着替えなくちゃ!わたくしのお洋服を着せて、あ!その前にお風呂よね!一緒に入りましょ!」
「そこまでしなくていいです先輩!」
「そんなことないわ!大事なとこよ麻衣子ちゃん!…あら?」
「えっ」
そしてもうひとつの奇跡は、大好きな先輩が悪役令嬢である姉になったことでした。
エ「本当に本当に麻衣子ちゃん?( ˙꒳˙ )」
ロ「えぇそうです。そうなんです(´;ω;`)」
エ「私のことどれくらい覚えてる?(●︎´▽︎`●︎)」
ロ「仕事が早くて、頼りがいがあって、美人で優しいけど男に興味が無くて彼氏も作らず趣味に突っ走って、料理、編み物、刺繍、手製アロマ作りを極めた天才の(´;ω;`)」
エ「本当に麻衣子ちゃんだわ!さぁ!一緒にお風呂入りましょ!((( *´꒳`* )))」
ロ「…天才の天然の先輩だ!(´TωT`)」