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かつての同居人  作者: 遠藤 健一郎
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 朝食の用意をしていると外で烏が鳴いた。その声に反応して顔を上げるのは先日から預かっている小学生の水澄(すずみ)だ。音によく反応して白い髪を跳ねさせている。

 隣にある書斎から気になった本を持ち出してきて居間のソファの前で読んでいるのがもはや日常的な光景だった。

 じっと窓の向こうへ顔を向けていたと思ったら、スッと視線を本へ戻した。

 朝は僕が顔を出すよりも早く居間にいて、夜は夕食後さっさと部屋に入ってしまう。同じ程度にとは言わないが、ここに姿のないもう一人の同居人にも早寝早起きを見習ってほしい。

 時計へ目をやると7時を回りそうになっている。

 登校時間を考えると、まだ顔を見せない澄華はあと1時間程度で家を出なければならない。


水澄(すずみ)さん、先に食べる?」


 澄華はまだ布団の中でぐずっているだろう。しかし水澄はあと30分もすれば家を出る。揃って食卓を囲むのは難しいかもしれない。


「……ミカ姉を呼んでくる」


 水澄は本を閉じると居間を出ていった。

 8人掛けのテーブルに一人ワンプレートになっている朝食を置けばすぐに二人が顔を見せた。


澄華(すみか)さん、顔は洗った?」

「洗った。

 いただきます」

「少しは人を待ってくれないかな……」


 中学生の澄華は席につくと一人で手を合わせて先に食べ始めてしまう。

 水澄が彼女の隣に、健一郎は向かいに座って食べ始める。


 食事を終えると一足先に、水澄が家を出る。


「気をつけてね」

「昨日と同じくらいの時間に帰ります」

「うん。いってらっしゃい」


 標準服の一部である黒いランドセルを背負った水澄が駅のほうへ向かうのを確認して、澄華がまだ中学の制服に着替えていないことに気付いた。


「澄華さんも、早く着替えないと遅れてしまうよ?」

「はーい」


 澄華が玄関を出たのは遅刻ギリギリの時間だった。

 駆けてゆく彼女の背を見送って、食器を片付けたら健一郎も家を出る。

 今は外での仕事をしていないから普段だと家事にとりかかるのだが、この日は片付けておきたい事案があった。子供たちの帰宅時間には家にいられるように、なるべく早く用事を済ませるべく小走りに目的地へ急ぐ。

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