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ばからしい清涼感
「なんだかたまに
すごくばからしい気分になる」
と嘲るように呟いた彼女は
川辺に不可思議に根を張っていたミントを
しゃがんで摘もうとしていた
「あぁ、これが
ドラマや小説なんかでよく見る感情なのか、
って勉強にもなる」
無言で薄手のコートの両ポケットに
手をつっこんで佇む私に向かって
彼女は言葉を続ける
「ばからしい……そして」
摘んだ直後のミントを鼻先にあてながら
「時にどうしようもなく救われる……」
言い終わると同時に
目をつぶった彼女の脳裏に漂うのは
二極化された感情を生ませる想い人と
お構い無しに清涼感を弾けさせるハーブの香り




