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美しいものはいつも無条件
繰り返される
対応と謝罪と奉仕
穏やかな空間は
自然と湧き上がってくるものではない
平穏はおそらく
誰かのオンの状態によって
作られているのではないか
その『オン』を維持するために
私は今日も
赤い尾びれを水流になびかせながら
口をパクパク開けている
綺麗に磨かれた狭い水槽の中で
あなたの手から餌が舞い落ちるのを
今か今かと待ち構えている
でも心から欲している餌じゃなくてもいいんだ
あなたからの餌が一番効くには違いないけれど
それはやっぱり贅沢だから
たまの楽しみとして
残しておくぐらいの頻度でいい
平穏さえ維持できれば
何から摂取してもいいんだと
私はぼんやりと陽が当たる方に目を遣った
美しいものは心を無条件に癒す
水槽のある一階の窓辺からは
隣家と隣家の隙間が覗く
その明るく限られた縦長の空間を
右から左に吹かれ行く儚き桜の花びらたち
私は口を薄く開けたまま
春風から生まれるその情景を
無心で見つめ続ける




